D-Day
それはすなわち、ジョン・プレイヤーが〝単騎〟でブリタニカ艦隊を殲滅している、というわけだ。
アークはポカンと口を開けるも、彼もジョンの強さと末恐ろしさは良く知っている。ひとりで軍集団並みの戦力、という評価は眉唾でもなんでもない。
「ジョン中将を信じるしかない、か……」
「あの方が負けるはずないさ。その可能性があるのなら、JPSやおれたちギガバイトも動いてる。この作戦の指揮官は、他でもないジョン中将だからな」
*
「宇宙空軍の衛星によれば、JPSを載せた第1艦隊はブリタニカの艦隊と対決した。そして結果はJPSの大勝利、だとさ。ルーシ」
ポールモールは魔力濃度が強まり、通信が途切れるであろうギリギリの海で、JPSの快進撃を知った。
「よろしい。これで二正面は避けられた。リヒト、あとどれくらいでつく?」
操縦者のリヒトは親指を上げる。「残り40分くらいだぜェ、社長ォ」
「なら、快適なフライトを楽しもうかね」
「代表取締役社長、いい加減詳細な作戦を教えてくれませんか? 私たちは文盲ではないので、簡素すぎる説明だとむしろ不安になります」
「あー、分かったよ」
ルーシは紙の地図で、パリーナ区画のすぐ上に赤ペンでバツをつける。今、ルーシたちの輸送機はドーバー海峡の上にあり、残り40分くらいで着くのも納得できる。
「まず大前提として、我々はノルマニアに着陸する。この輸送機には500キログラムのナパームが載せられているから、もし上陸を邪魔立てするヤツがいるのなら、ナパームと私とオマエでソイツらを排除する。無事上陸できたら、ただちに現地住民の少数迫害種族と接触を図る。衛星の観測によれば、ノルマニアにはロスト・エンジェルスを目指す〝エルフ〟や獣人が推定3万人集まっているという。ソイツらは魔術で優れるため、武器を渡さずとも闘ってくれるだろう。生き残った暁には、ロスト・エンジェルスの市民権を渡すと交渉すれば、イチコロだよ」
前世でのノルマンディーに、ルーシたちは上陸を考えていた。それはなにも、パリーナと距離が近いという理由だけではない。現地で兵士を調達するという狙いがあった。3万人に及ぶ迫害種族が一斉蜂起すれば、それだけで3個師団が生まれる。ロスト・エンジェルス連邦国防軍が、喉から手が出るほど欲しいであろう兵士が、である。
「異論は?」
「本当に3万人も集まっているんですか? ロスト・エンジェルスは〝ブリタニア〟のほうが近いのに」
ガリア領ブリタニア、現代式に言い換えるとフランス・ブルターニュ。一番、大西洋及びロスト・エンジェルスに近い区域だ。主にここから、ロスト・エンジェルスはガリアより麦等の輸入をしていた。
「八千代、オマエらしくないな。ブリタニアは別の武人皇帝が握っている。ガリアが3つに分裂しているのなら、わざわざ西部ガリア政府と闘う必要もない。そんなことをしたら、参戦国家が3つに増えるぞ」
ポールモールが付け加える。「それに、西部ガリアは唯一ロスト・エンジェルスに対して、強い悪感情を抱いていない。そんなのを刺激することはない。あとは、スパイがどれくらいノルマニアにエルフや獣人を始めとした、迫害種族を集められるかで決まる」
「そうだな。現在は3万人だが、これから更に増える可能性がある。そして、下手に少数種族を殺したら、全部台無しだ。ここは、元軍人のポールに空爆を一任した。リヒトは操縦者だから、私とオマエで上陸する……って算段さ」




