「そろそろクリスマスね・・・・・・私達にクリスマスは来るのかしら。聖なる夜じゃなくてせ・・・・・・」by一美「絶対に言わせないから! 色々とアウトだから!」byアリス
お久しぶりです。
もうすぐクリスマス、そして年末ですね。
今年は色々ありました。皆さんはいかがでしたでしょうか。
年内に投稿できましたよ、やったぁ! 皆さん、あと2週間の2017年を楽しんでください。
それでは『高天ヶ腹学園十三組』の最新話をお楽しみに。
1
模擬戦――――――正しくは一真ラヴァーズによる暴走がメインであり、十三組の目の前には学園長の皇叶江が立っていた。その表情は笑顔ではあったが、恐ろしいほど怒りが込められていた。
しかしそれをみて怯えているのは、一緒に参加していた杏子と風紀委員のメンバーだけであり十三組生徒は誰一人として臆している雰囲気を見せない。むしろまたか、といった雰囲気を見せている。
そう十三組にとって学園長の説教は、祖母からの面倒な小言と変わらなくなってしまっている。本来、そんなことがあってはならないのだが、当たり前となってしまったいまどうにもならないの現状である。
もちろんこの十三組の中では真面目な方である燈花にとっても変わりはなかった。
「お前達! あの模擬戦場を一体何回壊せば気が済むんだ!?」
「そんなの私達が知るわけないでしょう。それに今回、9割方壊していたのは私達じゃなくてここに居ないお兄ちゃんと、チビでモテない駄狐でしょう?」
「……」
「……」
「……」
「……」
『……………………』
『あれ?』
隆浩による身長に対しての怒声が聞こえてこない。
この場にいないのだから当たり前なのだが、彼を知っている者達にとってはテンポが合わないと感じていた。
だからこそ今の間が生まれてしまっていた。
「隆浩のあれがないと、何か調子狂うね」
「桜ノ宮さんに同意ね……認めたくはないけどもね。あら、どうしたのかしらワカメ? 雌犬が男を捕られて惚けてる顔をしてるわよ」
どんな顔だよ、とここにいる誰もが思ってしまった。
しかしツッコミを入れるようなことはなかった。一美に対してツッコミをしてしまうということは、毒舌によるカウンターを受けると同意だとここ数日で理解してしまったからだ。
「いや、ただカズ君よりもあんな狐ことで私の思考を占領してしまったことに後悔しているのよ。私の頭の中はいつもカズ君一色でいたいの!」
「何言っているのかしら、この褐藻綱コンブ目チガイソ科は」
つまりワカメ野郎、と言うことである。
はっきり言って殆どの人間が分かっていない中、言われた当の本人は理解していた。直後、地面が吹き飛ぶ。そこには一美はおらず、代わりに大鉈型アーマメントデバイス『美爆猪獄』の刀身が突き刺さっていた。
つまりいつも通りの殺し合い、もといじゃれ合いが始まったということである。
「自分で火を出すなんて、乾燥ワカメを自分で作ってお裾分けをしようなんてうれしくもない考えをしているのかしら? 止めた方がいいわよ。あなたが原料だとしたら、粗悪品しか出来ないのだから」
「私が粗悪品? 当たり前でしょう、ここにカズ君がいないのだから。私という存在はカズ君と1つなのだから!」
直後、アッシュの頬を魔力の矢がかすめる。
ギリギリで繋がれていた緊張の糸が完全に切れた状態になった瞬間であった。
状況を見た十三組生徒は、いつものことだと部外者で二人の戦闘に巻き込まれかねない杏子と風紀委員達を連れて離れようとする。
そんなことをしている内に二人の戦闘準備は完了していた。
一美は弓型アーマメントデバイス『黒姫』の弦を引いている。彼女の周りには五本の黒い魔力の矢が浮いている。
そして相対するアッシュの『美爆猪獄』の刀身は赤く赤く染まっている。そこからは尋常ではないほどの熱を発し、周囲の景色を歪めている。
「「くたばれ、クソ雌がぁ!」」
「そこまでだよ」
ゆっくり歩いて入ってきた叶江によって二人の攻撃魔法は、あっさりと止められてしまった。
しかも無職魔法によってだ。
一美の矢は障壁魔法に当たって霧散。『美爆猪獄』も展開された障壁魔法によって受け止められる。
「いつ終わるかと思って見てたら、周りを巻き込むような魔法を使おうとするしね……少しは考えな」
「何を言っているのかしら、この婆は? この程度はじゃれ合いの域をでないのよ」
「それでもやり過ぎだって言ってるんだよ、このクソガキ共は。それにだ、説教くらい黙って聞けないのかい? いつものことだから私だって簡単に済ませるつもりだってのに」
学園のトップによるとんでもない発言に十三組以外の生徒は唖然とする。
アリスや燈花の様に常識人レベルが上の生徒達にとって、本来ならばいまの発言はおかしいと感じる者なのだろうが当たり前のように受け入れてしまっている。もちろん他の常識がおかしい生徒達にとっては何当たり前のことを言っているんだ、という雰囲気を見せている。
「何だい、その顔は? 顔に何かついているかい?」
「ええと、学園長。今日は昨日の模擬戦場を壊したことについて来たのでは?」
「何言ってんだい、徳川。風紀委員長だからって、そこまで頭を固くしなくてもいいんだよ。それにあんた達は偶々トドメを刺すことになっただけさね。犯人はそこの神童妹が言ったように加減を知らない、あのバカガキ共だよ」
学園長の言葉ではなかった。
「まあ、このガキ共に壊されるのもいつものことだからねぇ。今更なんだよ。そんなことよりも……あんたらの筆頭共が見つかったよ」
「「「教えろぉ!」」」
叶江が「よ」を発言すると同時に一美、アリス、アッシュは反応し飛びかかっていた。
昨日より行方不明になっている三人の思い人の場所が判明したのだ。理性なんて物は一瞬で吹き飛んだのだろう。
だがこの場にいた全員が瞬きをして、瞼が上がった時には三人は地面に伏していた。
「やり過ぎよぉ。ちょっとは考えなさいねぇ」
担任である東雲風路が、ダークモードで一美達をたたき落としたのだ。
何があったのか。
左手で一美の頭を掴むとまっすぐに地面に叩きつける。それと同時に右手で拳を作りアッシュの腹部へたたき込む。最後に体勢を直した風路は、アリスの脳天に向けて踵落としを決めた。
やったことは簡単だが、あの一瞬で全員の意識を完全に刈り取る技量が必要となる。
「ふぅ……皆さんは、学園長の話をちゃんと聞きましょうねぇ」
『はい!』
いつの間にか十三組の生徒達が取り出したるは『公式風ちゃんファンクラブ』と刺繍のされている法被。
これもまた瞬きする間。
この光景を見たとき叶江は、初めから風路に説明や説教を任せると全てがスムーズに進んだのではないかと思ってしまった。
「まず、あの馬鹿共は治療中さ。どこで誰に、というのは説明できんがね」
――――――意味ねー――――――
ここにいる生徒達の心の声が一致した瞬間であった。
十三組のメンバーにとってはクラスメイトの居場所が判明するものだと思っていたのだが、無事ということだけしか分からなかった。が、現状はそれでもよいと彼らは判断した。
しかし大きな問題はそこにはなかった。
誰もが気にしているのは、《白き百合》による次の襲撃であった。
「はっきり言って、あたしにも判断出来ない所だけど……そこで寝てる年中発情娘共から聞いた話によると、ウチの教師が絡んでるみたいだね」
その言葉を聞いて顔を伏せてしまう須藤杏子。
昨夜の屋上であった一真達と、遠山桔梗達の戦闘中に現れたのは《白き百合》拉致されたと思われていた一年一組の担任教師の須藤弘史であった。
彼は彼女達が転移によってその場から離れると同時に、同じように転移魔法でその場から消え去ってしまった。
「でも、お父さんは無理矢理――――――」
「あれはどうやっても無理矢理、というようには見えなかったわ」
杏子の言葉を遮って発言したのは、昨日あの場にいた一人アッシュ。
風路の一撃を喰らっていち早く眼を冷ますことが出来たのだが、本人に言わせたら一真に殴られた方が気持ちよくて飛んでしまう。だからそれ以外の人物の攻撃で寝ている訳にはいかない。とか、訳の分からない妄言を真顔で言ってのけるだろう。
それもこの少し重くなった雰囲気など一切読まずに。
「知り合い異常の関係なのは間違いないと思うのよ……」
(というかあれは……黒幕でしょう)
と、思ったが口にはしなかった。
これについては一緒にいた一美とアリスも感じていたことだろう。
なぜそう感じたのか、というと小説やアニメといったものでならあのような人間は大抵裏で何かを企んでいるのがテンプレなのだからだ。だが確信までには至らなかったわけなのだが、昨日の早朝に行われた楓への事情聴取の内容によって、確信へと変わった。
「どうしてそんなことが言えるんですか! 無理矢理従わされている可能性だってあるじゃないですか!」
「簡単よ。あなたが到着するより先に来ていた私達は二人の会話を聞いていたし、こんな物も録音しておいたの」
アッシュが取り出したるは彼女専用の汎用デバイス。
この場にいる者全てを置いてけぼりで、昨日の会話を再生し始める。
完全に一真の影響である。いや、正しくは一真と隆浩の悪影響である。
あの二人であれば利用できる物は全て惜しみなく利用していくスタンスである。それが金であろうが、自分より地位が上だろうが関係ない。自分が使えると思えば、それは全て自分の武器である。
過去に利用した物の一例と上げるならば自分自身、十三組生徒全員、そして……学園長である皇叶江である。
ちなみに叶江を利用したのは一真だけなのだが……彼女を利用して何をしたのかは、この場では割愛させて貰う。
だが、あの時一真が自分を利用して起こしたことに叶江は本気で恐怖したこと今でも覚えている。
そんなこんなで二人の影響は悪い意味で十三組を汚染している。アッシュが音声を持っている理由も今後何かに使えるだろうとあの時、こっそりと録音していたのだ。
『この状況、どう見ても退散したほうがいいですね』
『……自由にさせてたが、これ以上は限界だな。一美』
『何かしら、お兄ちゃんの黒髪ロリ奴隷』
『その認識、いい加減に取っ払ってくれないか?』
『難しい相談ね……で、何かしら?』
『俺は相棒達三人を連れていくから、その男の対処は任せる』
『何言ってるの! カズ君は…・・カズ君の血は全て私の物よ!』
『クリスティーさん……あなたね』
『何か問題でもあるの?』
『大ありよ! お兄ちゃんの全ては私の物なのだから、血の一滴たりともあげないわ!』
『まあ、お兄ちゃんたちはあなたに任せたわ。もし死なせるようなことがあれば、あなたを消すわよ』
『……本当に行方不明だった、というわけではなさそうね』
『どうしてそうだと?』
『先生が《白き百合》の少女と知り合いのように話していたからですよ』
『落ちこぼれのクラスに在籍しているにしては、しっかりと周りを見ていますね。桜ノ宮さん』
『私の名前、覚えていたんですね』
『たまたまですよ』
『じゃあ、ここでつかまりなさい』
『狙いと方法はいいですが、甘いですね。タイミングとしては最悪ですよ。二人を囮にしていたようですが、気配が完全に殺し切れていませんでしたからね』
『ぐっ……』
『さて、私はこの辺で退かせていただきますよ。研究の続きがありますからね』
『行かせるか!』
そこで音声が終わった。
短い内容でだったが、一年一組担任して須藤杏子の父親である須藤弘史が共犯である確たる証拠が提出された瞬間であった。
叶江と風路は驚くこともなく、昨日の報告と事情聴取の内容から繋がっていることは確信していた。
しかし生徒達にとっては驚愕の内容でしかなった。特に須藤教師の実の娘である杏子にとっては驚きはもちろんだが、それ以上にショックが強かった。
「ウソ、だって、そんな……違――――――」
パチパチパチ。
突然聞こえてきた拍手に、全員の視線がそちらへと集まる。
この状況下で手を叩いて、誰かを賞賛するような人物がいるわけもない。犯人が分かったところで、全てがが解決したわけでもないのだから。
更には杏子の父親がこの事件の大きく関わっているのだ。拍手する者の気がしれない。
だとしら誰が拍手をしているのか。
「こんなにひ早い段階で学園長にまで伝わってしまうとは……誘拐された体で帰ってきて、ここを実験場にしようと思っていたのですがね。昨日こちらに来たとき、顔が見えないようにするか幻覚系の魔法を使用しておくのでしたね。または殺さない程度で、口がしばらく利けないようにするのもありでしたね。東雲先生も十三組もお見事ですよ」
方角は学園入り口。
アッシュ達全員か10メートルほど離れた位置に、今話題に上がっていた須藤弘史その人が笑顔を浮かべて立っていた。
はっきり言ってこれはあり得ないことであった。
現在この学園は外からの転移魔法を完全に遮断し、許可された人間以外は入れない結界で覆われている。
もちろん学園の入り口はある程度以上の実力を持った生徒や教師をローテションして、警備をさせている。しかしこの男はこの場にいた。
「どうやってここに来たんだい? 念のためにお前さんは入れないように言ってあったんだがね」
「ええ、ですから彼らに以前から忍ばせていた『レギオン』を覚醒させてもらいました」
「以前からぁ……ねぇ」
平然とした表情で話すが、その内容は『レギオン』を使用して学園の人間を自身の駒としたということである。
しかも以前からという言葉。それはつまり、
「もちろん彼らだけではありませんよ。私が担当したクラスの生徒はもちろん、親しくさせていただいた教員の皆さんは私の実験体ですよ。こんなに早く使う日が来るとは思いませんでしたがね」
叶江と風路、そして十三組のメンバーはゾッとした。
須藤はとあるクラス以外の授業には全て担当教科が存在しており、ほぼ毎日のように授業を行っていた。今の須藤の話をそのまま捉えるならば彼と関係を持っていた、この学園の関係者全てに『レギオン』が寄生しているということとなる。
「では始めましょうか、この学園で行う最後の実験を!」
彼の周囲に展開される大量の魔方陣。それが転移魔法の物であることは、見てすぐに理解出来た。
その数は数十を超え、1つの魔方陣から出てくるのは『白き百合』のメンバーだけではない。人工契約獣に寄生された高天原学園の生徒や教師達も見えた。
数の差をあまり考えないメンバーが揃っている十三組であるが、それでもこの学園の殆どの生徒と教師、そして『白き百合』のメンバーが全て敵となると驚異的であった。
こういった場合の切り札となる三人の化け物は行方不明。
まさに危機的状況でなのは間違いない。
「言い忘れていましたが……まだ増えますよ?」
増える?
その言葉の意味を一瞬理解が遅れたが、一番最初に須藤の発言に気がついたのは一美だった。
須藤は言った。自身の担当したクラスの生徒は全て実験体だと。
その生徒の中には、ついさっきまで十三組と共に模擬戦をしていた風紀委員のメンバーも含まれている。
つまり増えるとはそういうことである。
だからこそ彼女は、誰よりも早く、誰よりも大きく、皆に聞こえるように叫んだ。
「今すぐ風紀委員の意識を奪いなさい! 早く!」
しかし動くことが出来たのは少なかった。
一美は矢を展開して全員の頭部へ。
アリスは魔力糸を、アッシュは爆風を作り出す。動けた数人も自身が出来る、人間を気絶させることの出来る威力を持つ魔法を放つ。
風路と叶江も動揺に魔法を放っていた。
十三組の集まる中に起きる爆風。
ドサッ、と何人か倒れる音は聞こえてきた。だが、その数は今回参加していた風紀委員の数には圧倒的に足りない。
「……最悪ね」
2
「面倒なことになったわね」
彼女が視線を向けるのは、高天原学園高等部。
まるで今、あそこで何が起きているのかを見ているように呟いた。
左右にはメイドが控えているが、二人は眼を閉じたままで口を開くことはない。
「はあ、久しぶりに誰かと話すと返答が欲しくなるわね。ねえ、左近」
「だから人を入れるのは嫌だったんですよ。こうやって人恋しくなると私だけに振るんですから。たまには右近に話しかけてはどうですか」
「私は拒否させて貰うぞ。こんな若作りをして、頑張ってJKの真似が限界のババアの相手なんて。そんなの生け贄なんて左近だけで十分だ」
「……あんた達、出来たらそれ私のいないところで言ってくれない?」
「嫌です」
「断固拒否する」
項垂れる彼女を完全に無視して、二人のメイドはまた口を閉じた。
その様子に彼女もいつものことなのか、すぐに落ち着きを取り戻し一真達が眠る部屋の扉へと眼を向ける。
あの中では三人が眠っており、何も起きてはいない。
だが三人の精神の中では契約獣達による修行が今もまだ行われている。しかしそれは、彼女の見立てよりも大幅に遅れてしまっていた。
最初の予定ではもう既にそれは終了しており、三人の意識も覚醒しているころなのだが……今の見立てでは、
(後、2時間か……まだ、切り札には遠いわね)
この学園には一真達三人の他にも契約獣と契約している生徒は何人も在学している。もちろん教師の中にも数人いる訳なのだが、理事長の彼女から切り札と呼ばれているのは一真達三人だけである。
はっきり言って一真達の基本的な能力は、まだ三年上位の生徒にはまだ追いついていない。
しかし彼らがそう呼ばれるのには理由があった。
三人の契約している九頭龍、九尾の狐、九鬼。この三体の契約獣は『九』の付く契約獣と特別視されている。
この三体は他の獣と持っている力が違うのだ。
契約獣になる前から妖怪類い、大きな厄災であったことは他の契約中となる前から同じなのだがその規模が違いすぎるのだ。
九頭龍は元々水神として祭られていた存在。
九尾の狐は瑞獣や神獣、または悪の大妖怪として伝えられている。
九鬼に至ってはこの地域に存在した鬼神の一柱であったと語り継がれている。
そんな三体がどういう経緯で契約獣へと姿を変えたのかは知らないが、その力は他の契約獣とは一線を画する。
「左近、右近」
「何でしょうか?」
「何だ?」
「ちょっと結界張っといてくれない?」
「自分でやればいいでしょう、サバ読みババア」
「それくらい自分でやったらどうだ、合法JK」
「今すぐあんた達への魔力供給止めてあげようかしら?」
「そんなこと出来ないくせに意地を張るのは止めてください。まあ、『契約』のこともありますからね、行きますよ右近」
「分かってるよ。変なことをするんじゃないぞ」
それだけを言い残して二人のメイドは館の中から姿を消した。
直後、
「ふっざけんなぁぁぁぁ! 何が変なことよ、他のメイドがいるから何も出来ないのよ! 私がすること全部危険視しやがって! 少しは何かさせなさいよぉぉぉぉぉぉ!」
絶叫が轟いた。
《次話に続く》




