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追放された転生貴族の俺、基礎カード魔法で少女たちと運命を切り開く  作者: 夜神智
赤骸城編

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第82話 図書館

翌朝。


朝食を終えたアーガは、昨日机の上へ残しておいたカードを再び取り出した。


リナは食器を片づけていたが、アーガが机の前へ座るのを見ると、その手が少しずつ遅くなった。


昨日のように、魔法のことでまた腹を立てるのではないかと心配しているらしい。


アーガは昨日のように何度も繰り返そうとはしなかった。


体内で動かせる魔力のうち、ごくわずかな量だけを分け、カードに刻まれた紋様へ流し込む。


赤い光はすぐに一周した。


直後、カードの上から弱々しい炎が現れる。


大きさは昨日とほとんど変わらなかった。


魔力を流す速度を意識して調整しても、炎を数秒長く維持できただけだった。


「リナ、もう一度使ってみてくれ」


リナは皿を持って台所へ向かう途中だった。


その言葉を聞いて足を止める。


アーガの手にある赤の1カードを見つめ、まだ不安そうに尋ねた。


「アーガ様……もう大丈夫なのですか?」


「もう平気だ」


アーガはカードを差し出した。


「もう一度、確認したいだけだ」


リナはそこでようやく皿を置き、慎重に赤の1カードを受け取った。


昨日、一度成功している。


そのため、最初ほど緊張してはいなかった。


カードの赤い紋様も、昨日より明らかに速く光り始める。


炎が札の上へ現れた。


決して強力な魔法とはいえない。


それでも、アーガが使ったものより大きく、燃えている時間も長かった。


アーガは手を伸ばし、炎から少し離れた位置で止める。


温度にも問題はない。


魔力の流れも非常に安定していた。


無理に維持しているような揺らぎは、まったく感じられない。


「もういい」


リナはすぐに魔力を止め、カードを返した。


アーガは受け取った札をしばらく見つめる。


それから外套のポケットへ入れ、立ち上がって扉へ向かった。


昨夜、長い時間をかけて考えた。


トランプの魔法が弱いこと自体は、不思議ではない。


本当に奇妙なのは、誰もがその威力をトランプの限界だと当然のように受け入れていることだった。


一級、二級、三級、四級カードの間には、確かに性能の差がある。


だが、実際の戦闘でカードの等級だけが勝敗を決めることはない。


しかし、トランプは違う。


誰が使用しても、赤の1カードから現れるのは小さな炎だけ。


青の1カードが生み出す水も、ほんのわずかな量にすぎない。


さらに強いカード使いが使用すれば、魔法は少し安定する。


それでも威力だけは、常に極端に低い範囲へ制限されていた。


(カードの限界って、いったい何なんだ?)


◇ ◇ ◇


アーガは朝の市場を抜け、赤骸城中央の石畳を真っすぐ歩いた。


図書館は、城の中心部に近い場所に建っている。


周囲の建物よりも一回り高い、灰白色の石造りの建物だった。


正門の前には太い石柱が二本立ち、入り口にはすでに十数人が列を作っている。


アーガがここを訪れるのは初めてだった。


学院の書庫では、ほとんどの本を無料で読むことができた。


だが、赤骸城の図書館は違う。


中へ入るだけでも金を払わなければならない。


受付へ進み、木札に書かれた料金を確認する。


アーガはすぐに眉をひそめた。


「こんなに高いのか?」


受付の女が顔を上げる。


「一日分の料金よ」


淡々と答えた。


「途中で外へ出て、もう一度入るなら、そのたびに改めて払ってもらうわ」


アーガはポケットの金を確かめた。


数秒間迷った末、必要な硬貨を数えて受付へ置く。


女は金を引き出しへ入れ、日付が刻まれた木札を渡した。


それから館内を指さす。


「一般書籍は一階と二階」


「三階へ入る場合は別に登録が必要よ」


「食べ物は持ち込まないで」


◇ ◇ ◇


図書館の中は、外の通りとは比べものにならないほど静かだった。


何列もの書架が、広間の中央から壁際まで続いている。


アーガはまず一階を一通り探した。


カードに関する書籍は多かった。


しかし、そのほとんどが正式なカードについて解説した本だった。


最も基礎的なものでも、一級の生活魔法カードから始まっている。


トランプについて専門的に扱った本は、一冊も見つからなかった。


次に二階へ上がる。


書架に記された分類を頼りに、魔法基礎構造の区画へ向かった。


だが、そこでも結果は同じだった。


何冊かの本が、冒頭でトランプへ触れている。


しかし、それも子供が魔力の扱いを練習するための道具だと、一、二行説明しているだけだった。


その後はすぐに、一級カードの魔力回路の解説へ移ってしまう。


一時間近く探し続けた末。


アーガは入り口付近へ戻った。


受付の脇では、白髪の管理人が俯きながら貸出記録を整理している。


「すみません」


アーガが声をかけた。


「トランプの基礎構造について書かれた本はありませんか?」


管理人の筆が止まった。


顔を上げ、アーガを見る。


「トランプ?」


「はい」


アーガは説明を続けた。


「赤の1カードや赤の2カードのような元素魔法カードです」


「できれば、魔力紋様や魔力の流れについて詳しく書かれた本がいいのですが」


管理人は数秒間、アーガを見つめた。


その後、面倒そうに手を振る。


「ない、ない」


「子供が練習に使うような物を調べて、何になる?」


「基礎構造を学びたいなら、一級の生活魔法カードを見ればいい」


「トランプよりずっと完成されている」


「そこはもう探しました」


アーガは答えた。


「俺が読みたいのは、トランプについての本です」


「だから、ないと言っているだろう」


管理人は再び視線を記録簿へ落とした。


「何百年か前には、研究していた者もいたらしいがな」


「今では誰も読まない」


「本が虫に食われず残っているかどうかさえ分からん」


アーガはその場を離れなかった。


受付の前に立ったまま、しばらく考える。


やがてポケットから数枚の硬貨を取り出し、記録簿の横へそっと置いた。


「もう一度だけ探してもらえませんか?」


「お願いします」


管理人は硬貨を見る。


続いて、アーガの顔へ目を向けた。


呆れたような表情を浮かべる。


「どうしてお前みたいな子供が、そんな物へ興味を持つんだ?」


「どうしても分からないことがあるんです」


管理人は深くため息をついた。


置かれた硬貨を手元へ引き寄せる。


それから椅子を立ち、壁に掛けられていた鍵束を手に取った。


「ついてこい」


アーガを連れ、広間の最も奥へ向かう。


やがて、目立たない小さな木の扉の前で足を止めた。


鍵を差し込み、二度回す。


扉は耳障りな摩擦音を立てながら開いた。


その先には、地下へ続く石の階段があった。


窓は一つもない。


壁には一定の間隔で、魔法灯が埋め込まれている。


地下の空気は上階よりも冷たかった。


埃と古い紙が混じり合った匂いも漂っている。


「こんなところにあるんですか?」


アーガは管理人のあとを追い、階段を下りた。


「地下には、誰も読まなくなった物を集めてある」


管理人は壁へ手をつき、ゆっくり進んでいく。


「中には、数十年間一度も取り出されていない本もある」


「トランプについては、何百年も前にすでに研究されている」


声が、石の通路へ反響した。


「当時の結論では、あの種類のカードには固定された上限が存在するらしい」


「材料を変えても、流し込む魔力を増やしても、最終的な威力はほとんど上昇しない」


「原因を見つけた人はいなかったんですか?」


「最初は大勢が探したさ」


管理人は答えた。


「だが、何年調べても何も分からなかった」


「そのうち、より完成度の高い一級カードや二級カードが次々と作られるようになった」


「そうなれば、誰がトランプなんかに時間を使う?」


階段を下りながら、一度振り返る。


「今の魔法教育でも、最も基礎的な構造は一級カード、つまり生活魔法を参考にしているだろう?」


アーガはうなずいた。


学院で基礎構造を学んだときも、トランプは最も単純な練習道具として扱われていた。


魔力の節点や回路を本格的に分析する際に使われるのは、いつも一級カードだった。


◇ ◇ ◇


階段を下り切る。


そこには、天井の低い地下書庫が広がっていた。


書架は狭い間隔で並び、多くの場所に蜘蛛の巣が張っている。


魔法灯の光も弱く、奥までは見通せなかった。


管理人は手提げ灯を一つ外し、アーガを連れて何列もの書架の間を進んだ。


かなり長い時間をかけて探し回る。


「おかしいな……」


管理人は独り言を呟いた。


「確か、この辺りにあったはずなんだが」


しゃがみ込み、書架の最下段に並んだ本を一冊ずつ調べていく。


その動きで大量の埃が舞い上がった。


アーガは顔を背け、二度ほど咳き込む。


さらにしばらく経った頃。


管理人は書架と壁の隙間へ手を伸ばした。


そこから、薄い灰色の冊子を引き抜く。


本全体が厚い埃に覆われていた。


表紙も反り返り、端が大きく傷んでいる。


周囲に並ぶ分厚い魔法書と比べれば、あまりにも頼りなく見えた。


管理人は表面の埃を払い落とす。


ほとんど色褪せた題名を確認し、アーガへ差し出した。


「見つけたぞ」


「恐らく、残っているのはこれ一冊だけだ」


アーガは冊子を受け取った。


手提げ灯の明かりへ近づけ、表紙を見る。


そこには、ごくありふれた文字で一つの題名が記されていた。


『トランプ元素魔法カードの基礎構造』


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