第21話 湖畔のピクニック
~おいしい空気と、ちょっとしたご馳走~
昼前。
湖のほとりに出た私は、思わず立ち止まった。
「……わぁ」
水面は鏡のようにきらめき、空と雲をそのまま映している。
遠くでは白い鳥が羽ばたき、岸辺では子どもたちが石を投げて水切り遊び。
風が吹けば、水の香りと草の匂いがふわっと混ざって鼻をくすぐる。
「これは……お昼ごはんをここで食べろっていうサインだよね」
誰に言うでもなくつぶやいて、私は湖畔に腰を下ろした。
万能道具箱をそっと開け、今日のメニューを物色。
ふかふかのパンに、昨日の村で買ったチーズとハム。
それから、甘いベリーをたっぷり。
「……うん、ピクニックにふさわしいラインナップ」
簡単にサンドイッチを作って、ぱくり。
口いっぱいに広がる塩気と酸味に、自然と笑みがこぼれた。
「しあわせ……」
そのとき、背後から小さな声が。
「あの……」
振り返ると、湖の近くで釣りをしていた少年が、困った顔で魚籠を抱えていた。
「糸が絡まっちゃって……」
見ると、釣り糸がぐちゃぐちゃに結ばれている。
私は思わず苦笑した。
「これは……完全にパズルゲームだね」
手慣れた社内調整スキル(?)を発揮して、指先で器用に結び目をほどいていく。
少年は目を輝かせて「すごい!」と拍手。
「いえいえ、これは会社で鍛えられた地味スキルだから……」
言ったところで誰にも通じないんだけど。
「お礼に、これどうぞ!」
少年はそう言って、小さな魚を一匹差し出してくれた。
私はしばし迷ったあと、にっこり受け取る。
「じゃあ、晩ごはんに焼いて食べるね」
パンとチーズのお昼ごはんに、小さな魚の追加。
なんだかちょっと豪華になった気がした。
食後、湖畔に寝転ぶ。
青い空と、流れる雲と、遠くの鳥の声。
「……あぁ、もう一生ここでごろごろしてたい」
本気でそう思ったけれど、旅の足は止まらない。
夕暮れになれば、また歩き出さなくちゃ。
でもその前に――。
「昼寝、しよ」
柔らかな草の上で目を閉じると、風と波の音が子守唄。
のんびり、ゆるゆる、湖畔の午後は静かに過ぎていった。




