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第三話


「今日もいるんですね」


先輩はやっぱり寝転がっている。


「大体おるやろ」


「もう屋上に住んでるんじゃないですか?」


「うち家賃は払ってへんけどな」


先輩はクスッと笑う


「……そういえば」

「先輩って友達いるんですか?」


「おるよ」


「え、本当ですか?」


「ひとりだけ」


「誰ですか?」


「今増えたよ」


「え?」


「あんた共犯やろ?」


「……それって友達なんですか?」


「友達や、たぶんな」


♦︎♦︎♦︎

放課後


先輩はいつものように寝転がり、俺は買ってきたジュースを一本渡す。


「…ありがと」


小さく言って、先輩はキャップを開けたその時——

ぽつ、ぽつ、とフェンスに雨粒が当たる音がした。


「あー……降ってきた」


先輩が面倒くさそうにため息をつく。


「最悪や…今日はもう帰るわ、後輩くんも降りるん?」


俺は鞄を確認して、はっとした。傘を入れてない。

空はみるみる暗くなり、雨足が強くなっていく。

先輩はゆっくり体を起こし、自分の黒い傘を手に取った。


「…はぁ。しゃーないな。あんた、傘ないやろ?」

 

 先輩は小さく息を吐いて、自分の手元を見る。

 黒い傘を持っているのに、なぜか開かない。


「……傘、持ってき」


「え、でも先輩……」


「あんたも濡れるやろ」


 そう言って、何でもないことみたいに雨の方へ一歩出た。


「……すみません」


「礼ならいらんよ」



「……なんでそこまでしてくれるんですか?」


「濡れて風邪ひかれたら、まためんどくさいことになるし。」

「別に優しさちゃうで」


「……せめて一緒に帰りませんか?」


 先輩は少し考えるようにしてから


「しゃーないな、そんなら帰ろか」


そう言って、先輩は傘を開きながら、俺の肩を軽く押した


並んで歩きだす

やっぱり傘一本じゃ高校生2人なんて入るはずがなかった、


結果的に、俺だけが傘の内側に入る。

先輩の肩はすぐに濡れ始めた。

駅に近づくにつれて、先輩の肩は完全に濡れていた。


 会話はほとんどない。

 でも歩く速度だけは、なぜかぴったり合っている。


 沈黙が続いたあと、先輩がぽつりと言った。


「帰りもひとりなん?」


「え?」


「昼もそうやったやろ」


 事実を確認しているだけの口調なのに、妙に答えにくい。


「……まあ、基本は」


「友達とかは居らんの?」


 今度は少しだけ踏み込んだ質問だった。


「いますけど……帰りはだいたい一人です」


「ふーん」


 駅前に着くころには、

 先輩は完全に濡れて、俺はほぼ無傷だった。


「……ありがとうございました」


 少し間を置いて、先輩が振り返る。


「明日もこの時間やろ」


「え?」


「だいたい分かる」


 それだけ言って、別の方向へ歩いていった。

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