第32話 灰燼の道
一時間後、四人は学院の正門前で馬車に乗り込んだ。
リサは片側の席に座り、うつむいたまま佩剣を磨いている。ノエルは地下城に生息する魔物の図鑑を開いていた。アーガは窓際にもたれ、聖イース学院の建物が道の向こうへ消えていくのを眺めていた。
車内には、相変わらず重苦しい空気が漂っている。
やがて、アーガが自分から口を開いた。
「ガヴィンさんは、今どの等級なんですか?」
「遊侠級中位だ」
ガヴィンは何気ない口調で答えた。
ノエルが本の向こうから顔を上げる。
「その若さで、もう遊侠級中位なんですか?」
「同年代なら、別に珍しくもないさ」
ガヴィンは笑いながら手を振った。
「俺は今年で十五歳だ。本当に才能のある奴は、俺なんかよりずっと強い」
アーガはラスティのことを思い出した。
自分がこの世界へ来たばかりの頃、十五歳だったラスティもすでに遊侠級中位に達していた。それから八年が経った今では、彼女もとっくに戍佐級へ踏み込んでいる。
そう考えれば、ガヴィンの実力も十分に優れている。
ただ、本人にそれを誇るつもりがないだけだ。
ノエルが続けて尋ねた。
「『赤紅の牙』はEランクのパーティーですよね。冒険者パーティーのランクは、所属するメンバーの実力で決まるんですか?」
「主に、どのランクの依頼を受けられるかで決まる」
ガヴィンは説明した。
「メンバーの実力、依頼の達成記録、パーティーの信用。そういうものが全部、評価に影響する。細かい規則はかなり複雑だから、実際に冒険者登録をするときに教えてもらえばいい」
アーガは、ふと一つのことを思い出した。
「それなら、赤薔薇盗賊団のモルハンはどのくらいだったんですか?」
「その事件なら知っているぞ」
ガヴィンの目が輝いた。
「王都護衛隊があいつを捕まえるのに協力した子供って、君だったのか。モルハンは以前、冒険者ギルドの賞金首掲示板にも載っていた。実力は、おそらく戍佐級だ」
ノエルが意外そうに目を見開く。
「ガヴィンさんより、丸一つ上の等級なんですか?」
「実際、俺より強い」
ガヴィンは少しも取り繕うことなく認めた。
リサが剣を鞘へ収める。
「ガヴィンさんはまだ若いのですから、いずれ彼を超える可能性はあります。ですが、牢獄に入れられた盗賊には、これ以上成長する機会もありません」
ガヴィンは一瞬きょとんとしたあと、声を上げて笑った。
「ベルマン嬢の言うとおりだな」
最初の共通の話題ができたことで、車内の空気もようやく少し和らいだ。
それから四人は、地下城や冒険者ギルド、第一層に出没する魔物について話し続けた。
やがてガヴィンが不意に手を上げ、窓枠をつかんだ。
「着いたぞ」
馬車が大きく揺れながら停車する。
ガヴィンは最初に車外へ飛び降りた。靴底が小石を踏み、軽い音を立てる。
「馬車で行けるのはここまでだ。この先は、地下城から漏れ出す気配のせいで馬が怯えやすい」
アーガは車内の幕を持ち上げた。
前方には、荒涼とした岩場が広がっていた。
黄色く枯れた雑草が岩の隙間から伸びている。遠くに見える山の麓には、獣が大口を開けたような巨大な洞窟があり、その奥には暗闇しか見えなかった。
四人は小石だらけの道を通り、入口へ向かった。
地下城へ近づくほど、周囲の空気は冷たくなっていく。
道の脇には、折れた武器や腐った木板、もはや何の生物のものか判別できない骨が転がっていた。
ガヴィンは入口の前で、もう一度立ち止まった。
「最後にもう一度だけ言っておく」
「活動していいのは第一層だけだ。第二層では、普通の魔物でも遊侠級下位に達している可能性がある。今の君たちが包囲されれば、安全に逃げるのは難しい」
ノエルは洞窟の奥を見つめた。
「第二層へ降りるだけで、それほど強さが変わるんですか?」
「地下城は、深く潜るほど魔物の強さが明確に上がる」
ガヴィンの表情が、珍しく真剣なものへ変わった。
「ここでは、好奇心は長所にならない。分かったな?」
三人は順番にうなずいた。
ガヴィンはランタンに火を灯し、先頭に立って地下城へ足を踏み入れた。
————
灰燼の道へ入った直後は、洞窟の幅にもかなり余裕があった。
湿った冷気が肌へまとわりつき、岩壁の表面からは絶えず水滴が流れ落ちている。
ランタンの光が照らせるのは、前方の限られた範囲だけだった。それより奥は、今も暗闇の中に隠されている。
しばらく進んだところで、アーガが突然手を上げた。
「止まってください」
残る三人も、すぐに足を止める。
前方から、かすかな摩擦音が聞こえてきた。
何者かが武器を引きずりながら、こちらへ近づいているような音だった。
間もなく、脇道になっている洞窟から小柄な影がいくつも飛び出してきた。
ゴブリンが五体。
どれも小さな身体をしており、手には錆びた短刀や木の棒を持っている。
四人の姿を見つけると、口から興奮した甲高い声を上げた。
「君たちで対処してみろ」
ガヴィンは半歩後ろへ下がった。
「俺が手を出すのは、本当に危険になったときだけだ」
最初に動いたのはリサだった。
淡い緑色の魔力が腕を伝って掌へ集まり、縁の鋭い数枚の葉刃を形成する。
リサが腕を振るうと、葉刃は薄暗い洞窟を切り裂くように飛び、先頭にいた二体のゴブリンの足を止めた。
その隙に、リサは剣を抜いて前へ出る。
両脚へ魔力を流すと、速度が一気に上昇した。
一撃目でゴブリンの武器を弾き、続く二撃目でその胸を斬り裂く。
ノエルもすぐ後ろから続いた。
魔力が二級カードへ注がれ、右腕の表面を灰白色の石殻が覆っていく。
石殻そのものは決して分厚くない。
それでも、腕の力と防御力は明らかに高まっていた。
ノエルは振り下ろされた短刀を腕で弾き、そのままゴブリンの肩へ拳を叩き込む。
攻撃を受けたゴブリンは、地面へ激しく倒れ込んだ。
アーガは、すぐには前へ出なかった。
指先から蠍座の魔力を流し出し、半透明の細い糸へ変える。
糸は地面を這うように伸びていき、側面から奇襲しようとしていたゴブリンの足首へ巻きついた。
アーガが指を軽く曲げる。
ゴブリンはたちまち体勢を崩し、地面へ強く倒れた。
再び立ち上がるよりも早く、リサが剣でとどめを刺す。
残っていた数体のゴブリンも、間もなくすべて倒された。
ガヴィンは地面に散らばった死体を見回し、うなずいた。
「思っていたより、よく連携できている」
「ただし、アーガが相手を拘束し、リサが正面を突破し、ノエルが側面を守るという分担は、まだ安定していない。さっきも二度ほど、攻撃する位置が重なりかけていた」
リサは剣を鞘へ戻した。
「ゴブリンが数体いただけです。本気で連携する必要もありません」
「弱い敵だからこそ、連携の練習に向いているんだ」
ガヴィンはリサへ目を向けた。
「強敵を前にしたとき、そこで初めて相談している暇はないぞ」
リサは反論しなかった。
一行はさらに奥へ進み、しばらくして今度はスケルトンの集団と遭遇した。
ゴブリンに比べると、スケルトンの動きは遅い。
しかし、痛みや恐怖で攻撃を止めることもない。
刃物で表面を斬るだけでは完全に動きを止められず、関節を破壊するか、身体を支えている骨格を砕く必要があった。
今度は、三人の連携も先ほどより滑らかだった。
アーガが細い糸を使い、スケルトンの脚の関節を縛って動きを制限する。
リサは蔓で武器を絡め取り、ノエルは魔力で強化された石の拳を使って、胸骨や頭蓋骨を粉砕していった。
最後のスケルトンが倒れた頃には、ノエルの呼吸が少し荒くなっていた。
それでも彼は、石殻に覆われた腕を軽く振った。
「大したことないな」
リサが眉をひそめる。
「ずっと最大出力で身体を強化していたら、すぐに魔力がなくなりますよ」
「僕の魔力なら足りる」
「地下城へ入ってから、まだどれほども経っていません」
「少なくとも、君たちの足を引っ張るつもりはない」
二人の口調が、次第に険しくなっていく。
ガヴィンは二人の間へ歩み出た。
「そこまでだ」
ノエルへ目を向けたガヴィンの口調は、依然として穏やかだった。
しかし、その表情には明らかな厳しさが浮かんでいる。
「戦士が魔力で肉体を強化するときにも、消耗を管理する必要がある。君はさっき、攻撃するたびに右腕全体へ魔力を集中させていた」
「だが、本来なら拳が当たる直前に、拳と手首だけを強化すれば十分だ」
「そんなふうに魔力を浪費し続ければ、本当に君の力が必要になったとき、戦えなくなるぞ」
ノエルはしばらく黙っていたが、やがて腕を覆っていた石殻を解除した。
「分かりました」
ガヴィンは、ノエルがなぜそこまで成果を見せようと焦っているのか、深く追及しなかった。
ただ全員に、先へ進むよう促した。
————
日が暮れる前、四人は比較的乾燥した小さな洞窟で足を止めた。
ガヴィンは周囲に残された痕跡を調べ、近くに魔物が活動した形跡がないことを確認する。
それから背負っていた荷物を下ろし、中から特殊な魔法灯を取り出した。
灯芯へ火をつけると、人間にはほとんど感じ取れない魔力の気配が、ゆっくりと周囲へ広がっていった。
ノエルが興味深そうに魔法灯を見る。
「これは何ですか?」
「魔除け灯だ」
ガヴィンが答えた。
「燃えている間、Gランクの魔物が嫌う魔力の気配を放つ。魔物を傷つける力はないが、普通なら自分から近づいてはこない」
リサが何気なく言った。
「ベルマン家にも似たような装置があります。最上位のものなら、Eランクの魔物まで遠ざけられます」
ガヴィンが彼女へ目を向ける。
「その等級の魔除け装置は、かなり高価なはずだぞ」
「父が外出するときに持っていきます」
リサの口調はあまりにも平然としており、まるで日用品の話でもしているかのようだった。
四人は簡単な携帯食を済ませると、ガヴィンが決めた順番に従って交代で見張りについた。
地下城の中には、昼と夜を示す明確な変化がない。
ただ懐中時計の針だけが、絶えず先へ進んでいく。
そうして、最初の夜は何事もなく過ぎていった。




