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狂神が嗤う  作者: 限破
狂神転生編 第二章 神敵顕在
19/47

019.神へと至る道〈序〉

長いです。

途中、意味もなく第三者視点となっています。

「な――――ッ!?」


 パリィィィインッ……! と。

 手で触れた瞬間に、なぜか勝手に木端微塵となって砕け散る黒色の石碑(モニュメント)

 それから少し遅れたタイミングで、なぜか雲一つなかったはずの青空にいきなり立ち込め始める黒い雲と、同じくいきなり緑が枯れ始めたせいで急速に荒れ始めてしまっている元・草原の大地。

 そんな、何ともまぁとんでもなく異常で……しかも目まぐるしく変化していく光景に、俺の脳内も思わず驚愕の感情で埋め尽くされてしまう。

 とはいえ――残念ながら俺がそうして素直に驚愕に浸っていられるのも、僅か一瞬の間だけの事だった。


 ――――ぞくッ…………


 その時、突如として全身に悪寒を覚える。

 久しく感じてこなかったが、これは……そう――“危機感”だ。

 どうして今、俺が本能的に命が危険だという信号代わりの“危機感”なんてものを覚えたのかは分からない。

 けれど、とりあえず今回だけは何となくその“危機感”に従って動こいてみようと思った。

 そのため俺は直感による(根拠のない)判断から、咄嗟にフォースを空いた片腕で抱え込み――そのまま自身の立ち位置を横に数十歩分ほど、サッとズラす。

 それは本当に何も考えず、ただ直感により動いてみただけだった。

 しかし、結果的に今回はそんな気紛れな行動が功を為したと言えよう……

 なぜならば、次の瞬間――――



 ――――ヒュボッッッ…………!!!



 短く、されど極限まで凝縮された殺意の塊のようなモノが、唐突に――俺の側面ギリギリのところを突き抜けて行った。

 ……。

 ……何だ、今のは?

 間髪を入れずに暴力的な風が後を追うように吹き荒れ、それによって髪も盛大に乱されるが……そんなことはどうでもいいとばかりに、フォースと共にただただその場で硬直する。

 そして改めて、つい先ほどまで自分たちが立っていた場所に目をやり……俺は密かに冷や汗を垂らした。


(……。……ッ――見えなかった……)


 視線の先には元・草原であった大地の、何かで大きく抉り取られたような跡が地平線の果てにまで続いている。

 一体どれほどの力で攻撃をすればこうなるのか……想像と推測こそできるが、敵の姿が見えぬ以上は容易に断定をすることもできない。つまり、何もかもが情報不足なせいで、俺は現状に対して不安要素しか覚えることができなかった。

 なんせ下手に動いてしまえば、その後どのような事態になってしまうか分からないからだ。

 ……というのも、俺は『第十五兵装:最終究極紳士服ファイナルアルティメットスーツ』を着用しているから平気でいられるだろうが、ずっと傍を離れず一緒にいるフォースは――違う。最低限の……それも無事でいられるかどうかについて、命の保証もできないのである。

 なので流石に今度ばかりは、仲間の身が危険に曝されかけていることもあって俺は焦り出す。


(クソっ! 今の俺の動体視力――素で、亜光速程度の速さなら余裕で見切れてしまう動体視力を以ってしても……まさか何も見えなかっただなんて……!

 おまけに最初から最後まで、この俺にあらゆる殺気や気配を気づかせることなく、大地に傷跡が延々と続くほどの攻撃を放つとは……そんなのはもう、何か特殊な能力でも使わない限りは不可能…………って、――それかッ!)


 ハッとして閃く。

 そうだ。そう考えてみれば、確かに特殊な能力を使用したとしか考えられない。

 だって普通ならば相手がどんな存在であろうと、そしてどんな攻撃であろうとそれが放たれる瞬間には必ず、その前兆というものが現れるはずなのだ。

 なのに、今回は殺気も気配も……何より直前まで“空気を切り裂きつつ、迫って来ていた音”にも、俺は気づくことができなかったのである。

 単純に自分の能力不足、もしくは注意不足だと考えれば……それも仕方がないだろう。

 だが生憎と俺は、決して現在の自分が能力的に劣っているとも、ましてや今までずっと気を抜いていたとも思っていない。それだけは絶対の自信を持って言えることだった。

 そのため、以上の事から普通に考えて……対象である敵は何らかの特殊な能力を使用していると、俺はそう考えたのである。

 ……。

 ただ、そうなると今度は敵が何の特殊能力を使用しているのか、それが問題となってくるのだが……


(……ふむ。そういえば、確か最終階層(ここ)に来る前までの階層で出現した敵の中にも、“存在や気配自体を消す”という特殊能力を持ったモンスターがいたっけ……

 もしかして……最終階層のラスボスだからって理由で今回の敵も、これまで戦ってきたモンスターの特徴や特殊な能力などの全てを引き継いだ存在ってわけじゃあ……ない、よな?)


 ――と、不意に思いついた考えに俺は思わず身震いする。

 瞬時に脳裏を過ぎっていくのは、これまでに自分が戦ってきたモンスターたちの姿……と、その特殊能力の数々。

 ……どうしよう。

 もしその推測が当たっているものだとしたら、――それはもう厄介どころの話じゃない。

 少なくとも、俺とフォースが今まで通りに余裕こいて戦える相手ではない事だけは確かだ。

 それに、こう言ってはなんだが……或いは現在に至るまで無敵を誇ってきたフォースに対し、もしかしたら初めて傷を負わせられるかもしれない存在なのである。……勿論、それは“致命傷”という意味での傷なわけだが。

 ……。


(……あれ? 待てよ……“致命傷”って、フォースにしたら結構マズイ事なんじゃあ……)


 なんせ、実体を持っていない眷属である。

 もしも一度でも全身を散らされてしまえば、果たして完全に修復できるかどうかも怪しい。

 そんな考えが瞬時に脳内を駆け巡り……俺は顔色を青褪めた。

 ヤバイ。これはフォースにも注意し続けてもらわないと。


「……聞いてくれ、フォース。今はまだ敵の詳しい情報も何も分からないし、危険だ。だから――ここは一旦、安全そうな場所まで退いて暫くは様子見に徹し――――ッ!?」


 だが、そうしてフォースに注意を促していた時の事である。

 自身の背後から突然、何かの気配が生じたことに気づく。

 今の今まで、俺は絶えず警戒を続けていたし、何より気を抜いた瞬間も一切ない。

 だからこそ分かる事なのだが……背後にいる存在は文字通り、今に至るまでその存在を感知させることなく、一瞬でその場に現れたのである。

 つまり……


(――これは……もう、決まりだな)


 このタイミングで気配を現す存在の正体なんて――最早、答えは最初から決まっているようなものだ。

 俺は軽く息を吸うと、そのままゆっくり背後へと振り返る。


「――――っ!」


 果たして、そこには――本当に、透明化(・・・)を解除している最中の敵がいた。

 徐々に姿を現わし始める、最終階層の――デクスオーロの試練迷宮『千の凶悪』における最後の敵。

 自然と放たれる威圧もどんどん強くなっていき、それはこれまでに出会ったどのモンスターよりも強烈で……そうして俺は、瞬時に理解する。

 『あぁ、これこそが……目の前にいる存在こそが、この“迷宮”の最後の敵にふさわしき存在――その姿だ』――と。

 そして――――



「「「「「――――グォォォォオオオオオオオオォォンッッ……!!」」」」」



 敵が――軽く咆哮する。

 すると、それだけで周囲一帯どころか最終階層全体の空間が震え、その咆哮による余波は絶大なる暴威となって辺りに容赦なく降りかかっていく。

 勿論、それは俺たちも例外ではなく……俺は即座に顔を伏せて襲い来る衝撃波に耐え、加えて敵の攻撃に対する防御力が極端に低いフォースを自身のスーツの内である側懐へと押し込むことで敵の咆哮による余波をやり過ごした。


 それは――――正しく純粋なる暴力の化身。

 それは――――正しく最強を体現した存在。

 遙か上空の彼方にて百の竜頭(ドラゴンヘッド)(もた)げ、千の巨腕(ドラゴンアーム)を広げるようにして構えながら、更には長大で鞭のように鋭い尻尾(ドラゴンテイル)と黒色の竜鱗(ドラゴンスケイル)をまるで鎧のように全身へ纏わせたそれは――――正しくファンタジー世界において最強種族とも言うべき、巨人とドラゴン……ではなく――その、両方の種族が持つ良いところだけを都合よく融合させ、結果として出来上がった究極生命体じみた存在。

 即ち――――


 ――――“巨竜神”。


 一言でまとめて言うと、そんな何もかもがとんでもなく圧倒的すぎる存在が、ついに最終階層へと降臨したのである!

 ……面白い。実に、面白い!

 久々の強敵に、心が舞い踊った。

 見上げてみれば、戦意やら殺意やらで満ち溢れ、ギラギラと金色に輝く二百もの竜眼が……俺の目をしっかりと見つめ返す。

 そう、戦意やら殺意やらで満ち溢れた瞳で、だ。

 ……。……く、くくくっ、クハハッ!


「……フっ……」(ニヤリ)


 いいだろう!

 俺は、ゆっくりと口元に弧を描くように笑みを浮かべていく。

 これほどまで綺麗に場が整った以上、俺も絶対に退くわけにはいかないからなァ!

 だから――――



「――くくくっ。さぁて……それじゃあ行くぞ、フォースッ! くれぐれも油断するなよ? なんせ今回の敵は物凄く強いからなァッ! クハハハハハハハハハハハハハハハァッ!!」



 ――猛然と、俺はその場から走り出す。

 最早、その充血白眼に映るのは――――天よりも高く、地よりも固い、そんな果てしなき巨体と圧倒的な存在感を誇る敵――――巨竜神の姿のみ!

 刹那――互いの視線を交差させ、それぞれの武器(我喰と千の巨腕)を構えながら、俺たちは嗤い合う。

 ……。

 …………。


 ともあれ、こうして最終階層における最後の戦いは――始まったのだった。




    ◆    ◆    ◆    ◆




 一面に亀裂が走った大地の上を駆け抜けながら、ジャック=キリサキは何やら唐突に覚えた違和感にふと首を傾げた。

 例えるならそれは、胸の奥にあるナニカ(・・・)が必死に彼自身へと何かを訴えかけているような感じ……だろうか。


「……。……?」


 全くもって意味不明である。

 どれだけ考えても、果たしてこれが何の違和感であるのか……ジャックには分からない。

 なので、彼はそれ以上この件について考えることを止めた。


(……そんなことよりも、今は目の前の敵だ)


 そして即座に思考を切り換える。

 ジャックと巨竜神との彼我の距離は、最早残り数秒で接触する程度のものしかない。

 だからこそ、彼はグッと左手に握った巨剣――『我喰』へと更に空いた右手を添え……そうして両手持ちにすることで、これから全力の一撃を問題なく放てるように……敵である巨竜神へと意識を集中し始める。

 ……狙うは、幾つもの数がある頭や腕と違って、たったの二つしかない脚の中の一つ。


(しかも、あれだけの巨体だ。その支えでもある(弱点)を狙うのは、当然の理屈であろう……)


 というわけで……亜音速で巨竜神の足下まで到達したジャックは、しかし走り続けてきた勢いを緩めることもなく、そのまま敵の脚の上を垂直に数十メートルほどまで駆け上っていき――――


 ――――斬ッ……!


 両手に持った『我喰』を全力で……一閃!

 丁度、足首より少しだけ上に当たる部分を、ジャックは四メートル長の巨剣で容赦なく――斬り裂いた!

 間髪入れずに噴き出る大量の紅い血。

 流石はこれまでに戦ってきたほとんどの敵を、たったの一撃で斃し続けてきた技である。

 だが、しかし……


「――ッ!? くそッ、これでもまだ――浅いか!」


 忘れてはいけない。敵は遙か上空に浮かぶ雲よりもなお大きな存在なのだ。

 故に、それと比べたらジャックが与えたダメージなんて微々たるものであり……更に面倒なことに敵は再生の特殊能力まで保持していたのか、大量に噴き出ていたはずの紅い血もすぐに止まってしまい……結局は巨剣で付けた傷痕も同様に、斬りつけた部分から跡形もなく一瞬で消え去ってしまう。

 まさにそれは、敵からしてみれば『ん? 今、何かしたか?』である。

 実際にジャックと相対する巨竜神も、己が斬られた事へ対して特に反応を示すこともなく、むしろ何でもなかったかのように足下の敵を叩き潰そうと、千の巨腕(ドラゴンアーム)をまるで流星群のようにして振り下ろしてきているほど。

 そして更に付け加えると、その千の巨腕から放たれる拳は全部、例外なくジャックの素の最高速度である亜光速をも優に超えており……つまり巨竜神による攻撃は、その全てが亜光速化して動き回っていたジャックを完全に捉えていたのだ!


「くッ……!」


 とりあえず、連続して何度も襲い掛かってくる暴威の全てを紙一重で避け……或いは『我喰』でいなしながら、ジャックは何とか現在の状況を打破しようと再び思考を加速させる。


(――ちッ、まずいな。『我喰』を使った一撃でも大したダメージが与えられないとなると、俺から与えられる有効な攻撃って……ほとんど無いも同然じゃねーか!

 おまけに、何だ? こいつは!? 亜光速化しているはずの俺の動きを完璧に捉えていやがるとか……これじゃあ一つ前の階層でやったような、敵が再生するよりも早く全身を切り刻むという必殺技で仕留めることもできないし……というか敵が俺の動きを捉え続けている以上、ずっと俺が優位の状態で攻撃を続けられるわけでもないし――って……ハハッ。改めて考えてみると、こいつはマジでどうしようもない状況だなぁ、おい。

 まぁ、でも……仕方がない。この状況を打破するためには、もう切り札を切るしかないよなぁ……

 ――俺の禁じ手とも言うべき“切り札”を、な)


 そうして、ジャックの超加速した思考が、ようやく終わった。

 それは、時間にしてみれば一瞬。――だが、それだけで十分だ。なぜならジャックは既に、己の考えをまとめることができている。即ち――――切り札を切る覚悟ができているからだ。

 ならば後は、淡々とそれを実行するだけ。

 故に、彼は未だに終わる気配を見せない敵の千の拳による猛攻撃を捌き続ける中――静かにソレ(・・)を口にした。



「ふぅッ……、いくぞ――――“[鬼神の力]”ァッ……!」



 瞬間――――ドンッ……! と、空間が歪む。

 限界を遙かに超えた究極の身体強化に……そしてそれによって自然とジャックから発せられるある種の圧力に、周囲の空間が物理的に耐えきれなかったせいであろう。

 ともあれそうして[鬼神の力]を発動させたことで、周囲の空間を副次的な要因でついでとばかりに歪ませたジャックは、その後すぐに防戦一方だった状態から攻勢へと転換した。

 まず手始めに、彼は自身を襲う千の拳の中の一つに狙いを定め――――斬る!

 結果――――


「「「「「――――ッ、グゥゥゥッ!? グォォォォオオオオオオオオォォォォオンッッ……!!」」」」」


 彼は、初めて敵である巨竜神から悲鳴を引き出すことに成功する。

 敵の攻撃――拳の一つに上手くタイミングを合わせることで、敵の拳自体に乗っていた勢いもあって『我喰』で両断することができたのだ。

 当然、初撃とは比べ物にならないほどの鮮血がジャックに降りかかる。

 ……実は少し触れるだけで即死してしまうほどの猛毒でもある血なのだが、生憎と『第十五兵装:最終究極紳士服ファイナルアルティメットスーツ』を着用している彼にとって、そんな些事はどうでもいい。むしろ今は気持ちよく両断できた上に強大な敵の悲鳴も聞けた事で、降りかかる鮮血も(汚れる心配もないため)ただ只管に心地が良いだけだった。


「クハハハハハハッ! クハーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハーッ!!」


 だが、勿論の事ながら……ジャックの猛攻はそれだけで終わらない。

 いつもの癖で戦闘に昂ってしまった彼はつい大きな声で狂笑を上げてしまうものの、だからと言って別に攻撃の手を緩めようとはせず、むしろ果敢に巨竜神へと斬り込んで行った。

 目標は、最初と同じで敵の脚のどちらか片方!

 そうして彼は、悲鳴を上げていながらも懲りずに襲い掛かってくる敵の拳を全て斬り払いつつ、[鬼神の力]によって亜光速から光速……をも超越した神速一歩手前レベルまで上昇した速度で以って、軽々と目標へと接近していく。

 ……因みに、流石に亜光速程度なら捉えきれる敵でも神速一歩手前となってはダメなのか、始めの数発分以外の拳は全て外してしまっており、残りの拳は全て見当違いの場所に降り注いでいた。おまけに、そんな始めの数発分の拳もジャックに容赦なく斬られており……情けないことに巨竜神は更なる悲鳴を上げていたのだった。まったく……うるさいよ、いったい何がしたいの?


 ともあれ――最早、彼の進む道に障害はない!

 っていうか、[鬼神の力]を併用した上で超集中した現在のジャックからすれば、周囲は例外なく止まって見えているほどだ。障害など……元より全てが止まって見えるのだから、気を付けるべき点は己の足下くらいで、他の有象無象などは別段と避けるまでもなかった。

 なので――――


「クっハハッ――――到着っ、と……!」


 その言葉通り、ジャックは至極あっさりと目標へと――巨竜神の片脚へと到達する。

 あまりに簡単で、何より呆気なさすぎる現実。

 思わず[鬼神の力]を使う前との落差に愕然としてしまう……が――別に、何もかもが順調に進んでいる現状に対してわざわざケチをつける必要もないと気づく。

 そもそもの話、正しい順序としてはそんなことを気にするよりも、まずは目の前の敵から先に斃すべきであろう。

 ――というわけで、彼は敵が現状を認識するよりも先に……つまり己が絶対的な優位を保っている今の内に、さっさと動き出すことにした。

 具体的には、これまた自然な動作で流れるようにして『我喰』を大きく振り上げ――――「フンッ……!」と気合一閃!

 先ほど放った一撃以上の力を込めて、彼は一気に四メートル長の『我喰』を振り下ろしたのである!

 それにより――――


 ――――(ザン)ッッ……!!


 ――と、彼は今度こそ、先ほど以上に鋭い斬撃音と共に凡そ半径だけで数千キロはあると思われる巨竜神の脚を――――スッパリと両断したのだ!



「「「「「グギャァァァアアアアアアアアアァァァァアアアッッ……!!」」」」」



 そうして……――当たり前のように、辺り一帯に再び響き渡る巨竜神の本気で痛そうな悲鳴。

 けれど、片足を失ったことでゆっくりと荒れ果てた大地へと倒れ込んでくる敵の姿に、ジャックはただ小さくニヤリと口元を歪めるだけ……

 彼にとって、今は己の目論見通りに事が進んでいるかどうか……それだけが重要だったためだ。

 兎にも角にも、それから更に暫くして、ようやく彼の視界へと少しずつ映りこんできたのは……果たして未だ周囲に対し、無様に悲鳴を喚き散らしているデカブツの一部――即ち、巨竜神の百の竜頭(ドラゴンヘッド)だった。

 そう……実を言うと、最初から彼の狙いは一つだけ。

 片足を斬り飛ばすことで意図的に上体を倒し、そうすることで生物としての弱点を――巨竜神で言うところの百もある竜頭(ドラゴンヘッド)の全てを狙い撃ちすることだったのである!

 なんせ今の彼にとって、敵が何かを認識する速度よりも更に早く己の攻撃を――百の斬撃を敵の各頭部それぞれに叩き込むなんて事は、実を言うとかなり容易な事なのだ。

 だから――――


「――――」


 ジャックは誰がどう見ても不自然としか思えない穏やかな笑みを浮かべ、加えていっそ不気味と言っていいほど静かに武器を構え……ただ只管にその時(・・・)を待っていた。

 ゆっくり、ゆっくりと倒れ込んでくる巨竜神の百の竜頭(ドラゴンヘッド)を狙って、彼は今か今かと攻撃を仕掛ける瞬間――そのタイミングを計り続け……


「……くくくッ……」


 ……やがて、その瞬間はついにやってくる。

 待ち望んでいた分、期待もかなり高まった事だろう。

 彼もまたいつも以上に張り切っていた。

 だからこそ、ジャックは遠慮や容赦の欠片もなく自身の両の手が持つ必殺の武器へと、物理的、精神的……更には魔術的といった、ありとあらゆる力を(フォースの手も借りて)どんどんどんどんと込めていく。

 これまでに倒してきた数多くの敵のエネルギー(フォースに吸収させなかった極僅かな敵)、己の血液上に含まれる大量の謎のエネルギー(天格者が持つ上位世界のエネルギー。偶然それに気づいて以降、体調に影響が出ない範囲で少しずつ吸収させていた)、そして……先ほどまでチマチマと巨竜神を傷つけていたことで徴収していた僅かなエネルギー。

 そんな、集めたら意外と膨大な量となるエネルギーを……彼は一心に巨剣へと込めていった。

 ――全ては敵を確実に殺すために……!

 そう、願って……

 ……。


 そうして――――ついに溢れるほどの力を注ぎこまれたことで、強烈な光と共に輝き出す巨剣――『我喰』。

 時は来たとばかりに武器を握りしめ、彼はそのまま、いざ止めを刺そうとして――――!




 ……


 …………


 ………………


 ……………………




 ――――ゾワン……!(キ・ケ・ン(危ないっ!)




 ……………………


 ………………


 …………


 ……




 ――警告が、ジャックの胸元から発せられた。




    ◆    ◆    ◆    ◆




~ジャック=キリサキ~



 『危ないっ!』――と、突然フォースから発せられたメッセージに、俺は反射的に『我喰』を自身の盾とするよう構え直し……ついでに同じく反射的に思考速度を超加速させ、自身を取り巻く世界の流れというものを停止させる。

 ……本当のところ、いったい何が“危ない”のかは全く分からなかったのだが……まぁ、あれほど緊迫したフォースの姿(雰囲気?)を目にするのも初めてなものだし、きっとそれにも何か原因があるはずなのだから、ここは大人しく従っておくべきであろう。

 というわけで、俺もほとんど理由を聞くような野暮な真似はせず、即座に全力攻撃の体勢から防御体勢へと切り換えたわけなのだが――――


 ――――ガギィィィインッ……!


 どうやら、相棒の警告は正しかったらしい。


(――――ッ! マジで何か来たッ!?)


 四メートル長の巨剣――『我喰』の向こう側で金属質なナニカが盛大にぶつかり合う音を聞き、俺は素直に驚く。

 まさか本当に[鬼神の力]まで使用していた自分でも気づけないような攻撃を、具体的にいつからかは知らないが、それでもひっそりと仕掛けてきていたとは……まったく思いもしなかった。


(……けれど、そんな不意打ちもこうしてしっかりと防がれてしまった以上、流石の(巨竜神)も終わりだろう)


 フッ……と、瞬間――俺は自身の勝利を確信する。

 なんせ、この状態から敵の認識できない速度――つまり高速で反撃してしまえば、絶対に負けないことだけは分かっているのだ。

 いや、それどころか、もしかしたらそのままトドメを刺すことも可能かもしれない……――というか、その可能性の方が現状では圧倒的に高い……!


(クハハハハハハッ、――ま、何にしてもよく教えてくれたな、フォース。感謝するぞ)


 そうして上機嫌のまま、少しだけ調子に乗った俺はふと思い立ったこともあり、ちょっとした興味から巨剣越しではあるが、不意打ちに使われた敵の攻撃がどういったものだったのかを覗き見てみようとして――――


「――――なっ……!」


 しかし、迂闊にもそのせいで俺は、ここ最近の中でも一番の……いや、正しく言うと異世界に再び降り立ってから初めて感じた、最大の驚愕というものを――その瞬間、突如として味わう羽目となってしまったのだ。

 なぜなら、そこには――――


(――い、《十六夜兵装》、だとォッ……!?)


 空中でキラキラと煌めく、無限に生成され続ける透明で銀色の刃。

 斥力と引力を自由自在に操作することで、攻防一体を極め尽くしたそれは……正しく《十六夜兵装》の中でも随一の万能兵器に他ならない。

 そして、その正体こそ――【引天】という『第一兵装:バタフライナイフ』の【異天】と同様に、天能を固有能力とする“破片集合体型”超兵器……!

 密集した刃の破片により、基本形態が“翼”にも見えることから、正式に付けられたその名も――――


「――――『第三兵装:偽翼(ギヨク)』ッ……!!


 ……まさか、紛失した《十六夜兵装》の中でも一番最初に見つけることができたのがお前(『偽翼』)とはな。……それもこんな所(迷宮最深部)でなんて、まったく予想外もいいところだぜ……」


 本当に、まさかの展開である。

 けれど、そうして驚愕を口にする一方で……俺は小さく歯軋りをした。

 ――気づいてしまったのだ。

 そういや、[鬼神の力]を発動する少し前に、何か違和感を感じたな……と。

 そしてそれが、今思えば間違いなく――単純に俺の魂が、文字通り自身の魂の武器(・・・・)である《十六夜兵装》へと反応していた感覚だったんじゃないか!? ……と、俺は悟ってしまったのだ!

 ……。……ふと巨剣と敵の操る『偽翼』がぶつかり合っている向こう側を見てみると、何だか先ほどまでピンチを迎えていた巨竜神が急に覚醒でも起こしたかのように、更なる強化としてどんどん巨大化を始めていた――――が、今はそんなことはどうでもいいとばかりに、俺の思考は目の前にある『第三兵装:偽翼』のみへと没頭していく。


(ハァ……ヒントは既にあったはずなのに……)


 なのに、実際に目の前で敵が俺の魂の武器の一つである『第三兵装:偽翼』を使用するまで、そのヒントにさえ欠片も気づくことがなかったとは……あまりにも察しが悪すぎる自分自身に、ただただ情けなさすぎて普通に腹が立つ。

 しかし……――しかし、である!

 それ以上に俺は――――敵が我が物顔で、何より平然と俺の『偽翼』を使っていることが許せなかった……!

 前者の自業自得な理由と比べて、後者のは酷く理不尽だろうが……所詮は“敵”なのだから、それも仕方がない。だって基本的に、敵には情けや容赦をする必要もないからな。

 だからこそ――――


「だから、まぁ……とりあえず、早急に返してもらうとしようか……! ――俺の魂の武器、《十六夜兵装》が一つ――――『第三兵装:偽翼』をなァッ!!」


 手段は勿論、力づくで。

 殺意溢れる眼差しで敵の巨竜神を睨みながら、そうして俺は苛立ちのままに全力で吼えるのだった。

 ……。

 …………。




(――とはいえ、これはどう攻めたものか……)


 あれから威勢良く吼えたものの、俺は未だに敵へ攻撃の手を加えることもなく、ただ目の前に聳え立つモノ(・・)を困惑した視線で見上げていた。

 聳え立つモノ……即ち、それは――この、僅か数瞬の内に完全なる強化(パワーアップ)を……最早全身の全体像どころか、その一部でさえも巨竜神のモノだとして認識することのできないまでに巨大化を果たしてしまった敵の姿。

 そう、ついさっきまで《十六夜兵装》の件について反省していたはずなのに……またしても俺は、途中で敵が物凄い変化を始めていたにも関わらず、どうでもいいとばかりにサラッと無視するという全く同じ過ちを繰り返してしまっていたのだ。

 そして、そのせいで敵は巨大化を果たしてしまい……今ではもう天を突き抜け、更には大地をも接触するだけで自然崩壊させているという有様……


(なんて言うか……我ながら実にどうしようもないな)


 足場である大地がそのようにして崩壊してしまったため、仕方なく全身を意図的に宙に投げ出されることで緊急回避した俺は、そのまま空中の彼方まで吹っ飛びながら自嘲する。

 故に、ハァ……と至極自然に溜息を吐いてしまう。

 しかし――――


「――――!?」


 新たに視界へと飛び込んできた光景に、今度こそ俺は沈んでいた気持ちをも忘れて何度目かの驚愕に浸る。

 うわぁ、何だこれは……と。

 思わず自分から距離を取るようにして、空中からいつの間にか真空に変わっていた最終階層の舞台の至る所に転がっていた元・大地の欠片や小惑星など(辺りをよく見回してみると他にも惑星があったため、ここ(舞台)は宇宙であると理解した)を足場にし、全力で蹴りだすことで吹っ飛び続ける全身の速度を更に上昇させてしまったほどだ。


 ――――ゾワァン……(サ・ツ・リ・ク(? 殺さないの?)


 そんな俺の様子を見て、不意にフォースが心底不思議そうに問いかけてきた。

 恐らくは先ほど、俺が大声で攻撃を宣言していたのにも関わらず、未だに攻撃を開始するどころか、逃げるようにして距離を取っていることに疑問を覚えたのだろう。

 気持ちは分かる。

 分かる、が……流石にこれを見てもなお、まだ同じことが言えるのだろうか?

 やがてそれなりの距離が取れたことでようやく視界に収められた敵の全体像を指差しながら、クイッと無言で顎を動かしてフォースに教えてやる。

 果たしてそこに再度視線を見やってみれば、敵の姿があった。


「「「「「…………ォォォォオオオオオオオオォォォォオオオォォンッッ…………!!」」」」」


 それも『最早、惑星どころか太陽ではないか』――と言いたいほどの巨体を誇る敵がいた。

 ……。改めて全体像を見てみると、やはり凄まじいとしか言いようがない。

 先ほどまでの敵の姿も十分以上に巨体だったと思うのだが、それでも惑星以下に収まってくれていたため――ついでに俺が巨竜神だと認識できるレベルであったため――割と普段通りに戦うことができていた。

 けれど今のように、惑星(大地)をも触れただけで崩壊させるほどの巨体――吹っ飛んだ距離から急いで逆算した結果、太陽レベルは余裕であると判明した巨体相手(超・巨竜神)では、どうしても緊張してしまう。……ていうか、本当にどうやって戦えばいいんだろうか?

 新たな悩みに直面する俺。

 だがそこで、敵を見て……そして更に悩み始めた俺を見て、再びフォースが疑問を発する!


 ――――ゾワン……(キョ・ウ・テ・キ(強敵の予感?)


「あぁ、そうだ。何より、あの巨体が厄介だな」


 ――――ゾワァン……(タ・イ・リョ・ク(タフだから?)


「うむ。――だけど、それだけではない。単純にあそこまで大きいと、体力以外の点も大幅に強化されるからな……物理的に」


 なるほど、と振動するフォース。

 そして、それっきり俺たちは暫く困ったように押し黙った――――が。どうやら、それでも巨体化を果たした敵に困っていたのは俺だけらしい。

 なぜならば――――


 ――――ゾワァァァン……(マ・ッ・サ・ツ(で、殺さないの?)


 続くフォースの言葉に、ハッとする。

 言ってみれば、それは最初に発せられた疑問の一言と同じだった。

 だがこうして、自身の深層意識に至るほどに悩んでいた今の俺からしたら、まさしく天啓とも言うべき言葉。

 ようやく目が、覚めた気がする。


(……そうだ。どっちにしろ敵なのだから、殺すのに変わりはないんだった。それに『第三兵装:偽翼』も、相手を殺さなければ取り戻せない仕組みだし……本当に、いったい俺は何を迷っていたのだろう……?)


 だからこそ『ありがとうな、フォース』――と懐の中の相棒に呟きながら、俺は視線に殺意を込め直しつつ、『我喰』を両手で構え……そして――――


「――――さぁ、戦闘再開だ」


 どれだけ敵が巨体だろうと、数多の特殊能力を所持していようと、止めに万能兵器である『第三兵装:偽翼』を使用していようがどうでもいい。

 神速に至った速度([鬼神の力])で以って、その全てを尽く躱してみせようではないか!

 こちらに殺意溢れる視線を寄こしてきた超・巨竜神へと、それ以上の殺意を込めた視線で睨み返した俺は、そうしてついに駆けだした。



「「「「「ガァァァアアアァァッ!!」」」」」


 先制は、超・巨竜神。

 神速で動く俺を捉えることは不可能と学んだのか、いきなり全体攻撃として咆哮を上げる。

 巨体化をしたせいで、声量も格段と大きくなったものだ。

 おまけに咆哮も何らかの特殊能力――どこかの階層のモンスターが使用していた“対象を破壊できる超音波”を併用しており、実に強力かつ凶悪なものとなっていた。

 名付けるなら、そう――――死の咆哮(デス・ハウリング)


「……っ」


 流石の俺も、思わず眉を顰めてしまう……が、問題はない。

 通常の生き物ならば耐え切れずに、その肉体を盛大に破裂させてしまっているところだろう。

 現に周囲の惑星や小惑星ですら、どんどん塵と化している。

 しかし重ねて言うが、俺には全くもって問題なかった。なんせ――自身にとって攻撃となるものは全て、『最終究極紳士服ファイナルアルティメットスーツ』が自動的に防いでくれるからな。

 故に、多少は不快な音が頭に響いてこようと俺は、それら一切をまるっと無視して真空の中を神速で駆け抜けていく。

 順調だ。これはまた順調すぎる展開だ!


「……くく、クハハッ……クハハハハハハハッ!」


 沸々と出てくる狂笑を堪えることもなく大声で響かせつつ、相互の距離をグングンと縮めていく俺。

 だが――――


「「「「「――グォォォォオオオオオオオオォォォォオオオォォンッッ…………!!」」」」」


 それは当然、敵である超・巨竜神にとっては面白い展開ではない。

 けれど先制攻撃も難なく躱され、それでいて自身が捉えきれない速度で以って接近してくる()に対し、余裕もなくなって盛大に焦り始めた超・巨竜神は、そこで数々の特殊能力を解禁させていった。

 しかし――――


「クハハハハハハハハハッ! 遅い! 遅い遅い遅い、遅すぎる! もう遅すぎて止まって見えるくらいだぜッ!」


 炎も氷も雷も光も闇も、そして謎のレーザー砲や無限分身攻撃といったあるゆる攻撃……それこそ物理だろうが、魔法だろうが関係なく――[鬼神の力]を発動した俺の前では全てが無意味。

 距離が遠から近に変わってきてからは、敵も積極的に長い千の巨腕(ドラゴンアーム)を使って物理攻撃を加えてくるが……光速をも遙かに超えた思考速度を持つ俺にとって、それら全てを躱し続けることも容易な事であり、スイスイと攻撃の合間を縫うようにして、再び敵の頭上を取りに行く。

 ……また、唯一俺と同等の速度で動かせる『偽翼』にしても、元々が俺の専用兵器であるために敵が使いこなせるはずもなく、単調な動きしかできていない。そのため、躱すのは実に容易かった。

 ともあれ――――


「クハハハハハハッ――っと……よし、取ッた……!」


 光の如く……というかそれ以上の速度で駆け抜けた俺は、やがて走り始めてから一分も掛からずに超・巨竜神を見下ろせる位置――即ち、頭上へとやってきた。

 眼下には、慌てふためく百の竜頭。

 それを見て、思わずニヤリとした笑みを浮かべる俺。

 ゆらり、と四メートル長の巨剣を大上段に振り上げ――――


「――――さて、チェックメイトを告げてやろう」


 求めるのは――――力。

 それも敵を一撃で屠れるだけの力。

 二度と再生できず、どれだけの生命力があろうと問答無用で死を与えられるほどの力。

 それらを求め、俺は『第二兵装:我喰』へと力を込めていく。

 だが、今回はわざわざ“溜め”を行っている時間はないため、刀身に直接フォースを宿らせることで省略する。頼んだぞ、フォース!


 ――――ゾワン……!(オ・マ・カ・セ(うん、任せて!)


 これで『我喰』に宿る力自体はフォースの持つエネルギーを主体としているため、今までで一番のモノとなった。

 けれど、まだ足りない。

 これでもまだ、超・巨竜神を一撃で屠るには足りない気がする。

 だから――――次だ。


 眼下にいる敵は、未だ俺が頭上を陣取っていることに気づけていない。

 この様子だとわざわざ神速での攻撃も別に必要ないだろう……どんな速度にしろ、奇襲になりそうだし。

 なので、[鬼神の力]による強化バランスを力一極に集中させる。

 限界という名の枷を取っ払い、そこから更にいくつもの限界を超越していく。

 そうして――――ついに完成した。

 俺の求めた、最強の力が……!

 自分の身体を眺め、外見こそ変化はないが、物凄い力が秘められているのを感じて満足そうに頷く。

 ただ――――


「……ふむ。……“狂え”……(ボソっ)」


 念のため……本当に念のためだ。

 そう思いながら、俺はフォースの宿る『我喰』へともう一つだけ強化……というより狂化を加える。

 理由は、強化させた自身の肉体に対して所持している武器がちょっとだけ……その、なんて言うか見劣りしていたからだ。

 それ故に俺は、少しだけスパイスを振りかけるつもりで『我喰』に一時的なものよりは効果のある永続的な狂化を使用した――――のだが。


(お、おぉ? おおおおぅ……これは……)


 結果として、出来上がってしまったモノを見て俺は瞠目する。

 なんせ、四メートル長だった巨剣が見る見るうちに十数メートル前後の巨剣へと成長を果たしてしまったのだ。

 おまけに、刀身の丁度ど真ん中にギザギザの線が現れ、巨双剣化までできるようになってしまったのである。……まぁ、今回は威力重視なため、別に双剣化はしないからどうでもいいとして。

 そういえば、すっかり【狂天】のレベルが以前に使った時よりも上だという事を忘れていた。

 つい、いつもの感覚で使用してしまったせ結果がこれか……と、改めて両手に持つ『我喰』(改)を見る。

 ……。いや……別に強くなった分には文句なんて何もないんだし、だから問題もないはず……

 俺は少しだけ、メリットとデメリットを思い浮かべてみた。


(……うん。問題は――ないな)


 ――――という事で、これにて超・巨竜神を殺す用意は完了した。

 あとは俺の意思一つで死刑が開始されるわけだが……これも問題ない。

 俺の()る気は既に溢れ出るほど、充満している。

 故に――――



「――――死ね」



 最後に短く一言だけ呟きながら、俺は『我喰』(改)を静かに振り下ろす。

 そして、振り下ろした巨剣は膨大な光の奔流を生み出し――――


「「「「「――――ォォォォオオオオオオオオォォォォオオオォォンッッ…………!!」」」」」


 光の奔流は、そのまま眼下にいた超・巨竜神を呑み込むようにして包み込んでいき……――やがて超・巨竜神の悲痛そうにも聞こえる断末魔をその場に残して、膨大な光は音もなく静かに最終階層全体へと広がっていくのだった。

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