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生死の案内人  作者:
第四章 死神VS???
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Chapter7 欲する繋がり


「お、もう上がったのか」


先に風呂を済ませて、ジルベルトが布団を敷き終えたところに遭遇する。

着替えのパジャマではなく、スーツで戻ってきた響哉を見てジルベルトは不思議そうに瞬く。


「あれ、寝ないのか?」

「うん。まだ、もう少しだけ」


短く告げて彼の隣に腰掛けた。

今程、誰かの温もりが恋しいと思った事はない。

けど、ジルベルトはきっと、此方に気を遣って手は出してこないだろう。

だからこっちから歩み寄った。直ぐ触れられる距離に身を落ち着かせると妙に意識してしまう。


そっと控え目に伸ばした片手がジルベルトの指先に触れた。隣の彼は一瞬驚くが、困惑した様子だった。


「響哉。寝ないと明日に響くぞ」

「僕なら平気。だから……」


自身の指先を彼の手の甲に滑らせて、指の間を通り抜ければ離さないように握り締めた。

段々羞恥の方が勝り、指先が熱い。こういう時、恋愛経験が浅いと不利だなと思う。

少しばかり焦りを感じている。結ばれたと言っても、それは想いだけで形にはなっていない。

結婚のような書面はなく、幽霊相手に指輪を贈る事だって出来ない。

故に、不安は常に付き纏う。明確な繋がりが欲しくて彼に強請った。


刹那、視界がぐるりと反転した。背中に柔らかい感触が当たり、天井を視界に収める。

影が差し込み、上から見下ろす金色があった。


「本当にいいんだな?」


囁く声音は低く、真剣な眼差しが注がれる。

頬に手を添えられて、親指が下唇に触れた。緊張で身が強張るが、問い掛ける声に深めに肯きを落とす。

射抜かれるような眸は響哉の返事を聞くなり、眦を和らげた。


「折角、こっちが我慢しようって思ってたのになぁ」

「そうだろうと思ったから、誘ったんだよ」


参ったと頭を搔く様子に笑い掛ける。

すると前傾していたジルベルトが背筋を真っ直ぐにして少し考える素振りを見せた。


「それなら少し準備が必要になるな。それと、一つ問題がある」

「問題?」

「どっちが上をやるか、下をやるかだ」


深刻そうに告げられた言葉に響哉は目を丸くした。

上? 下? と小難しそうに眉を顰めていると、眼前のジルベルトが肩を竦める。


「要はどっちが女役をやるかって事だ」


分かり易く、明瞭に告げた。女役と聞いて先程の意味を漸く理解する。

確かに、何方がっていう決まりはなかった。其処まで考えてすらいなかった。

然し、恋愛の行き着く先は此処で間違いない。いきなりの難題が降り掛かってきた。


「初めてだし、響哉のやりたい方を選んでいいぜ」


そう言って選択権を此方に渡してくれた。


「僕は……」


出来る限り、痛いのは避けたい。基本的に男なら上を選ぶものだ。

でも、同性同士だと何をどうしていいのかわからない。無知によって彼を傷付けてしまうのではないかと懸念も生まれる。

悩んだ末に、彼の耳元へ顔を近付けた。


「    」


か細く紡がれた言葉に瞠目したジルベルトは、直ぐに口端を持ち上げる。


「……了解」


短く返事を零して、ジルベルトは自分の外套を脱ぎ捨てた。

白いタートルネックが露になり、先程よりも身体のラインがはっきりとわかる。

改めて眺めると、ジルベルトは綺麗だった。日本人とは違い、灰色に近い銀の髪は何処と無く儚げな印象を受け、肌も白い。

格好良いというよりは、美人だと思う。鼓動が速くなる一方で身体が硬直していると、目前の彼は笑みを深めた。


「そんなに見つめられると落ち着かないんだが」

「ご、ごめん……!」


慌てて目線を逸らした。気恥ずかしさで顔が熱い。


「響哉」


低く、名前を呼ばれるとゾクリと身体が震える。耳元に掛かる息が擽ったい。

窓から差し込む月明かりに照らされて、壁に映り込んだ影がゆっくりと重なる。


「きょうや、愛してる」


響哉の身体を抱き締めて、死神が囁いた。

交わる吐息と布擦れの音を聞きながら、緊張で強張っていた身体の力を少しずつ抜いていく。

目の前の金色に吸い込まれそうで、視線を外す事が出来なかった。



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