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第181話 順調

セインの足元で青い光が瞬き、その身体が一気に加速した。


黒い岩の手前で大きく方向を変え、洞窟の方へ引き返す。


竜魔獣が口を開いて噛みついた。


牙はセインの外套の端を掠める寸前だった。


「今だ!」


アーガが叫ぶ。


岩の後ろから、エイヴンが飛び出した。


淡い金色の剣光が雪幕を切り裂き、竜魔獣の目へ正面から突き込まれる。


竜魔獣は顔を逸らさざるを得ず、突進の勢いが僅かに乱れた。


その直後、マシューが盾を構えて飛び出す。


盾の表面が、竜魔獣の前脚の関節へ勢いよく叩きつけられた。


苦痛に身をよじった竜魔獣の身体が、横へ傾く。


セインはその隙に竜魔獣の側面を転がり抜けた。


そのまま洞窟の近くにある雪の中へ倒れ込み、慌てて身体を起こす。


「もう少しで食われるところだった!」


「黙って後ろへ下がれ!」


マシューが怒鳴った。


アーガはカードを引き抜く。


「赤の三――草」


雪の下から蔓が伸び、竜魔獣の後ろ脚へ巻きついた。


先ほどと同じく、蔓だけで竜魔獣を長時間拘束することはできない。


ほんの一瞬、動きを止めただけだった。


だが今回は、その一瞬だけで十分だった。


アイラが竜魔獣の足元を指差す。


「その下には空洞がある! 右へ追い込んで!」


エイヴンは迷わなかった。


連続する剣光を竜魔獣の左側へ叩き込み、右へ移動せざるを得ないように仕向ける。


マシューも盾で前脚を押さえ込み、少しずつ右側へ追い込んでいった。


竜魔獣が怒りの咆哮を上げ、長い尾を振り回す。


尾が岩壁を薙ぎ払い、砕けた石が周囲へ飛び散った。


洞窟の入り口まで退いていたセインは、再び頭を抱えながら岩片を避ける。


「もう少し早くできないのか!」


ノヨンは気流魔法を維持していたが、顔色はますます青白くなっていた。


それでも、もう片方の手を持ち上げる。


数本の風刃が雪面すれすれを走った。


竜魔獣へ傷を与えるほどの威力はない。


しかし、足元の積雪を一層削り取り、その下にある脆い空洞を露出させた。


アーガはすぐに彼女の意図を理解した。


「もう少し右だ!」


エイヴンが勢いよく踏み込む。


剣光で、竜魔獣が持ち上げようとした頭を上から押さえ込んだ。


マシューも歯を食いしばり、盾を前へ押し出す。


竜魔獣の力に押され、両足が雪面を滑った。


セインも再び駆け出す。


反対側で足音を立て、竜魔獣に顔を向けさせた。


次の瞬間、竜魔獣の右前脚が空を踏んだ。


積雪が崩れ、その下から雪に覆われていた亀裂が現れる。


竜魔獣の身体が半分、亀裂へ沈み込んだ。


エイヴンはその機会を逃さなかった。


剣を竜魔獣の首筋へ突き刺す。


マシューは雄叫びを上げながら盾で下顎を押し、さらに亀裂の中へ押し込んだ。


ノヨンが最後の力を振り絞る。


激しい気流が渦を巻き、竜魔獣の首へ叩きつけられた。


竜魔獣は数回激しくもがいた。


やがて、その身体は完全に動かなくなった。


山道に静けさが戻る。


セインは雪の上へ座り込み、水から引き上げられたばかりのように荒い息を吐いていた。


「だから言っただろう」


顔についた雪水を拭い、無理に笑う。


「逃げることに関しては、俺は専門家だって」


マシューは彼のもとへ歩み寄り、腕を掴んで雪の中から引き起こした。


「次にあと一歩遅れたら、専門的にあいつの腹へ収まることになるぞ」


「今回は収まらなかっただろ?」


ノヨンは洞窟の入り口へ寄りかかっていた。


その顔色は、見ているだけで不安になるほど白い。


エイヴンは竜魔獣の血を剣から振り落とし、すぐに戻ってきた。


最初にノヨンの状態を確認し、それからアーガを見る。


「作戦は有効だった」


アーガはすぐには気を緩めなかった。


雪幕の奥へ視線を向ける。


現れたのは一頭だけだった。


それ自体は、確かにいい知らせだ。


しかし、本当に群れを率いる竜魔獣が存在するのなら、なぜ姿を現さなかったのか。


そのとき、遠くから突然、爆発音が響いた。


風雪によってかなり弱められていたが、それでもはっきりと聞こえた。


全員が同時に振り返る。


マシューが眉を寄せた。


「何の音だ?」


エイヴンは爆発音が聞こえた方角を見た。


「ほかの小隊かもしれない」


レックスかカロの小隊も生き残っており、同じように機会を作って竜魔獣を一頭倒したのかもしれない。


セインの目が僅かに輝いた。


「それなら、成功したのは俺たちだけじゃないということか?」


その言葉によって、洞窟の入り口を覆っていた重苦しい空気が僅かに和らいだ。


ほかの小隊もまだ戦っており、竜魔獣を倒せているのなら、状況は完全に手遅れというわけではない。


アーガは雪面へしゃがみ込み、枝を使って先ほどの位置関係を描き直した。


「残っている竜魔獣の数は減っている」


アーガが言った。


「さっき奴らは、数の多さを利用して俺たちの隊列を分断した」


「だが、レックスたちも一頭倒し、こちらでも一頭倒したのなら、少なくとも二頭は減ったことになる」


エイヴンが彼を見る。


「このまま続けるつもりか?」


「ここで待つわけにはいかない」


アーガは答えた。


「血の匂いを嗅ぎつけられるかもしれないし、洞窟も見つかる可能性がある」


「俺たちは正面からの戦いには向いていない。だが、姿を隠して移動し、一頭ずつ倒すことはできる」


マシューはセインへ目を向けた。


「またこいつを囮にするのか?」


セインが何か言おうとしたが、アーガは首を振った。


「同じ方法を何度も使うことはできない」


「今回は不意を突けたが、次も同じように騙されるとは限らない。場所を変え、地形を利用して倒す」


アイラは山道の反対側を眺めた。


少し考えてから言う。


「この先に、岩が複雑に入り組んだ斜面があります」


「雪の下には、割れた岩の隙間がいくつもあるはずです。そこへ竜魔獣を誘い込めれば、大きな身体がかえって邪魔になるでしょう」


「そこへ向かおう」


エイヴンが即座に決めた。


ノヨンも軽く頷いた。


一行は簡単に荷物をまとめ、洞窟を出た。


焚き火には雪を被せ、完全に消火する。


洞窟の入り口に残った痕跡も、エイヴンとマシューが簡単に隠した。


完全に消すことはできないが、少なくとも遠くから一目で発見されることはないだろう。


外では、今も激しい風雪が続いていた。


セインが先頭を歩く。


今度は大声を上げることなく、姿勢を低くし、岩壁と雪の斜面を利用しながら進んでいった。


イータはアーガのそばを歩いている。


耳を立てたまま、何度も足を止めて周囲の音へ耳を澄ませた。


アイラは地形を確認し、雪に覆われた空洞を避けるよう、何度も全員へ注意を促す。


一行の歩みは遅かった。


逃げることだけを考えていた先ほどとは違い、一歩一歩を慎重に選んでいた。


しばらくすると、前方から爪が地面を踏む低い音が聞こえてきた。


イータが足を止める。


その表情が僅かに変わった。


「前に一頭います」


「それほど近くはありません。でも、動いています」


アイラは周囲を見回した。


「もうすぐ乱石の斜面です。そこで待ち伏せできます」


誰も言葉を発しなかった。


全員が素早く散開し、乱石斜面の両側へ身を隠す。


確かに、ここは待ち伏せに向いていた。


大小さまざまな岩が雪に覆われ、鋭い黒い縁だけを外へ覗かせている。


山道もここで二度曲がっており、竜魔獣が正面から突進してきても、翼を完全に広げることはできない。


今回は、セインが大声で叫ぶ必要はなかった。


エイヴンは、遠くで僅かに音を立てるだけでいいと指示した。


セインは石を使って岩壁を数回叩き、さらに雪の上を走って、わざと足音を響かせる。


間もなく、一頭の竜魔獣が誘き寄せられた。


先ほど倒した個体よりも少し小さい。


その代わり、動きはさらに素早そうだった。


竜魔獣はすぐには乱石斜面へ入らなかった。


外側で一度立ち止まり、周囲を観察するように頭を動かす。


アーガの胸に、僅かな不安がよぎった。


やはり、こいつらには知恵がある。


少なくとも、普通の魔物よりも遥かに賢い。


アイラが声を潜めた。


「匂いを探っています」


アーガはカードを一枚引き抜いた。


少し考え、竜魔獣を直接攻撃することはせず、爆発のカードを反対側の岩陰へ投げる。


轟音が響いた。


爆発は、竜魔獣の斜め後方で起きた。


突然の音に驚いた竜魔獣は、反射的に前方へ飛び出す。


そのまま、乱石斜面の中へ足を踏み入れた。


エイヴンが待っていたのは、その瞬間だった。


側面から剣光が放たれ、竜魔獣をさらに奥へ追い込む。


マシューは盾を構え、引き返す道を塞いだ。


セインは岩の間を何度も駆け抜ける。


加速魔法によって人影のような残像をいくつも生み出し、竜魔獣に何度も狙う方向を間違えさせた。


その隙を突き、エイヴンが最後の一撃を放つ。


剣光が竜魔獣の急所を切り裂いた。


巨体が雪の上へ倒れ、動かなくなる。


マシューは倒れた竜魔獣を見つめ、ようやく表情を僅かに緩めた。


「少なくとも、倒せない相手ではないようだな」


ノヨンは岩壁へ手をつき、静かに頷いた。


アイラは雪面に広がる血を俯いて見つめていた。


何も言わなかった。


顔色はまだ悪いものの、その瞳は以前よりも落ち着いていた。


イータが小声で尋ねる。


「アーガ様、私たちはもうすぐ勝てるのでしょうか?」


アーガはすぐには答えなかった。


こちらでは、二頭を倒した。


遠くから爆発音も聞こえたため、ほかの小隊も成功している可能性がある。


数だけを見れば、竜魔獣は確実に減っている。


このまま一頭ずつ倒し続けることができれば、勝算はさらに高くなるだろう。


しかし、群れを率いる個体はどこにいる。


先ほどから今まで、一度も姿を現していない。


本当に竜王が奴らを指揮しているのなら、なぜ配下の竜魔獣が殺されるのを止めないのか。


近くにいないのか。


それとも、何かを待っているのか。


アーガは風雪の奥を見つめた。


胸の中の不安は消えるどころか、さらに強くなっていた。


「気を抜くな」


アーガは言った。


「竜王は、まだ姿を現していない」


冗談を口にしようとしていたセインも、その言葉を聞いて笑みを消した。


エイヴンが頷く。


「移動を続ける。ここは血の匂いが強すぎる。長く留まることはできない」


一行は再び歩き始めた。


洞窟へ逃げ込んだ直後と比べれば、空気はかなり明るくなっている。


誰もが激しく疲労していた。


それでも、竜魔獣を二頭続けて倒したことで、少なくとも勝利の可能性だけは見えるようになっていた。


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