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第 54 話 不戦勝

第二闘技台は中央の主闘技台より一回り小さかったが、その周囲も大勢の生徒で埋め尽くされていた。


アーガは人混みをかき分けて前方へ進み、すぐに闘技台の上にいるミロを見つけた。


ミロは両手で大剣を握り、炎をまとった武器を使う剣士と正面から打ち合っている。


相棒は二本の短剣を操り、魔法で腕を強化した屈強な男子生徒と渡り合っていた。


闘技台にいる四人は、全員が近接戦を得意としているようだった。


炎の剣士とは別に、もう一人の剣士が使う武器には、幽緑色の魔力がまとわりついている。


刃が振るわれるたび、空中に淡い緑色の軌跡が残った。


「傷を悪化させ続ける魔法か」


アーガはすぐに能力を見抜いた。


しかし、最も目を引くのは、上半身を露出した屈強な男子生徒だった。


大量の魔力を右腕へ集中させ、腕の外側へ犀の角を思わせる分厚い装甲を作り出している。


拳を振るうたびに、はっきりとした風切り音が響いた。


ミロの大剣と炎の長剣が正面から衝突し、火花が絶えず周囲へ飛び散る。


一方、短剣使いは速度を生かし、側面から犀角の腕を持つ相手の守りを崩そうとしていた。


「ミロ、右だ!」


相棒の声を聞き、ミロはすぐに一歩後退した。


わざと相手の前へ隙を作る。


短剣使いはその機会を逃さず、二本の刃を交差させて、犀角の腕を持つ男子生徒の脇腹へ斬りかかった。


だが相手は強化された右腕で攻撃を受け止める。


同時に左拳を振るい、短剣使いを慌てて仰け反らせた。


「いい連携だ」


アーガは闘技台の変化を見ながら、軽くうなずいた。


しかし間もなく、炎の剣士が突然攻撃の勢いを強めた。


ミロは連続して後退を強いられる。


同時に犀角の腕を持つ男子生徒も突進し、短剣使いを闘技台の外まで吹き飛ばした。


「一名、場外!」


審判がすぐに宣言した。


闘技台は、二対一の状況へ変わった。


それでもミロは降参しなかった。


大量の魔力を大剣へ注ぎ込む。


重かったはずの武器が、突然軽くなったかのように動いた。


上段から振り下ろされた強烈な一撃が炎の剣士を押し戻し、刃が巻き起こした風が地面の埃まで吹き飛ばす。


「うまい!」


アーガは思わず声を上げた。


「もう鉄槌魔法を、あそこまで使えるようになったのか」


しかし二人に同時に攻められれば、ミロもすぐに不利な状況へ追い込まれていった。


炎の剣士が正面から絶えず攻撃し、犀角の腕を持つ相手は側面から隙を狙う。


ミロの体力は急速に削られ、大剣を振る速度も目に見えて遅くなっていった。


炎の剣士による横薙ぎをどうにか防ぎ、犀角の腕による突進も身体をひねって避ける。


だが、その足取りはすでに大きく乱れていた。


直後、炎の長剣が下から跳ね上がる。


ミロは大剣を持ち上げて防ぐしかなかった。


二つの武器が衝突した瞬間、強い衝撃によって何歩も後退させられる。


踵は、すでに闘技台の縁へかかっていた。


犀角の腕を持つ男子生徒が、その隙を逃さず再び正面から突進する。


ミロは直撃こそ避けたものの、強化された腕が身体をかすめた。


それだけで完全に均衡を失い、闘技台の外へ投げ出される。


下に敷かれた柔らかな敷物へ、激しく落下した。


審判がすぐに片手を上げる。


「試合終了! 『炎の犀牛』組の勝利!」


救護係が急いでミロのもとへ駆け寄った。


アーガも観客の間から抜け出し、手を伸ばして彼を起こす。


「大丈夫か?」


ミロは口元についたわずかな血を拭い、困ったように笑った。


「格好悪いところを見せたな。結局、負けちまった」


「十分よく戦ってたよ」


アーガは言った。


「相棒が場外になってからは、二対一だったんだ」


ちょうどそのとき、拡声術式から声が響いた。


「アーガ・ラインハルト、リサ・ベルマン両名は、直ちに第三闘技台へ向かってください」


アーガはミロの肩を軽く叩いた。


「休んでいて。俺たちは行かないと」


「行ってこい」


ミロは笑った。


「俺より早く負けるなよ」


アーガは第二闘技台を離れ、リサが待つ方向へ歩いていった。


ミロの試合を見たことで、その表情は先ほどより真剣なものへ変わっている。


この先、相手はさらに強くなるはずだった。


アーガが第三闘技台へ到着すると、リサはすでに長い間待っていた。


学年上位の二人が今回対戦するのは、三年生の中でも下位にいる組だった。


絶対的な実力差を前に、この試合の行方にはほとんど疑いがなかった。


アーガの二刀が陽光の下で滑らかな軌跡を描き、リサの細剣が銀色の蛇のようにその間を駆け抜ける。


二人はカードの力をほとんど使わなかった。


安定した剣術と息の合った連携だけで、三分も経たないうちに相手を闘技台の縁まで追い詰めた。


審判が勝利を宣言すると、二人の三年生は悔しそうにしながらも、先輩たちへ素直に頭を下げた。


試合後、アーガとリサは闘技台の中央へ進み、二人と正式に握手を交わした。


「アーガ先輩、リサ先輩!」


一人の生徒は興奮のあまり声を震わせ、瞳を輝かせていた。


「この一年間、ずっとお二人を目標に努力してきました! 試合で直接戦えて、本当に光栄です!」


隣の相棒も何度もうなずく。


その顔には、隠しきれない憧れが浮かんでいた。


「お二人の戦い方を何度も研究したんです。でも、実際に戦うと、こんなに差があるなんて……」


アーガは穏やかに笑い、相手の肩を軽く叩いた。


「力を使うときの判断が、まだ少し遅い」


「三度目の打ち合いでは、反撃できる機会があったよ」


リサも珍しく励ますような表情を見せ、相手の剣の柄を指先で軽く示した。


「カードの能力へ頼りすぎないことです」


「必要なら、まず前へ踏み込んでから次の動きを決めても構いません」


二人は恐縮したように背筋を伸ばし、声を揃えた。


「はい! もっと努力します!」


「次に戦えるときを楽しみにしてる」


アーガは軽くうなずき、リサと一緒に闘技台を下りた。


陽光が二人の影を長く伸ばす。


その後ろ姿を、二人の後輩は憧れに満ちた目で見送っていた。


午後の試合も、ほとんど波乱なく終わった。


アーガとリサが対戦したのは、別の三年生組だった。


相手の戦術は悪くなかったが、五分ほど耐えたところで敗北した。


審判が『金色の剣刃』の勝利を告げた頃には、夕陽が闘技台の木床を橙色へ染めていた。


「今日はここまでですね」


リサは少し張った手首を軽く振った。


金髪が夕風に揺れる。


「対戦表を見に行きましょう」


二人は中央広場に設置された対戦表の前へ向かった。


巨大な羊皮紙には、数え切れないほど多くの組の名前が書き込まれている。


敗退した組の名には、すでに赤いインクで線が引かれていた。


アーガは顔を上げ、残っている組の数を数え始める。


「学院には六百人いて、参加者は四百人……」


指を空中で動かしながら計算した。


「二百組が参加して、今日で三回戦まで終わったから……」


「残りは二十五組です」


リサが言葉を引き継ぎ、わずかに眉を寄せた。


「奇数ですから、明日は一組が不戦勝になるはずです」


アーガはうなずき、対戦表に並ぶ見覚えのある名前を見渡した。


「四年生の『鋼鉄の翼』、三年生の『氷霜の新星』……」


「ここからが、本当の勝負になりそうだな」


夜が完全に訪れた頃、二人は寮の前で別れた。


「ええ」


リサの深青色の瞳には、月光の下でわずかな不安が浮かんでいた。


しかし最後まで、何も口にはしなかった。


翌朝。


アーガは普段より三十分早く目を覚ました。


新しい対戦表を確認すると、『金色の剣刃』の名が不戦勝の欄へ堂々と書かれていた。


「運がよかったな」


アーガは眠そうな目をこすった。


日程によれば、残る二十四組は午前中に一回戦を行う。


つまり二人には、午前中いっぱいの自由時間があるということだった。


細かな雨が窓を叩く音には、人を再び眠りへ誘うような響きがあった。


それでもアーガは制服へ着替え、部屋を出た。


食堂の前を通りかかると、リサはすでに窓際の席へ座っていた。


目の前には、カードの組み合わせについて書かれた筆記帳が開かれている。


アーガに気づくと、フォークで向かい側の席を指した。


「不戦勝だった」


アーガは席へ座りながら言った。


「見ました」


リサはパンケーキへ蜂蜜をかけた。


「午前中は、何をするつもりですか?」


アーガは図書室の方角を見た。


「少し勉強してくる」


「グルバート家では、魔動儀のことすら知らなかったからな……」


朝の光が図書室の大きなステンドグラスを通り抜け、木製の長机へ色とりどりの影を落としていた。


アーガは窓際の席へ座り、『不思議な魔法道具』を集中して読んでいる。


指先で、ページに描かれた精巧な挿絵を軽くなぞった。


「魔動儀……」


小さく呟き、ヴィルヘの城館で何も知らなかったときの気まずさを思い出す。


そのとき、クチナシを思わせる淡い香りが漂ってきた。


隣の椅子が、静かに引かれた。


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