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25.異世界で、大捜査編開幕しまーす①

甘野芣婭 (17歳)


バフォさんから出された試験内容、いきなりハード過ぎでは?


ケロちゃんとベロちゃんが今にも怒鳴り散らかしそうな雰囲気を出してるけど、芣婭の視線を感じた2人は嫌々口を閉じる。


「まさか、1人で行かせると思ってる?俺もそこまで非道な悪魔じゃないさ。王子様達とに守ってもらいながらだよ?」


「ギルベルト君達と一緒に?」


「王子様も一緒に捜査してきてよ。それに、最初に俺の紋章を取っておいた方がいいよ?」


「順番があるんだ?」


「悪魔の中にも序列があるからね、上位の悪魔の紋章は先にあった方が良い」


じょ、序列?


なんか、難しい単語が出てきたけど、とにかく順番があるって感じなのかな?


確かにそう言われてみれば、バフォさんって強そうだもんねぇ。


イケメンだし、それは関係ないか。


「しかし、芣婭様をあそこに連れて行くのは…。治安も悪いですし」


コンラットの事名を聞いて、ん?っと引っ掛かる部分があった。


芣婭様?いつもは芣婭って、呼び捨てにくせに急に様呼びになってるし。


「行くもん、芣婭は」


「芣婭様、あそこは思った以上に酷い場所ですよ?警備兵もいない、無法地帯です」


「大丈夫だって」


「いや、大丈夫ではありません!」


「お、おお?」


予想外にコンラットが強気に言ってきたので、芣婭は驚いているとヒューズ達も同じようだった。


おこではなさそうだけど、心配してくれてるのが分かる。


「良いですか、芣婭様。闇市場(ブラックマーケト)は、本当に酷い場所です。奴隷になった人達が、どんな扱いを受けているのかを直接見る事になります」


「ギルベルト君達はさ、奴隷達の事を助けてきたんだよね?今も、辛い思いをしている人達もいるしさ?ゼパ君の大切な人も、早く助けてあげたいし」


「ですが…」


「コンラット、いっちばん大事な事忘れてるし」


芣婭の言葉を聞いたコンラットは、目が点になって不思議そうな表情を浮かべる。


その顔を見てると、やっぱり大事な事を忘れてるのが分かった。


「大事な事って、何ですか?芣婭様」


「ギルベルト君もコンラット達もいて、みんな芣婭の事を大切に思ってくれてるよね?あれ、違う?」


「大切に思っているが…」


渋ってるコンラットを見てるとなんか面白い。


5秒の間に眉間に皺を寄せたり、考え込んだり、溜息を吐いたりしてるから笑ったりしたら悪いよね。


「芣婭、一緒に行くのは前提で話を進めると、変装して闇市場(ブラックマーケット)に潜入する事になる」


「変装!警察ドラマみたいな事するんだね!なんか、楽しくなってきたな」


「この流れって、本当に芣婭ちゃんも連れて行く感じ?」


ギルベルト君と芣婭の会話を聞いていたヒューズが、ギルベルト君に尋ねる。


「この数分で、ゼパが芣婭に懐いてる。今まで保護した子供達は、俺達に気を許すのに時間が掛かっていた。精神的ケアをしてくれる存在は必要だろ。それに、潜入行く時は闇市場(ブラックマーケット)を叩き潰す時だ。少しでも早く、奴隷達を解放してやらないとだろ」


「ギルベルト君、カッコイイ!きゅん♡」


「そうか?」


「うんっ♡」


芣婭とギルベルト君の周りに小さなハートが飛び散ってるのか、芣婭達の事見ていたローさんは気まずそうな顔をして咳き込む。


「ゴホンッ、分かりました。すぐにファントムウルフに連絡鳥を送ります」


「え!?ギルベルト様っ、あそこには沢山の人達がいますよっ?ちゃ、ちゃんと数えてないですけど、400人くらいはいますっ」


「今回は少ないですね、いつもは1000人超えててるのに。この間、俺達が摘発したのが堪えたんでしょうね」


「え、え?」


「ゼパ、ギルベルト様の所に逃げ込んだのは正解だ。さて、俺は一足先に出ますね?連絡鳥を出してきます」


ローさんはそう言って、セパ君の頭を撫でてから医務室を出て行く。


コンラットはヒューズ達に何か難しい話をしてるし、今は芣婭が話に入らない方が良さそうだね。


「芣婭、行く前に夫妻に話を通さないといけない。すぐに家に行こう」


「え!?ママとパパに?」


「俺の仕事に同行する事になる以上、夫妻の耳に入れておかないといかないだろう?お前は俺の大事で好きな女だから」


「大事で好きな女…?あー、これはヤバイ」


ギルベルト君は表情を変えずに、サラッと愛情表現をしてくれるから、こっちまで恥ずかしくなってきちゃう。


顔が赤くなってくるのが分かるし、言ってくれる事に慣れてない。


チラッとギルベルト君の事を盗み見してみると、ガッツリ芣婭の方を見てて驚いてしまった。


「み、見てたの!?ちょっ、今見るのはだめ!」


「何で?」


「何でって、今顔が赤いしっ、恥ずかしいからっ!!!」


「芣婭でも恥ずかしがったりするんだな?」


「照れたりするよーっ、こーゆうの慣れてないってゆうか…、言われ慣れてないと言いますか…」


両手で赤くなった頬を押さえながら話すと、ギルベルト君はものすっごく嬉しそうな顔をしている。


余裕そうな反応を見て、ムッとしているとギルベルト君の表情が更に緩んでいく。


バサバサッ!!!


その様子を見ていたヒューズとニックの2人は、目と口を大きく開けたまま書類を床に落とす。


「い、いいい、今のここにいるのはギルベルト様なのか!?」


「ひえぇぇっ!!!やっべぇ、ギルベルト様って女の子に甘いタイプだったかぁ」


「いやいや!!!そんな訳ないだろ、ニックス!今までだって、ギルベルト様に言い寄って来てた綺麗な女の人達を、冷たくあしらって来てたじゃん!あの顔をするのは、芣婭ちゃんだけだって」


「マジで、恋の力って恐ろしいな」


「聞こえてるぞ、2人共。捜査に行く前に、1回死んどくか」


ヒューズとニックの小声の会話が聞こえていたらしく、ギルベルト君は腰に下げていた剣を軽く持ち上げた。


カチャッ。


「ひぃ⁉1回も死にたくないんですけど!?真面目に仕事しますから!」


「だったら、最初からそうしろ」


「わ、分かりましたよぉ」


「お姫様、ケルベロスに言い聞かせておいてくれないかな?」


ギルベルト君とヒューズの会話に聞き耳を立てていた時、バフォさんが芣婭に声をかけてくる。


「言い聞かせる?ケロちゃんとベロちゃんに?何を?」


「人間と取引している悪魔をさ、無傷じゃなくても良いが、生きた状態で俺の前に持って来てほしい。ケルベロスを言い聞かせられるのは、お姫様しかいないだろう?」


「そゆこと?ケロちゃん、ベロちゃん、殺しちゃだめだよ」


「芣婭に言われるのは良いですけど、バフォメットが言った後に言われると腹が立ちますね」


ケロちゃんはそう言いながら、バフォさんに視線を向けるが本人は全く気にしてない様子だ。


「俺達はこれで失礼するよ、お姫様に試験の事を話したしね。王子様の事も一目見ておきたっかたし、来ただけでも収穫はあったかな」


「ボス、魔法陣の用意が出来ました」


「御苦労、俺達はこれで失礼するよ」


バフォさんはそう言うと、メルさんと一緒に魔法陣の中に入って魔界に帰って行った。


医務室にいなかったシーちゃんが、小走りで部屋の中に戻ってくる姿が見え、芣婭とギルベルト君に視線を向ける。


「芣婭様、ギルベルト様、馬車の御用意が出来ました」


「医務室にいないと思ったら馬車を呼んできてくれたんだ!ありがとー、シーちゃん!」


「とんでもございません、芣婭様。ゼパはどういたしましょうか、このままミラ達にまかせ…」


「えっ、おねえちゃんと離れるのは嫌だよ…」


シーちゃんの言葉を聞いたゼパ君は、力強く芣婭の体に抱き付くと、ギルベルト君とコンラット、ケロちゃんとベロちゃんの4人が険しい顔付きに変わっていく。


まさか、4人が鬼みたいに怖い顔するとは思ってもなかったし、ゼパ君本人も思ってもないんだろうなぁ。


この顔を見たら、ゼパ君じゃなくても子供は泣き出しちゃうよ。


ベロちゃんは怒りをなんとか抑えながら、こめかみをピクピクさせながら口を開く。


「おい、ガキ…、優しい言い方のうちに芣婭から離れろ…。俺もガキ相手に怒りたくないからな…」


「お、お姉ちゃん一緒にいますっ。お姉ちゃんは、僕の事を叩いたりしないし、優しくしてくれるから」


「ギルベルト君、ゼパ君の事さ?連れて帰っていいかな?今日は色々あったし」


「お前が良いなら、用意が出来るまで側に居てやってくれ」


ギルベルト君もゼパ君の事を気にかけてるようで、芣婭のお願いを聞いてくれた。


「夫妻の所に話をつけに行ってくる」


「では、私も同行させて頂きます」


「レヴァリオ、お前はコンラット達と共に準備を進めろ。俺の護衛も必要ない、話が済み次第戻ってくる」


「…、かしこまりました」


レヴァさんの申し出を断ったギルベルト君は椅子から腰を上げ、芣婭の膝の上に座っているセパ君の事を抱き上げて下ろす。


スッと芣婭に大きな手を差し出し、手を重ねると椅子から立ち上がらせてくれる。


「少し留守にする、コンラット後の事は頼む」


「分かりました、ギルベルト様」


「私は先に出て、馬車を入り口まで運ばせてきます」


シーちゃんは芣婭とギルベルト君に向かって頭を下げ

てから、医務室を後にし待機している馬車の元に向かって行く。


ケロちゃんが一瞬だけ芣婭に視線を向けると、ゼパ君の手を引いて一足先に廊下に出て行っていまい、ベロちゃんが溜息を吐きながら2人の後を追う。


「アイツ、俺に気を使ったつもりか?」


「ん?」


「いや、こっちの話だ。芣婭ちょっと」


「?」


ギルベルト君に手を引かれるまま医務室を出て、廊下を右に曲がった瞬間、ギルベルト君に抱き締められる。


丁度、廊下に縦に積まれた木箱が物陰になり、芣婭達の姿は周りから見えない状態だ。


「わっ、ギルベルト君?どしたの?」


「はぁ、俺は思ったより器が小さいらしい」


「え?どこが?」


「ゼパが芣婭の膝に座ったり、抱きついたりしてたから…、その、芣婭は俺のモノなのに」


キューンッと胸が締め付けられる。


ヒューズ達には厳しいギルベルト君が、ちっちゃい子供にヤキモチ妬いてるなんて誰も思ってないんだろうなぁ。


ギューッとギルベルト君の体に抱き付くと、ギルベルト君も力強く抱き締め返してくれた。


「嬉しい!ヤキモチ妬いてくれて!」


「あんまり、言いたくないがな」


「もっと言ってほしいし、芣婭だってさ?こーやって、らぶらぶしたかったもんっ」


芣婭の言葉を聞いたギルベルト君は、芣婭の顎を指で軽く上げられ、キスされるんだって分かる。


ギルベルト君の顔がゆっくり近付きチュッと唇が触れ、思わず芣婭の方からもう1回キスをしてしまった。


「あー、幸せ!ふふっ」


「幸せ?」


「だって、ギルベルト君が芣婭の事を好きなんだなって分かるもん。みんなの前でも、好きな女って言ってくれたし。芣婭、すっごく嬉しかったんだよ?」


「もっと芣婭の事を幸せにする、これ以上にな」


ギルベルト君はそう言って、もう1回キスをすると廊下からゼパ君の声が聞こえてくる。


「おねぇちゃん、どこにいるのー?」


「はぁ…、行こう。ゼパが探してる」


「あ、待って」


ゼパ君に呼ばれて木箱の物陰から出ようとしたギルベルト君を呼び止め、つま先立ちになってギルベルト君の頬にキスをした。


チュッと唇が触れた音が聞こえ、恥ずかしくなる。


「ふふっ、恥ずかしいね?けど、したかったから!してよかった!」


「はぁ…、俺の気も知らないで…」


「え?」


「いや、何でも。行こう、芣婭」


「はーい!」


芣婭の返事を聞いたギルベルト君は手を繋ぎ直して、ゼパ君の元に向かった。


***


それから2日後、闇市場(ブラックマーケット)への準備は完了し、芣婭は潜入する為の変装をしていた。


夕方にドレスルームで、ママのお店で作られていたフリルがふんだんに付いたシャツを着て、首元にはネイビー色のリボンが巻かれる。


ベージュ色のスーツのズボンを穿いて、ジャケットは腕を通さずに肩に掛け、リボンと同じ色のショートのウィッグを被らされ、前髪を整えられた。


「おお、男の子みたいになった!」


「お似合いですよ、芣婭様。どこから見ても、貴族の青年ですね」


「ちゃんと男の子に見える?男装なんて初めてしたから、女の子を感を隠せてる?」


「はい、青年に見えますよ」


シーちゃんはそう言って、芣婭の事を微笑ましそうに視線を向ける。


「芣婭が来てから、服のレパートリーが増えて楽しいわぁ。ちょっと、シュバルト。いつまで暗い顔をしているの?貴方も同行するんだから、変装しないとダメでしょ?」


ママはウィッグの髪を整えながら、椅子に渋っているパパに声をかけた。


ギルベルト君から話を聞いたパパは、驚きのあまりソファーから転げ落ち、自分も一緒に行く事で闇市場(ブラックマーケット)への潜入の許可が下りたんだけど…

。

ゼパ君の事も何も文句を言わずに受け入れてくれて、マジ感謝しかないね。


「ごめんね?パパ、迷惑かけちゃってるよね?」


芣婭の言葉を聞いたパパは、物凄い勢いで弁解してきた。


「そ、そんな事は良いんだよ!僕は、芣婭が危険な目に遭わないかと心配しているだけなんだ。ギルベルト様達も一緒なら、万が一の事はないと思うけど」


「フォンクライス卿達もケロちゃんもベロちゃん、シエサもいるじゃないの。貴方、これだけの騎士がいるのよ?そこまで不安になる事はないわよ」


「た、確かにそうだが…」


「大丈夫よ!それに、17歳ってあっという間に過ぎるの。若いうちに色々と経験しておいても損はないわ。素敵なレディーになるにはね?」


「まだ早いんじゃないか?芣婭には」


ママとパパが軽い言い合いをしていると、ドレスルームの扉がノックされ、廊下からグロおじの声が聞こえてくる。


「旦那様、奥様、大公子様と黒騎士団(ブラックナイト)の騎士の方々がお越しになられました。それと、ケルベロス様とゼパ様も用意が出来たとの事で」


「まぁ、どうしましょう‼まだ、シュバルトの準備が出来ていないわっ」


「ママ、芣婭の準備はもう完了した感じ?」


「え?えぇ、直す所はないけど」


「じゃあ、芣婭がお迎えしてくるよっ。ママはパパの準備してて!シーちゃん、行こ」


芣婭は先にドレスルームから出る為に廊下に出ると、赤ちゃん狼の姿をしたケロちゃんとベロちゃん、ゼパ君の姿が視界に入った。


な、なんて可愛いの!!!


「3人共、めっちゃ可愛いー♡えー、赤ちゃん狼かわゆい♡」


「おねえちゃんもすっごく可愛いよ!」


「今日は可愛いじゃないの、カッコイイだよ。あー♡3人共、抱っこさせてー!!!」


そう言って、3人に向かって手を広げると真っ先に飛び込んできたのは、ケロちゃんとベロちゃんだった。


少し遅れたゼパ君は、ケロちゃんとベロちゃんの事を見て、その場で回って落ち着かないでいる。


2人を片手で抱っこして、空いてる手でゼパ君に手招きすると、尻尾をブンブン振って飛び込んできた。


「よくお似合いですよ、お嬢様」


「ママのセンスが輝いてるよねぇ。今日は芣婭がお迎えするよ」


「かしこまりました。では、行きましょうか」


「はーい!」


グロおじと一緒に階段を降りていると、思いっきりライトアップされてるみたいに、キラキラしてる男の軍団が視界が入ってくる。


ギルベルト君は長い前髪を後ろに流し、チェーンがついた丸眼鏡をかけてて、なおかつ執事服を着こなしているじゃないか!?


おいおいおいおい、ギルベルト隊長!?


貴方、眼鏡もオールバックも執事服も似合うなんて聞いてないんですけど!?


それに、コンラットとレヴァさんも執事姿が様になってるしっ。


「芣婭、男装もよく似合っている。何を着ても可愛いな」


「あ、ありがとっ。え、え?ギルベルト君なんだよね?う、後ろにいるのはコンラットとレヴァさんだよね?」


「あぁ、俺の後ろにいるのは、コンラットとレヴァリオだが?」

「アイツ等の中で、執事服が似合いそうだったのが俺達だったんです」


芣婭の質問をギルベルト君の代わりに、コンラットが答えるが引っ掛かる部分がある。


なんで、敬語を使うんだろ?


執事の演技をしてるとしたら、まだ早くない?


この間もさ、芣婭の事を呼び捨てにしてたのにさ、いきなり様をつけて呼んだりしちゃってさ‼


「やい、コンラット!」


「ん?どうかしましたか?芣婭様」


「この間からさ、他人みたいな態度をするのは何でなんだ!いつもは呼び捨てなのによ!」


「えっ、え?」


「なんか、キャラ変わってるから嫌い」


芣婭がそう言うと、コンラットの顔から血の気が引い

て行くのが見て分かり、分かりやすく慌てて弁解を始めた。


「き、嫌い?ち、違うよっ。ギルベルト様と交際を始めたと聞いたから、前みたいな態度で接するのは良くないと思ってっ」


「コンラットは、こっちの世界でのお兄ちゃんみたいに思ってたんだけどなぁ。ギルベルト君と付き合いだしたけど、芣婭とコンラットの関係は変わらないでそ?」


「悪かった、芣婭。だから、嫌いとか言うなよ?」


「ギルベルト君、コンラットは呼び捨てするのを許してくれないかな?も、勿論、1番大好きなのはギルベルト君だよ!浮気じゃないよっ、これはっ」


コンラットと会話をしているうちに、ハッと我に帰ってギルベルト君に説明する。


そう、芣婭が大好きなのは男の人はギルベルト君だけなんだから。


「分かってる、1ミリも疑ったりしてない。コンラット、今まで通りの接し方に戻せ。俺のお姫様の要望だからな」


「わかりました、ギルベルト様」


ギルベルト君がは嫌な顔をせずに、芣婭のお願いを聞いてくれた。


わがままを言っても許してくれるのも、甘えさせてくれるのもギルベルト君だけだな。


「レヴァさんも執事服、すっごく似合ってる!背が高いし、スラッとしてるからカッコイイ!」


「あ、ありがとうございます。そう言って頂けて、とても光栄ですね」


「ちょっと、そのまま動かいないでねー」


「えっ?」


肩に糸くずがついているのが見え、背伸びをして取ってあげると、レヴァさんの顔が真っ赤になっていた。


あっ、そうだった!


「ご、ごご、ごめんっ!レヴァさん、女の子の事苦手だったのにっ。いきなり近付いたら、嫌だったよね?こういうのけーそつな態度って言うんだっけ?」


「芣婭様なら大丈夫です!ほ、他の女性は苦手ですがっ、そのっ、芣婭様は他の女性とは違いますから」


「変わってるよね?そっか、そっか!」


「あらぁ!ギルベルト様達の変装も素敵!シュバルトの準備が終わりましたよー」


レヴァさんと話していると、ママが着せ替えが終わったパパを連れて階段を降りて来ていた。


いつもの穏やかで優しいパパの雰囲気と違って、芣婭達の前に現れたパパはちょい悪な男の人で、ママの技術の高さが伺える。


「パパ、カッコイイじゃん!そういうのも似合うね!」


「ありがとう、さてっと潜入するにあたっての確認をしておきましょうか?ギルベルト様」


「そうですね、公爵。芣婭にも分かり易いように話しを進めて行きましょう」


ギルベルト君はそう言って、パパから芣婭に視線を向き変えた。


「いよいよ、大捜査に入る訳ですな?ギルベルト君」


「あぁ、闇市場(ブラックマーケット)内に潜入す

るのは、ここにいるメンバーだけだ。ヒューズ達は既に、闇市場(ブラックマーケット)周辺に待機している」


「こういう展開って、ギルベルト君が合図したら突撃出来るようにしてる感じ?」


「お、鋭いな芣婭。少人数での潜入の方が目立ちにくいってのもある。奴隷達をすぐに救出して、ファントムウルフに送り届けたいしな」


芣婭とギルベルト君の会話を聞いていたコンラットが話に入ってくる。


「それに、この任務の鍵は芣婭の演技力にかかってるしなぁ?責任重大だぞ?」


「演技力?」


「芣婭は貴族の息子として、奴隷を買いに来たって設定だからなぁ。ちゃんと出来るか、心配だなぁ」


「あ、それで3人共、執事服着てきたんだね!大丈夫、大丈夫!偉そうな態度をしてればいいんだよね?任せて!悪役息子を完璧にやり遂げるし!」


「大丈夫か…?」


コンラットと話していると馬の鳴き声が聞こえ、玄関に視線を向けるとグロおじが扉を開けているのが見えた。


「旦那様、馬車の御用意が出来ました」


「ありがとう。芣婭、闇市場(ブラックマーケット)に着いたら、僕達の側を離れたらいけないよ?分かったかな?」


「了解!」


「心配だなぁ…」


「よーし、大捜査しちゃうよ!」


頭を抱えているパパの背中を力強く押して、ギルベルト君達と用意された馬車に乗り込んだ。

 


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