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別の世界で新たな生を望みますか?と、問われた俺の物語  作者:


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10/30

10 ダンジョン?!

 翌日。

 鍛練時間に駐屯地を訪れて、何か慌ただしい雰囲気を感じた。いつも近くで鍛練している新兵達は数が少なく、頻繁に木箱や樽を運搬している。時折、本体騎士も騎士団の建物へ駆け込んでいる。

 これは何かあったなと、フトモモ様バーンズ隊長に聞いてみた。


「公爵領北の子爵領で、強力な魔物の発生が確認されまして、ウォード砦からも応援を送る事になったのです」

「最近は魔物が増えているんだっけ?」

「そうですね、それもありますが。どうやら子爵領にダンジョンが出現したようでして。──強力な魔物はそのせいではないかと、目下確認を急いでいるようです」

「──ダンジョン?!」

「あれ?ダンジョンって、8年くらい前に全部消えたって母さん言ってなかった?」

「ああ、確かにそうなんだが。最近の魔物の増加に伴うように、ダンジョンがまた発生し始めている。南の侯爵領や伯爵領でも、既に発見が報告されているんだ」

「え、ダンジョンって、消えたり現れたりするものなの?」

「はい、テリュース様。詳細は私には分かりませんが、そういうものだと認識されています」

「へぇー」


 ダンジョンとかあるんだな、この世界。

 けど、消えたり現れたりってちょっと驚くな。

 まあ、異世界だし色々あるか。

 これは爺様に聞いた方が早いかな、という訳で昼飯時に爺様に聞いた。


「お祖父さま、ダンジョンが北の子爵領に現れたと聞きました」

「うむ、まだ調査段階ではあるがな」

「レックスが言うには、8年程前に全て消えた、と?」

「ああ、確かにそうだ。──8年程前に突如として、世界に満ちる魔素が激減するという事態が起きた。原因は未だ不明なのだが、私が知る限り初めての事象だった。──そして魔素が減少するに応じるように、世界中の魔物の数も減少し、そしてダンジョンが全て消失した」

「世界に満ちる魔素ですか?」

「そうだ。世界の全てのものには魔力が含まれているが、この大気にも魔力が微弱にはある。それが魔素だ。──その微弱なものがほとんど無くなるという現象だった。その影響だろう、魔素から産まれるという説のある魔物やダンジョンが消えてしまった」

「それは人間には影響は無かったんですか?」

「あった。変調を来す者などもいたが、深刻なのは魔力の回復が自然に出来ないことだった。いつもの調子で使っても翌日に回復せず、魔力回復薬を大量に飲むなど苦労させられた」

「あー……今はそんなことないですね」

「そうだな。今は魔素も満ちてきている。それ故に、ダンジョンが世界中に再び現れ始めている現状だ」

「へー、ダンジョンは際限なく増えるんですか?」

「いや、おそらく世界の魔素量の関係だろうが、過去の事例で最大でも各国に付き5~6ヵ所という所だ」

「なるほど、ありがとうございます」


 増えるダンジョンか。

 北の子爵領に1つ、南に侯爵領と伯爵領で2つだっけ。──あれ?

 ──あの施設の地図のオレンジの点?!

 俺は自分の部屋に戻って控えておいた紙を取り出した。位置と数は合う。

 もしかすると、あのオレンジの点、あれは──?


 

◇◇◇



 それから2日後。

 北の子爵領の魔物やダンジョン騒動に、爺様自ら調査に出向く事になったらしい。

 北の子爵はマリオン公爵の寄子になるそうで、要はマリオン公爵からの爺様への要請だそうな。

 と、云うわけで爺様の講義がお休みになった俺は、例の施設へまた行ってみることにした。

 予想が正しいなら、オレンジの点はたぶん増えてるんじゃないかと思ったからだ。


 さっそく施設の中に入って、台座の板に触れて起動して投影される地図を見た──やっぱり増えてる。

 世界中に複数ヵ所。しかも、ヴァレリウスは帝国の国境から直ぐ北西、つまりウォード砦の北西辺りにダンジョンが現れてる。


「テリュース様、一体何が気になってるって?」

「このオレンジの点の場所がね、北は子爵領。南は侯爵領と伯爵領だと思うんだけど、ピンと来ない?」

「ん?この前、母さんが言ってた……ダンジョンか?え、これで場所が?」

「それでさ、前にこの施設で見た時より更にオレンジの点が増えてるんだ、次のダンジョンはたぶん公爵領だろうな」

「マジか?!ご隠居様に早く知らせないと!」

「ん──まぁ、別に言わなくても直ぐ発見されると思うしなぁ。言わなくてもいい、うん」

「え、いや。俺には報告の義務が……あるし」

「でも、報告するとしたら、ここの話もしないとダメだね?俺も怒られるけど、レックスも怒られる──ね?もしかしたら家に帰されたり………」

「──テリュース様に従う」

「よし、それじゃ砦に戻ろうか」


 まぁ、気にはなるけど、爺様に怒られるのはもっと嫌なんで!

 レックスに爺様対策をしてから、施設の通路の先へ出た。


 まだ日も高いし、魔法習熟度上げしてから帰ろうかなって思ってたら──レックスがいきなり俺を草むらに引き倒した。

 何してんだと、口を開きかけたらレックスは、口元で指を1本立てた後山道に指を動かした。釣られてそちらを見ると、山道の少し登った先で、誰かが中型の魔物三体に囲まれている。

 まだ若そうな20代半ばぐらいの深緑色の髪の青年。

 そして、この付近で魔物を見るのは砦のデカ鳥以外は初めてだった。


「『黒の、其の真理を解き示さん──鑑定』」


───────────────────

 ブイブイ   Lv 4 主属性・地

           Skill

 HP 750/ 750   超突進・小

 MP  50/  50

───────────────────

 え──何だ?見たまんま猪かな?

 前方の三匹は青年の腰近い大きさのデカい猪だ。

 あれ、警戒レベルが白──って魔物じゃないの?


「猪型の魔物みたいだな。テリュース様、どうする?助けるのか?」

「え?あれ、魔物なの?どうするって……?」

「数がいて押されてるみたいだし、助けるなら従う」

「じゃあ、とりあえず助けよう!」

「了解!『火よ、その熱量を弾丸と化せ──炎弾』」


 レックスが詠唱の後飛び出した。火魔法を食らって体が燃えて怯んでいる1頭に、腰から抜いたナイフを魔物の目に突き刺す。

 囲まれてた深緑髪の青年が驚いた顔でそちらに視線を向けた途端、その前に対面していた魔物が青年に体当たりしようとしていた。


「『水よ、凍て付く刺となり穿て──氷刺』!」


 魔物の足を止めようと放った俺の魔法は、その魔物を一瞬で凍り付かせた。凍結して止まった魔物に青年が剣を振り下ろす。


「おりゃあ、すげぇな!ありがとよ!」


 凍結した魔物が粉砕されて、薄い紫色の煙のようになって消えた。

 残っていた一体が、前足で地面を掻くと前傾姿勢で魔力を高めていた。


「ヤバい、突っ込んで来るぞ!避けろ!」


 魔物の突進を青年は叫びながらひょいと躱したが、その先には最初の一体にナイフを振りかぶったレックスが居た。


「『守護結界』!」


 俺が咄嗟にレックスに放った防御障壁で、突っ込んだ魔物が弾かれひっくり返った。そこへ剣を構えた青年が魔力をゆらりと高めて切り込んだ。


「地列断!」


 ズドーンと地面を振動させて一刀両断した。

 魔物はまた煙になって消えた。

 え?ちょっ、強いじゃんこの人?!

 ちょっと驚きながらレックスを振り返ったら、そっちもトドメを刺し終わったようで煙になってた。


「いやー、本当に助かった、ありがとうな坊達」

「なんか余計なお世話だった気もするけど、お兄さん強いよね」

「あ、いやそれが………」

「──テリュース様、ドロップアイテムってやつかな。猪肉が転がってる」


 ぐぅぅぅ─────────

 盛大な腹の音と共に青年はその場にへたり込んだ。


「お兄さん、お腹空いてるの?」

「恥ずかしながら、三日ほど食べてなくて……」


 強いのか何なのかよく分からないお兄さんは、冒険者のカイと名乗った。よく見ると、深緑髪は知性的にも見える上に整った顔をしている。

 そんなカイさんはファンリンの街で、最近畑を荒らす魔物がいてその退治の依頼を受けたらしい。

 調べていたら、山の方に向かっていたと言う情報を聞いて来てみたものの、お金が尽きてご飯が食べられなくてフラフラだったらしい。そんな時に当の魔物に囲まれてしまったようだ。モテそうなのに切ない。


「冒険者なんて言っても、今は何でも屋みたいなもんでな。一昔前は花形職だったんだが、8年程前の魔素減少で魔物も減ってダンジョンも消えて、冒険者の存在意義が消えたんだ。俺が冒険者になったのはそんな絶望的な時期だった」

「それでも、最近はまた魔物やダンジョンが現れてきてますよね」

「そうなんだよ、これでダンジョンに潜れる様になれば飯に困らなくなるかなぁってな、ハハハ」


 とりあえず、ドロップアイテムらしいお肉をその場でカイさんが串焼きにして、俺達はご相伴になった。

 数日食べてないらしいのに、いきなり固形物でも平気なのかと思ったけど余裕っぽい。


「しかし、よくドロップアイテムなんて言葉知ってるな、レックスだっけ?」

「ああ、母さんが昔ダンジョンに潜った話で、聞いた事ある」

「ん?お前の母さんは冒険者なのか?」

「いや、騎士だ」

「へ?」

「カイさん、ドロップアイテムって、そもそもどういう仕組みなの?」

「んー、仕組みっつーか、ドロップアイテムってのは魔物が落とす戦利品ってのが通説だ。普通の動物なら死体が残るが、魔物は倒すと消えて、世界の魔素に還るらしくてな」

「なるほど、確かに煙みたいになって消えたね。魔素に還る……のか」

「それだと、この肉食っていいのか?倒した証明が無くて依頼失敗になるんじゃ」

「ああ、問題ないない。冒険者カードがあるからな」

「冒険者カード?」


 カイさんは懐から、薄黄色いカード状のものを取り出した。それの表面に魔力を流すと文字が浮かんだのが見えた。討伐履歴・暦・魔物種・場所とある。


「冒険者になると貰える魔導具カードなんだが、これで魔物が消える時の魔力を読み取るらしい。高価なものらしくてな、紛失なんかしたら再登録に高額罰金の上降格処分になるんだ」

「え、凄いんだけど。これ、考えた人何者?!」


 また、転生者案件?!


「凄いだろ、冒険者ギルドの創始者がマキューリアと共同で作ったのが始まりらしい、百年くらいは前だ」

「──百……もう死んでそう」

「ハハハ、まぁ創始者は既に亡くなってる。こんな感じにカードを改良したのは割と最近らしいが。初期のカードには、読み取る機能はなかったってよ。鑑定の魔法を応用して付けたのは、共同開発のマキューリアの魔導具師だってさ」


 ああ、なるほど。

 よく考えたら、選別板とか例の施設の機能とか──謎の魔法文明機器なんかは普通にあるっぽい世界だし。

 何でも転生者の仕業って考えるのはダメだな。


 そんなこんなで、冒険者のカイさんとまったり肉を食った後は、山を降りた所で別れて俺達は砦に戻った。




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