第17章:夏を告げる鼓動
(屋上は、かつて笑い声に満ちていた場所だったが、最近では静かな戦場のようになっていた。午後の太陽が沈み始め、空を濃いオレンジ色に染め上げていく。胸を締め付けていた圧迫感はもうない。空気はようやく軽さを取り戻していた)
森田大輝:(腕を組んで手すりに寄りかかり、安堵の溜息をつきながら仲間たちを見る)「さてと……これでようやく普通のグループに戻れるのか? それともまだドラマモード継続中? 正直、あの葬式みたいな静けさにはもう飽き飽きしてたんだ。怖くなってくるしな」
高木蓮:(直美を直視するのを避け、項をかきながらうつむく)「黙れよ、大輝……。そんな簡単にリセットボタンを押すみたいにはいかないんだよ」
清水海斗:(眼鏡を直し、皮肉に近い冷静さで蓮を見る)「いや、蓮、大輝に言わせておけ。少なくともあいつには、お前が壁に同化しようとしている間に、僕たちが思っていることを口にする勇気がある」
白崎華:(いつものように場をなだめようと、優しく口を挟む)「みんな、お願い……。大事なのは、私たちが今ここにいることだよ。この数日、色んなことがあったけど、最悪な時期はもう過ぎた。そう思わない?」
粕美白:(グループの空気が日常を取り戻そうと抗っているのを感じながら、静かに頷く)「白崎さんの言う通りだ。起きたことをいつまでも気にしていても仕方ない。でも、何もなかったフリをするのも違うと思うんだ」
(少しずつ、他愛もない会話が戻り始めた。その隙を見て、蓮は静かに地平線を見つめていた少女に歩み寄った)
高木蓮:(隣に立ち、慎重に距離を保ちながら同じ方向を見つめる)「なあ……ナオ。本当は、今日が終わる前に言っておきたいことがあったんだ。状況が悪くなった時、お前を疑ったのは俺だ。……自分が最低な奴に思えて仕方ないよ」
市ヶ谷直美:(ゆっくりと首を回し、怒りの消えた穏やかな瞳で彼を見つめる)「……分かってるわ、蓮。無理に説明しなくてもいい。あの日のあなたの顔を見て、何を考えてるかくらい分かってたから」
高木蓮:(喉の奥に塊を感じ、ポケットの中で拳を握りしめる)「それでも……本当にすまなかった。過去の出来事や噂なんかに、お前の本質を曇らされるべきじゃなかったんだ」
市ヶ谷直美:(数年分も若返ったような、小さくも誠実な微笑みを浮かべる)「もう気にしないで。二人とも混乱してたんだから、仕方のないことよ。ただ……これからは、もう二度と私たちのことを疑わないで。いい?」
(その感情的な決着が、傷口を塞いだようだった。グループの再結成を祝して、大輝が帰りにコンビニへ寄ることを提案した)
森田大輝:(アイスを片手に歩く仲間たちの横で、のんびりと手をポケットに突っ込む)「おい、あの空を見てみろよ……安いアニメの背景みたいだぜ。俺たちの『暗黒時代』の終焉を記念して、写真を撮ろうぜ! 蓮がまた変に熱くなりだす前にな!」
清水海斗:(エレガントにアイスの袋を開けながら溜息をつく)「普段なら時間の無駄だと言うところだが、この二人の慢性的な愚かさを生き延びた記念だ。歴史的記録を残しておくのも悪くないだろう」
白崎華:(夕日の反射で瞳を輝かせながら、笑って皆に駆け寄る)「素敵なアイデア! 白くん、こっち! 真ん中に来て!」
(全員で集まって写真を撮る。大輝のスマホの画面に映る自分たちの顔を見て、白はグループが本当に元に戻ったのだと実感した)
(翌朝、担任が2-Bの教室に入り、全員が待ち望んでいた行事を告げた)
先生:「皆、注目! 二週間後に星空高校の夏祭りを開催する。合同イベントになるから、クリエイティブな提案を期待してるぞ。俺に余計な仕事を増やすなよ」
森田大輝:(椅子にふんぞり返り、リラックスしながらも興味深げに目を輝かせる)「ほう、噂の夏祭りか……。浴衣に屋台の食べ物、運が良ければ花火の下で『恋の奇跡』が起きるかもな。今年の夏は面白くなりそうだぜ」
清水海斗:(ノートから目を離さずに)「この祭りで確実なのは、大輝、お前が映画の主役気取りで大失敗することだけだ。人混みで迷子にならないように気をつけるんだな」
粕美白:(廊下を通りかかる華が、雪菜と楽しげにニュースについて話しているのを見ながら、小さく笑う)「みんな、気合が入ってるみたいだな……。これは賑やかになりそうだ」
(放課後、白は校門の近くで華に追いついた)
白崎華:(足を止め、感謝に満ちた表情で白を見つめる)「白くん……。本当に、色々とありがとう。全部が壊れてしまいそうだった時、離れないでいてくれたのはあなただけだった。どうすればいいか分からなかった私を支えてくれて、ありがとう」
粕美白:(心臓が激しく脈打つのを感じるが、決意を込めて彼女の目を見つめる)「礼なんていらないよ、白崎さん。僕は……何があっても、ずっと君の味方だから。どんな困難が来ても、君の隣から動くつもりはないよ」
白崎華:(その言葉の重みを受け止めるように数秒間沈黙し、頬に微かな朱を差す。最後には、弾けるような笑顔で頷いた)「……っ、うん!」
粕美白:(校門に立ち尽くし、一番星が輝き始めた空の下、遠ざかっていく彼女の背中を見送る。照れくさそうに頬をかき、静かに溜息を漏らす)「……何でだろう。今年の夏は、今までとは全然違うものになる。そんな予感がするんだ」
第17章 完結
作者からのお願い:
皆さま、こんにちは!
この第十七章をもって、正式に『君の心の鼓動』の第二アークを完結させていただきます。
グループに平和が戻りましたが、夏の熱気は新しい感情と、すべてを変えてしまうお祭りを連れてきます。
いつも変わらぬ応援とご愛読、本当にありがとうございます!
第3アーク:『決して忘れられない夏』




