14 7年後
月日が経つのは早いもので、7年近く経ちました。
テリュース・ウィルクス 12才3ヶ月の春です。
俺的にはそんなに変化はないと思っている、うん身長の事ではないよ。そうだよ!未だチビだよ!
銀髪碧眼と顔面偏差値は高いのに、身長が伸び悩む年頃だ。
魔法に関しては、6才の誕生日にやっと中級魔法の魔導書を爺様から貰えて、12才の誕生日でようやく上級魔法の魔導書を貰ったぜ!
そんな訳で、上級魔法はまだ色々覚えてる最中だ。
習熟度も微妙かな。とりあえず初級魔法は詠唱無しでもイケるくらいってとこ。
『鑑定』
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テリュース・ウィルクス 12才 3ヶ月♂Lv 12
主属性・銀 Skill
HP 1320/ 1320 魔力回復上昇・高
MP 4070/ 4100 激怒・怒り時魔効果上昇
習熟度
火 ● ● ◑
水 ● ● ◑
地 ● ● ○
風 ● ◑
黒 ● ● ○
金 ● ◑
銀 ● ● ● ○
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魔力量は増えたように見えるけど、かなり微妙な気はする。
目安として、初級魔法の必要魔力が、30~40。
中級魔法だと、100~300。
上級魔法になると、400~600。ほど必要になる。
つまり、今の魔力量だと上級魔法10回も魔法によっては使えないって事。
それから、妙なスキルがいつの間にか生えてた。
まぁ、なんとなく理由は分かったけど。
俺の周囲といえば、レックスだ。
腹が立つ事にレックスは、俺より頭1つ分以上身長が高くなった。
顔立ちもはっきりしてきて、黒髪に紫の目は陰のある雰囲気を出している。俺よりモテそうよね。
成長したので、レックスは従僕から侍従になった。
一応、男爵家の嫡男だから侍従に格上げ。
レックスは俺に対して思う所もあるんだろうな、ってちょっと考えるけど。
俺の部屋で、控えて立ってるレックスに顔を向ける。
「ちょっと、レックス鑑定させて」
「はい?いえ、嫌です」
「『鑑定』」
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レックス・バーンズ 12才11ヶ月 ♂ Lv 14
主属性・黒 Skill
HP 2880/ 2880 短剣技能・中
MP 2120/ 2120 精神統一・中
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「──俺、嫌ですって言いましたよ」
「先にはい、って言ったし」
変化といえば言葉使いもだけど、レックスの警戒色が黄色に格上げされた。
体力は俺の倍以上あるし、オマケにスキルも増えている。ちょっと焦る。
夜間の鍛練も、相変わらず続けているらしいし。
このままだと、こいつは何に進化するんだろうな?
◇◇◇
いよいよこの春から、俺は聖王国サーラのベルナール神学園へ行ける事になった。──とは言っても、実はここまでにちょっと問題もあった。
まずは、爺様。
ヴァレリウス王国内にも学園自体はあるのだから、他国の学園へ行く意義は在るのか?
なんか色々ごねてたけど、それはマリオン公爵だって行ってたのに狡い!と封殺。
まあね、心配しているのは分かるんだよ。マリオン公爵と違って俺は色々問題児だし。だが、知らぬ。
一番の問題が戸籍。
知らなかったんだけど、俺は実の母であるフィーネさんの庶子に当たるそうで。
王族や貴族階級のみ留学可能な神学園への、手続きがちょっと面倒くさいそうな。
──というのは建前で、実の所はフィーネさんの庶子を表沙汰にしたくない爺様や公爵家の思惑なんかがこうごちゃごちゃあったらしい。
これは、こっそりレックスに探って貰った。
流石にお家問題は、どうしようもないなと思っていたら。
鶴の一声。では、マリオンの養子にする。と爺様が言ったので──有難く、俺は公爵家のお坊ちゃまとして学園に行ける事になった。
お目付役として侍従のレックスも付いてくる。
聖王国サーラのベルナール神学園は全寮制だった。
王族や高位貴族も多く入学するため、身の回りの世話をする侍従や侍女を付ける事が認められているという。ただし、授業中は別。あくまで、寮や食堂等の施設の付き添いのみだ。
なのでそれでは難もある為、同年代の者を一緒に生徒として入学させる高位貴族は多いという。
レックスは男爵家の嫡男なので、生徒として問題なく入学して俺のお目付役をするそうな。
ちなみに、ベルナール神学園は学園全体を魔法障壁の王城並みの警備体制を完備している為、表向きは護衛の同行を例え王族でも許されていないらしい。
何故、表向きか。実は学園内は王城と違って魔法の使用が誰でも可能なので、聖王国サーラの騎士が園内
に常駐している所為でもある。
◇◇◇
そして、いよいよ聖王国サーラに向かう日。
生活必需品とか着替えなんかは既に寮に送ってあるそうで、手荷物だけレックスに持たせて馬車に乗ろうと出た所に爺様が待っていた。
「お祖父さま、行ってきます」
「うむ、気を付けて行きなさい。学園で無茶をせぬように──これも持って行くと良い」
「お守りですか?でも、3個も?」
「あれば、何かしら役に立つだろう」
「はい、有難うございます」
爺様に手を振り、俺は馬車に乗り込んだ。
お守り3個、今回も腕輪だ。
俺とレックスで2つ身に付けるとして──後1個は、予備かな?
聖王国サーラは、隣国マキューリアを挟んだ北にある為、王都のポータルに向かうのだ。
ちなみにヴァレリウス王国の立地は、北に緑のマキューリア。
東に黒の帝国クロウラー。南が水のチューン公国。
チューン公国は帝国の属国になったので、ヴァレリウス王国の東と南が帝国の勢力圏といえる。
ヴァレリウス王国の西には険しい山岳地帯があり、その先は海らしい。
それから、マキューリアの東隣が地のオルトラン。マキューリアの北の金の聖王国サーラの東隣に、火のグラントハイトがある。
この大陸の大まかな国の分布はそんな感じ。
遠距離を移動でき、各国とも繋がる転移ポータルという大型の魔導具がある。
ヴァレリウス王国のポータルは、王都に5基。
ポータルターミナルのような感じである。
ポータルを利用すれば他国にもひとっ飛びらしい。
ターミナルの建物前で馬車を降りて、ポータルが並ぶフロアに入る。
大型の魔導具らしいけど、筒形の透明な囲いがあり見た目はなんかSFな感じ。その中に円形の足場の土台があって、そこに利用者が立つと係員が転移を発動させるようだ。
移動前から異次元体験に驚きながら、係員が操作する転移ポータルで聖王国サーラへ移動した。
「ようこそ、聖王国サーラへ」
視界が切り替わっても、似たようなフロアだったから戸惑ったけど。
他国からの移動だと理解している係員の対応で、問題なくターミナルの建物から出た。
「公爵家から学園への馬車が手配されてる筈。──あれですね。テリュース様、行きましょう」
馬車乗り場で、レックスの示す馬車に向かいながら
俺は辺りを見回した。
聖王国サーラの街並みは、白い壁の建物が整然と並ぶ静かな印象だ。
「──それで、寮の方はどんな感じなの?」
「今期は男性王族が5名も居るそうで、部屋の割り当てで良い部屋は取れなかったそうです」
「5人!多いなぁ、どこの王族?」
「その内、お二人はヴァレリウスの王族です」
「え?もしかして、アレンが居るの?」
「はい、アレン殿下と、第一王子のサイラス殿下です。お二人はテリュース様より学年は2つ上になりますが」
「そっか、アレンか……」
「………残りの3名は、ここ聖王国サーラの第一王子と、グラントハイトの第一王子。後はオルトランの第一王子だと聞いています。学年はテリュース様と同じ1年生です」
「ふーん……あ、そうか。オルトランはギルバートさんのお兄さんが王位を継承したからその息子か。──それで俺の部屋は?」
「あまり広くはないそうですが、一人部屋は確保できたと」
「お前の部屋は?」
「二人部屋と聞いてます」
「ふむ、狭くても一人部屋がいいな」
「……そう思います」
レックスと喋っている内に、馬車がベルナール神学園前に着いた。
白い壁門で入学書類の確認を終えてから、学園の敷地に足を踏み入れる。
白い壁の建物が並ぶ。先の方に在る大きな建物は礼拝室か、ステンドグラスの填まった大きな窓がある。
「テリュース様、寮は左側の建物だと思います」
「あれかな」
レックスが指差す方を見ると、白い壁の横に長い4階建ての建物が二棟並んでいる。団地みたいだ。
どこもかしこも白いな!とか思っていたら、その建物から人が出てきた。
肩まである銀髪を揺らし、学園の白い詰め襟の制服を着こなしている。貴公子然と背を伸ばし前を向くその水色の瞳と──合った。
「──テリュース?!テリュースだよねっ!!」
変声期なんだろう、声が少し低くなってるけど相変わらずのアレンだった。
しかし、やけに背が伸びたなこいつ!
「アレン、久しぶり。元気してた?」
「久しぶり!けど、テリュース全然変わらないなっ、小さいままだ!」
「ちょっとは伸びたっつーの!!」
「アレン殿下、ご無沙汰してます」
「え?君、レックス?格好良くなったな!」
反応違い過ぎ!!
アレンにハグされて上から頭を抱えられる。
ちびっ子扱いやめろー
「お祖父さまも元気にしていらっしゃるかな?」
「爺様は変わらず元気だよ」
「そうか、お元気か……今は、テリュースとまた会えた事が嬉しいよ」
「アレンの爺様大好きは変わらないな」
「もちろん、一番尊敬してるから──」
「──アレン殿下、そろそろ参りましょう」
不快感丸出しの声が遮るように響く。
アレンの侍従らしいが、感じ悪い。
「ああ、今行くよ。──テリュース、また後で君の部屋に行ってもいいかい?」
「いいよ」
「有難う、じゃあまた後で。テリュースに、レックスも」
アレンは手を振りながら侍従と歩いて行った。
それを見送りながら、レックスが息を吐く。
「アレン殿下も大変ですね」
「何が?」
「マリオン公爵閣下の調べでは、あの侍従は王妃の息が掛かっているようです。いつ毒でも盛られるかと心配されています」
「まだアレンを狙ってるのか、クソ王妃……」
「言葉には気を付けて下さい、誰が聞いているか分かりませんし」
「分かってるよ」
「……俺も、気持ちは同じです」
「──そうか」
ヴァレリウス王国の王妃マリーは、帝国クロウラーの皇帝の異母妹だ。和平交渉の折政略結婚でヴァレリウス王国の国王の妃となった。
しかし、王子一人しか産めなかったからって、──予備で養子に迎えられるアレンを殺そうとして、養子に入った後もまだ狙うのか。
よっぽどその第一王子が酷くて王位が怪しいのかと、勘繰りたくなる。
建物が3階から→4階建てに修正しました。




