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別の世界で新たな生を望みますか?と、問われた俺の物語  作者:


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8 黒の話

 翌日。

 朝食を食べに食堂に向かうと、既に爺様は食べていた。が、テーブルの使われていない場所には、何故か大量の瓶が並べられていた。


「おはようございます、お祖父さま」

「おはよう、テリュース」

「伯父さまの赤ちゃんはどうでしたか?」

「うむ、可愛らしい女の子だ。名は私が命名した、サフィアという。もう少し育てばお前にも会わせよう」


 爺様は満面の笑みだった。爺バカですか。

 それより俺は大量の瓶が気になる。

 瓶の中身は無色のモノや黒いもの、ちょっと薄い黄色っぽいモノなどが入っているようだ。

 俺は特に黒いのが気になる。

 黒ビールとかコーヒーリキュールとか?


「ところで、この大量の瓶はどうしたんですか?」

「ああ、それはマリオンの所に届いた出産祝いのお裾分けだ。同盟国オルトランの今の宰相が、マリオンの学友でな。産まれたと聞くや、大量の品を送ってきたそうだ。オルトラン独自の調味料だ、無色のものは酒のようだが」

「は?調味料?出産祝いに?」

「───マリオンが学園時代に食し、気に入ったものらしくてな」


 と、いうか調味料だと?

 まさか、この黒いのは酒ではなく────

 思わず凝視したその黒い奴の瓶には『醤油』と、日本語のラベルが貼られていた。

 ちなみに薄い黄色味のラベルは『味醂』だった。

 そして、無色は『日本酒・辛口』まんまですか!


「オルトランの第三王子が主導で造り始めた調味料らしくてな。当時はまだ3才だったという。農業政策を押し立て、恐ろしい神童と言われていたな」

「───そうなんですか」


 その王子、確実に転生者だろ───?!



◇◇◇



「──そんな訳でさ、このメモ用紙に書いたの昼飯に造ってくれる?」

「了解です、坊ちゃん」

「あ、オルトランの宰相からのレシピも、造れそうならよろしく!」


 あれですよ、爺様が貰ってきたお裾分け調味料。

 親切なことにレシピも付けて添えてくれてたそうで、醤油の唐揚げ・茶碗蒸し・煮物の調味料割合とかもう和食バチコイな感じ。ただ、出汁がない。

 更に残念ながら米がないので、料理人ドニにうどんを作って貰おうとメモ用紙にうどんの作り方を書いた。

 けど、日本酒あるくらいだし、同盟国オルトランでは米も作ってるだろうな。

 行ってみたいな、オルトラン。

 それで、第三王子に転生者だろ!って言ってやりたい。


「あ、酒は夜に爺様へ温燗で奨めなよ。今の時期なら温燗!夏は冷酒で!」

「え?ぬるかん?」

「温めるの、真冬なら熱燗がいい」


 そうだ!日本酒作ってるなら、きっと焼酎もあるはず!ちょ、マジでオルトラン行きてぇ!



◇◇◇



 そして、翌日。


「魔法の効果は、習熟度並びに相対する者との魔力量対比も影響する。つまり、己より魔力の多い者への効果は激減し、成功率も下がる。そして、物質に対しても魔力を含む物には影響する。──例えば、レックスよ。私に対して黒の初級鑑定を使ってみなさい」

「は、はい。『黒の、其の真理を解き示さん──鑑定』」

「どうだ?」

「──解析不能です。警戒レベル赤です」

「うむ、脳裏に浮かぶ色は、白が格下、緑は対等、黄はやや格上、赤は完全に格上で魔法はほぼ効かないと覚えて置きなさい。だが、習熟度が高ければその比は覆る事もある、絶対はない。レックスは主属性が黒ゆえ鑑定も習熟度合いは早いだろう」

「はい」

「なるほど、普段から鑑定を習慣付ければ習熟度も上がりますね。室内でも器物破損はないですし!」

「…………ほどほどにならな、テリュース」


 ちょっと苦い感じの爺様だが、室内での魔法使用可能の言質は取った!

 鑑定も面白いが、俺は静寂を先に極めてやるんだ。


「オルトランに行きたい?」

「はいっ、お祖父さま」


 講義の終わり、ダメ元で爺様に言ってみた。

 昨日のうどんや醤油の味で、米や焼酎が気になって仕方ない。


「理由を言ってみなさい」

「え、あのオルトランの第三王子様に、お会いしてみたいな~と。調味料とか気になりますし」

「──第三王子殿下か、さすがにオルトランの王家となると、私の伝手では時間がかかる。だが、マリオンの伝手なら──」

「あ、宰相と学友!」

「うむ、機会があれば第三王子殿下には、私も話を伺ってみたいとは思う………」


 ちらりと爺様が見たのは、部屋の角にあるしっかりしたキャビネット。そこには日本酒の瓶がどんと並べられている。

 日本酒が気に入ったのか、爺様。

 ───いや、まさか。

 瓶のラベルの日本語に気が付いたのか?!

 選別板の俺の赤文字が同種の言語だと。


「いずれにせよ。マリオンはサフィアが産まれたばかりで、色々庶務もある。他国のことだ、手続きも必要であるし、直ぐにとはいかぬな」

「──そうですか。あの、伯父さまに手紙とか預けるのは……」

「マリオンも祝いの返礼などあろうから、それぐらいは頼むのは良いが、検閲はあると考えて内容には気を付けるようにな」

「はい、ありがとうございます」


 とりあえず、手紙のお許しは出たし焼酎があるか聞いてみたい!



◆◆◆  side 爺様/エルンスト・ウィルクス



 ある日、ウォード砦の騎士団駐屯地に属するバーンズ隊長より、エルンストに面会の旨が届いた。

 シルーニア・バーンズ。

 元王都近衛騎士分隊長、5年前の戦時に王都内に雪崩れ込んだ帝国兵を相手に奮戦した。

 その後、同分隊のケイウスと結婚。出産の為に職を辞した。年子でもう一人子を成している。

 シルーニアの父親は元王都騎士団団長、功労により男爵位を持つ。ケイウスは平民の為、婿養子である。

 現在はここウォード騎士団の新兵指揮の任にて、騎士職に復帰している。

 バーンズの話は、彼女の息子に関するものだった。

 砦にて、奉公させて欲しいと。

 騎士に成るのは難しい理由が、教会で選別の儀を受けさせられない為だという。

 その意味は、彼女が連れて来た息子を魔導具で確認した時に理解できた。


 全属性を持つ、黒の子供。

 赤文字の表記は、黒の有資格者。

 間違いなく、帝国クロウラーの帝室直系の血を引く子供だと。


 子供、──レックスには結果を口止めし、預かるには魔法契約が必要だとエルンストは告げた。

 レックスの同意の元、ウィルクス家を生涯裏切る事なかれと、契約を交わした。

 その後、レックスを部屋から出し、シルーニアに詳細を尋ねた。


 シルーニア・バーンズは重い口を開く。

 6年ほど前、帝国クロウラーとの戦争はまだ激化しておらず国境付近の小競り合いの状態だった。

 そんな頃、王城に侵入した賊がいた。

 その日の任を終え、帰宅の途につこうとしたシルーニアは、その賊と遭遇し交戦──賊は恐ろしく強かった上に競り合ったシルーニアに欲情した。

 そして、運悪く辺りに人はおらず、力負けした後に組み敷かれてしまった。

 月明かりで見たそのフードの賊の顔は、当時の帝国クロウラー第二皇子、ラインハルト・クロウラーだった。


 シルーニアが妊娠に気がついたのは、結婚の話が決まった頃だった。夫になるケイウスは事情を飲み、結婚に至った。

 だが、ケイウスの髪は茶色。

 産まれた子供──レックスは黒髪。

 レックスが物心つく頃には、父親が違うのだという事に気がついてしまった。

 年子の弟は、ケイウスによく似た茶髪なのも、レックスが家を出たがる要因である。


 そしてシルーニアは、レックスの父親は死んだのだと告げて今に至る。


 だが、レックスが選別での意味を理解すれば、父親が何処の生まれかは推測できてしまう。

 それをレックスが知った時に、果たしてどうなるものかと、エルンストは考える。

 けれども、テリュースと歳も近くまだ幼いが、鍛えれば護衛くらいはできるかと、──駐屯地に居る元影に話を振るエルンストであった。



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