冬の花 14
*たくさんある作品の中から見つけていただいて、お読みいただきありがとうございます*
前世で大好きでたくさん育てていたクリスマスローズ。それと同じ花が精霊草として咲いたことで、私の気分はとにかく最高潮に上がりまくっていた。というか、私ではなくあやめさんが、という感じではあるのだけれど。
でも、そのあやめさんの気分に左右されてる私もいて、気付けば私もクリスマスローズと同じ精霊草の花が可愛くて、大好きになっていた。なんて単純!
それから、一つ精霊草に大きな変化も現れたことで、余計に私のテンションも上がる一方でもあった。
「お嬢様、精霊草への魔力を注ぐ実験ですが、魔力を注ぎ続けていると花は枯れずに咲き続けるものなのですね」
なんてタイミングで詳しく話してくれるのでしょう、アシュリーありがとう。
そうなのだ。精霊草に魔力を注ぐことで、花を咲かせることが出来ると分かったのだけど、そのまま魔力を注ぎ続けていくと、精霊草の花は枯れることがないのでは? という一つの疑問に行き当たった。
精霊草の花が咲いて、お父様に相談をした後に、お屋敷の使用人の皆の協力を得て実証実験…になるのかな? 花が咲いた後も続けて魔力を注いでもらっていた。当然私の部屋の精霊草も。こちらは主に私が、どうしても無理な時はアシュリーが。
花が元気に咲き続ける期間というものは、どんな植物にもあって、植物それぞれでその期間は違ってくる。
クリスマスローズだと、およそひと月近く。切り花にしても、一週間から十日ほどと長く持つ。だから、それを目安にして魔力を注いでみる期間を区切ったものと、一切そういうことを考えずに魔力をずっと注ぎ続けるものを、ただなんとなくだったのだけれど試しにやってみたところ、魔力を注ぎ続けた精霊草は、ずーっと元気に花が咲きっ放しになった。
因みに、切り花にした場合も当然のように試してみたのだけど、クリスマスローズよりは長く持つことが分かった。ただし、精霊草から切り離されたせいなのか、どんなに魔力を注いでいても二週間くらいで枯れてしまったので、これが限界なのだと分かった。
実際にこれはどういうことなのか、私には理屈が分からなくて、目の前にちゃんと証拠があっても、前世の魔力も魔法もない世界での記憶がガッツリある私はどうにも理解が出来ないでいた。だけど、一緒に魔力を注いでいたアシュリーはなんだか納得してる様子だし、もっと言えばお父様もお母様もお兄様方も皆一様に深く頷かれていた。
(私だけ理解出来ないという、この仲間外れ感…)
内心そんなことをぼやきながら、精霊草の花を咲かせ続けるには、単純に魔力を注いでいればいい、というこの世界でなら誰でも可能な条件を見つけ出した私。
精霊草の花を咲かせるというだけのことなのに、「特別登録」という前世での特許のようなものをお父様はしっかり申請してた。私の名前で。
いや…それは、どうなのかしら?
トワ様が持ってきたお土産の水晶に魔力をこめて魔石にしたそれをたまたま精霊草の根元に置いて、そこから花芽がついて、精霊草には魔力を注げば花が咲くことが分かっただけのこと。もっと言えば、精霊妃カナ様の加護をいただいたことで、私自身が作り出す魔力量が一気に増えたことで体調を崩してしまったから、だったら精霊草に魔力を注ぐことで、体内の魔力を消費してしまえ! というだけの理由で始めたことだったから、魔石だけでなく、直接人の魔力を注ぐことでも精霊草の花が咲くことも分かったことで、お父様にとっては有用なものとして認識したのだろうと理解はしたけど、どういう形で有用なのかは私には把握できなかった。
魔力のあるなしが、ものの考え方にも関わる…のはなんとなく理解できた。前世の記憶のせいで、魔法も魔力も面白いとは思っても、今世ではそれが身近なものなのにどこか絵空事のようにも感じる瞬間がある。
今は魔力制御も学んでいるところだし、徐々に実感として魔法を感じ取れるようにはなってきているけど、どこかやっぱり架空のもののように感じてしまう。どれだけ前世の記憶が大きいのだろう。やれやれ、という気分にはなってしまうから、余計に…なのだと諦めてもいる。人間諦めも肝心よね! そういうわけなので、私自身は魔法については楽しむ気満々でいるし実際楽しんでいるけれど、ほぼほぼお客様感覚が続いている。この感覚がいつか自分にとって当たり前に変わったら、その時初めてこの世界の、今世のこの場所で生きてる人間の一人になれるんだろうと思う。…まぁ、区切られた時間を思うと、その日が来るのかは分からないけれど。精一杯生きる気しかありませんけども!
話を戻さなくちゃ!
精霊草の花が咲くこと、そして精霊草の花を咲かせ続けること、どちらも魔力が必要だった。ただその単純な理屈を明らかにしたからだろうか、ラロック伯爵家は『精霊草の貴族』のような呼び方をされるようになるのだけど、それはまぁ…もっと後のお話。
その前段階のお話が今日のこと。お父様は領地もある貴族だけど、王城でもお仕事をされてるらしい。詳しい話をちゃんと聞いたことがないから、実はわかってない。…親の仕事がどういうものかなんて、詳しく知りたがる子供もいるとは思うけど、私は前世でも特別関心を持たなかったタイプだったから、今世もそういう感じ。つまり興味がない。なんて親不孝! とか、思わない。…前世の両親は、そういう子供の好奇心や興味に対して「面倒」と思ってる人達で、いつも適当にあしらわれてたのも原因かもしれない。ちゃんと話をすべき、という場面ではとことん話をしてくれるけど、どうでもいいという判断をすると、とことんスルーされるし、相手にされたないことも多々あった。なので、今もそういうのがじわり滲み出るのか、その辺りはあやめさんと同じ感覚になってしまってる。……お父様、興味なさ過ぎてごめんなさい。一応謝っておきますね。
で、お父様のお仕事だけど、実は王城であらゆる部署の下請け的なお仕事を担当されてると聞いた。
…庶務業務的な感じ?
ついでに、お父様は王城にある仕事部屋に精霊草を持ち込んでいて、そこでも魔力を注いで、花を咲かせているらしい。精霊草は魔力さえ注げば季節を問わず花を咲かせることが出来るため、部屋が明るく華やいで良いのだと仰っていた。
まぁ、そのおかげで王城内でも精霊草は花が咲くという事実と共に、ジェイド第二王子殿下の婚約者がこの事実を発見したという話になっているらしい。
どうしてその話が広がったかと言えば、私にとっては青天の霹靂と言ってもいいかもしれない事実があったから。
モンフレール王国には王家の次に家格の高い貴族として、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士爵とある。その貴族の中でのトップに君臨するとある公爵家の御令息が魔力過多で幼い頃から臥せることが多い、ということだった。しかもその公爵家の御令息はジェイド殿下と同い年、つまり私とも同い年なのだけど、家格的にもジェイド殿下の側近候補だった。病弱ということで、実際にはそれは適わなかったのだけど、私が精霊草に魔力を注ぎ、花を咲かせたことで一時的な魔力過多で体調不良に陥っていたのを無事解消できた、という話をお父様経由で公爵様が耳にされたそう。そこで、もうありとあらゆる手段を取ってきていた公爵家としては、これをしないという判断はなかったようで、御令息のために早速精霊草の鉢植えを用意し、魔力を注ぐよう御令息に伝え、実践されたという話。なんていうか…予想以上の結果となり、御令息はあっさりと体調を回復されたとか。
その話をお父様からお聞きしたときに、正直驚きすぎてずーっと目が見開きっ放しでした。その後、目が乾いてちょっと痛くなったのは、自分でもおばかだな、なんて思ったけど。
お父様からは、公爵様からのお礼状が届いたことをお聞きした。
その内容が、「ラロック家は息子にとっても公爵家にとっても恩人にあたる、ということで何か困ったことがあれば是非公爵家に頼ってほしい」というような内容だったと。
そういうわけで、その公爵家がラロック家の後ろ盾のような形になったらしく…私とジェイド殿下の婚約に関して「家格が合わない!」とか「精霊の加護なんて本当にあるのか?」とか色々と文句を言いたい勢にとっては、文句が言い辛い状況になったらしい。
「ありがたいのか、ありがた迷惑なのか、なんとも言えない状況なのかもしれない」
と、私は思うのだけど、実際はどうなのだろう?
ジェイド殿下との婚約がなければ、息子と婚約させたかった、という公爵様のお言葉も聞こえてきたので、殿下にしろ公爵様にしろ、私自身は「ご遠慮申し上げたい」一択なのだけれど………お相手が公爵様ご自身だというのなら、一考に値するのでは? と思ったことは内緒の話。私と同い年の御令息のいらっしゃる公爵様。御令息は第一子ではなく、第二子。つまり、公爵様はお父様とほぼ同年代だということが分かる。年上だったらもっといい! まぁ公爵様には最愛の奥様がいらっしゃるわけで、仲の良いお二人というのは割と有名で、それもポイント高い理由。奥様に一途だなんて、素敵過ぎる!
冗談は半分くらいにしておいて、あやめさんの記憶がある私と言う存在は少々問題がないわけじゃない。ふと前世の記憶を利用して、何かしら無双しようと思えば……できない。前世での記憶が、それほど…ないな、と分かってしまった。
この記憶というのは、例えばスマホの仕組みとか、扇風機の羽がどうなってるかとか、そもそも電池の仕様とか、根本的に何も知らないという現実に思い当って、「無理だ」と悟った。
そういうわけだから、私自身には前世の記憶があって、便利な世の中だったことは把握していても、それらを再現できるほどの知識はないし、仕組みも分からない。分からないから、現状維持の世の中にいるしかない。それでも前世でのことから「こうしてみれば?」みたいなことをサラリと言ってしまうとまずいだろうと思うことが…ないわけじゃないから、お口チャックは大事だなと思っている。
そういう訳で、私自身は改めてアイリスという貴族令嬢でしかなくて、ちょっと残念に思ってしまうのだった。無双したかったのは本当内緒だから、この事はくれぐれもご内密にお願いします。
初めましての方は、初めまして。
いつもお読みくださる方には、ご無沙汰しております。
体調は問題なく過ごしておりますが(体力なさすぎ人間なので、すぐヘロヘロになる)時間の作り方が下手過ぎてPCの前に座る時間がなかなかとれていませんでした。
なかなかまとめて先の分までストックを、というのも難しいのでなんとか時間を捻りだしてPCの前に座れるように頑張ってる最中です。
久しぶり過ぎて、情けないわけですが…。
ともかく、次回は時間を置かずに投稿できるよう精進いたします。
ラストまで流れは決まってるんですが、途中の空白地帯がいくつかあって、その辺りの調整どうしよう?とか思うことも多いんですが、今回のネタのせいで寄り道が増えそうです。
早くに終わらせたい願望が強いのに、ネタ増やしてどうするの?と内心思ったことは内緒です。
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次回もがんばります( ´ ▽ ` )ノ




