第七話
こうして学校へと行く事になった白妙。
小夜が掃除の後始末をしているのを見ていると、境内に入ってくる人間の気配を察知した。
「おい、誰か来るぞ」
「え? あぁ、それなら......」
「小夜、おはよう」
「おはよう、透! ......ハッ!! 白妙様白妙様!!」
小夜は何かを思いついたかのように、白妙を呼ぶ。
「なんだ?」
「......彼とか、どうです?」
「......は?」
小夜の斜め上の発言に、白妙は鳩が豆鉄砲を食ったように目を点にする。
どうやら小夜は透も候補になるのではと考えたらしい。
――そして。
「物は試しです!! さぁ!! ぶちゅっとどうぞ!!」
「小夜!! そなた何を考えている?! 我にそんな趣味はない!!」
「趣味と運命は別物です!!」
小夜は力強く白妙の背中を押す。
それに倣い兎月も一緒になって小夜の手伝いをした。
「さ、小夜? うーちゃん? なにしてるの? と言うか、そのキラキラした人は誰?!」
「説明は後!! とりあえず、この人とキスして!!」
「は、はい?! いくら小夜の頼みでもそれは聞きたくないよ!!」
「我もお断りだ!!」
小夜と兎月は白妙を押すのをやめ、ため息をついた。
「まったく。我儘はダメですよ? 今からそんなのでどうやって運命の相手を探す気ですか?」
「......小夜、オレにも説明してもらえるかな?」
透がそう言うと、小夜は胸を張って透に簡単に説明をした。
「この方は神楽坂神社の祀る白蛇神様の白妙様!! ちょーっと諸事情があって、依り代に戻ることが出来なくなってしまって、依り代に戻るための"運命の相手"を探すことになったの!!」
「......それで、なんでキス?」
小夜は「ふっふっふ」と怪しい笑みを浮かべた。
透は何やら嫌な予感がして、小夜を直視できない。
「それはだね、透君。白妙様は"運命の相手と口づけをすること"によって依り代に戻ることが出来るのだよ!!」
「運命の相手?」
「そ!!」
小夜は何故だか得意げだ。
しかし、それに反して、透の顔は芳しくない。
「それってさぁ、小夜が手伝う必要ある?」
「......なんだと?」
「だってそうじゃないですか。神様なんでしょう? 貴方。自力でどうにかしてみたらいいんじゃないですか?」
透は白妙に対して敵意をむき出しにしている。
小夜はピリつきだした空気に戸惑い始めた。
「と、透。それには訳があってね?」
「訳? 訳があったとしても、この人神様なんでしょう? 神様は人間の願いを叶えるのであって、人間に願いを叶えさせるのは違うんじゃない?」
小夜はまさか透がこんなに怒るとは思わなかった。
――これは正直に言うしかない。
「透。あのね? 私のせいなんだ。白妙様が依り代に戻れなくなったの」
「......どういうこと?」
「えっと......。この間の掃除のときに、白妙様の依り代を倒しちゃってね......」
「......は? え? そういうこと?! うわぁ!! も、申し訳ありません!!生意気言って!!」
透は先程までとは打って変わって、腰を低くした。
そして――。
「小夜には責任を持って手伝わせますので!!」
「......もう良いのか?」
「......ハイ」
透は神妙な顔で頷いた。
「よし! それじゃ、学校へ行こう!!」
「......うん」
「我も行く」
「僕も!!」
こうして、小夜、白妙、兎月、そして透は学校へ向かうことになった。
――だが。
この時の小夜は、まだ知らなかった。
白妙の"運命の相手探し"が始まったことによって、自分の日常が大きく変わっていくことを。
そして――。
自分自身が、その"運命"に深く関わっていることを。
これはまだ、誰も知らない。
神楽坂神社に眠っていた白蛇神と女子高生巫女。
二人の"運命"が交わる物語は――ここから始まる




