4.52.145 姫の断章.5 わたしの勇者さま(後編)
前編からの続きです。
今回のエピソードはボリューム的には3分割くらいあったですが、展開を考えて前後編にしました。
そのため少し長くなってしまったのですが重要な伏線回収回ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
■カムナ3018年 7月1日 日曜
◎ユウナ
それから一週間後。
難なく選抜試験を突破したわたしは、カムナ聖都の中央大寺院を訪れていた。
今日は7月1日、選抜の儀が行われる日である。
まず午前に行われるのは選抜審査だ。
勇者と聖女20人ずつの最終候補者計40人から、7人の勇者候補者と7人の聖女候補者を選ぶための審査である。
といっても、別に試験を行う訳ではない。
カムナの意思によって14人の候補者が選別されるのだ。
さらには勇者聖女への適性に基づき、第1位から第7位までの順位がつけられる。
わたしたち総勢40人の候補者は、中央大聖堂に集められていた。
もちろんその中にはハルトの姿もある。
他にもユウヤ様やサクヤなど、主だった者は当然のように最終候補者に残っていた。
アオイなど選抜試験の上位数名は、自信ありげな様子を見せている。
だがそれは少数派で、大多数の参加者は不安いっぱいの表情を見せていた。
カムナの意思がどういった基準で候補者を選ぶのかは誰にも分からない。
候補者たちの不安を掻き立てている主要因はそれだろう。
基本的にはステータス順だと考えられているものの、過去にはそうでなかったことも頻繁に起きている。
そのため選抜試験の成績で上位7人に入っていても全く安心できないし、逆に下位からの逆転もあり得る。
結局は選抜が終わってみるまで、どうなるか誰にも分からないのだ。
そう、わたし以外の誰にも、、、
中央大聖堂に入場したわたしたちは、聖堂のいちばん奥へと案内される。
そこにあるのは見上げるほどに巨大な祭壇。
わたしにとっては見慣れたものだが、初めて目にするであろう候補者たちは、その威容と神聖さに圧倒されている。
その祭壇は大聖堂の中で1段高い位置にある。
胸の高さほどのある舞台の上に設けられているのだ。
祭壇はその舞台の奥側にあり、横幅いっぱいを占めていた。
そして舞台の手前側は祭事を行うための空間となっており、軽く100人以上が乗れそうなほどの広さがある。
今回の選抜の儀が行われる場所も、もちろんそこだ。
祭壇の正面中央には、魔法術式の描かれた円形の台が設置されていた。
これから候補者たちは1人ずつ呼ばれて舞台に上り、カムナの意思の審査を受けるのだ。
舞台の中央、円形の台の奥に立つクウソウ権大僧正の指揮のもと、ついに選抜の儀が始まる。
「勇者候補者1番、カムクラのユウヤ、壇上へ」
ユウヤ様を先頭に、まずは勇者候補者20人の審査が始まった。
名前を呼ばれるのは、先週の選抜試験の結果順だ。
試験で1位だったユウヤ様は、僧侶たちの指示に従って壇上に上り、魔法術式の描かれた台の上に立つ。
すると魔法術式が起動して青緑色の光が立ち上り、ユウヤ様の全身を包み込んだ。
ああやってカムナの意思がユウヤ様の勇者としての素質を見定めているのだ。
波のようにうねって美しい波形を描いていた光の粒子は、十数秒ほどで収まっていく。
審査が終わり、ユウヤ様は僧侶たちから舞台を降りるように促される。
「勇者候補者2番、カムクラのソウタ、壇上へ」
ユウヤ様の後にはソウタが続き、それから勇者候補者全員が順番に舞台に上っていく。
「勇者候補者7番、ウルギのハルト、壇上へ」
7番目に名前を呼ばれたハルトは、不安いっぱいといった様子で、恐る恐る壇上に上がっていった。
当落線上ギリギリの順位なので、自信が持てないのだろう。
何も心配などいりませんのにと、微笑ましく感じてしまう。
とはいえ選抜基準が不明なのだから、ハルトだけでなく誰もが不安になっているのも当然の話だろう。
けれどもわたしにだけは、おおよその結果が見えていた。
聖勇者候補者の選定は、カムナの意思によって行われる。
この大聖堂の奥にある聖祠の中に納められているカムナの意思。
特別な力を授かったわたしは、カムナの意思に直接手を触れることで、ホノカ様の声を聞くことができる。
そして聖祠に入らずともこれだけ近くにまで来れば、カムナの意思とかなり深くつながることが可能だ。
選定の状況を聞き出すことくらいは難しくない。
いま1人ずつ適正の審査を行っているものの、選抜試験での順位から大きく変わることはなさそうだ。
第1勇者はやはりユウヤ様で、ハルトは第5勇者になるようだ。
対して第1聖女は、、、やはりわたしだ。
選抜試験ではサクヤと同じくらいの結果になるようにうまく調整したつもりだ。
両耳につけた制御用の装具により、ステータスも特級に制限している。
だが潜在能力まで見抜くカムナの意思にはやはり通じない。
何しろ今のわたしのステータスは聖級の中位に届きそうなところにある。
第1聖女になるのは当然のこと。
むしろ普通なら第1勇者にならないとおかしいレベルだ。
この中でただ1人成長上限に到達しているユウヤ様が、わたしを超えるハクを溜め込んでいるのだろうか?
一瞬そう考えたものの、カムナの意思から情報を聞き出すとそうではないようだ。
わたしに与えられた力は、『新たなる秩序』をもたらす勇者を支えるためのもの。
はじめからわたしは、聖女となることが定められているそうだ。
ただしこのままでは、わたしがなるのは第1聖女。
そうなると否応なく第1勇者のユウヤ様と組むことになり、ハルトのパートナーになれない。
確実にハルトの相手になるためには、最上位の指名権を持つ第2聖女になる必要がある。
そのためには、わたしはカムナの意思を『説得』しないといけない。
ただしいくらわたしがカムナの意思とつながっているといっても、この条件下ではそこまでのお願いは難しい。
説得のためには直接カムナの意思に触れる必要がある。
だけど今のわたしは『ただの村娘ユウナ』でしかないので、聖祠に入ることなどできない。
もっとも、方法はちゃんと考えている。
そのために今このときを待っていたのだから。
カムナの意思とのつながりを通して結果を確認しているうちに、20人の勇者候補者全員の審査が終わったようだ。
次は聖女候補者の番だ。
最初に呼ばれる試験1位の聖女候補者は、、、
「聖女候補者1番、クミヤマのユウナ、壇上へ」
わたしだ。
僧侶たちの指示に従って、舞台に登る。
奥に控えているクウソウ権大僧正が意味深な視線を送ってくるが、今は特に気にする必要はない。
これからわたしが行う『不正』に彼らが気づくことなど不可能だからだ。
そのままわたしは魔法術式の描かれた台の上に立つ。
刻み込まれた文字と模様が輝き出して、術式が起動した。
その瞬間、わたしとカムナの意思は完全に繋がった。
これはカムナ教会に代々伝わる、選抜審査の術式。
だが今の教会の中にその中身を知る者は、1人だけしかいない。
作成したホノカ様と、その意思を受け継ぐ直系の子孫である、代々の教皇だけが知る術式。
だが特別な力を授かったわたしは、この術式が何かを理解している。
これは聖祠の中に収められたカムナの意思が、候補者に直接触れるための外部端末の役割を果たしているのだ。
聖祠に入れるのは教皇や聖勇者など特別な人間だけなので、ただの最終候補者を入れることなどできない。
その代わりに用意されたのが、この術式である。
つまりこの術式の上に立てば、カムナの意思に直接触れたときと同じことができるようになるのだ。
もちろんそれはカムナの意思側からの一方通行の繋がりなのだが、わたしにとってはその限りではない。
完全なる繋がりを通して、わたしはカムナの意思に語りかける。
カムナの意思は、いまさらわたしの審査を行う必要などない。
だからわたしはこの時間を使って『説得』をしようと、最初から狙っていたのだ。
普通ならいくらわたしがお願いしても、カムナの意思にこのような不正を行わせることはできない。
だけどこのままわたしが第1聖女になってしまったら、ハルトと組むことができなくなる。
それでは神託に反することになることを、カムナの意思に伝える。
第1勇者と第1聖女がペアになるのは、長い歴史の中で人類が勝手に定めた決まり事だ。
それはカムナの意思にとっては預かり知らぬ話だが、このまではカムナの意思に不利益が生じる。
そのような現状を丁寧に説明すると、何とか調整してもらえることになった。
説得が終わると、光の粒子が消えていく。
周りから見ていれば、普通に審査が行われたようにしか見えないだろう。
少し時間がかかったくらいで、怪しまれるようなことは全くない。
そのままわたしは、何事もなかったかのような態度で舞台を降りた。
わたしの後にはサクヤ、アオイが順に呼ばれ、そして20人の聖女候補者全員の審査が行われる。
こうして選抜の儀の午前の部、カムナの意思による選抜審査が終了した。
ーーーーー
午後に行われるのは審査結果の発表、勇者の力の贈与、そしてパートナー選択だ。
再び中央大聖堂に集められたわたしたち40人の候補者たちは、祭壇の前に横1列に並んでいた。
左側には勇者候補者、右側には聖女候補者が、選抜試験の結果順に立っている。
聖女1位だったわたしの左隣には勇者1位のユウヤ様、右には聖女2位のサクヤという並びだ。
結果発表を目前に控えて、候補者たちの表情は一様に硬い。
そんな中、クウソウ権大僧正を先頭に20人あまりの僧侶と巫女が壇上に上がる。
「それではこれより、7人の勇者候補者と7人の聖女候補者の選抜を行う」
開始の合図を告げたのは、中央に立つクウソウ権大僧正だった。
「選抜はカムナの意思によって行われる。初代聖勇者ホノカ様の叡智による、神聖なる選択である。その結果には如何なる反論も認められない」
クウソウ権大僧正が厳粛な態度で説明を始める。
この選抜の儀の詳しい進め方は、一般には公開されていない。
過去の参加者から口伝えで聞いたことのある者以外は、今日初めて知る内容だろう。
候補者たちはみな一様に、権大僧正の話に真剣に耳を傾けている。
「第1勇者から順に1人ずつ、勇者および聖女候補者の選抜と力の授与が行われる。カムナの意思に導かれるままに従うように」
だが説明はそこまでだった。
多くの参加者は疑問の表情を浮かべ、意味が分からないと困惑しきっていた。
「それではまずは第1勇者からだ」
しかしそんな候補者たちの様子を気にかけることなく、権大僧正は淡々と儀式を進める。
そうして壇上の僧侶と巫女たち全員が、一斉に跪いた。
「「「カムナの意思よっ!我らを導く新たなる勇者に光をお示しくださいっ!」」」
見事に声を揃えて、僧侶たちが祈りの言葉を口にする。
それと同時に全員が舞台に両手を押し当ててマナを注ぎ込んだ。
そのマナは舞台に描かれた魔法術式を通して、彼らが見つめる先にある円形の台に流れ込んでいく。
そうして台に刻まれた術式が起動した。
聖祠に納められたカムナの意思が、台の魔法術式を通して祭壇の前に顕現する。
現れたのは、見る者全てに人類の叡智を感じさせる青緑色の光の粒子。
術式から湧き上がった神聖な光は、ゆっくりと波打つように、わたしたち候補者の方へと近づいてくる。
その奇跡的な光景を誰もが固唾を飲んで見守っていた。
始めは風に漂うように向かってきていた光の粒子だったが、やがて意思のある動きを見せ始める。
広範囲に広がっていた光の粒子が、ある1点に向けて集まりだしたのだ。
その場所は、わたしのすぐ左隣。
ユウヤ様の頭上だ。
大聖堂にいる者全てが息を呑む中、聖なる光がユウヤ様に降り注ぐ。
おぼろげだった光が徐々に輝きを増していく。
やがてユウヤ様と壇上の魔法術式を繋ぐ、眩いばかりの光の回廊が形作られた。
その光に導かれたユウヤ様は、夢の中にいざなわれるように、少しふらつく足取りで歩き出した。
まるで何者かに意識を乗っ取られたかのように。
実際に今のユウヤ様は、カムナの意思の完全なる制御下にある。
そのことは周りで見ている候補者たちも、何となく気づいているかもしれない。
『カムナの意思に導かれるまま』という最低限の説明の意味を、誰もが自分の目で見て理解したことだろう。
ユウヤ様が魔法術式へと近づくにつれ、聖なる光がどんどん凝縮されて輝きを増していく。
そうしてユウヤ様が円形の台の上に立つと光が弾けて、圧倒的な光量で大聖堂を埋め尽くした。
あまりの眩しさに多くの候補者たちが目をそらす中、徐々に光がおさまっていく。
その後には魔法術式の上に立つユウヤ様を包む、光の繭だけが残った。
それはカムナの意思による、勇者の力の付与。
というよりも、人間の枠組みを超えた超越人種へ、身体を作り変えていると言う方が正しい。
厳密に言えば、勇者と聖女はもはや人類ではないのだ。
実は聖勇者選定への受験資格に年齢制限があるのも、この身体構造の変換が可能な年齢に期限があるせいだ。
ともかく今わたしたちの目の前で、ユウヤ様は人間を超越したのだ。
やがて光の繭が溶けていき、新たなる勇者が姿を現した。
先ほどまでとは身に纏う雰囲気が全く違うと、誰もが感じているだろう。
けれども誰よりもそれを明確に感じとっているのは、ユウヤ様本人に違いない。
意識を取り戻したユウヤ様は、身体の奥から湧き上がる聖なる力を感じてか、恍惚の表情を浮かべていた。
「「「ここに新たなる第1勇者が誕生した。我らを導くカムナの意思に感謝を!!」」」
いつの間にか立ち上がっていた僧侶と巫女たちが、祈りの言葉を送る。
クウソウ権大僧正の指示で壇上から降りたユウヤ様は、わたしたちの列から離れて左手に並ぶ。
続いて第1聖女の選抜が始まった。
再びクウソウたちが跪いて、祈りを捧げる。
「「「カムナの意思よっ!我らを導く新たなる聖女に光をお示しくださいっ!」」」
そうして魔法術式から聖なる光が立ち上り、わたしたちの方へと向かってくる。
会場の誰もがわたしを見つめる中、、、
カムナの光はサクヤの頭上へと降り注いだ。
「わたしがっ!?」
呆然となったサクヤが小さく呟く中、あたりは騒然となっていた。
わたしが第1聖女になると、みな考えていたからだろう。
わたしが神託の巫女姫であることを知るクウソウたち教会関係者が、最も驚いているように見える。
そんな驚愕の空気の中、サクヤは壇上へと上っていった。
聖なる光がサクヤを包み込み、そして新たなる第1聖女が誕生する。
生まれ変わったサクヤの表情には、授かった聖女の力による全能感と、第1聖女となった誇らしさと、、、
そして一抹の寂しさが見て取れた。
思わず湧き上がってきた罪悪感で、胸が苦しくなる。
わたしは知っていた。
サクヤはハルトと誓いを交わしており、ハルトをパートナに選ぶつもりだったことを。
そんな彼女の未来を、わたしは不正に奪ってしまったのだ。
それでもこれは、、、神託を成就させるために、そして世界を救うために、必要なことだったのだ。
わたしがそう自分に言い聞かせているうちに儀式は進み、ソウタが第2勇者に選ばれる。
そして、、、
「「「カムナの意思よっ!我らを導く新たなる聖女に光をお示しくださいっ!」」」
第2聖女を指し示す聖なる光が湧き上がり、わたしの頭上に降り注ぐ。
先ほどお願いした通りに、カムナの意思はわたしを第2聖女に選んでくれたのだ。
カムナの意思に感謝の想いを届けながら、わたしは壇上に上る。
台に乗って魔法術式の上に立つと、わたしの全身はカムナの光に包まれた。
通常ならここで聖女の力を授かり、身体が作り変えられることになる。
だが既に聖女を上回る力を保持しているわたしに、その必要はない。
だからわたしは、その代わりにカムナの意思と言葉を交わすことにする。
今までは定期的に聖祠を訪れ声を聞いていた。
しかし聖女となって旅立つ以上、今後はカムナの意思に触れる機会はまずない。
次はおそらく、1年後の選定の儀。
至聖女となる目標を無事に達成したときのことだ。
しばしの別れと旅立ちの決意を、わたしは言葉に変えて送り届ける。
《ホノカ様、ご配慮ありがとうございました。必ずや使命を果たして戻って参ります》
《立ち止まることなかれ。何が起ころうとも》
それがカムナの意思からの最後の神託だった。
そうして別れを告げたわたしは舞台を降りる。
そのときふと、下に立つアオイと目が合った。
アオイは憮然とした表情で、疑うような視線を向けていたのだ。
もしかしたらわたしが不正を行ったことに気づかれたのかもしれない。
とはいえ何を行ったかまでは分かるはずないので、明るみに出る心配はない。
ともかくこれでわたしが願った通りの結果になった。
ようやくわたしの勇者さまの隣りに並ぶ権利を手にすることが出来たのだ。
ーーーーー
その後も粛々と儀式は進んでいった。
大きな波乱と言えるのは、第5聖女にキョウが選ばれたことくらいだろうか。
ハルトも無事に第5勇者に選ばれた。
最後にリヒトとスミレが第7位の勇者聖女に選抜され、落選した者たちからため息が溢れる。
14人の新勇者および新聖女を残して、他の最終候補者は退場していった。
そしてパートナー選択の時間になり、わたしがずっと待ち望んでいた瞬間が訪れる。
わたしたち14人の新勇者、聖女たちは、祭壇の前に大きく輪になるように並んでいた。
左側に勇者、右側に聖女という位置どりで、祭壇側から順位に従って立つように指示されたのだ。
誰もがその場の顔ぶれを見回しており、自分のパートナーになるのは誰かと、期待と不安の表情を浮かべていた。
そんな中まず始めに、第1位候補者ペアのユウヤ様とサクヤが握手を交わす。
この2人が組むことは、最初から決定事項だ。
そして次に第2位以後のパートナー選定に移る。
ここからは指名制であり、第2位の候補者から順番に希望の相手を選んでいくことになる。
舞台の上に立つクウソウ権大僧正が、わたしとソウタに声をかける。
最上位の指名権を持つわたしたちに、希望する相手を指名するようにと。
「第2聖女ユウナ。俺がパートナーだ。よろしく」
先に声を発したのは、わたしのすぐ向かいに立っていたソウタ。
その言い方は、まるでわたしが指名を受け入れることが当然だとでも言わんばかりだった。
既にわたしが自分のものになったとでも考えているのだろう。
選抜結果が発表された直後から、下卑た欲情の籠もった視線を隠そうともしない。
まったくとんだお笑い草ですわ。
「お断りいたします」
ソウタの指名を軽くあしらうと、騒然となる周囲をよそに、毅然とした態度で1歩ずつ足を進める。
目指す先は14人が作る輪の、ちょうど真向かいのあたり。
ずっとずっと会いたかった人のところだ。
わたしが近づくにつれて、困惑の表情を浮かべてオロオロしだす姿が何だか可愛らしい。
とはいえわたしの方も胸が高鳴ってきて、それほど余裕がある訳ではないのですけど。
目の前に立って、見つめあって、、、ついに、たどり着いた。
この人がわたしの勇者さま。
わたしの運命の人を前にして動悸が激しくなるけれど、それを表情に出さないように必死でこらえる。
自信に満ち溢れた様子を作って、理想の聖女を演じきって、練習してきた笑顔を貼り付けて。
そうしてひと呼吸すると、わたしはこのときのためにずっと考えていた出会いの言葉を口にした。
「最初からあなたに決めていました。第5勇者ハルト様。わたしのパートナーになってくださいますか?」
ユウナ目線のハルトとの出会いのシーンでした。
60話のハルト目線と見比べると面白いかもしれません。
補足の解説も交えつつ、次回はいよいよ4章本編の完結話です。
次回 第146話 『聖勇者と至聖女』




