異常者たち
ルーシとポールモール、八千代、リヒトの4名は、イーストLTASの軍港にいた。不気味なくらい静まり返る軍港は、とてもじゃないが戦争中とは感じない。
「そりゃそうだが、半世紀の繁栄を懸けるにはヒトが足りねェだろ」
「それこそ仕方ない。軍は、予備戦力をロクに持っていないからな」
「完全にアイツらの思うツボだな……。しかも、上陸作戦の内容がひどすぎる。『敵の屍を超えていきましょう』……オマエ、ふざけてるのか?」
「リヒト、私がふざけているように見えるかい?」
「見えねェぜ、社長ォ。保守に走ったら、社長じゃねェからな!!」
「だとさ。リヒト、さすがだよ」
「照れるぜ、社長ォ!」
相変わらず馬鹿みたいな発音をするリヒトだが、彼は揺り籠から墓場までルーシの言いなりになるようなヤツだ。大袈裟で、中身が伴っていない。様々な切り口から操縦しないと、リヒトはただの馬鹿に過ぎない。
「八千代の姐さんも参戦するし、おれらは最強だぜェ!!」
「リヒトCFO、お元気そうで。ルーシCEOが貴方を買っている理由も、少し分かってきました」
嫌味と皮肉たっぷりに、狐の被り物をつけた八千代はボヤいた。
「だろォ? おれってすげェからさ、社長クラスの天才じゃねェと扱えねェんだ!!」
「世界はそれを馬鹿と呼ぶ。さて、行こうか。カエルの国へ」
「あぁ」
「任せとけ!」
「もう引き返せないですしね」
*
アーク・ロイヤル少佐率いる特殊大隊〝ギガバイト〟は、最強部隊〝JPS〟の傘下に入り、ガリア北部への上陸作戦に備えていた。魔力が濃いため、望遠鏡程度ではJPSの艦隊を見破ることもできない。
「ジョン中将殿、アーク少佐が閣下にお聞きしたいことがあると」
「あぁ、通せ」
主力軍艦〝ギブソン〟艦長室の直ぐ側の個室でくつろいでいた、ロスト・エンジェルス最強の兵士ジョン・プレイヤーは、電池交換式の携帯ゲーム機をベッドへ置いた。
「よう。アーク」
「中将殿、ひとつだけ確認しておきたいです。……僕らは捨て駒ですか?」
「捨て駒にオマエやおれは含まれないよ。知名度の高いおれらがKIAになったら、市民たちは大パニックだ。それだけか?」
「だと良いんですが……」
「そんな不安がるな、若けェの。おれの下にいたほうが安全だし、ロスト・エンジェルス最強の軍艦が7隻あるんだぞ? ある意味一番安全な──」
ジョンが言い切る前に、アークはよろけてしまった。なぜなら、彼は立っていたからだ。さらに言えば、敵艦の襲撃を受けたからでもある。警報音が鳴り響く。
『敵軍艦による襲撃発生。襲撃。ただちに迎撃に当たる。JPSも動いてくれ。オーバー』
ジョンは無線機で応じた。
「カピー。JPSは総員戦闘配置だと伝えてくれ。そして、空母から戦闘攻撃機を出動させろ。オーバー」
『カピー・ザット。敵船はブリタニカのものだと思われる。相当な手慣れが乗ってるようだ。健闘を祈る。アウト』
ジョンはベッドから立ち上がり、身体を伸ばし、そのまま姿を消してしまった。文字通り、あたかもそこに、ジョン・プレイヤーという人物がいなかったかのように。
「中将? 中将殿……まさかッ!!」
アークはジョンの行動を察し、急いで階段から転げ落ちるように降りていく。
「大隊指揮官殿、どうしたんだ?」
「ミラ大尉!! ジョン中将が単騎で敵艦へ突っ込んだ!! 僕もついていく!!」
「とりあえず落ち着け、少佐殿。ほら」
ミラが指差した先には、火の粉が舞い散っていた。なぜだ? と思ったアークだが、すぐ理由に気がつく。燃え盛る火の粉の元が軍艦だったら、説明がつくことに気がついたのだ。
そして、火の粉は海の中へ消えていった。
「中将閣下は、暇過ぎて白髪が生えると嘆いてた。そんな中、敵艦が6艦挑んできた。中将殿からすれば、ワープなんてできないほうがおかしいだろう。そして、変に邪魔したら友軍射撃をくらう。だから、落ち着いてくれ」




