お月様の前で
「ドジっぽい子?…かぁ…
まるで、私みたい…
…
レストランで大騒ぎしたり、電話、かけ間違えたり…おまけに…」
『なに?』
「メガネまで無くしちゃって…それさえ気がつかないまま、あさひくんのとこへ…」
『 ふ〜ん…だよな、おまえ、メガネかけてたもんな、黒縁のおっきいの…』
「ハハハ…バックのボタンが外れてて…
たぶん何処かに落としたの気がつかないまま、わたし…」
『 やっぱおまえのか…これ」
わたしの目の前にメガネが現れた!
「植木のところに落ちてた、おまえんだろ?」
「こ、光陽くん!?…・・・」
振り向いた側に、いつの間にか光陽くんが立っていた。
「もう、スマホは必要ないよな」
「あ…そ、そだね…」
わたしと光陽くんはスマホをみみから離した。
目の前にまたしても、光陽くんがいる…
光陽くんの横顔が、月の光に照らされてはっきりと見えた。
昼間は明る過ぎて、恥ずかしくてまともに見れなかったけれど、今ならだいじょうぶ…
でも、光陽くんがこっちを向いてしまった!
私は目をそらしうつむいてしまう。
その先には
薄灯りの中に光陽くんのシルエットが…
その横に私の影が重なる
また、急に胸がはりさけそうになるくらい、ドキドキがおさまらない…
「ワンワン!」
あ!?
「さっきのあれ?いいのか?」
「ふぇ…?…」
緊張して、言葉にならない…
「お母さんに電話?」
「あ、そ…そうですよね…」
「なに敬語使ってんだよ…俺たちもうダチだろ?普通に話せよ」
「は、はい…?」…俺たち?ダチ?
ダチ?・・・・・ッて・・・?
「早く連絡しないと…おふくろさん…鬼になってんだろ?」
「おに?…」
「おまえさ、さっきからボーッとして、だいじょうぶか?」
光陽くんはそう言って、私の頭を子犬のように撫でながら
「気をつけて帰れよ!」
そう言って…
放心状態のわたしの肩に手を乗せた。
次の瞬間
私のくちびるに柔らかい感触が一瞬だけ、触れて…
相変わらず私は放心状態のまま
気がつくとまるすけの鳴き声で、目が覚めて
その時にはもう、光陽くんはいなくなっていた。




