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狂神が嗤う  作者: 限破
狂神転生編 第二章 神敵顕在
37/47

037.閑話 『気高き白ならぬ灰色の少女』

伏線回? もしくは説明回とも言うかもしれない。

 ちゅんちゅん、と。

 窓の外から聞こえる小鳥の鳴き声に、彼女はようやく朝がやってきたのだと理解した。


「う~ん、よく眠れましたー!」


 大きく腕を上げ、上体を伸ばす。

 やっぱり、寝起きに行うこの気持ちよさが堪らない。


「ふぅ……よしっ、と」


 これでバッチリ目が覚めた。

 ベッドから降りて、彼女は窓のカーテンをサーっと開く。


「今日もいい天気ですね~」


 ベッドの皴を伸ばし、布団もしっかりと畳み込む。

 顔を洗い、歯も磨き……そうして服も寝間着からメイド服へと着替えた彼女は、鏡の前に立って最終確認をする。

 髪型は勿論、見た目の良さから変なところがないかの確認まで、一切の手を抜くことなくしっかりと行う。

 彼女の真剣な眼差しが、鏡の中から彼女自身をじっと見つめ返す……。


「うーん……うんっ、大丈夫! 今日もバッチリと決まっていますね!」


 問題がなければ、朝の最終確認はこれで終了。

 今回は何の問題もなかったので、後はこのままお仕事に向かうだけであろう。

 なので最後にくるりと回り、決めポーズ!

 鏡の中の私は今日もキチンと可愛くて何よりです、と彼女は自画自賛をする。


「ではっ、今日も張り切ってお仕事に行って参りましょう!」


 気合は十分!

 えい、えい、おーっ! と一人で腕を振っては溜まった分の気合を示すと、彼女は今日も仕事場へと向かうため早足に部屋を出るのであった。


 彼女の名前は、第四世代型神性人造人間(アンドロイド=デウス)1366号エーデルワイス‐typeグレー。

 通称、エーデル。

 これは、アンリミット超神帝国の帝王に仕える彼女の、アンリミット超神帝国城の一人のメイドの一日を綴った物語である。




 ――午前――



 いきなりだが、アンリミット超神帝国城のメイドは基本的に暇だ。


「ふんふふーん……って、あああぁぁーっ!」


 ――ガシャーンッ……!


 そもそもアンリミット超神帝国城には、彼女――エーデルを除き、他にも数千万という膨大な数のメイドが務めているため、仕事はほとんどないに等しい。


「――こらっ、エーデル!」

「あわわわわっ。せ、せんぱぁい……」


 そのため、偶に仕事があったとしても、エーデルの場合、そのほとんどは先輩メイドであるプリムラに取られてしまう。


「全くもうっ、これで花瓶を割るのは今月で何度目よっ」

「うぅ……ごめんなさぁい」

「はぁ。ここからは私がやっておくから、そうね……あなたは廊下に埃が落ちてないか見てなさい。でも、いいこと? 見るだけよ。埃が落ちていたとしても、あなただけじゃあ何をするか分からないから絶対に拾っちゃダメだからね?」

「……ぐすん」


 だが心配することはない。

 プロのメイドである彼女に仕事がないということは、即ちそれだけアンリミット超神帝国城の状態がいいということなのである。

 管理を最高に保たせるのが仕事である彼女たちメイドにとって、これだけ誇りに思えることはないだろう。


「うぅ……埃が一つも落ちてないなんて。綺麗な廊下が、今だけは恨めしいですぅ……ぐすん」


 ともあれエーデルの誇り高き午前の仕事は、こうして終わった。




 ――正午――



 昼は昼ご飯の時間である。


「わーい、おっ昼っごはーん。今~日は大好きなハンバーグつき~」

「あっ、こら! エーデルっ、気をつけて歩かないとまた転ぶわよ!」

「大丈夫ですよ~。いくら私でも、流石に何度もそう簡単に転ぶなんてはずが――――わぷっ」


 ――ズベシャーッ……!


 午後の仕事を全うするためにも、メイドたちは昼ご飯を欠くことは滅多にない。

 何故なら自らのコンディションを常に完璧な状態として維持するには、昼ご飯の摂取は決して欠かせない大切なことだからだ。


「――ほら。だから言ったのに……」

「え……? あ、ああぁぁぁっ……! 私のハンバーグぅ……!」


 けれど時として、ストイック且つ先進的なメイドの中には、自ら進んで昼ご飯を抜く者も少数だがいるにはいる。


「残念だけど……ここ最近は昼も夜もずっとエーデルに分けていたせいで、私も流石に空腹なの。だから今日は分けられないわ。我慢して頂戴」

「ぞ、ぞんなぁぁぁああっ……!」


 彼女たちは言わば、敢えて昼食を抜くことによって自らを限界へと追い込み、止まることなく進歩し続けることを目指している者であろう。


「……見て見て。エーデルったら、また転んでご飯を床にぶち撒けてるわ」

「あら本当。流石のプリムラも、今回は助ける気がないようね」

「えぇ? ということは、エーデルったら昼飯は抜きなの?」

「転ばなくなれば、その内お昼ご飯もちゃんと食べれるようになるわよ」

「果たしてエーデルが転ぶことなくご飯を食べれるようになる日は来るのかしら……」


 仕事に失敗が許されないアンリミット超神帝国城のメイドからしたら、昼食抜きなんてリスキーな行為をする者は否が応でも憧れの眼差しでもって注目してしまう存在であった。


「ぐすん……お腹、ペコペコですぅ……」


 エーデルのストイック且つ先進的な正午は、かくして瞬く間に過ぎていく。




 ――午後――



 実のところ、午後の仕事は一部のメイドたちを除き、大多数にとっては午前よりも仕事が少ない時間だ。


「ねぇ、そういえばエーデル。すっごく今さらの話なんだけど……いいかしら?」

「何ですか~先輩? 私ってば今、廊下に埃が落ちてないかの確認でかなり忙しいんですけど~?」

「……そんなやるだけ無駄なことはどうでもいいから、ちょっと聞きなさい」

「えぇっ!? ヒドイ! これって先輩がやれって言って始めたことですよねぇッ!?」


 何せ城内における大体の仕事は午前中に終わらせてしまっているため、実質的には午前以上にやる事がない。


「いいからっ、聞きなさい! ……コホンっ」

「……先輩がやれって言ったのに……」(ブツブツ)


 そのため、アンリミット超神帝国城のメイドたちは暇を持て余した者同士で集まり、お互いに切磋琢磨し合うべく、相手の弱点を探し出しては指摘し始める。


「ふと思い出したのだけれど……あなた、確か邪悪様に、この上位世界の細かい一般常識をお教えする役だったわよね?」

「……(ブツブツ)……えぇ、そうでしたけど? ……(ブツブツ)……」

「ハァ……ちゃ・ん・と・聞・け!」


 ――ポコンっ……!


「――ふぎゃっ!」


 無論、指摘された側のメイドはマジメにその話を聞き、キチンと改善できるよう真摯に向き合うことを怠らない。


「うぅ~、叩くことないじゃないですかぁ~」

「なら精々マジメに聞いてちょうだい」

「ぐすん……それで……? ジャック様がどうかしたんですか?」

「……そうね。どうもしなければいいんだけど……エーデル。あなた、邪悪(じゃっく)様にちゃんと天格者や天能に関する説明もしたのよね?」

「ぐすん……なんですか、急に。ちゃんとしましたけど? ――ぇ……あれ? しましたよね? ちゃんと……(ブツブツ)」


 泣き言も弱音も吐かず、黙々と己の限界と弱点を見据えて自己研鑽を積む彼女たちこそ、正しくメイドの鏡であろう。


「そう……それならいいのだけれど。でも……それにしては少しペースが遅い気がするのよね」

「……ペ、ペース?」(ドキドキ)

「えぇ。邪悪様ほどの素質なら、すぐに位階内レベルも上限まで達するだろうし……位階を次の『天使(サード)』まで上げるために、そう間を置くこともなくこの城へ来るものだとばかり思っていたから――――って、ん? どうしたの、エーデル。そんなにたくさんの汗をかいて」

「…………てない……」

「はい?」

「……しっ、してないです! そういえばちゃんと説明してなかったことを、今さらになってようやく思い出しましたッ!」

「……。――はぁ?」

「あわわわわっ、どうしましょう! 位階を次の段階(ステージ)へと上げるには、必ずこのお城へ来ないといけないのに、私ったらその説明を全くしてませんでしたぁ!」

「なっ、ばっ……!


 こっ、この――おバカぁぁぁあああっ!」


 完璧なメイドへの道は、かくも果てしなく遠いのだ。

 ともあれ、アンリミット超神帝国城の午後はこうして過ぎていき、やがて夜を迎えて彼女たちの一日も終わりを迎えるのであった。



 エーデルの華麗なるメイド道は、まだまだ続く。

~次話予告~


038.閑話 『邪悪を失った世界』


ジャックが拉致された後の地球の話です。

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