第八話
学校へと向かう途中、白妙が透をじっと見つめ始めた。
「白妙様? どうしたんですか? ハッ!! まさか透に運命を感じて......!!」
「違うわ!! ......透」
「は、はい!」
「そなた、一体何を連れている?」
「......へ?」
白妙はそういうと、透の背に手を伸ばし、何かを引っぺがすような動きを見せた。
すると、透は「あれ?」と首を傾げる。
――なんだか、肩が軽くなった気がする。
「し、白妙様、一体何をしたのですか? なんだか肩が軽く......」
「そなた、気がついていなかったのか? そなたにこれが憑りついておったのだ」
白妙はそういうと、ずいっと何かを見せてきた。
が、何を持っているのか見えない二人。
白妙はそんな二人の様子に、「ハァ」っとため息をつくと、神力をその手に持った物に注ぐ。
「お? おぉ? なんだか力が強くなった気がするぞ?」
「だ、だ、誰ぇええ?!」
急に目に見えるようになった人物に小夜は驚きの声を上げる。
白妙は、首根っこを持ったままその人物に目を合わせる。
「......そなた、貧乏神だな? 何故透に憑りついている?」
「びびび貧乏神?!」
「......いやぁ、強すぎない霊力が心地よくて」
「透。そなた、不運が続いていたのではないか?」
白妙にそう言われ、透は少し考え込む。
――そう言われてみれば思い当たる節は幾度となくあった。
子供の頃は、幼稚園にお弁当を持っていくのを忘れたり、小学校では忘れ物をしょっちゅうしたり。
最近は、財布を落とすことに始まり、傘がないときに限って雨が降ったり、テスト前にシャーペンが壊れたり、自販機で飲み物を買おうとすると小銭をばらまけたり......
透はそれを全て「人生ちょっとついてないな」くらいに済ませていたが――。
「今、そなたが考えていること全てこやつの仕業だ」
「いやぁ、この子ほんっとに運が悪くてねぇ」
「!! お前のせいかぁああ!!」
透は貧乏神の胸ぐらを掴み、ぶんぶんと揺さぶった。
「そ、それにしても今まで見えなかったのにどうして見えるようになったの?」
「我が見えるように貧乏神に力を注いだ」
「ちょっとちょっと。貧乏神っていうのやめてくれる? おいらには"貧丸"って名前があるんだから」
「......あまり変わりない気がするけれど」
透は貧丸から、「ギブ......気持ち悪いよぉ」と言われ、揺さぶるのをやめる。
いくら神様とはいえ、吐かれては困る。
「して、貧丸とやら。何故透に憑りついた? そなたにも祠があるであろう?」
「いやぁ、この子が子供の頃、よくお供えに来てくれてたからさ! 霊力も強すぎなくて憑りつきやすかったからついつい憑りついちゃったよね!」
「......透。そなた貧乏神にお供え物をしておったのか?」
「ばあちゃんに神様だからって言われて......」
白妙は透の答えにため息をつくと、「どうする?」と透に問いかけた。
「ど、どうする、とは?」
「こやつとの縁切りだ。してやらんこともない」
今まで空気だった小夜は、白妙の言い方に、「ツンデレかよ」とツッコんだ。
そんな白妙に異議を申し出たのはもちろん貧丸である。
「ちょっとちょっとー! おいらからその子を奪わないでよー!!」
「......安心しろ。縁切りするだけで、そばにいることは反対しない。それに、先程我が神力を注いだからしばらくはそれで過ごせるだろ?」
「......まぁ、百年くらいは」
こうして透と貧丸は白妙の手によって縁切りをされた。
透は、「なんだか肩が軽くなった」と目を輝かせる。
「白妙様って、縁結びだけじゃなくて縁切りも出来るんだ」
「"縁"に関する事ならば、な」
小夜は白妙の力に感心しながら、改めて思う。
――この人は本当に神様なのだと。




