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恋愛シミュレーションゲームのお邪魔虫キャラに転生した俺。王子に婚約破棄した悪役令嬢を押しつけられる  作者: 雲乃琳雨


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16/18

16、衝撃の事実

 翌日、俺はグエンの店に行った。グエンはカウンターに座っていた。


「いらっしゃい」

「よう」


 グエンはいつもと違って、元気が良かった。グエンは俺に言った。


「バッジを乗せてみて」


 俺は棚からバッジを一つ持ってきて、グエンの頭の上に乗せた。すると紫の枯葉になった。


「キノコじゃない……!」

「キノコはやめたんだ。公式のバッジに戻したんだ」

「……それがいい。懐かしいな」


 俺はバッジを取ってつぶやいた。俺が持つと一葉になった。


「葉っぱが一枚になった!」

「ああ、それもオリジナル。恋愛してない人はそうなるんだ。デフォルトがそれだな」


 なるほど。俺は今、恋愛気分じゃないんだな……。


「? 元気ないな」


 グエンに言われて、俺は城であったことを話した。


「王子も転生者だって!? それでコルに興味があったんだ……」

「そうなんだ。俺たちのことは言わなかったけど。話だけ聞いてきた」


 それぞれが似たキャラに転生したという考えを話すと、グエンも考え込んだ。


「魔法学校の授業では、性格は魂によって違うらしい」

「環境とかじゃなくて、そうなのか。それでゲームキャラとは違うんだな」


 俺たちに前世の記憶があるのは、その続きを生きているからなのか? 記憶があるせいで、俺は前世の終わりがトラウマになっているのかも……。


「俺、もしかしたら結婚できないかも。そのほうが自分に合ってるなら、それでもいいかなとは思うけど」

「なんだよ、俺には好きな奴ができるとか言ってたくせに。——それで、一葉になったのか」

「そうだけど、結婚したいほど好きになったことがない。……だから、好きな人がいるお前が羨ましいよ」

「俺だって、そういう好きなのか分からない。——お前だって若いんだから、今決めなくてもいいだろ。……もう、なんで俺がアドバイスしなきゃいけないんだよ」


 グエンは呆れていた。


「キースはロマンチストだよな」

「そうだな。中二病のお前に相談するぐらいだからな」

「中二病言うな」


 俺は思っていたことを打ち明けた。


「前世も結婚できなかったから、今世もそうなのかもと思ってさ」

「そもそもなんで、キースは亡くなったの?」

「俺は交通事故だよ。自転車に後ろからぶつかられたんだ」

「……え、俺も自転車に乗って事故に遭った。サラリーマンに後ろからぶつかったんだ」

「え?」


 俺は驚いた。事故に遭ったという言い方が不自然だったが、グエンに近寄って指を向けた。


「……まさか、お前が——?」

「もしそうなら、ゴメン!」


 俺が近づいて手を上げたことで、グエンはとっさに両腕で頭をかばった。


「俺も仕方なかったんだ。赤いスポーツカーにぶつかられたんだ!」

「! ……そうなのか」

「歩道は混んでたから車道を走ってたら、俺も後ろからぶつかられた。死んでから、赤いスポーツカーが電柱にぶつかってたのを見たんだ。それで、あの車に飛ばされたんだと思った」


 俺と同じだ……。俺は自分の周りしか見ていなかった。まさか、別の事故があったとは!


 ——赤いスポーツカー? ウルフレッド……あれ? 記憶がよみがえった。記事で見たことあるぞ……、もしかして……。


「そのスポーツカー、王子じゃないのか?」

「——え? まさか?」

「ゲーム制作者のコメントに、王子の名前は憧れのスポーツカーから付けたって書いてあったんだ。今は廃業したウルフ社の赤いスポーツカー、ウルフレッド。ゲームが人気になったから、大手メーカーが限定で復刻モデルを作ったって、SNSで話題になってた」

「!」


 あの車、一台八百万円はする。無職がとか言ってたが……、あのヤロ~、前世もボンボンだったのか! なんて強運!


 ——俺は心の中で、笑いながら口から血をたらした。……もう絶対あいつには関わらねぇ~。


 横を見ると、グエンが小さくなって、ぽろぽろと涙をこぼしていた。


「ごめん……」


 グエンがぽつんと言った。……俺も逆の立場なら、同じ気持ちだ。俺は慌てて言った。


「大丈夫だ、俺は怒ってない。済んだことだし。——悪いのは王子だ。あいつは何も考えてないヤバイ奴だから、お前も気をつけろよ」

「うん、うん」


 グエンは涙を拭きながら頷いた。グエンは外見ワイルド系イケメンなのに、涙もろいな。まだ思春期だし、情緒不安定なのは仕方ないか……。

 よく考えたら、黒キノコも紫の枯葉に集約されてるから、こいつはまだ病んでるんだよな。俺や王子と違って繊細なんだろう。


 俺はグエンをなだめながら、考えていた。俺たちは同じ時に死んで、共通点があのゲームだったんだ……。偶然だろうけど、問題はゲームが進行しているということだ……。



 城の会議で、婚約についてウルフレッド王子が呼ばれた。王子は奥の席に着いて聞いていた。大臣の一人が言った。


「マレルタ公爵令嬢には問題がありませんでした。また候補にされても問題ないでしょう」


 ゼレツ公爵が言わせたのだろう。公爵は目を瞑って腕を組み、成り行きを聞いていた。王子は一瞬眉をひそめたが、姿勢を正すと無表情で言った。


「彼女とは上手くやっていける気がしない。側室を持ってもいいのなら、マレルタ令嬢と再び婚約してもよいです」


 会議の場はざわめいた。近年では王室に側室が存在した記録はない。王子は涼しい顔で会議の間を出て行った。



 王子は王妃に呼び出された。王妃は執務室のソファに座り、王子は手を後ろにしたまま立っていた。早く出て行きたかったからだ。ミアも王子の後ろにいた。


「ウル、なぜあんなことを言ったのです!」

「キース令息のアドバイスです」

「——何ですって! キース、とんでもないことを!」


 王子は王妃の言葉を待たずに、さっさと出て行った。ミアは王妃に、


「キース様はそんな方ではありません」

「ミア」


 王妃は立ち上がると、ミアをそっと抱きしめた。そしてミアの両肩を持ち、目線を合わせた。


「ミア、男に騙されてはいけませんよ」

「……はい」


 王妃の静かな圧力に負けて、ミアはおとなしく返事をした。


(ごめんなさい、キース様。色々伝わりませんでした。……でも私は信じています)



 俺は父さんから呼び出された。父さんは机に両肘をつき、手を握っていた。


「おい、お前。王子に側室を持つように言ったらしいな」

「ブホッーーー!」


 父さんの言葉に、俺は吹いた。


「王妃がたいそうお怒りだぞ」

「そんなこと言ってませんよ!!」

「そうだろうな。お前はフェミニストだからな。やれやれ」


 あの王子!! とんでもないことをしてくれやがって! これでまた俺の婚活が遠のいた。俺は心の中で笑顔を引きつらせた。


 もういやだ! 俺は田舎に引きこもることにする! 王子、いやゲームに巻き込まれるのはもうごめんだ!!


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