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第189話 再会

ある新聞は、アイラが南山の混乱に乗じて逃亡したと書いていた。


サミュエルと以前から共謀していたと主張する者もいれば、晨星の家の地下牢に関する罪まで、彼女へ押しつけようとする記事もあった。


まるでサミュエルが死んだあとも、暮星城には事件を終わらせるための、もう一人の目立つ犯罪者が必要だったかのようだった。


アイラは隣に立ち、次第に顔色を失っていった。


それでも、何も言わなかった。


アーガはさらに新聞をめくる。


やがて、自分に関する記事が掲載された号を見つけた。


赤骸城の情報は、やはり暮星城まで伝わっていた。


詳しい経緯までは書かれていなかったが、赤骸城の事件に「強化された基礎カード」を使用する少年が現れ、その後に起きた複数の騒動にも関係していたと記されている。


戦闘カードの特徴を描いた図まで掲載されていた。


赤、黄、黒のカードについて、それぞれ大まかな説明が添えられている。


アーガは粗雑に描かれたカードの絵を、長い間見つめていた。


「これが原因か」


アイラが彼を見る。


「カードから、あなたを特定したの?」


「ああ。強化された基礎カードは珍しすぎる」


アーガは新聞を折り畳んだ。


「名前と年齢、戦い方。それに晨星の家の一件まで合わせれば、ほとんど特定できる」


「リナとイータは?」


アーガは別の新聞も何枚か確認した。


「二人のことは書かれていない」


僅かに息を吐く。


少なくとも、それだけは悪くない知らせだった。


リナとイータは、赤骸城で起きた事件へ巻き込まれていない。


暮星城の人間も、二人がアーガと行動していた仲間だということは知っているが、指名手配の対象とは見なしていなかった。


しかし、公会へ行くことはできない。


アーガの顔を知っている者は多く、アイラを直接見た者もいる。


今は二人とも泥と埃にまみれ、以前とはかなり印象が変わっている。それでも、会話を交わし、記録を取り、冒険者としての身分を示せば、正体に気づかれる可能性があった。


アーガは新聞を懐へ押し込み、アイラを連れて路地を出た。


「先に服を替える」


古着屋でさらに厚手の外套を一着と、耳まで隠せる帽子を買った。


着替えたアイラは全身を隙間なく覆い、見えているのは顎と僅かな淡い色の髪だけになった。


アーガは一度確認したが、それでも満足できなかった。


「顔を伏せて歩け。人と目を合わせるな」


アイラは頷いた。


「ええ」


声は沈んでいた。


何を考えているのか、アーガには分かっていた。


一年が過ぎても、暮星城にはアイラが事情を説明するための場所など残されていなかった。


氷の谷から生きて戻った彼女を迎えたのは、潔白を証明する機会ではない。


城門へ貼り出された、一枚の指名手配書だった。


「公会には行けない」


アーガが言った。


「まず、知り合いを頼ってみる」


「誰を?」


「以前、子供を捜してほしいと依頼してきた家族だ」


アイラは一瞬目を見開いた。


あの子供のことは覚えていた。


晨星の家の地下牢から救出されたあと、その子は、アーガが怖がらなくていいと言ってくれたと話していた。


家族は後から不足していた報酬を支払い、依頼の達成記録についてもアーガへ協力してくれた。


アーガはアイラを連れ、何本か通りを迂回して、西街にある普通の住宅へ向かった。


玄関先の植木鉢は新しいものに替わっており、窓辺には子供用の服が何着か干されている。


アーガは扉の前で一度立ち止まった。


周囲に衛兵がいないことを確かめてから、手を上げて扉を叩く。


しばらくして、家の中から足音が聞こえた。


扉を開けたのは、あの子供の母親だった。


一年前より少し疲れて見えたが、目元には穏やかさが残っている。


玄関前に立つ見知らぬ二人を見て、最初は警戒するように眉を寄せた。


しかし、アーガが帽子のつばを僅かに上げると、その目が少しずつ大きく見開かれていった。


「あなた……」


アーガは唇の前へ指を立て、声を抑えるように合図した。


女はすぐに口元を手で覆い、通りを一度確認してから、急いで扉を大きく開けた。


「早く入って」


家へ入ると、女はすぐに扉を閉じた。


窓のカーテンが隙間なく閉まっていることも確かめてから、二人へ向き直る。


長い間、アーガの顔を見つめていた。


声は僅かに震えている。


「生きていたの?」


アーガは帽子を取った。


「運がよかった」


「みんな、雪崩に巻き込まれたと言っていたわ」


女の目元が赤くなる。


「リナさんとイータさんは、ずっとあなたを待っていたのよ」


二人の名前を聞いた瞬間、アーガの指が目に見えて強張った。


「二人は無事なのか?」


「ええ」


女はすぐに頷いた。


「この一年間、ずっと暮星城に残っているわ。たくさんの依頼も受けていた。最初の頃は苦労していたけれど、少しずつ強くなったの」


「今ではイータさんも、一人で魔物の追跡ができるそうよ。リナさんも以前よりずっと落ち着いている。公会でも、二人を知っている人は多いわ」


アーガは静かに話を聞いていた。


アイラは隣に立ったまま、帽子を取ろうとはしなかった。


女は彼女を一度見た。


おそらく、誰なのか察したのだろう。


それでも詳しく尋ねることはなく、声を潜めた。


「街では今も、アイラさんが指名手配されているわ。公会へは行かない方がいいし、通りにも長くいない方がいい」


アーガは頷いた。


「二人は今、どこに住んでいる?」


女は住所を教えた。


以前泊まっていた宿屋ではなく、南区にある安い宿だった。


リナとイータは依頼を受けやすいように、そこの裏庭にある小さな部屋を長期間借りているらしい。


「今日は魔物の討伐依頼へ行っているはずよ」


女が言った。


「夕方には戻ってくると思う」


アーガは立ち上がった。


「ありがとう」


女は少し迷ったあと、戸棚から小さな食料袋を取り出し、彼へ押しつけた。


「持っていって。去年、あなたがいなければ、私の子供は帰ってこなかった」


アーガは袋を見つめ、しばらく黙っていた。


やがて受け取る。


それ以上何も言わず、アイラを連れて裏口から家を出た。


南区へ向かう道でも、暮星城の街並みは変わらず賑わっていた。


果物を売る商人が声を張り上げ、公会の方角からは武器を背負った者たちが歩いてくる。


遠くでは、時計塔が夕刻を知らせる鐘を鳴らしていた。


アイラは道中、ずっと顔を伏せていた。


アーガも何も話さなかった。


二人が宿屋の近くへ着いた頃には、空はすでに暗くなり始めていた。


大きな宿ではなかった。


看板も古びており、裏庭から続く細い路地を使えば、大通りから見られずに出入りできそうだった。


アーガはすぐに中へ入らず、入り口近くの影へ立って待った。


アイラが横目で彼を見る。


「緊張しているの?」


アーガは答えなかった。


しばらくしてから、ぽつりと言う。


「怒っているかもしれない」


アイラが静かに尋ねた。


「一年も待たせたから?」


「ああ」


「それだけ、あなたを大切に思っているということよ」


アーガは彼女を見た。


「大切に思うことと、怒ることは両立する」


アイラは少し考えた。


そして、確かにそのとおりだと思った。


     ◇


同じ頃、リナとイータは公会の方角から宿屋へ戻っていた。


イータは小さな荷物を背負い、手には依頼で集めた素材の入った袋を下げている。


耳は以前よりも敏感になり、歩く姿にもかつてのような落ち着きのなさはなかった。


リナはその隣を歩いている。


衣服は一年前よりも動きやすく整えられ、顔には任務を終えた疲れが浮かんでいた。それでも警戒を緩めてはいない。


「今日の魔物、速すぎました」


イータが小さく不満を漏らした。


「ずっと茂みの中へ逃げていって」


「でも、最後には追いついたでしょう」


リナが言う。


イータの尻尾が小さく揺れた。


「身体の臭いがしたからです」


「帰ったら手を洗ってね」


「分かっています……」


二人が宿屋の裏庭へ続く路地へ入った瞬間、イータは突然足を止めた。


何か懐かしい匂いを感じ取ったのか、耳が勢いよく立ち上がる。


リナもすぐに警戒した。


「どうしたの?」


イータは答えなかった。


顔を上げ、前方を見る。


路地の入り口にある影の中で、一人の男が壁へ背中を預けて立っていた。


帽子のつばは深く下げられている。


記憶にある姿より少し背が高くなり、身体つきも逞しくなっていた。顔には、風雪と傷によって残された痕がある。


それでも、彼が顔を上げた瞬間、イータにはすぐに分かった。


アーガは二人を見つめ、口元を僅かに動かした。


「よう。久しぶりだな」


イータの手から、依頼素材の袋が音を立てて落ちた。


その場に立ち尽くす。


身体の動かし方を、完全に忘れてしまったかのようだった。


次の瞬間、勢いよく駆け出した。


「アーガ様!」


アーガが手を伸ばしかけたときには、イータはすでに彼の胸へ飛び込んでいた。


あまりにも勢いが強く、肩の古傷へ僅かな痛みが走る。


それでも、アーガは彼女を押し返さなかった。


イータは両腕へ力を込め、彼を強く抱き締めた。


耳は頭へぴったりと伏せられ、尻尾は自分の脚へきつく巻きついている。


涙は、ほとんど一瞬で溢れ出した。


「生きているって……絶対に生きているって、分かっていました……」


アーガは俯き、泣いている彼女を見た。


宙に浮かせた手をしばらく止めていたが、最後にはそっと頭へ置いた。


「ああ。戻ってきた」


リナは数歩離れた場所に立ち、すぐには近づいてこなかった。


アーガを見つめているうちに、目元が少しずつ赤くなっていく。


それでも唇を噛み、声を上げて泣こうとはしなかった。


身体の横へ下ろした手の指先が、僅かに震えている。


目の前にいる人物が、本当にアーガなのか確かめようとしているようだった。


アーガが彼女を見る。


「リナ」


名前を呼ばれた瞬間、リナもようやく歩き出した。


イータのように飛びつくことはなかった。


ただ、アーガの服の袖を掴む。


指には強い力が込められていた。


「会いたかった」


アーガは一度黙り込んだ。


「道が少し歩きにくかった」


リナは顔を上げ、彼を睨んだ。


しかし、その前に涙が一粒こぼれ落ちる。


「一年もかかるほど?」


「ああ」


アーガは低い声で答えた。


「悪かった」


その謝罪を聞いた瞬間、リナはもう耐えられなくなった。


顔を伏せ、肩を小さく震わせる。


それでもすぐに感情を押し込み、イータの腕を引いて部屋の方へ向かった。


「まず中へ入りましょう。外では話せない」


アイラは影の中に立ったまま、一度も近づこうとはしなかった。


しばらく泣いたあと、イータはようやく、アーガの後ろにも人がいることに気づいた。


顔を上げ、帽子を被った人物を見て、僅かに目を見開く。


アイラはゆっくりと帽子を外した。


銀白色の髪が肩へ流れ落ち、尖った耳が僅かに姿を見せる。


イータは大きく目を見開いた。


「アイラお姉さん……」


アイラは少し居心地が悪そうに立ち、小さな声で返した。


「イータ」


リナも彼女の姿を見た瞬間、明らかに表情を変えた。


しかし、路地で事情を尋ねることはしなかった。


声を低くして言う。


「全員、先に中へ入って」


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