第九話
学校に着くと、多くの生徒達で賑わっていた。
普通に話すと周りに不審がられるので、小夜は小声で白妙に話しかける。
「......白妙様、どうです? それっぽいのいます?」
「いや。おらんな」
「......そもそもどうやって探すんです?」
「我には人間の言う、"運命の赤い糸"とやらが見える。それがないものが候補だな」
「どうして繋がっていない人なんです?」
小夜が気になったことを問うと、白妙はため息をつきながら目を閉じた。
「我には自身の赤い糸が見えぬ。だから、人間も赤い糸が憑いていない者が我と繋がっている可能性があると考えている」
「なるほど......ん? "考えている"? 確定じゃないんですか?!」
小夜は器用に小声で叫んだ。
白妙はそんな小夜にムスッとしながら小夜の頬をつねった。
「いひゃい。いひゃいれふ......ふう」
「なんならそなたの運命の相手を見ても良いのだぞ?」
「え?!」
白妙のその言葉に反応したのは何故か透であった。
小夜は、何故透が? と思ったが声には出さなかった。
「安心しろ透。そなたは別の誰かと繋がっておる」
「誰かって誰?!」
「......近くにいないと相手までは分からぬ」
透は、運命の相手が小夜ではないという現実にガッカリしながら、「これももしかして貧丸のせいか?」と透に引っ付いている貧丸を睨みつける。
ちなみに今貧丸は、白妙によって"憑りつく"ことが出来なくなったので、"引っ付く"ことで満足している。
「小夜。そなたの赤い糸は......?」
「白妙様? どうしたんです?」
「......いや、何でもない」
白妙に見えた小夜の赤い糸。
――小指には絡まっているのに切られたかのように先がない。
見えないのではなく、先がないのだ。
白妙も初めて見る状態なため、思わず口を閉じた。
「白妙様ぁ、私の運命の人はいるんですか? 私も乙女の端くれ! 気になっちゃいますよぉ」
「......あ、あぁ。いる。いることには間違いないから安心するがいい」
白妙の言葉に「やったー!!」と喜ぶ小夜と、ガックシと肩を落とす透。
白妙は小夜の小指から目が離せないでいた。
「小夜。そなた、好いている相手はいないな?」
「な、なんですか急に。神様も恋バナしたくなっちゃうんですか?」
「そんなわけあるか。この戯けが。......そなた、一度も人を好いたことはないだろう?」
白妙の問いに小夜は歩みを止める。
小夜以外の全員が、突然立ち止まった小夜に疑問を持つと、小夜はゆっくりと言葉を紡いだ。
「......待っているんです」
「待っている?」
「子供の頃、"お前に運命の相手はいない。だから自分が運命の相手を連れてくる"。そう言ってくれた人が......いたような、いないような?」
「......ふざけるでない」
「てへ♡」
白妙は小夜の話が本当か嘘かは分からない。
ただ――。
何故か酷く懐かしい感覚が蘇った。
――自分も似たようなことを言ったことがある。
誰に?
いつ?
何故?
白妙は、小夜の小指に絡みついた赤い糸を見つめる。
――途切れた糸
――幼い記憶
――そして、何故だか懐かしく感じる少女。
偶然なのか。
それとも――。
「......」
白妙は、何も言わなかった。




