第18章:扇風機の唸りの下で
(星空高校に、夏は静かに忍び寄ってきた。天井でゆっくりと回る扇風機の音と、教室内に漂う会話のざわめきが混ざり合い、どこか怠惰な空気を生み出している。暑さがねっとりと体にまとわりつき、勉強どころではない。教師たちでさえ、生徒たちの心がすでに夏休みにあることを悟っているようだった)
高木蓮:(机に突っ伏し、床に落ちる日差しを物憂げに眺めながら)「嘘だろ……。マジで俺たちが祭りの出し物を担当しなきゃいけないのか? この暑さじゃ、九月まで冬眠してたいくらいなのに」
清水海斗:(本をパタンと閉じ、正確な動作で眼鏡を直す)「自主的に参加しなければ、主体性がないという理由で教師から一番きつい仕事を割り当てられる。論理的な帰結だ、蓮」
森田大輝:(椅子を後ろに揺らしながら、飄々とした表情で)「手間のかからない簡単なものを売ればいい。みんなが喉から手が出るほど欲しがるものをね」
高木蓮:(少し顔を上げ、興味深そうに)「例えば?」
森田大輝:「水だ。ただの水」
粕美白:(席から力なく笑う)「それは出し物じゃないよ、大輝……。ただテーブルの上にボトルを置くだけじゃないか。生徒会はもっと手の込んだものを期待してると思うよ」
市ヶ谷直美:(不敵な笑みを浮かべて腕を組み、男子たちの輪に加わる)「やるからには、せめて無様なことにはならないようにしましょう。あんたたち三人の怠慢のせいで、2-Bが学校中の笑いものになるのは真っ平よ」
(一方、2-Aの教室も似たような雰囲気だった)
雪菜:(ノートで仰ぎながら、隣の友人を盗み見る)「ねえ、華……。そういえば、もうすぐお祭りだけど……誰か『特別な人』と行く予定はあるの?」
白崎華:(びくっと肩を揺らし、慌てて白紙のノートを見つめる)「えっ? 特別な人って……どういうこと、雪菜?」
雪菜:(頬杖をつき、いたずらっぽく微笑む)「ほら……白くんのことよ。最近いつも一緒にいるじゃない。夏祭りっていえば、『ある種のこと』には絶好のシチュエーションでしょ?」
白崎華:(頬が熱くなるのを隠すように、落ち着きなく髪の毛をいじり始める)「変なこと言わないで! ただの友達だし……それに、一緒に行くなんて話、一度もしてないもの」
(その時、2-Bのドアが勢いよく開いた。あかりが、まるで見慣れた自分の家のような自信満々の足取りで入ってきた)
粕美あかり:(兄の机の前に立ち、ドサリと袋を置く)「ちょっと、お兄ちゃん! またお弁当忘れたでしょ。お母さんが、明日また忘れたら空気でも食べてなさいって」
高木蓮:(ガバッと起き上がり、あかりに茶目っ気たっぷりの笑顔を向ける)「おっ、俺のお気に入りの美少女参上じゃねえか! 助けに来てくれてありがとな、あかりちゃん。白が朝飯代わりに華の写真でも眺めて生き延びるつもりか心配してたところだ」
粕美あかり:(蓮の言葉にニヤリと笑い返す)「相変わらずね、蓮さん。誰かが面倒見てあげないと。見たところ、あんたたちは太陽に文句を言うことしかできないみたいだし。まだ暑いって泣き言言ってるの?」
高木蓮:(笑いながら、あかりの肩を軽く叩く)「おいおい! これは生存競争なんだぜ。でも確かにな、あかりちゃんが来るとこの墓場みたいな教室も少しは明るくなるわ」
清水海斗:(その光景をいつもの冷静さで観察する)「興味深い。あかりさんには白の全身にあるそれよりも、指一本分に強い決断力が宿っているようだ。時々、本当に血がつながっているのか疑いたくなる」
粕美白:(咳払いをし、窓の外に目を逸らして笑い声を無視しようとする)「海斗、黙れよ!……ありがとう、あかり。こいつらの馬鹿がうつる前に早く帰りなよ」
(あかりが言い返す前に、担任の先生が教室に入り、静粛を求めた)
先生:「皆、注目! 今年の夏祭りはクラス対抗の公式コンテストを行うことに決定した。最も優れた出し物と雰囲気を作ったクラスには、副賞としてテーマパークへのペアチケット付旅行が贈られる! ただし、2-Aの級長がすでに秘策を練っているという情報もある。賞品を明け渡すなよ」
高木蓮:(瞳に鋭い光が宿る)「ほう……テーマパーク、それに2-Aに勝つか。話が変わってきたな。よし、やってやろうぜ」
市ヶ谷直美:(決意を込めて頷く)「一度だけあんたに同意するわ。絶対に勝つわよ」
(放課後、白が昇降口へ向かっていると、靴箱の近くで華に出会った。彼女はそわそわした様子で、白に気づくまで自分の靴を見つめていた)
白崎華:(リュックのストラップを強く握りしめ、恥ずかしそうに白を見上げる)「白くん……あの、もし……もし時間があったら……。お祭り、一緒に回らない?」
粕美白:(心臓が跳ね上がるのを感じるが、姿勢を正して誠実な笑みを向ける)「喜んで。もしよければ……最初から最後まで、打ち上げ花火も一緒に見よう」
(華はあふれんばかりの喜びを隠しきれず、顔を両手で覆い、キラキラした瞳で深く頷くと、校門へと走り去っていった)
(廊下の角からは、全く忍ぶ気のない四つの影が覗いていた)
高木蓮:(口をあんぐりと開け、頭を抱える)「マジかよ!? あいつの方から誘ったのか!? 白の野郎、伝説級のラッキーマンだな!」
市ヶ谷直美:(拳を握りしめ、興奮を抑えながら)「もう誘ったの!? 華ならやると思ってたけど、あんなにストレートだなんて……。やったわね!」
清水海斗:(腕を組み、冷徹な表情でその光景を見る)「時間の問題だったな。白の主体性のなさが、白崎さんに状況をコントロールさせる決断をさせたに過ぎない。ようやく起きたか」
森田大輝:(廊下で呆然と立ち尽くす友人を見守りながら、悠然と微笑む)「さてと……今年の夏は、思っていたよりずっと面白くなりそうだね」
粕美白:(背後から聞こえる友人たちの声を無視しようと頬をかき、安堵の混じった溜息をつく。誰もいなくなった廊下を見つめながら――)「……何でだろう。今年の夏は、今までとは全然違うものになる。そんな予感がするんだ」
作者の言葉:
第三アークへようこそ!
最初からエンジン全開です。クラス対抗戦(2-Aとの全面戦争!)、あかりの再登場、そしてグループを震撼させたあの一言……。
読んでいただきありがとうございます!




