4.53.146 聖勇者と至聖女
いよいよ第4章の本編部分の最終話です。
というわけで、少し長めですが分割せずに一気にいきます。
まずはネタばらしの説明パートから。
■カムナ3019年 5月8日 火曜
◎ハルト
俺たち3人は押し黙ってユウナの打ち明け話に耳を傾けていた。
あまりにも神聖な雰囲気に口を挟むことすらはばかられたのだ。
まぁ、ポンコツ幼女は途中で夢の国に旅立っただけなんだけど、、、
とはいえユウナの告白の内容は、その神聖さを裏付けるには十分なものだった。
もともと俺がユウナから聞いていた身の上話に嘘はなかった。
確かにユウナはクミヤマ村出身の村娘で、歴史学者の父親に育てられたのだから。
ただしユウナは本当は準国民の村人の娘ではなかったのだ。
ユウナの本当の両親はカムクラ王国の国王と正王妃。
第3王女であるユウナ、いやユナ姫は、赤ん坊の頃にクミヤマ村の里親の元に預けられたのだそうだ。
何でもユウナは生まれつき特別な素質を備えていたらしい。
正王妃と親交のあった元教皇派のセイスイ権大僧正が、ユウナが生まれた直後に気が付いたそうだ。
教皇派が崩壊した中で、クサナギ家の支援により唯一中央に踏みとどまっていたセイスイ権大僧正。
彼にとって、ユウナの持つ力は奇跡そのものだった。
カムナ教会にとっても王国にとっても、圧倒的な影響力を及ぼすほどのものだったからだ。
それこそ世界中のありとあらゆる権力構造を根底から覆すことが予想された。
ユウナが正7歳まで育って洗礼を受け、その力に目覚めれば、全世界に対して支配的な力を持つことになる。
そうなれば実家であるクサナギ家が絶大な権力を握ることは確実だった。
さらにはセイスイ権大僧正によってかろうじて存続していた教皇派も、一気に盛り返すことができる。
そしてそんな未来を絶対に受け入れられないだろう勢力があった。
残り3つの四大華族クナイ、トウイン、キノミヤや、カムナ教会を牛耳る大僧正派などだ。
もしユウナの力が彼らに知られてしまえば、洗礼を受ける前にその身を狙われることは避けられない。
そして王女として人前に立つようになれば、ユナ姫の特殊性が公に知れ渡るのは時間の問題となる。
そのまま王女として育てることは不可能だった。
そこでユウナは洗礼を受ける正7歳までの間、第3王女ユナ姫ではなく村娘ユウナとして育てられることになった。
不在となる第3王女の身代わりには、クサナギ家の傍系華族からユウナの1ヶ月後に生まれた赤子が選ばれたそうだ。
血の近い親戚から選ばれたのは、できるだけユウナとそっくりになるように育てるため。
その子はもとはユウナの従者となるべき生まれだったが、新たにユウナの影武者としての使命を担うことになったのだ。
そして特別な力など持たないただの第3王女として、ユウナの代わりにお披露目された。
この入れ替わりを知るのは実母のユラカ正王妃と、彼女が認めたごく一部だけ。
カムナ教会の中でも、ユウナの特異性を見出したセイスイ権大僧正ただ1人の胸に秘められた。
さらには父親であるカムクラ国王にさえ秘匿されたそうだ。
クサナギ家出身の正王妃とクナイ家出身の第2王妃に対して、国王は中立の立場を崩していなかったからだ。
国王は寵愛する第3王妃に入れ込むあまり政治には全くの無関心だったことも、理由としては大きかったらしい。
こうしてユウナは正王妃の心から信頼する知人に預けられた。
それが歴史学者をしていたユウナの里親となる人物だった。
その妻も王城で働いており、クサナギ家との親交も深かったそうだ。
ユウナはその夫婦の娘として、王都のすぐ近くにあるクミヤマ村で人知れず育てられた。
王族に必要な教育も、仮の両親から十分に受けることができたという。
護衛としては優秀な王国兵士が、村人に扮して四六時中見守っていたそうだ。
さらにはユウナに専属としてつけられた王国魔術師が、王都から頻繁に様子を見に通っていたらしい。
そのユウナ専属の従者がカイトだったという話には、俺もリリナも驚かされた。
そうしてユウナは村娘として順調に育っていく。
そのまま正7歳になり洗礼を受けさえすれば、もう誰も手出しできなくなる。
そのときユウナ本人に真実を告げ、第3王女として迎える予定だったのだ。
だがその洗礼式の直前、クミヤマ村は魔物の群れに襲われた。
半数以上の村人が殺され、村は壊滅した。
ユウナの家族も、隣人のふりをした護衛兵士の一家も、みんな命を落とすこととなった。
それでも彼らの命を懸けた奮闘により、ユウナだけは間一髪でカイトに助けられた。
その後ユウナは王都に連れていかれ、実の母親であるユラカ正王妃から自分の素性を知らされたそうだ。
それと同時にユウナはカムナ教会の洗礼を受け、秘めていた力に目覚めた。
セイスイ権大僧正が、赤子の時点で見出していた力。
それこそが、、、神託の巫女姫の力だった。
圧倒的なまでの、ステータスの成長率補正。
回復魔法や聖魔法など、ありとあらゆる魔法への適正。
超級以上へ至る扉を開く、成長上限の開放。
それらはいずれも勇者や聖女にしか与えられないはずの力。
いや勇者補正と種類は同じでも、その効果は遥かに上位のものだった。
それこそ容易く聖級に到達してしまうほどに。
今になって打ち明けられて驚いたのだが、なんと元のユウナは本当は神級に届きそうなほどのステータスを持っていたそうだ。
だがそんな並外れた力ですら、神託姫にとっては副次的なものでしかない。
ユウナが得た最も重要な能力。
歴史的にもごく稀にしか前例のないとされているらしい能力。
数十年、いや数百年おきに現れ、その度に王国や教会を揺るがすほどの能力。
それは神託、つまり『カムナの意思』からの言葉を授かることのできる力である。
『カムナの意思』とは、初代聖勇者ホノカの遺物。
ホノカが子孫たちに魔王と戦う力を引き継がせるために残した、カムナ教会の力の源。
カムナの意思については、俺は聖勇者選定に用いられるということくらいしか知らなかった。
だがユウナの話によるとカムナの意思こそが、教会の持つ奇跡の力を成り立たせているのだそうだ。
つまりカムナの意思とは、人類とカムナ教会の持つ全ての力の根源なのだ。
そのカムナの意思はあくまでモノでしかないが、名前通り本当に意思を持っているらしい。
そして自ら言葉を発することはないが、特別な人間に対して『天からの声』を授けることがあるそうだ。
それこそが神託であり、ホノカが未来に遺した叡智、ホノカ本人からの言葉に他ならない。
実施に神託の内容は、未来を指し示す予知に等しいという。
ユウナが初代聖勇者ホノカを神聖視する理由が理解できた。
ユウナは幼い頃からホノカの声を聞いて、未来を知らされていたのだ。
神託の巫女姫として覚醒したユウナは、カムナ教会の内部で少しづつ影響力を強めていく。
セイスイ権大僧正の協力のもと崩壊していた教皇派を立て直し、大僧正派に対抗できる支持基盤を確立した。
悪事に染まりきった教会上層部にとってでさえ、神託姫の力は絶対のものとして神聖視されるに十分だったのだ。
カムナ教会でも神託姫の誕生を知るのは、中央に所属しており、なおかつ高い僧階にある者に限られていた。
だがそれでも若手を中心に少なくない数が、大僧正派からユウナに鞍替えした。
それまでは大僧正の直々の後継者であり、次代の大僧正候補として、アオイが教会の中心人物となっていたらしい。
いや神託姫の存在を知らされていない一般の僧侶たちからすれば、今でもカムナ教会の姫はアオイなんだという。
だが教会上層部の半数近くは、今では神託姫ユウナを中心とする新教皇派についているそうだ。
さらに実家のクサナギ家がユウナの後ろ盾となっていた。
神託姫ユウナが第3王女であることは依然として秘密にされていたが、大僧正にだけは正王妃から直々に明かされたそうだ。
大僧正が絶対に神託姫ユウナに手出しできないよう、念を押すために。
大僧正も自分の立場をさらに悪化させるこの情報を漏らすことはなく、ユウナに対するあらゆる企みを諦めたそうだ。
当然ながらユウナが神託姫であることは、教会の上層部以外には秘匿された。
神託の存在も神託姫のことも、カムナ教会およびカムクラ王国の中枢だけが知る極秘事項だったからだ。
確かに俺だって神託の巫女姫なんてものの存在など、噂ですら聞いたことがなかった。
リリナが知っていたのも、ちょっとした『抜け道』を使って教会の極秘情報に目を通していたからだそうだ。
ともかくユウナは全てが極秘の存在であり、神託姫としても第3王女としても身分を明かせない。
そんなユウナが世間的に名乗れる立場は、あくまでクミヤマ村の村娘でしかない。
いつの日か聖勇者選定に参加するためには、表の身分を作り上げておく必要があった。
そこでユウナは教会で足場固めをする傍ら、故郷に戻りクミヤマ村の復興に着手する。
家族や財産を無くし絶望の淵にいた村人たちにとって、死んだと思われていた自分たちの『聖女』の生還は希望の光だった。
しかもその少女は、外見だけではない、本物の聖女の力を手に入れて帰ってきたのだ。
『兵士に助けられたが瀕死の状態で、治療のために王都に搬送されていた。無事に傷も癒え、洗礼とともに大きな力に目覚めて、村を救いに戻ってきた』
数週間ぶりに帰ってきた少女が口にしたその話を疑う村人はいなかった。
ユウナが奇跡的な力を見せると、村人たちの聖女への希望は確信に変わった。
彼らの聖女は尋常ではない回復魔法で村人を治癒した。
荒らされて収穫できなくなった田畑を、聖魔法の祝福で蘇らせた。
襲ってきた魔物を、強力な光魔法で一掃した。
一度は壊滅したクミヤマ村だったが、瞬く間に復興を遂げていく。
いつしか以前の貧村とは似ても似つかぬ立派な村へと変貌した。
そしてユウナはクミヤマ村に留まらず、周辺の寒村を回って人々を癒やし、魔を祓うようになる。
身も心も美しい奇跡の『クミヤマの聖女ユウナ』の噂は、やがて王都を中心に国中に轟くようになっていく。
その名声は村娘ユウナが聖女ユウナとなるために、絶対に必要なものだったのだ。
さらにユウナは影武者の少女と入れ替わりながら、第3王女ユナとしても活動を始める。
王国の中で確固たる地位を確立していくために。
正7歳となり王族としての公務を始めた第3王女だったが、公の場に出ることはなかった。
世間には極秘の任務に就いているとされていた。
事実ユウナ、いやユナ王女は、次なる聖戦におけるカムクラ王国の最高責任者という立場に就いていたらしい。
そして王国の前線各地を視察して、聖戦への準備を整えていたのだ。
しかもその際には正王妃の跡を継ぐ形で、自らを支える基盤組織を作り上げていたそうだ。
正王妃の実家であるクサナギ家は、古くから軍部をまとめる名家だ。
そのため私兵や隠密からなる暗部組織を持っており、王国各地で諜報活動を行っていたらしい。
ユウナは第3王女として王国各地を巡り、聖戦の準備と並行してクサナギの諜報組織を拡充していった。
正王妃やクサナギ家の支持者を自ら訪ね歩き、己の力と理念を訴えていく。
そうやって各地を治める華族家から支援を取り付けたユウナは、人材や情報網をクサナギの暗部に取り込んでいった。
一華族家の私兵でしかなかった暗部集団は、王国中に広がる巨大な諜報機関に変貌していったそうだ。
ユウナを姫として動く世界最大の暗部組織、『カムナテ』に。
クミヤマの村娘ユウナとして、カムナ教会の神託姫として、第3王女ユナ姫として。
3重生活を送りながら、その上さらに聖女として聖戦に参加するための鍛錬も精力的にこなす。
話を聞くだけでも恐ろしいほどの激務を10年以上も続けながらも、ユウナは立ち止まることはなかった。
それはユウナ自身に対する特別な神託があったから。
なぜユウナに神託姫の能力が与えられたのか?
それはユウナもまた、特別な役割を担っていたからだった。
『新たなる秩序』。
それは過去3000年もの間、幾人もの神託に何度も登場した言葉らしい。
そして過去の神託の多くは、『新たなる秩序』を実現するために必要な行動を指し示すものだったらしい。
そしてそれらの神託に従った結果、聖戦に勝利したり、飢饉を乗り越えたり、人類は何度も滅亡の危機を乗り越えてきたという。
だがユウナに下される神託には、単に『新たなる秩序』に言及するだけの、これまでのものとは根本的に異なる一節があった。
3000年の歴史で初めての、多くの者がずっと待ち望んでいた神託。
すなわち、、、
『新たなる秩序』をもたらす者が、ついに誕生したことを告げられたのだ。
「そしてわたしは、その人を支える巫女姫として生を受け、この神託姫の力を与えられたのです」
長い長い告白を終えて、ユウナは真っ直ぐに俺の瞳を見つめる。
「わたしはハルト、あなたに出逢い、あなたの道を共に歩くために生きてきました。あなたが『新たなる秩序』をもたらしてくれると信じているから、ここまで頑張ってこれたのです」
ユウナの言葉を聞いて、胸が怖いくらいに高鳴るのを感じる。
今の話が本当なら、俺の理解が間違っていなければ、俺は、、、
「ユウナ、新たなる秩序っていったい何なんだ?」
ここまでの話の流れで、うすうすわかってはいた。
だけどそれでも、どうしてもユウナの言葉で聞きたかったのだ。
ユウナもそんな俺の気持ちに気づいているのか、はっきりと口に出して答えてくれた。
「ハルト、あなたはカムナの意思から、初代聖勇者ホノカ様から、、、千年魔王を倒す存在だと予言されているのです」
ユウナの力強くて、凛々しくて、優しい言葉を聞いて、後から後からとめどなく涙が溢れてくる。
嬉しかった。
ただただ嬉しかった。
誰にも認めてもらえなくて、奇跡の力も、勇者の立場も、自分の存在すらも奪われて。
全世界から無価値だと突きつけられて、それでも自分の信念だけを支えにここまで足掻いてきた。
ケイとリリナだけが信じてついてきてくれたけど、それは何か裏付けがあるものじゃなくて、、、
だから俺の心の中は、拭いきれない不安でいっぱいだった。
そんな俺を、、、
初めて全面的に肯定してくれた。
それも、世界中の誰よりも大好きな女性が。
俺は勇者でいていいんだ。
ユウナの隣に立っていてもいいんだ。
自分の信じるままに進んで行けばいいんだ。
それは天にも舞い上がるような気持ちで、、、
いままでの苦労が全て報われた気がした。
そのままユウナと見つめ合って、もはや言葉は必要なかった。
心の奥底からユウナと通じ合えたような気持ちになる。
気づいたら俺の両目からは、熱いものがとめどなくこぼれ出ていた。
「ハルちゃん、なんれ泣いてるの?ユウちゃんも馬鹿らなぁ。ハルちゃんが千年魔王を倒すなんて当たり前のことらよ」
そんな俺たち2人の空間に割って入るのは、、、やはり空気の読めないポンコツ堕天使だった。
「らってね、ハルちゃんは真の聖勇者なんらよ」
「真のって、それはどういう意味ですか?」
ケイの言葉にユウナが戸惑う。
神託の巫女姫であるユウナですら、真の聖勇者と天恵のポーションのことは知らないのか。
ポンコツ幼女じゃ上手く説明するのは無理だし、ここは俺が話すべきだろう。
「えーとユウナ、天恵のポーションを使った俺は真のせぃ、、、って、ちょっと待てっ!!」
そこまで口にした瞬間、焦りで心臓が止まりそうになる。
やっちまった!
忘れてたっ。
天罰のこと!
超級ヤバいっ!
慌ててケイに確認する。
「ケイ、ユウナにこのことを明かしちゃまずいだろっ!大天使からの天罰が、、、」
「らいじょうぶらよ」
そんな俺の言葉を、ケイが平然とした様子で遮った。
だけどポンコツ堕天使に言われても、大丈夫だと思えないんだが、、、
「らってね、ユウちゃんも真の至聖女になってるんらもん」
「えぇっ!!?ケイっ、ユウナも真の至聖女になったのか?」
「うん、そうらよ。ユウちゃんも天恵のポーションを使ったからね」
良く考えてみるとその通りだ。
もう一人のユウナが生まれたということは、ユウナにも俺と同じことが起きたということだ。
おそらくエンシェントドラゴンと再び戦ったときに、あの第5勇者がユウナに天恵のポーションを使ったのだろう。
「真の至聖女になったのはこっちのユウナなんだな?本物の方じゃなくて、力を失っているこっちのユウナだって言うんだな」
「うん、天恵のポーションの効果がれてる(出てる)のは、こっちのユウちゃんらよ。そうらって、頭の中れ声がするもん」
またしても大天使がケイに何らかの干渉をしているのだろうか。
俺とケイの会話を訝しげに聞いていたユウナが口を挟む。
「ハルト、いったい何の話をしているのです?」
「えーと、最初から説明しよっか。全ては初めて天恵のポーションを使ったあのときから、、、」
それから俺はここまでの歩みについてユウナに全てを語った。
「、、、、、だから俺とユウナが、いまこの世界で唯一千年魔王を倒せる可能性を持つ、真の聖勇者と至聖女なんだ」
俺の説明を聞いて、ユウナは全てを確信したような表情を浮かべる。
ユウナの視線からはさっきまでの気弱な色は完全に消え去り、俺が知るいつもの力強いユウナの姿に戻っていた。
いや、今まで以上に自信に満ちた瞳で、ユウナは口を開いた。
「そして神託によって、世界を救うと予言された勇者と聖女でもありますね」
そう、今回の聖戦における真の聖勇者と至聖女は、この俺とこのユウナだ。
そして俺たちはカムナの意思によって千年魔王を倒すと予言されているのだ。
まだまだ分からないことだらけだが、いくつかの謎が繋がり始めたように思える。
まがい物となった俺たちは、来たる選定の儀で聖勇者に選ばれる道を絶たれた。
それでもこの勇者の旅路の先にはきっと希望があるんだと、今なら心から信じられる。
「だったら、俺たちの為すべきことは変わらないな」
「えぇ、ハルトとわたしで、千年魔王を倒しましょう」
俺とユウナが決意を込めて約束を交わす。
そこに歩み寄るリリナとケイ。
「私のことも忘れるなよ」
「ケイもっ!ハルちゃんもユウちゃんもリィちゃんも、みんなケイを信じてついて来るの!」
頼もしい2人の力強い言葉が重なる。
そうして俺たち4人は誰からともなく握った拳をぶつけ合った。
4つの拳に互いの信頼と覚悟を預けあって、、、
そして俺たち4人は視線を交わし合う。
魔王を倒し、この世界を救うという決意に満ちた視線を。
勇者であること、そして自分自身の存在すらも奪われ、戦う力を失くした聖勇者。
同じく聖女の力と王族の立場を失い、まがい物の存在へと成り下がった神託姫。
天界から追放され、天使たる力を剥奪された堕天使。
教会から破門され奇跡の力を失い、魔王と勇者によって愛する存在を全て奪われた巫女。
世界から否定され、全てを失った4 人。
今日その4人が誓いを交わし、世界を救う新たなる信念とともに、再び立ち上がったのだった。
ついに、146話にして、つ!、い!、に!、メインヒロインがパーティーに加入しました!!!
これにて第4章の本編は完結となります。
第4章は例によって締めの断章1話で終了です。
次回 第4章最終話 『始の断章.10 人類の希望』
■補足
いちおう補足として解説しておきます。
本文が分かりにくかったということがなければ、読み飛ばしていただいて構いません。
ユウナの回想に何度か登場する『母上』はユラカ正王妃、『叔父上』はクサナギ家当主ライトのことです。
心の中では今でもそう呼んでいますが、聖女として旅立って以降は、人前では『正王妃殿下』と『クサナギ様』としか呼ばないように変わりました。
ちなみにクミヤマ村での家族はユウナの中では呼び方が違っていて、『父さま』『母さま』『兄さま』となっています。
また126話に登場したユナ姫は、ユウナの影武者の少女です。
ユウナそっくりになるように育てられた親戚で、普段は彼女がユナ姫として振る舞っています。
118話で城の兵士たちがユウナをユナ姫だと認識していたのは、化粧によってユウナが影武者の少女とそっくりになっていたからです。
整理しておくと、、、
クミヤマの聖女ユウナ:
世間一般に知られている第2聖女の素性。
幼い頃からなぜだか色々な魔法を使えた天才聖女、ってだけの認識です。
神託の巫女姫ユウナ:
クミヤマの聖女ユウナは、実は神託の力に目覚めた巫女姫だった、という隠された真実。
知っているのはカムナ教会では、中央大寺院所属の上級僧階のものと、ユウナ派に所属しているものだけ。
カムクラ王国内にもほぼ秘密で、ユウナを主とする私設暗部組織『カムナテ』の一部しか知りません。
第3王女ユナ:
神託姫ユウナの正体がユナ姫だというのは極秘中の極秘事項。
カムナ教会内ではセイスイ権大僧正と大僧正しか知りません。
当初はユラカ正王妃とクサナギ家当主ライト、カイトと影武者の少女だけの秘密でした。




