15、王子の呼び出し
コルと別れてからグエンの店に来た。
「いらっしゃい。なんだ、キースか」
「大変だぞ」
俺は王子の手紙のことをグエンに話した。グエンはキノコのように顔色が紫色になった。目は潤んでいる。
「どうしよう。コルが王子に見初められたのか……? うっ、うっ」
そう言うと突然泣き出した。え~~~!? 中二病だから?? 俺は戸惑った。
「俺にはどうにもできない。王子は主人公だから……」
そういうことか。王子があれでも、最終的に誰か一人を選べば上手くいく可能性がある……? いやいや、それはないだろ。
「王子はコルに会ったとき、興味を示さなかった。コルも王子は邪悪だと言ってたから、あの二人はないだろ」
「本当か!? コルがそう言ったのか?」
「ああ」
「そうか……」
グエンは少しほっとした様子で、手で涙を拭いた。俺はグエンに言った。
「コルも魔法使いだから、自分の身は自分で守れると思うけど。お前はいつもコルを観察してるから、何かあったらお前が守ってくれよ」
「うん、分かった。俺も気をつけておく。知らせてくれてありがとうキース」
「うん」
俺はグエンに微笑んだ。家に帰ると、早速王妃に手紙を書いた。
後日、俺は王子に呼び出されてしまった。俺も、どうしてコルをそばに置こうとしたのか気になっていたから、呼び出しに応じることにした。
結局また会うことになったな……。
城の応接室に案内された。メイドに続いて俺が中に入ると、王子は両腕と足を組んで、ムスッとして座っていた。わあ~、機嫌悪そう!
王子はメイドに手を振って人払いをした。メイドは外へ出て、俺は王子と二人きりになった。嫌な感じだ。テーブルにはお茶もない。俺は立ったままにした。
「お前、母上にチクったな」
それを聞いて、王子なのに俗っぽい言葉を使うなと思った。やはり王妃は知らなかったんだな。俺は質問に答えなかった。
「お前は本当にお邪魔虫キャラだな。俺の邪魔ばかりしやがって。お前には一度はっきりと言ってやろうと思ったんだ」
ん? なんか懐かしい響き。俺が邪魔したのは、コルのときだけだが?
「お前には分からないだろうが、ここはゲーム世界なんだ!!」
は? ……。
何だってーーーー!! 王子の突然の告白に、俺は目が皿のようになった。
——こいつ転生者だったのか!? 俺は言葉が出ないように、心の中で口を押えた。それで俺のことが嫌いだったのか!
俺が転生者だと気づかれないほうが、有利だよな? ……多分。
王子は俺にお構いなしに話し続けた。
「俺はお前に邪魔されて、一度もゲームをクリアしたことがない」
下手すぎるだろ。あのゲームは割と簡単だ。だから、隠れ攻略対象や、隠しキャラがいて楽しめるんだ。——って、ことは隠しキャラのことは知らないな。
「俺は全員と仲良くなりたかったのに、全く上手くいかなかった」
そりゃそうだ。ハーレム型のギャルゲーと違って、一人と恋愛する正統派の恋愛シミュレーションゲームだからな。キースのアドバイスも、攻略対象一人ずつしかない。攻略対象たちもみんな清楚系だ。この異世界では違うようだが……。
このゲームは幅広い層にも受けて、アニメ化にもなったんだよな。それで女性にも人気が出たのだ。
「でも、王子が主人公なのはこのゲームだけだった。あとは、うだつの上がらない普通の男が主人公だからな」
まあ、そうだよな。大体はユーザーに当てはまる普通の男だろう。主人公のステータスが高いほうが珍しい。
「王子は最高だ! 無職でも王子だからな。加えてこの美貌! このゲームには感謝しているよ。ただのギャルゲーじゃあ、ハーレムで終わりだからな」
王子は顔を称賛するように顎を指で持った。——こいつ仕事してないのか? 俺も仕事してなかったけど、お前は国民のために働け。
「攻略対象はほとんどダメだな。マレルタも聖女も、結局自分勝手な女だった。カタリナは思ったより変な女だったし」
カタリナのことは思わず吹き出しそうになったが、何とかこらえた。そうそう、攻略対象の話を聞かせてくれ。
「ミアとコルはまだ子供だからな。若いうちからそばに置いた方が従順になるだろ」
そういうことか。ていうか、異世界でもハーレムエンドを目指してるのかこいつは……?
「あの~、私が王子に嫌われている理由が、そのゲームと関係していたということですか?」
「ああ、そうだ。やはりお前には何でも話してしまうな。——ここで、お前が好き勝手遊んでいるのが羨ましかったのもある」
「そうですか。でも、それはもう止めました」
やっぱりそういう理由か……。カタリナに言ったことを自分で答えたな。
「そのようだな。まじめに仕事をしていると聞いた」
——これは、嫌われている件は解決ということでいいのか?
「コルをそばに置こうと思った理由もそのゲームですか? 前回お会いしたときに、コルや魔法に興味があるように見えませんでしたが」
「そうだな。子供には興味はないが、コルトミアは将来、美人になるだろう」
ゲームキャラにこだわってるんだな。
「恋人は一人じゃないということですか?」
「王子なんだから一人なわけないだろ? お前が言うなよ」
ミアは多分、王子の恋愛を知っているんだろうな……。
「私の恋人はいつも一人です!」
「え? 意外と真面目だったんだな」
「いや、真面目じゃないですけど」
そのときは浮気相手だったから。
「ああ、そうだったな。複数は俺の勘違いだったのか。思ったよりつまらない奴だな」
ハーレムに比べたらね。
「王子は複数の方と付き合うおつもりなんですか?」
「そうだ。王子なんだから、側室が十人ぐらいいてもいいだろ」
恋人じゃなくて、側室が!? 俺はまた目を見開いた。うわ! バカなの!? 本気でハーレムを実現しようとしている……。
この国では側室すら聞いたことない。だいたい、王妃が許すわけがない! ハーレムなんて、国庫を使い果たして滅亡しかないだろ。これがこの国の王子なんて、ヤバすぎるだろ。コルの言ってたことは、当たってたな……。
「……たくさんいると、争いが絶えませんよ」
「……! そうだな。いいことを聞いた。役割を認識させたほうがいいな。さすがキースだ」
え? 何が? 何か、嫌な予感がする。とんでもない発想を俺の助言とか言いそう……。もう帰ろう。
「そろそろ、帰ります」
「ああ、用は済んだ。帰ってくれ」
王子は右手を俺に向けて払った。俺は急いで部屋を出ると、ほっとした。帰りの馬車でそれぞれの転生キャラのことを考えた。
王子は主人公だから、聖女と同じでハーレム男だった……。そりゃ二人は同じ考えだから、上手くいくわけないよな。
グエンは一途な男で、魔法使いになった。俺は、誰も好きになったことがない。だからキース。
それぞれが似たキャラに転生したんだ。ゲームキャラとは性格は違うけど……。
俺は自分がキースになったことが気になった。




