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第 53 話 初戦勝利

『金色の剣刃』の名が告げられると、観客席からすぐに囁き声が上がった。


「相手の二人、あの人たちの戦い方をわざわざ研究したらしいよ」


「リサ先輩は使える魔法が多いのに、全部対策できるのかな?」


「アーガ先輩は最近、二刀を練習してるんだ。前の訓練試合では、一人で三人に勝ったらしいぞ」


アーガとリサは、闘技台の片側へ並んで立った。


反対側では、マーチがすでに腰を低く落としている。


シリンもカードを指の間へ挟み、二人が事前に戦術を決めていることは明らかだった。


審判は双方の準備が整ったことを確認すると、旗を振り下ろした。


「始め!」


最初に動いたのはマーチだった。


加速魔法を発動し、ほとんど一瞬でその場から飛び出す。


狙いは真っすぐアーガだった。


同時に、後方のシリンが複数の魔力弾を放った。


扇状に広がった弾が、アーガの左右の退路を塞ぐ。


「左は私が!」


リサが一歩前へ出て、アーガの前に立った。


細剣を連続で振るい、正面から迫る魔力弾を一つずつ砕いていく。


砕けた魔力が剣先の周囲で白い霧へ変わり、氷の結晶が剣身を伝って先端まで広がった。


魔力弾を防いだリサは、その場で止まらなかった。


勢いのまま細剣を突き出し、接近していたマーチに急停止を強いる。


マーチは地面を強く踏み、無理やり進行方向を変えた。


身体を回転させ、そのまま拳をアーガの胸へ叩き込む。


アーガは二本の刀を交差させ、正面から拳を受け止めた。


激しい衝撃によって両腕が痺れ、身体も二歩ほど後方へ押し戻される。


だがアーガは、後退する勢いを利用して身体を回した。


左手の刀が、すぐにマーチの脇腹へ薙ぎ払われる。


マーチは加速魔法で素早く後退した。


刃は避けたものの、刀が生んだ風で上着の裾が大きく舞い上がる。


「なかなかいい連携だ」


マーチは痺れた手を振った。


表情は先ほどよりも真剣になっている。


「だが、まだ終わっていない」


シリンが再び手を上げた。


今度は三発の魔力弾が同時に放たれる。


一発はアーガを正面から狙い、残りの二発が左右を封鎖した。


アーガは避けなかった。


右手の刀へ盾を形成し、正面の魔力弾を強引に受け止める。


爆発の衝撃で身体が後方へ押され、靴底が石床へ二本の跡を刻んだ。


リサは、その隙を逃さなかった。


加速魔法を発動し、シリンへ向かって駆け出す。


その動きはマーチよりも速く、軽やかだった。


瞬きをするほどの間にシリンの前まで距離を詰め、細剣で胸元を突く。


シリンは顔色を変え、慌てて後退した。


至近距離から魔力弾を放つ。


リサは身体を横へずらして回避した。


魔力弾は肩のすぐ横を通り過ぎ、背後の防護障壁へ衝突して爆発する。


「魔力弾の狙いは正確ですね」


リサの剣先が跳ね上がり、シリンの袖口を切り裂いた。


冷気が傷の周囲へ広がり、シリンの片腕をわずかに硬直させる。


シリンが追い詰められたことに気づき、マーチはすぐに引き返した。


加速魔法を限界まで高め、リサの背中へ拳を放つ。


しかしアーガは、すでにその動きに気づいていた。


二本の刀を同時に振り抜く。


二つの風刃が左右からマーチへ襲いかかった。


マーチは攻撃を諦め、無理やり身体の向きを変えるしかなかった。


風刃は肩のすぐそばを通り過ぎ、闘技台の端にある防護障壁へぶつかった。


「いいぞ!」


観客席のミロが興奮して立ち上がり、力強く拳を振り上げた。


シリンの呼吸は、すでに明らかに乱れていた。


魔力弾を連続で放ったことで、大量の魔力を消耗している。


再び形成した魔力弾は先ほどより一回り小さく、速度も大幅に落ちていた。


アーガは軽く身体を傾け、その魔力弾を避けた。


背後へ飛んでいく光を見ながら告げる。


「魔力弾が遅くなってる」


嘲笑する口調ではなかった。


ただ事実を口にしただけだ。


それでもシリンの表情はさらに険しくなり、歯を食いしばって再び手を上げた。


リサは、次の魔法を使わせなかった。


細剣の腹をシリンの手首へ叩きつける。


痛みに顔を歪めて後退すると、掌で形成されかけていた魔力弾も、乱れた光の粒となって消えた。


同時に、アーガはすでにマーチの懐へ入っていた。


二本の刀を交差させ、マーチの腕を挟み込む。


そのまま力を込めて下へ押さえつけた。


マーチの加速魔法は限界へ近づいている。


長時間にわたって瞬発力を出し続けた両脚も、すでに力を失い始めていた。


アーガはその隙を逃さず、膝を腹部へ叩き込む。


マーチは耐えきれず、片膝を地面についた。


リサの細剣も、シリンの首元で止まっている。


「降参してください」


シリンは、もう動かなかった。


マーチは立ち上がろうともがいたが、アーガは二本の刀へさらに力を込める。


数回荒い息を吐いたあと、マーチはついに顔を伏せた。


審判がすぐに笛を鳴らす。


「勝者、『金色の剣刃』!」


観客席から盛大な拍手が上がった。


アーガは二本の刀を鞘へ戻すと、マーチへ手を差し出した。


地面から起こそうとしたのだ。


しかしマーチは、その手を勢いよく払いのけた。


「お前の助けなんかいらない」


腹部を押さえながら、自力で立ち上がる。


口元には細い血の跡がにじんでいた。


闘技台を離れる直前、もう一度アーガを振り返る。


「覚えてろよ」


アーガは叩かれて痺れた手を引っ込めた。


何も言い返さなかった。


リサは眉をひそめ、マーチを追いかけようとした。


だが、アーガが手を伸ばして止める。


「もういいよ」


「負けたのに、あの態度は何ですか」


「試合はもう終わったんだ」


二人は一緒に闘技台を下りた。


階段を降りている途中、リサが突然アーガのそばへ寄った。


声も少し小さくなる。


「先ほど、二刀と盾を組み合わせて魔力弾を防いだ動き……」


一度、言葉を止めた。


「確かに、少し格好よかったです」


アーガは目を瞬き、彼女へ顔を向けた。


しかしリサは、すでに反対側を向いている。


何も言っていないような顔をしていた。


金髪に隠れた耳先だけが、わずかに赤くなっている。


————


選手区域を離れると、二人はそれぞれ化粧室へ向かった。


アーガが男子用厠の洗面台で手を洗っていると、背後の個室から数人の男子生徒の会話が聞こえてきた。


「聞いたか? 今年の四年生首席、かなり強いらしいぞ。確かマールーって名前だった」


「俺も聞いた。もう学徒級中位なんだろ?」


「一年生の頃から魔法の開発が得意だったらしい。同じ水属性の能力なのに、水槍、水幕、水紋の三種類に使い分けられるんだ」


「当時も大勢の先生に褒められていたらしいぞ」


アーガは水を止め、手についた水滴を軽く振り払った。


その場へ留まらず、厠から出る。


しかし、出口を出た瞬間、背の高い人影に進路を塞がれた。


アーガが右へ一歩動くと、相手も同じ方向へ動く。


左へ移動しても、やはり前へ立ちはだかった。


「ここ、男子用厠の前なんだけど」


アーガは少し苛立ちながら顔を上げた。


「何の用?」


目の前に立っていたのは、四年生の女子生徒だった。


アーガよりも半分ほど頭一つ背が高い。


深い茶色の長髪は馬尾にまとめられ、鋭い目をしていた。


深青色の制服も隙なく整えられ、胸元には四年生を示す徽章がつけられている。


「あなたがアーガ・ラインハルト?」


「そうだけど」


「『王都日報』で写真を見たことがある」


アーガは彼女を見返した。


「それで?」


女子生徒は一歩前へ出た。


「私はマールー・ホルト」


「卑怯な手を使って、私の弟を痛めつけたのはあなたね?」


「弟?」


アーガはすぐには誰のことか分からなかった。


「マーチ・ホルト」


マールーの口調がさらに険しくなる。


「先ほど、あなたに負けた人よ」


「彼か」


アーガも声を強めた。


「でも、俺のどこが彼を痛めつけたことになるんだ? 試合中はずっと審判が見ていただろ」


マールーは冷たく告げる。


「本人が、あなたは卑怯な手を使ったと言っていたわ」


アーガは呆れて笑った。


「俺が使った技のどれが、大会規則に違反していたんだ?」


「実力が足りなければ負ける。それだけだろ」


「俺は普通に戦って、自分の能力を正しく使っただけだ」


マールーは拳を強く握った。


指の関節から、小さな音が鳴る。


二人の間の空気がますます険悪になった、そのとき。


廊下の反対側から、リサの声が聞こえた。


「アーガ、どうしてそんなに遅いんですか?」


曲がり角から現れ、そのまま真っすぐアーガの隣へ来る。


そして、ごく自然な動作で彼の腕をつかんだ。


「こちらは?」


リサがマールーを見る。


その眼差しは、すでに冷たくなっていた。


マールーの顔に浮かんでいた怒りが、明らかに揺らいだ。


彼女も当然、リサのことは知っている。


ベルマン家が王国でどれほど大きな力を持っているかも理解していた。


数秒間黙ったあと、最後には鼻を鳴らし、横へ退いて道を空けた。


リサはアーガの腕をつかんだまま、その場から連れ出した。


二人が背を向けた直後、背後からマールーの声が響く。


「アーガ・ラインハルト!」


「最後まで勝ち続けなさい!」


廊下の中央に立ったまま、その声を遠くまで響かせる。


「そうすれば決勝で、私が直接あなたを叩きのめせるから!」


アーガは振り返らず、片手だけを上げた。


「いつでもどうぞ」


曲がり角を通り過ぎると、リサはすぐにアーガの腕を離した。


「今のは、私が助けてあげたんですよ」


「ありがとう」


リサは眉を寄せた。


「あの人は、確か四年生の首席ですよね。どうしてあなたを呼び止めたんですか?」


「俺が弟をいじめたって、言いがかりをつけてきた」


アーガは両手を広げた。


「話が通じない」


(前世なら、こういうのを『弟バカ』って言ったっけ)


リサは小さくため息をついた。


「私たちが勝ち続ければ、いずれ彼女とも戦うことになります」


「そのとき考えればいいよ」


アーガは両手を頭の後ろで組んだ。


マールーに脅されたことなど、まったく気にしていない。


遠くから、再び大きな歓声が聞こえてきた。


第二闘技台の試合が、ちょうど重要な場面へ入ったらしい。


大勢の生徒が、そちらへ集まり始めている。


アーガは時刻を確認した。


「次の試合までは、まだ時間がある」


「見に行こう」


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