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第36章:新たなリズム

(星空高校への通学路が、今朝はどこか違って感じられた。粕美 白は両手をポケットに入れ、アスファルトに響く自分の足音を聞きながら歩いていた。数日前まで抱えていた重荷は消え去り、代わりに不思議な静けさが訪れていた。未来との間に起きた嵐のあとの安堵感。だが、そこに憂鬱はない。目を閉じれば、昨夜、白崎さんの手が自分の手と重なり合っていた時のぬくもりだけが蘇る。学校の門をくぐる時、無意識に口元が緩んでいた)


(昇降口は制服の群れと笑い声で溢れていた。白は下駄箱の前で立ち止まり、外履きから上履きに履き替える。その時、鉄製の扉に小さな付箋が貼ってあるのに気づいた。うさぎのステッカーに、丁寧な字でこう書かれていた。「今日も頑張ってね、白くん!」。彼はそれを宝物のようにポケットにしまい込むと、騒がしい気配に背後から捕まった)


高木 蓮:(どこからともなく現れ、白の首に腕を回して) —「おはよ、白! お前さ……なんか昨日から変だぞ。枕に頭でもぶつけたか? その『上の空です』ってツラ、どうにかしろよ。糖分を血管に直接ぶち込まれたみたいな顔してんぞ!」


森田 大輝:(海斗と一緒にやってきて、軽くあくびをしながら) —「バカ言うなよ、蓮。理由は明白だろ」 (大輝は近づき、親しげに肘で突つく) —「正直に言えよ。俺たちが帰った後、華ちゃんと何かあったんだろ? 昨日の空気、期末テストより重かったもんな」


粕美 白:(……っ! なんでこいつらはいっつも核心を突いてくるんだ!) —「お前らの変態的な妄想が捗るようなことは何も起きてないって! ただ……休んでただけだよ。長い一日だったからさ」 (白は、熱が首筋から耳の先まで一気に駆け上がり、真っ赤になるのを感じながら答えた)


市ヶ谷 直美:(雪菜と一緒に加わって) —「本人がそう言うなら……でも、白。その瞳の輝きは隠しきれてないわよ。入り口からでも、あなたの中で何かが変わったのが分かるわ。そう思わない、雪菜?」


黒瀬 雪菜: —「いつもよりは、惨めに見えないわね。たぶん」 (雪菜は腕を組み、友人を見つめる) —「白、その上機嫌を今日の授業まで維持しなさいよ。近藤先生、機嫌が悪いみたいだから」


清水 海斗:(冷静で分析的な表情で) —「放っておけ。今の白の情緒安定度は、白崎さんとの距離に正比例している。もはや絶対的な物理法則だ。彼女が近ければ幸福度は無限に上昇するが、論理的な会話能力は急降下する」


(一行が教室へ向かって歩き出す。2年A組の前を通りかかると、ドアが開き、白崎 華が廊下に出てきた。彼女は白の姿を見つけると足を止め、その瞳が甘く輝く。その一瞬の光に、白は息を呑んだ)


白崎 華:(バッグのストラップを恥ずかりそうにいじり、小さくお辞儀をする) —「おはようございます、白くん。……昨日はゆっくり休めましたか?」


粕美 白: —「おはよう、白崎さん。うん、よく眠れたよ。……というか、昨日のことは本当にありがとう。なんて言えばいいか分からないくらい、特別だったから」


(白の友人たちは数メートル先で足を止め、まるで恋愛映画のワンシーンを見守る観客のように二人を眺めている)


清水 海斗: —「夫が出勤する前の新婚夫婦みたいだな。実に興味深い」


白崎 華:(し、しんこん……!?) —(華は瞬時に赤くなり、頬を真っ赤に染める。指先をバッグの上でせわしなく動かしながら、うつむいた)


黒瀬 雪菜: —「海斗、からかうのはやめなさい。白、あんたもこのバカたちに惑わされずに教室に入る。華ちゃん、行きましょう。遅れちゃうわよ」


粕美 白: —「海斗、黙れって! ほら、教室行くぞ!」 (白はパニックになりながら、友人たちを2年B組の方へ押し込んだ)


(昼休み、一行は中庭の桜の木の下に集まった。手作り弁当の香りが漂う中、蓮は自分のデザートと大輝のタコさんウィンナーを交換させようと必死に交渉していたが、失敗に終わっていた)


高木 蓮: —「おい! 噂聞いたか? 今日の放課後の放送、デカい発表があるらしいぜ。俺のデザートを賭けてもいい、星空山への林間学校のことだ! なあ、直美はどう思う?」


市ヶ谷 直美: —「人前で『直美』って呼ばないで、蓮.でも、3年生たちがざわついてるのは確かね。特別なキャンプになるって噂よ」


森田 大輝: —「蓮の言う通りかもな。空気が違う。華ちゃんはどう思う?」


白崎 華:(弁当を脇に置き、考え込むような表情で) —「……何人かの女の子たちが、山の空気が綺麗だって話してるのは聞きました。今の時期、すごく美しい場所だって、大輝くん」


市ヶ谷 直美: —「何にせよ、勉強グループでバラバラにされないといいけど。華ちゃん、白。あんたたち昨日から自分たちの世界に入り浸ってるけど、本当に他に話すことはないの?」


粕美 白:(ご飯を喉に詰まらせそうになりながら) —「直美さん! 変な意味じゃないんだって……。ただ、未来とのことがあって、ピリピリしてた日が続いてたから、今はすごくリラックスしてるだけだよ。謎なんて何もないって」


(ちょうどその時、一人の少女が凄まじいエネルギーで駆け寄ってきた。白の妹、あかりだ。彼女は息を切らしながら合流した)


粕美 あかり: —「お兄ちゃん! 白! 信じられないニュースを掴んだわよ! 今度のキャンプ、合同開催なんだって! 1年、2年、3年が全部一緒! しかも、班分けはくじ引きらしいわよ! もし私が華ちゃんと一緒になって、お兄ちゃんが山の反対側で不機嫌な先輩とペアにでもなったら、運命に笑われてる証拠ね!」


白崎 華:(優しく笑って) —「それは楽しそうですね、あかりさん。でも、向こうで会えるといいですね」


黒瀬 雪菜: —「落ち着きなさい、あかりさん。決めつけるのは早いわ。でも本当だとしたら、運営は大変なことになるわね。白、あんたはぼーっとして森で迷子にならないようにしなさいよ」


(午後の休憩時間、白は体育館近くのベンチに座っている朝比奈 未来を見かけた。彼女は視線を逸らそうとしたが、白は彼女が立ち上がる前に声をかけた)


粕美 白: —「未来!」


朝比奈 未来:(足を止め、当惑したように彼を見る) —「……未来? 呼び捨てなんて、直球ね、ハク。でも、敬称がなくなったのは嬉しいわ。ようやく物事が自然な形に戻りつつある気がして」


粕美 白: —「まあ……色々あったし、それが一番いいかなって。……でも、今日は考え込んでるみたいだね。キャンプのこと、まだ気にしてるの?」


朝比奈 未来:(雲を眺めながら、静かに溜息をつく) —「高校最後の年って、過ぎるのが早すぎるなって。キャンプは……卒業前にここで作る、最後の思い出の一つになるから」


(その時、一人の3年生が彼らのそばを通り過ぎた。肩にはスポーツバッグをかけ、そこからラケットのケースが覗いている。その眼差しは穏やかで、何を考えているのか読み取ることはできない。彼の存在感からは鉄のような規律が漂い、通り過ぎるだけで廊下のざわめきが静まるようだった)


相沢 陸:(未来に向かって軽く会釈し) —「おはよう、朝比奈。今日は少し空気が重いが、コートで持久力を鍛えるにはちょうどいい。県大会も近い。気を引き締めないとな」


朝比奈 未来: —「おはよう、相沢くん。ええ、バドミントン部には絶好のコンディションね。キャプテンが中庭を歩いているなんて珍しいじゃない」


相沢 陸: —「休息もトレーニングの一部だ、朝比奈」 (陸は一瞬だけ、白に視線を向けた。その瞳に審判の意志はないが、あまりに鋭い眼差しに、白は自分の内側を覗き込まれたような感覚に陥った)

—「……では、失礼する」


(少年は優雅な足取りで去っていった。白はその背中を見送りながら、その圧倒的な集中力とオーラに圧倒されていた)


粕美 白: —「誰だい、彼は? エネルギーというか……空気が違う。僕が知っている他の先輩たちとは違う感じだ」


朝比奈 未来: —「相沢 陸。私のクラスメイトよ。バドミントン部のキャプテン。極限の状態でも決して冷静さを失わないって、学園では伝説になってるわ。彼には気をつけなさい、ハク……。悪い人じゃないけれど、一度見ただけで相手の本質を見抜いてしまう、そういう人だから」


粕美 白:(なるほど……未来は、見た目以上にずっと強い人たちの中にいるんだな)


つづく


著者ノーツ:


皆様、こんにちは!


新章、【第5章:僕の心を本当に高鳴らせた女の子】 がいよいよスタートしました!


未来との騒動を乗り越え、少しだけ距離が縮まった白と華。ですが、平和な日常も束の間、学校全体を巻き込む巨大なイベント「星空山合同キャンプ」が動き出します。


不穏な空気を纏って現れた3年生のキャプテン、相沢 陸。彼の登場が、物語にどのような新しいリズムをもたらすのか? そして、このキャンプを通して、白は自分の「本当の鼓動」の正体に気づくことができるのか……。


この新アークの開幕にワクワクしてくださる方は、ぜひ「星(評価)」やブックマークをお願いいたします! 皆様の応援が、執筆の大きな力になります!

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