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第 44 話 婚礼

時刻は次第に夕暮れへ近づき、城館のステンドグラスが夕陽を受けて鮮やかに輝いていた。


長く響く角笛の音とともに、ヴィルヘ・グルバートが娘の腕を取り、螺旋階段をゆっくりと下りてくる。


ベラ・グルバートは今年で十六歳。


特別に目を引く美貌というわけではなかったが、身につけた花嫁衣装には月光石がいくつも埋め込まれていた。


宝石の表面から柔らかな光が放たれ、彼女の全身を淡い光の膜が包んでいる。


かなり緊張しているらしく、片手でずっと父親の腕をつかみ、頬にも薄い赤みが差していた。


リサの護衛隊長が人混みの後方から近づき、彼女の耳元で何かを小声で報告した。


話を聞き終えたリサは、軽く手を上げる。


「一人残れば十分です。ほかの者は近くの宿で待機してください」


「承知しました」


護衛隊長は何も尋ねず、振り返ってほかの者たちへ合図を送った。


十数名の護衛は、すぐに整然と大広間を離れていく。


最後に残ったのは一人の女性護衛だけだった。


彼女はリサの背後へ立ち、静かに周囲を見渡している。


アーガは離れていく護衛たちを見た。


「一人だけ残して、本当に大丈夫なのか?」


「心配ありません」


リサは背後の女性護衛を指した。


「彼女は校尉級中位です。彼女がいる限り、普通の危険が私たちへ近づくことはありません」


「校尉級中位……」


アーガは表面上、ただうなずいただけだった。


しかし内心では、かなり驚いていた。


校尉級へ到達した者は、すでに副城主の選抜へ参加する資格を持つ。


ベルマン家に同行してきた一人の護衛でさえ、それほどの実力を持っているのだ。


————


夜は次第に深まっていった。


最後の歓迎用の菓子が給仕によって下げられた頃には、月が城館の上まで昇っていた。


銀白色の月光がいくつもの塔へ降り注ぎ、石造りの外壁を冷たい色に染めている。


再び角笛が鳴り響いた。


城館の大扉がゆっくりと開かれる。


ベラの婚約者であるカーンが、大勢の視線を受けながら大広間へ入ってきた。


深紅色の礼服をまとい、襟元と袖口には精巧な金色の模様が刺繍されている。


胸元には、銀狼の徽章がつけられていた。


長い黒髪は銀色の髪紐で後ろへまとめられ、歩調は落ち着いている。


その顔には、終始ほどよく整えられた笑みが浮かんでいた。


カーンはヴィルヘの前まで進むと、右手を胸へ添えて正式な礼を取った。


「ヴィルヘ閣下。ベラ嬢との結婚をお許しいただき、心より感謝いたします」


ヴィルヘは小さくうなずいた。


灰白色の髭の下に、満足そうな笑みが浮かぶ。


「やはり、立派な風格だ」


カーンはベラへ向き直り、その手を優しく取った。


そして手の甲へ、控えめな口づけを落とす。


「ベラ嬢。今夜のあなたは、月光よりも輝いています」


ベラの顔は、たちまち先ほどより赤くなった。


声にも緊張が混じっている。


「あ、ありがとうございます……」


ヴィルヘは二人を見つめ、軽く手を叩いた。


「皆様、晩餐を始めましょう」


給仕たちが銀盆を手に、大広間の両側から入ってくる。


蜂蜜を塗って焼いたウズラ。


トリュフ入りのフォアグラを載せた薄焼きパン。


薔薇水に漬け込んだ新鮮な海老。


料理が次々と長机へ並べられ、その香りは大広間に漂っていた香料の匂いさえ覆い隠した。


ヴィルヘは杯を掲げ、集まった客たちへ告げる。


「神々がこの二人を祝福されますように。そして両家の結びつきが、この美酒のように末永く続きますように」


客たちも一斉に杯を掲げた。


「新郎新婦に祝福を!」


楽師たちが、穏やかな宮廷舞曲を奏で始める。


カーンはベラの手を取り、舞踏場の中央へ進んだ。


新郎新婦としての最初の一曲が始まる。


カーンの舞い方は、とても慣れていた。


常にベラの歩調へ合わせ、彼女が動きやすいように導いている。


最初は緊張していたベラも、曲が続くにつれて次第に表情を和らげていった。


衣装に埋め込まれた月光石が絶えず輝き、二人の姿は音楽に合わせてゆっくりと回転していく。


最初の一曲が終わると、ほかの客たちも次々と舞踏場へ入った。


ロイスも間もなく、ある貴族令嬢から誘われて席を離れる。


大広間の中央は、さらに賑やかになっていった。


アーガがテーブルのそばで飲み物を口にしていると、突然、目の前へ片手が差し出された。


彼は顔を上げ、リサを見る。


「何?」


リサは直接答えなかった。


ただ小さく二度、鼻を鳴らす。


顔は横へ向けたままだったが、差し出した手を引っ込める様子はまったくない。


アーガは舞踏場を見たあと、もう一度彼女へ目を戻した。


「俺に、一緒に踊ってほしいのか?」


リサはまた小さく鼻を鳴らした。


「いつまで手を上げさせるつもりですか?」


アーガはため息をつき、仕方なく杯を置いた。


席を立ち、彼女の手を取る。


「分かったよ」


リサの手は、アーガが想像していたよりも少し小さかった。


長年剣を握ってきたため、掌には目立たない程度の薄いまめができている。


アーガは彼女を連れて舞踏場へ入った。


もう片方の手を、礼儀どおり彼女の腰へ添える。


その瞬間、リサの身体が固くなった。


アーガは声を落として言った。


「少し力を抜いて。今の君、翼竜と向かい合ったときより緊張してるぞ」


「黙ってください」


リサの耳先が薄く赤くなった。


それでも、アーガの動きに合わせて最初の一歩を踏み出す。


二人とも、社交舞踊は簡単に習った程度だった。


最初の動きはひどくぎこちない。


アーガは危うくリサの靴を踏みかけ、リサも身体を回したとき、隣を通った客へぶつかりそうになった。


「左へ動いてください」


「君が速く回りすぎたんだろ」


「あなたがついてこなかったんです」


「それなら、少し遅くしてくれ」


何度か小さく言い争ううちに、二人はようやく調子をつかみ始めた。


アーガは動きを思い出すことだけに集中しなくなり、リサの身体からも最初の硬さが消えていく。


二人は音楽に合わせ、ゆっくりと半周した。


リサの長い金髪も、動きに合わせて背後で軽く揺れている。


一曲が終わり、アーガは彼女の手を離した。


リサは彼を一度見た。


顔に浮かんだ笑みは、まだ完全には消えていなかった。


二人は何も言わず、一緒に元の席へ戻った。


アーガの意識は、すぐに料理へ戻った。


鹿肉を小さく切り分け、口へ運ぶ。


味を確かめると、満足そうにうなずいた。


「この鹿肉、よく焼けてる」


リサは真剣に料理を食べる彼を見て、思わず笑った。


「本当に、今夜の料理が気に入ったようですね」


「こんな料理は滅多に食べられないからな」


アーガはトリュフ入りのフォアグラを塗った薄焼きパンを取り、丁寧に味わった。


「火の通し方もちょうどいい。口に入れても、しつこくない」


間もなく、給仕が菓子を運んできた。


アーガは目の前に置かれたカラメルプリンを見て、銀の匙で一口すくった。


プリンが匙の上で小さく揺れる。


口へ運ぶと、アーガは少しだけ目を細めた。


「甘さもちょうどいい」


リサは頬杖をつき、彼を見つめていた。


「あなたにとって、今夜の宴の感想は料理だけなんですか?」


「食事がおいしいことも大切だろ」


その後に出された料理も、すべて丁寧に切り分けられ、旬の野菜や高価な香辛料が添えられていた。


アーガは、ほとんどすべての料理を少しずつ口にした。


晩餐が最後の儀式へ近づいてから、ようやくナイフとフォークを置く。


ヴィルヘが招いた王都の大司教は、すでに大広間の前方へ立っていた。


客たちは少しずつ静かになる。


カーンとベラは並んで大司教の前へ立ち、神々の見守る中で婚姻の誓いを交わす準備を整えた。


厳かな誓いの言葉が終わる。


ヴィルヘ伯爵は満面の笑みを浮かべ、杯を掲げた。


「皆様からの祝福に感謝いたします。宴は夜十時まで続きますので、どうぞ最後までお楽しみください」


客たちも次々と杯を上げて応じる。


水晶の杯が触れ合い、澄んだ音が連続して響いた。


楽師たちが再び演奏を始める。


一度静まり返った大広間は、すぐに賑わいを取り戻した。


ヴィルヘ伯爵は大広間の隅へ歩いていき、ずっと壁際へ立っていた屈強な男へ声をかけた。


「レイモン。今夜は警戒任務、ご苦労だった。もう問題はないだろう。何か食べてきなさい」


男は軽く頭を下げた。


「承知しました」


アーガはちょうど蜂蜜のかかった菓子を口へ運んだところだった。


二人の会話が聞こえ、思わず顔を上げる。


「あの人は誰?」


リサは紅茶の杯を持ち上げ、軽く一口飲んだ。


「レイモンです。ヴィルヘ伯爵の専属護衛ですよ」


「今日の宴全体の警戒も、彼が担当しているのでしょう」


リサは杯を置き、さらに付け加えた。


「確か、校尉級上位だったはずです。かなり優秀な戦士です」


「校尉級上位?」


アーガは口にしていた菓子を、危うく喉へ詰まらせかけた。


「それなら、もう城主級に近いんじゃないか?」


リサはうなずいた。


「ですから、彼が警戒を担当している限り、今夜は何も起きないでしょう」


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