第3章:ケーキと赤面、実りある笑い
(二人は街をゆっくりと歩き、目的地であるカフェへと向かう)
霞 泊里:「……それで、白崎さん。ここが僕に見せたかったカフェ? ずいぶん落ち着いた雰囲気だね。こんな場所があるなんて知らなかったよ」
白崎 花:「……は、はい……私……家に帰る時、よくここを通るんです。いつも外からショーウィンドウを眺めてて……でも、一人で入るのは、ちょっと恥ずかしくて」
霞 泊里:「恥ずかしい? ただのカフェじゃないか。店員さんが噛みついてくるわけでもないし、白崎さん」
白崎 花:「そうじゃなくて……その……周りがみんな誰かと一緒だったり、カップルが笑ってたり、友達同士だったりする中で……私だけポツンと座って、大きなケーキを食べてるのって……なんだか変な人みたいで。だから……私……あなたを誘いたかったんです」
霞 泊里:「僕を? 友達の誰かを誘えば、きっとみんな喜んで付いてきてくれたと思うけど」
白崎 花:「それは……違うんです直。あなたとなら……周りの目を気にせずに食べられる気がして……たぶん。あ、違う! 変な意味じゃなくて! その、今の言い方だと失礼ですよね! ごめんなさい!」
霞 泊里:(クソ、また真っ赤になってる。彼女から誘ってくれたなんて、まだ信じられない。決意と不安が入り混じったような表情……鞄を握る手が少し震えてる。……ちくしょう、そんな顔を見せられると、どこへでも付いて行きたくなる。なんであんなに即答しちゃったんだ? 今じゃ僕まで緊張で冷や汗が出てきた)
(二人はカフェに入り、カウンターの前でしばらく立ち止まる)
白崎 花:「……わあぁ……あのイチゴのチョコケーキ、ふわふわそう……。こっちのケーキもクリームがたっぷり! あ、ブルーベリーのマフィンも!」
霞 泊里:「落ち着いて、白崎さん。鼻息でガラスが曇るよ。どれにする? ゆっくり選んでいいから」
白崎 花:「選べないですよ……全部『私を助けて』って言ってるみたいで。泊里くんは何にする? やっぱり甘いもの?」
霞 泊里:「僕はバタークッキーにするよ。コーヒーに合うシンプルなやつを。君みたいに激甘派じゃないからね。胃がもたないよ」
白崎 花:「ええっ!? 甘いものこそが人生の幸せなのに! ……よし、決めた! 一番大きなイチゴのショートケーキと、生クリーム多めのバニラシェイクにします!」
霞 泊里:(誘ったのは彼女だけど、本当にこの宴を楽しんでいるのは花のようだ。でも、構わない。カウンターの前で目を輝かせている彼女を見るのは、どんなデザートよりもいい。不思議だ……この瞬間を守らなきゃいけない気がする。どうしてこんなに心臓がうるさいんだ? 胸から飛び出しそうだ。……失敗するなよ、霞)
(奥の小さなテーブルに座る。注文を待つ間、静寂が流れる)
白崎 花:「……ねえ、泊里くん……」
霞 泊里:「う、うん、何かな……」
白崎 花:「来てくれて、ありがとう。練習とか、みんなとの勉強とか、断ることもできたはずなのに」
霞 泊里:「別にいいよ。それに……僕も来たかったし。女の子にケーキを食べに誘われるなんて、毎日あることじゃないから」
白崎 花:「……そうなの? 誘われたのは、私が初めて?」
霞 泊里:「……まあ……こういう形では……そうだね」
(花は顔を赤くし、ナプキンを細かくちぎりながらいじり始める)
白崎 花:「そ、そうなんだ。よかった。……じゃなくて! 変な意味じゃなくて! ああ、もう忘れて!」
霞 泊里:(しまった……緊張させちゃったか。彼女はナプキンをボロボロにしてるし、僕は手の置き場に困ってる。窓の外を見るべきか? 彼女を見るべきか? 目を合わせたら頭が真っ白になりそうだ。こういう状況には疎いけど、この時間が終わってほしくないと思ってしまう)
(突然、窓の外に友達が現れ、手を振る)
高木 蓮:「おやおや! 霞キャプテンが、カフェという慣れない場所にいるじゃないか。しかも女の子におごらせるなんて、伝説級のテクニックだな。甘いデートか? それとも偵察任務か?」
霞 泊里:「蓮! 早くあっち行けよ、この野次馬ども! 邪魔するな!」
森田 大輝:「うわぁ、『邪魔するな』だってよ! 邪魔されたくない時に出る言葉だね。気をつけろよ霞、その子は可愛く見えるけど、そのケーキは高くつくぞ……感情的な意味でな。楽しめよ、お熱い二人さん!」
白崎 花:「……え……私……ただ、お礼がしたくて……」
清水 海斗:「お前ら、いい加減にしろ。騒がしすぎて店を追い出されるぞ。泊里に蹴り出される前に行くぞ。……じゃあな泊里、ゆっくり楽しめよ」
(霞泊里はあきらめたような苦笑いで手を振る。友達たちは笑いながら去っていく)
霞 泊里:(ようやくか……助かったよ、海斗。でも、あいつらのせいで雰囲気が台無しだ。花を見ると、髪で顔を隠してる。クソ、沈黙が重すぎて自分の脈動が聞こえそうだ。なんで蓮は『デート』なんて言葉を言ったんだ。……でも、悪い気はしない自分がいる)
霞 泊里:「ええと……白崎さん……本当にあいつらの言うことは気にしないで。バカだけど悪い奴らじゃないんだ。ただ口の聞き方を知らないだけで」
白崎 花:「……大丈夫です……ただ……その……『デート』って、すごく大きな声で言ってたから」
霞 泊里:「あいつらいつも大げさなんだよ。……でも、まあ……考えてみれば、二人きりだし……君が誘ってくれて……食べ物もある。あいつらも、あながち間違ってないかもしれないね」
白崎 花:「……は、はい……こういうの、私、初めてなんです。友達がこんな風に雰囲気を壊しに来るなんて知りませんでした」
霞 泊里:(初めて? つまり……これが本当に、彼女の『初デート』なのか? クソ、霞、変なことを言うなよ。彼女の初めてなら、こんな気まずい結末じゃなくて、完璧なものにしなきゃいけないんだ。緊張しすぎて、まつ毛まで汗をかいてる気がする)
霞 泊里:「まあ、初めてにしては最高の場所を選んだと思うよ。そのケーキも……すごく綺麗だ。君みたいに。……あ! 違う! 今のはケーキのこと! そう、ケーキ!」
白崎 花:「……綺麗? あ、ありがと……。ほら! こ、これ、すごく美味しいです! コーヒーも。……一口、食べてみます?」
(花はフォークで一口分を切り分け、無意識に泊里の口元へ運ぶ。二人の顔が近づき、その場で凍りつく)
白崎 花:「……あ……ごめんなさい! 私、何を! 厚かましくてすみません!」
霞 泊里:「い、いいよ。僕は……(泊里は口を開け、彼女が差し出した一口を食べる)……うん、美味しい。すごく甘いね。ありがとう、白崎さん」
(花は爆発しそうなくらい真っ赤になり、恥ずかしさのあまり急いで食べようとして、ケーキを喉に詰まらせて咳き込む)
白崎 花:「……う、うう……ごめんなさい……私、もう最悪! 素敵なカフェに誘っておいて、あーんで食べさせたり、むせたり……本当に恥ずかしい……」
霞 泊里:「白崎さん、そんなこと言わないで。そういうところも含めて君らしいんだ。……僕は、そういう君が好きだよ。楽しいし、……可愛いと思う」
白崎 花:「本当ですか? 私みたいなドジな子が、あなたと一緒にいてもいいんでしょうか……?」
霞 泊里:「もちろんだよ。君は……僕が知る中で一番『真っ直ぐ』な人だ。完璧であることより、ずっと素敵だと思う。……この瞬間を、変えたいなんて思わない」
(二人は数秒間見つめ合う。カフェの喧騒が消えたような錯覚に陥るが、突然ドアが激しく開き、見知らぬ男たちが入ってくる)
見知らぬ男:「おやおや……あの『有名』な花じゃないか。こんな洒落た場所で、ボディーガード連れでお茶してるなんてな」
白崎 花:「……あなたたち……? どうしてここに……」
(花はテーブルクロスを強く握りしめる。拳は白くなり、呼吸が荒くなる)
見知らぬ男:「コーヒーを飲みに来ただけだが、お前に会えたのはラッキーだ。おい、花……この男は誰だ? 前の学校であんな騒ぎを起こしておいて、今度は道端で拾ったような男とデートか?」
白崎 花:「……あ……彼は……泊里くんは、そんな人じゃ……」
霞 泊里:(こいつら、何様のつもりだ? 彼女に向けるその軽蔑したような声……今まで感じたことのないほど、怒りで血が沸騰しそうだ。僕たちの最高に幸せな時間を壊しただけでなく、彼女の初めての思い出を汚そうとしてる. あんな傲慢な奴らに、彼女を屈服させたりしない)
霞 泊里:「おい、お前。彼女には名前がある。白崎花だ。……そして、今僕たちの会話をこの上なく不作法に邪魔してる自覚はあるのか?」
見知らぬ男:「おー怖い、彼氏君は勇敢だな。おいガキ、大人しくクッキーでも食ってろ。これは花と俺たちの、前の学校での貸し借りの問題だ」
霞 泊里:「そんなの知ったことか。僕は白崎さんにここに誘われた。お前らみたいな奴らのくだらない用件で、彼女の午後を台無しにさせるわけにはいかないんだ。……何か賢い言い訳がないなら、今すぐここから消えろ。僕の堪忍袋の緒が切れる前にな」
見知らぬ男:「さもなきゃどうするんだ、ヒーロー様? この女を庇って俺たちを殴るのか? そんなに強そうには見えないがな」
霞 泊里:(救いようのないバカどもめ。お前らが今、どれだけ最悪な状況の近くにいるか分かってないな。その見下したような目で彼女を見ることは、一秒たりとも許さない。さっきまでの緊張が、守りたいという本能の熱に変わる。まだ付き合ってるわけじゃないけど、そんなの関係ない。彼女の勇気を踏みにじる権利なんて、誰にもないんだ)
霞 泊里:「僕は霞泊里だ。……いいか、三つ数える。それまでにお前がまだそこに立っていたら、どうなるか……試してみるか? ……一」
――第3章 完――
霞 泊里:(彼女は穏やかな午後を望んでいたし、今日の誘いのために一生懸命頑張ってくれたんだ。でも、こいつらが喧嘩を売るつもりなら、一生忘れられない教訓を叩き込んでやる。僕の前で、白崎を泣かせる奴なんて、一人も許さない)
毎週土曜日に一章ずつ更新予定です。
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