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第38章:星空山への道程

(バスのエンジンが一定の振動を上げ、生徒たちの足元から伝わってくる。それは笑い声や叫び声、座席にぶつかるリュックの音と混ざり合っていた。窓の外では、都会の景色が木々の深い緑と、上へとねじ曲がる灰色の道路に飲み込まれ始めていた。星空高校は遠ざかっていくが、校内の緊張感はそのまま車内へと持ち込まれていた)


高木 蓮:(中央の席からポテトチップスの袋を振り回して叫ぶ) —「見ろよ! 野生の空気の匂いがしてきたぜ! 覚悟しろよ、このバスが向かうのはキャンプ場じゃねえ、栄光の地だ! 白、下ばっかり見てないで俺たちの王国を拝めよ!」


森田 大輝:(腕を頭の後ろで組み、片目を開けて) —「おい、蓮。お前が拝むことになるのは、叫びすぎて酔い潰れた時の床だけだろ。それに『王国』なんてどこにあるんだよ。どうせ最初の5分でリスでも追いかけて迷子になるのがオチだろ」


市ヶ谷 直美:(前の席から、予定表から目を離さずに) —「中央席、静かに! 今からエネルギーを使い果たして、炎天下でテントを張る時に泣き言を言わないでよね。それから蓮、その袋をしまいなさい。バスの中が油臭くなるでしょ」


(数列前では、喧騒とは対照的に落ち着いた、しかし集中した空気が流れていた。清水 海斗は蓮の騒ぎを無視し、タブレットの地図を完璧な真剣さで見つめていた)


清水 海斗: —「これからの数キロで道路の傾斜がかなりきつくなるぞ、雪菜。顔色が悪い。酔いがひどくなる前に水分を摂っておくべきだ」


黒瀬 雪菜:(窓の外を見つめ、腕を組んで忌々しそうに) —「顔色のことなんて言われなくても分かってるわよ、海斗。ただのバスの揺れよ、大げさなんだから」


清水 海斗:(リュックから水を取り出し、迷いのない動作で差し出す) —「飲め。到着した時に一人でも動けなくなって、グループの時間を無駄にしたくないんだ。チームのためだ」


(一方、バスの前方では、相沢 陸が周囲を緊張させるほどの鋭さで道を見据えていた。その隣で、朝比奈 未来は自分の考えに沈み込むように、流れる景色に視線を漂わせていた)


相沢 陸:(前を見据えたまま、低く力強い声で) —「訓練にしては騒がしすぎるな。高木くんや森田くんが、山の上まで荷物を運ぶ時もそのエネルギーを維持できているといいんだが。大自然は教室ほど甘くないぞ、朝比奈さん」


朝比奈 未来:(かすかな溜息を漏らして) —「たまには騒がしいくらいが、ストレスを忘れるにはちょうどいいわよ、陸くん。何でもかんでも四角四面じゃ疲れちゃうわ」 (未来はバックミラーに目をやり、後方にいる白のシルエットを一度だけ探してから、再び外へ視線を戻した)


相沢 陸: —「規律の乱れは、山では事故の引き金になる。粕美くんたちが到着前に集中を切らさないよう、見ておけ」


(最後列の席では、粕美 白が自分の緊張を必死に抑え込もうとしていた。隣に座る少女との距離が、空間をどんどん狭く感じさせていた)


粕美 白:(……っ、なんでこんなに落ち着いてられるんだ? 白崎さんが近すぎて、またあのバニラの香りがする。集中しろ、白!) —「白崎さん、だ、大丈夫? このあたりのカーブ、結構揺れるけど……」


白崎 華:(隠しきれない赤ら顔で) —「気、気にしないで、白くん。こうして隣同士になれて、すごく嬉しいから。その方が、ずっと安心できるんです」


(前の席から、粕美 あかりが背もたれの隙間から満面の笑みで顔を出した)


粕美 あかり:(悪戯っぽく囁いて) —「あらあら……後ろの方は火花が散りそうな空気ね。お兄ちゃん、そんなにガチガチになってると足がつっちゃうわよ。華ちゃん、退屈になったら呼んでね!」


粕美 白: —「あかり! 自分の席に戻ってろ。覗き見するな!」


(一時間の走行が過ぎた。カーブはさらに急になり、車内には静寂が広がり始めていた。突然、白は右肩に柔らかく温かい重みを感じた。華が深い眠りに落ちていたのだ)


粕美 白:(目を見開き、完全に硬直する) —(え、ええっ!? 白崎さんが寝ちゃった……!) —(心臓の鼓動が激しくなるのを感じながら、彼女を起こさないよう息を止める) —(動くな……強く呼吸するな……。今起きたら彼女は恥ずかしさで死んじゃうだろうし、僕も同じだ。でも……すごく、安らかな顔してる……)


高木 蓮:(大輝に後ろを指差しながら囁く) —「おい……白のやつ、バス限定の恋愛イベント攻略中かよ。アニメのワンシーンかよ、おい!」


森田 大輝:(ニヤリと笑って) —「蓮、お前の叫び声でぶち壊したら、到着前に窓から突き落としてやるからな」


(前方の席で、あかりが状況を確認するためにわずかに振り返った。その唇が危険なほど楽しげに弧を描く)


粕美 あかり: —「ふふっ……これは面白くなりそうね」


(白は身動きひとつせず、肩にかかる重みを噛み締めていた。隠しきれない安らかな微笑みが彼の顔に浮かぶ。星空山が目の前に堂々とそびえ立ち、薄い霧に包まれていた。まるで、まだ誰も知らない秘密を守っているかのように)


つづく


著者ノーツ:


皆様、こんにちは!


第38章、バスの中での一幕をお届けしました! 山へ向かう道中、友人たちの賑やかなやり取りとは裏腹に、最後列では白と華の距離が急接近。あの「肩にコテッ」は、青春の特権ですよね。


一方で、陸の厳しい視線や、海斗と雪菜の微妙なやり取りなど、各キャラクターの個性が光る移動時間となりました。


さあ、いよいよ一行は星空山の麓へ到着します。そこには、あかりが予言した通りの「面白いこと」が待っているのでしょうか?


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