【神を下僕にしていた魔王とか聞いてません!】
【神を下僕にしていた魔王とか聞いてません!】
早朝の私立聖ミカエル学園、格技場。
『シュッ! シュッ!』
朝日が差し込む道場には、究極のKYである大文字鉄平がシリアスな空気を一切読まずに素振りをする音だけが響いていた。
週末、立花雪からの緊急招集で放り込まれた富士樹海でのサバイバルと、風魔の暗殺者たちによる容赦のないゲリラ戦。新生・合気武道部の面々は朝稽古に集まっていたものの、全体的に重苦しい疲労と敗北感が漂っていた。
道場の隅で息を整えながら、副主将の佐藤陽翔がぼやいた。
「……やっぱり、対人戦は難しいな〜ッス」
「ああ、おはよう陽翔。……東京ダンジョンで、エクリプスの兵隊に俺たちがやられた時のことを思い出したよ」
主将の門蒼真が、硬派な顔をしかめて短く息を吐く。
「プロの戦闘集団はやばいッスね。今回は風魔の忍者だったわけッスけど……。俺たち、怪異とか悪魔、魔物みたいな化け物には強いのに、結局のところ、人間が一番怖いッス」
「全くだ。単純なタイマンじゃない。狙撃や催涙ガス、地雷といった『近代戦闘』……そして、連携を極めた『集団との戦い』。今の俺たちには、それに対応する戦術が決定的に足りていない」
『遊撃手』として広い視野を持つ佐藤も、強靭な物理パワーを誇る門も、純粋な殺意を持って近代兵器を駆使してくる暗殺者たちを前に、自分たちの力の限界を痛感していた。
「押忍ッ!! 門主将、佐藤副主将! 今日も調子がいいッスね!!」
大文字が、大声で割り込んでくる。その後ろから、極度のビビリである雨宮千歳が、涙目で小刻みに震えながら近づいてきた。
「ひゃう……や、陽翔先輩、門先輩……。わたし、罰ゲームが怖いですぅ……」
全滅した彼らに美羽から告げられた罰ゲームは「後日発表」という生殺し状態だった。
「相変わらずだな、大文字は」
門が呆れたように言い、「……罰ゲームのことは、考えないようにして忘れていたんだがな」と遠い目をする。
「ま、なるようになるッスよ」
佐藤は雨宮を安心させるように、努めて明るく返した。
一方、道場の反対側では、芸能科の女子たちがストレッチをしながら重ため息をついていた。
「みんな、おはよう……。あー、もう身体中バキバキだよ……」
圧倒的なプロポーションを持つ阿部凛花が、長い脚を投げ出して項垂れる。
「相変わらずギリギリの体力ですわね、凛花さん」
完璧主義の女優である高橋玲央が、乱れ一つない道着姿で凛とした姿勢を崩さずに返す。
「仕方ないです。……私も、今朝は起きるのが本当に辛かったですから」
理詰めの頭脳派である南原紗良が、冷たい知性を宿した眼鏡の奥で疲労を滲ませた。
「玲央は完璧すぎだよ。いつも通り隙がない美しさだね」
阿部の言葉に、南原も無言で深く頷く。
「ええ……。ですが、人との戦闘は、本当に怖いですわね。論理も情も通じない、純粋な殺意というのは……」
高橋の言葉に、一年生たちも顔を強張らせた。
「先輩方、おはようございます。……ええ、全くですね。見えすぎる目も、自分が狩られる瞬間まで完璧に見えちゃって困ったものです」
キザな俳優志望の桐生が、いつもの余裕をなくして肩をすくめる。
「あんなに何度も同じところを狙われたら、いくら高性能なスーツでも防御が消えちゃうんだからっ……!」
B級覚醒者の桃井が、連続攻撃によるインナースーツの弱点を突かれた理不尽さに唇を尖らせる。
「お姉さま! 僕は……人間相手でも、お姉さまを守るためならやります!」
阿部を狂信的に慕う神品が、強い眼差しで言い切った。
全員の心境が「対人戦への恐怖と課題」で一致しているのを見た門が、パンッと柏手を打って道場に響かせた。
「……よし。みんな、聞いてくれ。今日の朝稽古は早めに上がろう」
「えっ、いいんスか部長?」
「ああ。身体を動かすより、今は頭の整理が必要だ。全員で車座になって会議しよう。これからの俺たちの課題である『対人』、『近代戦闘』、そして『集団との戦い』についてだ」
門の提案に、阿部が「賛成!」と真っ先に手を挙げ、全員が静かに頷いた。
かくして、朝稽古は早々に切り上げられ、新生・合気武道部の十人は道場の畳の上に車座となり、これからの凄惨な現実に立ち向かうための会議を始めるのだった。
【魔王と下僕たちの規格外な戦場】
「……はぁ。やっぱり、対人戦は難しいな〜ッス」
早朝の私立聖ミカエル学園、格技場。
主将である門蒼真の英断によって朝稽古は早々に切り上げられ、新生・合気武道部の十人は道場の畳の上に車座になっていた。
副主将の佐藤陽翔が、道着の首元を緩め、首の後ろをペチペチと叩きながら大きくため息をつく。
週末に叩き込まれた、立花雪社長からの緊急招集による『富士樹海サバイバル兼未登録怨霊除霊ツアー』。
そこで彼らを待ち受けていたのは、禍々しい怪異だけではなかった。ツアーの終盤、彼らを急襲したのは、近代兵器を完璧に使いこなす『風魔裏隠衆』の暗殺者たちによる、容赦のないゲリラ戦だったのだ。
狙撃、催涙ガス、地雷、そして一糸乱れぬ集団の連携。
全員の身体に色濃く刻まれた疲労と、完膚なきまでに全滅させられた敗北感の泥。
それを少しでも洗い流し、次なる対策を練るべく始まった戦術会議だったが、車座の中で一年生の桐生蓮がふと、長い茶髪の前髪を細い指先で弄りながら、純粋な疑問を口にした。
「あの、先輩方に素朴な疑問なんですけど。僕たちの先代――つまり、伝説の恋問持子先輩や、その周囲にいた『下僕』の皆さんは、こういう『対人戦』や『近代戦闘』、『集団との戦い』をどうやって切り抜けていたんですか?」
その言葉が格技場の空気に触れた瞬間。
二年生の五人――門蒼真、佐藤陽翔、阿部凛花、高橋玲央、南原紗良の視線が一斉に宙を彷徨い、絵に描いたような「遠い目」になった。
「……あー。桐生。その質問は、ぶっちゃけこの世で一番意味がないやつッスよ」
佐藤がどこか諦めを含んだ、乾いた苦笑いを漏らす。
「え? どういうことですか? 何か秘伝の戦術でも……」
「……参考にならないッスよ。あの人たちは、そもそも前提からしてバグってたッスから」
(((((バグってた……!?)))))
一年生五人――大文字、雨宮、桐生、桃井、神品の脳裏に、特大の不穏な擬音が一斉に鳴り響いた。
「まず、持子様に関してはね!」
きゅぴーん、と効果音が鳴りそうな勢いで、芸能科所属のトップモデル・阿部凛花が身を乗り出した。
身長百八十センチの圧倒的なプロポーションから繰り出される豊満な胸をぐっと張り、うっとりとした狂信的な瞳で熱弁を振るう。
「存在自体が完璧な『チート』なのよ! 極黒の魔力のシールドを無意識に常時展開して、身体にも高密度の魔力を纏わせていたわ。近代兵器も集団戦も、持子様に近づく前に絶対防御の壁に触れて消滅するか弾き飛ぶだけよ! 最高に神々しいでしょう!?」
「な、無意識で常時シールド……ッスか!?」
筋肉バカの一年生、大文字鉄平が、思わず己の大胸筋を震わせる。
「それに、第一下僕の本多鮎先輩も凄まじかったな」
主将の門が頑丈な腕を組み、厳つい顔を引き締めて言葉を継いだ。
「本多先輩は魔力量がずば抜けていた。だから自身の身体強化と、身の丈を超える巨大な武器にまで魔力を纏わせて、圧倒的な質量で近代兵器ごと敵を更地に変えていた。『私が一番愛情と魔力を頂いているからですわ!』と豪語していたな」
「逆に美羽先輩は魔力量が少ないから、『身体強化』と『超回避』に全振りしてたッス」
佐藤が、昨日自分を完璧な色仕掛けとゲリラ戦でハメた花園美羽を思い出し、背筋を凍らせながら愚痴る。
「銃弾やトラップの間を神速で駆け抜けて、一瞬で死角から首を刈るんスよ。『愛情は私が一番もらってますぅ! ナンバリングなんてただの登録番号ですから!』って本多先輩とよくキャットファイトしてたッス」
「あの、ちょっと待ってください!!」
ここで、桐生蓮がたまらず両手を前に突き出して、二年生たちの説明を大声で遮った。
『ピクッ』と、全員の動きが止まる。
「話を聞いていると、一人一人が歩く戦略兵器か、物理法則を無視した暗殺マシーンじゃないですか! 防壁、一撃必殺、超回避……そんなの、僕たちの特殊インナースーツの性能をもってしても再現不可能ですよ!? これじゃ集団戦の対策になりません!」
「うん、だから最初に言ったろ? 『参考にならない』って」
佐藤が至極もっともな顔で肩をすくめる。
「まだまだ、驚くのは早いですわよ」
クールビューティーな眼鏡の奥の瞳を冷たく光らせ、女優志望の高橋玲央が優雅に言った。
「第三下僕のエティエンヌさんは最初から『完成された戦士』すぎて、戦術の次元が違いましたの。無駄な魔力は一切使わないのに、とにかく強すぎる」
「ええ。しかもあの人、論理的におかしいんです」
南原紗良が、童顔に似合わない冷たい知性を宿した眼鏡の位置をクイと直した。
「真祖の吸血鬼で完全な『闇属性』なのに、天敵であるはずの『光の武器』を平然と振り回して敵を蒸発させていました。研究熱心で、立ち振る舞いは誰よりも仲間想いな『勇者タイプ』の女性(?)でしたね」
「ええっ!? 闇属性なのに光の武器って、完全にゲームの属性矛盾を起こしていませんか!?」
桐生蓮の『超高速思考』が、その理不尽な情報量を前にパチパチと音を立ててショートしかける。
「そして、最後のアスタルテ先輩は……」
門が重々しく口を開く。十人の視線が主将に集まった。
「最後のアスタルテさんは?」
「……神だ」
「は?」
「神」
「「「「「神!!!!!?」」」」」
格技場に、一年生たちの絶叫に近いツッコミが木霊した。
神を下僕にしている魔王。もはや、世界観のパワーバランスそのものが根底から崩壊している。
「押忍っ! 神ッスか!? 神って、プロテインを一日何杯飲んで限界まで追い込めば到達できる領域なんスか!?」
究極のKYである大文字鉄平が、一人だけ完全にズレた方向に目を輝かせて分厚い拳を握りしめる。
「ひゃうぅぅぅ……っ!? 吸血鬼とか、神様とか、もうわけが分かりません……ッ。おウチに帰りたいですぅぅぅ……っ!!」
一年生の中で群を抜くA級能力者であるはずの雨宮千歳は、完全にキャパオーバーを起こして佐藤の背後に縮こまり、ガタガタと震え出した。
「待ってください、神を従える魔王って……。僕の頭脳の計算式が、完全に処理を拒否しているんですが……!」
キザな仮面が剥がれ落ちた桐生蓮の額から、滝のような冷や汗が流れる。
「ちょっとぉ、そんなバケモノみたいな先輩たちと同じ基準で考えろって言われても無理じゃない。ねぇ、陽翔センパイぃ……?」
男の娘の桃井琉生が、光を失った真っ黒な深海魚のような瞳で佐藤の腕にしがみつき、粘着質なホラー声を出す。
「お、お姉さま……! たとえ相手が神様だろうが、僕は! お姉さまを守るために、このレールガンで全力で撃ち抜いてみせますッ!」
阿部凛花を狂信的に慕う神品蘭だけは、百合の情念によって辛うじて自我を保ちながらパチンコ玉を握りしめていた。
一年生たちの、五者五様のパニック。
それを見届けてから、佐藤はしがみつく桃井の頭をペチッと叩いて引き剥がし、ふっと真面目な『遊撃手』の顔に戻って、全員を見回した。
「……な? だから言ったろ。あの人たちの戦い方は、俺たちには一ミリも真似できないんスよ」
佐藤の声が、不思議とスッと全員の耳に届く。
ざわついていた格技場が、静かな静寂を取り戻していく。
「先代たちは確かに最強の化け物揃いだった。だけど、俺たちは違う」
佐藤は、道着の膝を拳でぐっと押しつけ、まっすぐなトーンで言葉を紡いだ。
「神や吸血鬼じゃない、ただの人間の俺たちが、悪意を持った『人間の殺意』とどう向き合うか。近代兵器の罠をどう破り、連携された集団をどう合気武道で崩すのか。それを、今からこの十人の頭でひねり出すんスよ」
その一言は、今回の凄惨な敗北と、これからの新生・合気武道部が目指すべきテーマを、完璧に捉えていた。
「……そうですわね」
高橋玲央が、門を見つめてから、真剣な顔で一年生たちに視線を向けた。
「完璧な型だけでは、人間の泥臭いゲリラ戦には通用しない。それを知った今だからこそ、私たちの新しい戦法が必要になりますわ」
「同感です」
南原紗良も深く頷く。
「私たちの知性と異能、そして合気の理。これらを組み合わせた独自のフォーメーションを、論理的に構築しましょう」
「よし」
主将の門蒼真が、ドスンと畳を叩いて立ち上がった。
「これより、新生・合気武道部による本格的な『新戦術会議』を始める。大文字、もう素振りはやめて席につけ」
「押忍っ!!!!! 了解したッス!!!!!」
先代最強伝説という、高すぎる天を見上げた一年生たち。
しかし、その真似できない規格外ぶりを突きつけられたことで、彼らの心からは逆に迷いが消えていた。
自分たちは、自分たちのやり方で、人間の泥臭い殺意を凌駕してみせる。
格技場に差し込む朝日は、これからの過酷な訓練と、彼らが手にするであろう新たなる「進化」の萌芽を、静かに照らし出していた。
【暴走の代償と職員室の長い朝】
――と、そこまでは非常に綺麗にまとまりかけていた。新生・合気武道部の絆が、確かな一本の線として繋がろうとしていた、その時だった。
「……ねぇ。今の話を聞いてて、ちょっと思ったんだけどさ」
圧倒的な美貌とスタイルを持つモデル、阿部凛花が、人差し指を顎に当てて綺麗な首を傾げた。その澄んだ瞳の奥に、怪しい光が灯っているのを、悪友の佐藤は見逃さなかった。
「何ッスか、凛花。メチャクチャ嫌な予感がするから、その顔で突拍子もないことを言うのはやめてほしいんスけど」
「持子様がやってたっていう、無意識の常時魔力シールド。あれさ……」
阿部はふふん、と不敵に鼻を鳴らす。
「今の私なら、案外、無理でない気がするのよね」
「「「「「はあぁぁぁっ!?」」」」」
二年生陣の口から一斉に絶叫が飛び出した。
「ちょっと凛花! あなた、自分のタイプを忘れましたの!? 純粋な攻撃特化アタッカーで、繊細な魔力コントロールは大雑把で粗いはずですわ!」
高橋玲央が眼鏡をガタつかせて立ち上がるが、狂信モードに火がついた阿部の耳には届かない。
「大雑把なら、出力を最大にして無理やり固めちゃえばいいのよ! 持子様に近づくための第一歩! いくわよぉぉぉ、ハァァァァァッ!!」
「お、おい止めろ凛花――ッ!!」
門蒼真の制止の声よりも早く、阿部の身体から漆黒の「極黒の魔力」が爆発的に噴き出した。
ドーーンッ!!!!!
「ひゃいぃぃぃっ!?」
格技場の中に、凄まじい魔力の暴風が吹き荒れる。あまりのプレッシャーに雨宮千歳が悲鳴を上げて頭を抱えた。
阿部を中心に展開される、禍々しい漆黒の魔力のドーム。しかし、繊細な制御の苦手な攻撃特化の魔力は、バレエ由来の強力な回転エネルギーと混ざり合い、周囲へと猛烈な指向性を持って暴走を始めた。
バリバリバリバリバキィンッ!!!
「うわああああっ!? 畳が、格技場の畳がぁぁぁっ!?」
桐生蓮が絶叫する。
阿部の足元から放たれた魔力の衝撃波が、なんと格技場の重い畳を容赦なく引き剥がし、三枚、四枚と爆音を立てて宙へ吹き飛ばしたのだ。宙で粉砕され、藁クズとなった畳が、まるで雪のように道場内に降り注ぐ。
「……ふぅ。ほら、出来た!」
髪や肩に藁クズをまみれにさせながら、阿部凛花は綺麗な顔に満面のドヤ顔を浮かべてみせた。確かに彼女の目の前には、薄すらと黒い魔力の防壁が揺らめいている。
だが、周囲の十人は、ぽっかりと床板が剥き出しになった格技場の惨状を見て、完全にフリーズしていた。
「……あー」
佐藤が、頭についた藁クズを払いながら、天を仰いだ。
「凛花。出来たのは凄いッスけど、これ、完全に怒られるやつだ」
「……ああ」
主将の門が、剥き出しになったコンクリートの床を見つめ、青ざめた顔で額を押さえる。
「ただでさえ週末のサバイバル全滅の罰ゲームが控えているというのに、学校の施設まで破壊するとは……」
「論理的な自爆行為ですね。弁護の余地はありません」
南原紗良がシベリアのような冷たい視線を阿部に送りながら、手帳を開く。
「放課後の社長への報告と、地下での新戦術特訓の前に……まずは、片付けるべき問題がありますね」
格技場に響く、朝のホームルームを告げる予鈴のチャイム。
門は深くため息をつくと、主将としての覚悟を決め、藁クズを払って立ち上がった。
「よし! 朝の戦術会議はここまでだ! 解散!」
「「「押忍っ!!!」」」
一年生たちが、これ以上破壊の二次災害に巻き込まれてはたまらないと、蜘蛛の子を散らすように格技場から教室へと逃げ出していく。
静かになった道場で、門は無言のまま阿部凛花の背後に歩み寄り、その制服の首根っこをガシッと掴んだ。
「ひゃうっ!? ちょっと、蒼真くん、何するのよ?」
「阿部。行くぞ」
「えー、どこに?」
門の厳つい顔には、決して動かない巨石のような、諦めと義務感が沈んでいた。
「決まっているだろう。職員室だ。……今からホームルームが始まる前に、お前が畳を吹き飛ばした件について、顧問の影安先生に二人で怒られに行く」
「うげぇっ……! 影安先生、怒ると厳ツイ顔が余計に怖いのよね……。ごめんってば、蒼真くん、引っ張らないでぇー!」
「主将の俺の連帯責任だ。諦めろ」
ガガガガ、と床板を引きずられる阿部と、それを無表情で連行する門の姿を見送りながら、佐藤は「あいつら、放課後まで命が持てばいいッスね……」と、静かに手を合わせるのだった。




