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第 34 話 暗闇の中の仲間

アーガは周囲を手探りで探し、間もなく瓦礫のそばでリサを見つけた。


彼女は地面に横向きで倒れていた。


金色の長い髪が肩の周りに広がり、服には大量の埃が付着している。


それでも、呼吸は比較的安定していた。


アーガはそばへしゃがみ込み、彼女の肩を軽く揺らした。


「リサ、起きて」


リサは眉をひそめた。


数秒後、ようやく目を開く。


最初はぼんやりとアーガを見つめていたが、すぐに上体を起こし、警戒するように周囲を見回した。


「ここは、どこですか?」


「おそらく、地下城の第三層だ」


「第三層?」


リサの意識が一気に覚醒した。


彼女は自分の身体に異常がないか確認し、続いて周囲に散らばる瓦礫へ視線を向ける。


「私の荷物は?」


「見つからなかった。上に残ったか、落ちる途中で失くしたんだと思う。俺の背負い袋は残っている」


アーガは背中の荷物を指し、手にした照明カードを少し高く掲げた。


淡い光が周囲の岩壁を照らし出す。


ここの岩は第一層よりも色が濃く、表面には無数の黒い筋が走っていた。


空気も、さらに湿っている。


リサは岩壁に手をついて立ち上がり、服についた埃を払った。


「まずは戻る道を探しましょう。ガヴィンさんとノエルも落ちたはずです。近くにいるかもしれません」


その言葉が終わるよりも早く、頭上から小石の転がる音が聞こえた。


アーガは即座に顔を上げる。


暗赤色の二つの目が、高所から二人を見下ろしていた。


魔物は岩壁から突き出した足場に伏せている。


その身体は馬二頭分ほどもあり、両翼を背中へぴったりと畳んでいた。


表面を覆う羽毛は、金属のような冷たい光沢を帯びている。


いつからそこにいたのかは分からない。


二人が目を覚ましたことで、ようやくゆっくりと頭を持ち上げた。


リサの手は、すでにカードケースへ伸びていた。


「先に倒します」


アーガが不用意に動くなと警告するよりも早く、翼竜が勢いよく両翼を広げた。


硬い羽根が、雨のように降り注ぐ。


「伏せろ!」


アーガはリサへ飛びつき、そのまま二人で頭をかばいながら横へ転がった。


十数本の硬羽が、先ほどまで二人が立っていた場所を通過し、後方の岩壁へ深々と突き刺さる。


そのうちの一本がリサの頬のすぐそばを通り抜けた。


数本の金髪が切断され、頬にも細長い傷が残る。


リサは顔へ手を当てた。


指先に血が付着したのを見た瞬間、彼女の表情が一気に険しくなる。


「私の顔を傷つけるなんて……」


「怒るのはあとだ。まず相手の能力を確認しろ」


しかし、リサは聞いていなかった。


淡い緑色の魔力が掌からあふれ、数本の茨の短剣へ変化する。


短剣は連続して放たれ、高所にいる翼竜へ飛んでいった。


翼竜は両翼を畳み、身体の前へ盾のように構える。


茨の短剣は硬い羽毛へ衝突した。


しかし、表面へ浅い傷を数本残しただけで、すぐに地面へ落ちてしまう。


リサは続いて、もう一方の手を掲げた。


岩の隙間から数本の蔓が伸び、壁面に沿って急速に上方へ登っていく。


翼竜が低い咆哮を上げた。


両翼を勢いよく羽ばたかせると、強烈な風が洞窟内を駆け抜ける。


接近する前の蔓は、風にあおられて激しく揺れた。


数本は、そのまま引き千切られてしまう。


リサの表情が、ようやく変化した。


彼女はさらに葉刃、茨の槍、棘の生えた蔓を次々と作り出した。


思いつく限りの攻撃を、ほとんどすべて翼竜へ叩き込む。


魔法が連続して命中し、砕けた葉や折れた枝が周囲へ散乱した。


それでも、翼竜が岩壁から落ちることはなかった。


ただ、怒りを増しただけだった。


「そんな……」


リサは荒い息を吐きながら、再び翼を広げた魔物を見上げる。


「私の攻撃が効かない?」


翼竜が、再び全身を震わせた。


今度は先ほど以上の数の硬羽が放たれる。


アーガは以前目にした加速魔法を発動した。


身体が一気に前へ押し出され、最初の羽の雨を回避する。


振り返ってリサを見ると、彼女はまだその場に立っていた。


指をカードへ添えたまま、顔を青ざめさせている。


まるで、身体が反応しなくなったかのようだった。


「リサ、避けろ!」


リサが顔を上げたときには、硬羽はすでに目の前まで迫っていた。


鈍い音が、ほとんど同時に二度響く。


一本は肩口を貫き、もう一本は胸の脇へ突き刺さった。


リサは二歩ほど後ろへよろめいた。


赤く染まっていく制服を見下ろし、その目に初めて明らかな動揺が浮かぶ。


「私……当たったの?」


胸元の羽根へ手を伸ばす。


しかし、痛みに触れた瞬間、指を反射的に引っ込めた。


両脚からも力が抜け、その場へゆっくりと膝をつく。


翼竜は、彼女が痛みに慣れる時間など与えなかった。


再び両翼を広げる。


アーガはリサのもとへ駆け寄り、彼女の腕を自分の肩へ回した。


「歩けるか?」


リサは答えなかった。


ただ、アーガの服を強く握りしめている。


呼吸は次第に乱れ、視線も翼竜から離れない。


「また攻撃してくる……」


「私たち、ここで死ぬ……」


「まず、ここから離れる」


アーガはリサを支えながら横の通路へ走り出した。


同時に、クララのタコ魔法を模倣し、大量の黒煙を放つ。


黒い煙は瞬く間に通路を満たし、二人の姿を覆い隠した。


翼竜が高所から急降下する。


だが、前方を確認できないまま、身体の半分を岩壁へ激しく衝突させた。


頭上から瓦礫が落下する。


翼竜は地面へ転がり落ち、怒りに満ちた咆哮を上げた。


アーガはその隙にリサを連れ、狭い通路へ飛び込んだ。


しかし、彼女の足はすでに動きについてこられない。


アーガは身をかがめると、リサを抱き上げ、そのまま通路の奥へ走り続けた。


後方では、翼竜がすぐに立ち上がった。


黒煙を突き破り、二人を追ってくる。


その速度は、アーガよりもはるかに速い。


二人が狭い洞窟の入口へ飛び込んだ直後、翼竜の頭が背後から突き出された。


鋭い長い嘴が開かれ、アーガの背中をかすめそうになる。


アーガはリサを抱えたまま、さらに奥へ数歩走った。


翼竜も追おうとする。


しかし、肩と翼が洞口に引っかかり、それ以上は入ってこられなかった。


魔物は周囲の岩壁へ何度も身体をぶつける。


衝撃によって小石が絶え間なく落下したが、巨大な身体はどうしても通路へ入らない。


アーガは足を止めなかった。


入口が見えなくなるまで進み、ようやく少し広い空間で立ち止まる。


リサを岩壁のそばへ座らせると、自分も地面へ膝をつき、何度か荒い息を吐いた。


「あいつは、しばらく入ってこられない」


リサは岩壁へもたれたまま、返事をする力も残っていなかった。


二か所の傷口から、今も血が流れ続けている。


制服の前面は、すぐに広い範囲が赤く濡れた。


アーガは背負い袋を下ろし、急いで一つの革袋を取り出した。


「まだ回復薬を持っていたんですか?」


リサは袋の中にあるガラス瓶を見て、どうにか顔を上げた。


「以前、グルバート家からもらったものだ。あと一本だけ残っている」


アーガは栓を抜き、薬瓶を彼女の口元へ運ぶ。


「先に飲んで」


リサは拒まなかった。


翠色の薬液が身体へ入ると、強張っていた表情がわずかに緩む。


傷口から流れる血も、少しずつ減っていった。


アーガはさらに背負い袋から包帯を取り出し、二本の硬羽が刺さっている位置を確認した。


幸い、心臓を貫いてはいない。


目立つ返しもなかった。


もし返しが付いていれば、簡単に引き抜くことはできなかっただろう。


「抜くぞ。かなり痛い」


リサは唇を固く結び、そばの岩を手でつかんだ。


「抜いてください」


アーガはまず彼女の肩を押さえた。


一本目の硬羽をしっかりと握り、素早く引き抜く。


リサの身体が激しく強張った。


喉の奥から、押し殺した呻き声が漏れる。


岩をつかむ手の甲にも、青い血管が浮かび上がった。


アーガは手を止めず、すぐに包帯を傷口へ強く押し当てた。


出血が少し落ち着くのを待ち、続いて二本目を引き抜く。


今度はリサも耐えきれなかった。


身体を前へ縮め、額に一気に冷や汗が浮かぶ。


アーガは彼女の身体を支え、包帯を何重にも巻きつけていった。


二つの傷口から大量の血が流れなくなったところで、ようやく手を離す。


「終わった」


リサには、すでに話す力も残っていなかった。


岩壁へもたれ、目を閉じる。


高級回復薬が効果を発揮し始め、呼吸も次第に安定していった。


間もなく、彼女はそのまま眠りに落ちた。


アーガは、そばに座って様子を見守った。


洞窟の外からは、時折、翼竜の咆哮が聞こえてくる。


魔物はまだ諦めていないらしく、周囲を飛び回り続けていた。


アーガは完全に眠ることができなかった。


岩壁へ背中を預け、目を閉じて身体を休ませる。


しばらく経つたびに目を開け、リサの状態を確認した。


数時間後。


リサは、ようやく目を覚ました。


試しに肩を動かす。


傷口にはまだ痛みが残っていたが、最初ほどひどくはない。


高級回復薬によって、損傷の大部分は修復されている。


完全には塞がっていない二つの傷だけが残っていた。


リサは身体に巻かれた包帯を見下ろし、続いてアーガへ顔を向けた。


「私たちは、本当に第三層にいるんですか?」


「岩壁の状態と、魔物の強さから考えれば、間違いないと思う」


「ガヴィンさんは、いつ助けに来られますか?」


「すぐには来られない」


アーガは身体を起こした。


「ガヴィンさんは、ここにいる魔物の大半より強いだろう」


「でも、第三層まで救助に来るなら、まず学院へ知らせて、十分な人数を集める必要がある」


リサはしばらく黙り込んだ。


やがて、小さな声で尋ねる。


「どうして、あなたは少しも怖がっていないんですか?」


「怖いに決まってる」


「そうは見えません」


リサはアーガの顔を見つめた。


「私はさっき、魔法さえ使えなくなりました」


「それなのに、あなたはずっと逃げる方向を判断して、私をここまで運んできた」


アーガは彼女へ一度だけ視線を向けた。


「二人そろって、あの場所で死ぬのを待つわけにはいかなかったからだ」


「私がどんな環境で育ったかは、関係ありません」


リサは眉をひそめる。


「すべての貴族が危険に遭遇したら、さっきの私のようになるとは言えないでしょう」


「そんなことは言ってない」


アーガは背負い袋を自分のそばへ引き寄せ、中身を改めて確認した。


「ただ、君は今まで、本当に自分を殺す魔物と戦ったことがなかった」


「訓練場の相手は、危険になれば攻撃を止める」


「教官も、間に合うように助けてくれる」


アーガは洞窟の外へ視線を向けた。


「だが、あの翼竜は止まらない」


リサは口を開いた。


しかし、結局何も反論しなかった。


アーガはうつむき、残っている包帯を整理する。


その目は、どこか遠くを見ていた。


死ぬことが怖くないわけではない。


ただ、彼はすでに一度死んでいる。


そして、どれだけ取り乱しても、目の前の状況がよくなることはないと知っていた。


その理由だけは、リサへ話すことができなかった。


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