第21章:階段の甘いひととき
(華の言葉の後、2-Aの教室から空気が消えてしまったかのようだった。2-Bの人間として、まるで見知らぬ世界の侵入者のような気分でいた白は、自分の顔が燃えるように熱いのを感じていた。メイド服の白さと、華の期待に満ちた視線は、彼の自制心を狂わせるには十分すぎた。)
高木 蓮:(どこからともなくニヤニヤしながら現れ)「おやおや! まだ石像モードかよ、白? そんなんじゃ、華ちゃんにお前が愛の脳卒中で倒れたって思われちまうぞ! 見ろよ、トマトより真っ赤じゃねえか!」
(教室中の生徒たちが一斉に吹き出し、後ろの方から冷やかしの口笛が響き渡った。恥ずかしさが壁のように白に押し寄せる)
粕美 白:「蓮! 黙れよ!(最悪だ、よりによって自分のクラスのみんなの前で……!)」
高木 蓮:「おっと、怖い怖い! でも嘘つくなよ、みんなお前の目玉が飛び出しそうになってるの見たんだぜ。認めろよ、あの衣装の彼女に惚れ直したんだろ……」
粕美 白:「もういい、行く!」
(白は後ろを振り返ることなく、足早に教室を飛び出した。華は数秒間、呆然と立ち尽くし、エプロンの端をぎゅっと握りながら、廊下へ消えていく彼の背中を見つめていた。一瞬の迷いの後、彼女は近くのテーブルから小さな白い箱を手に取り、彼の後を追った)
2-Aの生徒1:「えっ? 白崎さんも走っていっちゃったぞ?」
2-Aの生徒2:「おい……今の、テレビの恋愛ドラマのワンシーンみたいじゃなかったか?」
(華の耳には、クラスメイトたちの囁き声は届いていなかった。彼女の頭にあるのはただ一つ。祭りの人混みに彼が消えてしまう前に追いつくこと。自分のせいで、彼をあんなに困らせてしまったのではないかという不安が、彼女の胸を締め付けていた)
(白は北棟の階段の踊り場にたどり着いた。そこは祭りの喧騒の中でも、普段は人がいない静かな場所だった。彼は冷たい手すりに身を預け、両手で火照った頬を冷やしようとした。遠くから祭りの音楽が微かに聞こえ、窓を叩く風の音が優しく響いていた)
粕美 白:(僕はバカだ……あんな風に逃げたら、余計に怪しまれるだけじゃないか。彼女、今頃どう思ってるだろう。きっと僕のこと、変な奴だって思ってるに違いない)
(その時、階段から軽やかで急ぎ足の足音が響いた。白が振り返ると、そこには肩で息を切らした華が立っていた)
白崎 華:「白くん! 待って! 私……怒って帰っちゃったのかと思って」
粕美 白:「怒ってなんてないよ、華さん……ただ……(ため息をつき、窓の外に視線を逸らす)。緊張したんだ。蓮のやつはデリカシーがないし、僕は君に何て言えばいいか分からなくて。……本当に、すごく綺麗だったから」
(二人の間に、緊張感の漂う数秒の沈黙が流れた。白は華と目を合わせられず、彼女は指先をいじりながら、今の瞬間に心を揺らしているようだった)
白崎 華:(一歩彼に近づき、距離を縮めて)「……そう言ってもらえて、すごく嬉しい。実はね……今朝、学校に来る前にずっと鏡の前にいたの。すごく緊張したけど……メイド服を着るのを引き受けた本当の理由は……君に見てほしかったから。君にどう思われるか……それだけが知りたかったの」
粕美 白:(心臓が肋骨を突き破るほどの激しい鼓動を刻む)「(彼女……僕のために、これを……? そんなはずは……)。……華さん、僕は……」
白崎 華:(真っ赤になりながら、白い箱を差し出して彼の言葉を遮る)「あ! そ、そうだ……これも渡したくて。カフェのメニューにあるデザート、自分で作ったの……君に一番に食べてほしくて」
(華が箱を開けると、そこにはイチゴと生クリームのパフェが入っていた。白は驚いてそれを見つめた。丁寧なデコレーションから、彼女がどれほど心を込めたかが伝わってくる。華は震える手で小さなスプーンを差し出した)
白崎 華:「あ……味見、してくれるかな、白くん……」
(白は一瞬ためらったが、それを口にした。イチゴの甘酸っぱさとクリームの優しい甘さが広がる。それは屋台の味ではなく、心を込めて作った者だけが出せる繊細な味だった)
粕美 白:「……美味しい。本当に、華さん、すごく美味しいよ」
白崎 華:(純粋な喜びで瞳を輝かせ)「本当……? 良かったぁ! 一番甘いイチゴを選んで、クリームも手で泡立てたんだよ。チョコもこうやって削って……」
(夢中になって話すうちに、華は無意識に肩が触れ合うほど近くまで寄っていた。パフェから顔を上げた時、二人の顔はわずか数センチの距離にあった。白は彼女から漂うバニラの香りと、瞳の柔らかな輝きを感じた。時間が止まった)
粕美 白:(あと一ミリ動けば、唇が触れてしまいそうだ。心臓の音がうるさすぎて、彼女にも聞こえてるんじゃないかと思う。あと一センチ進めば……もう後戻りはできない)
(華もまた、白の視線の熱さに気づいたようだった。彼女の呼吸が止まり、視線を彼の口元へと落とした。白はゆっくりと目を閉じ、この瞬間の重力に身を任せようと顔を近づけ始め……)
粕美 あかり:(上の階から雷のように声が響く)「おやおやー! 二人きりの試食会をお邪魔しちゃったかしら?」
粕美 白:(電気ショックを受けたように飛びのき、危うく壁に頭をぶつけそうになる)「あかり! いつからそこにいたんだよ!」
粕美 あかり:「そのパフェに『愛』っていう隠し味が入ってるって気づくくらいにはいたわよ。雪菜さんが探してるわよ、華ちゃん。お店が混み合ってきたんだって!」
白崎 華:(我に返り、真っ赤になって慌てて箱を閉じる)「は、はい! 今行きます!(最後にもう一度白を見つめて)。……明日……ペアレース、頑張ろうね、白くん」
粕美 白:「……ああ、一緒に走ろう。約束するよ」
(遠ざかる華の背中を見送りながら、白は確信していた。明日のペアレース……彼の心臓は、今までになく速く走ることになるだろうと)
第21章 完結
著者ノーツ:
皆さん、こんにちは! 第21章まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は私にとっても非常に特別な回で、ついに華が自分の感情を形にして一歩踏み出しました。書いてる自分でも、あかりのあのタイミングの良すぎる乱入には心が痛みました(笑)。
もし白と華のこの瞬間を気に入っていただけたら、ぜひ評価やコメントで応援してください! ペアレースで一体何が起きるのか、皆さんの予想を読むのが今の私の大きなモチベーションです! 次回もお楽しみに。




