第六話
四人で楽しく朝食を囲んだ後、小夜は食器を洗っていた。
すると白妙が、洗い終わった食器を拭き始めたのだった。
「し、白妙様?! なにされているんですか?!」
「なにって......食器を拭いている」
「神様にそんなことさせられません!!」
「......今更我を神扱いするのか?」
そう言われてしまえば小夜はぐうの音も出ない。
「あ!! 学校に行く前に参道の掃除をしなきゃいけないんだった!!」
「......話を逸らしたな」
「そ、そんなつもりは決して!!」
「......おい、小夜。お前ちゃんと着替えてから行けよ? まだ部屋着じゃねえか」
「は、はーい!!」
小夜は洗い物をササッと済ませると、自室へと戻って行った。
「白妙様。後は私がやりますので......」
「ん? そうか? でももう終わる。気にするな」
(神様に洗い物の手伝いをさせて気にしない方が出来ない!!)
「あぁ、もう終わった。これより先は頼んでも良いか?」
「え、ええ! もちろんです!!」
白妙は権蔵に後を任せると小夜の部屋へと向かった。
そんな白妙に気がついた兎月も一緒についていった。
「小夜。我も外に連れて行ってはくれぬか?」
「き、キャーー!! 覗きぃ!!」
「違う!! ......そなた、神に対する態度がなってないのではないか?」
「わ、分かりました!! ごめんなさい!! だから出て行ってぇ!! 着替えられない!!」
小夜はそう言うと白妙と兎月を廊下へ押しやった。
白妙はしばらく呆然とすると、我を取り戻し――
(神を締め出すとはいい度胸だな......)
「......お待たせしまし、た......って、怒ってらっしゃる?」
「そなた、初めてだぞ? 我を締め出す行為をしたのは」
「うっ......で、でも!! 乙女の着替え中に入ってくる方が悪いと思いませんか?!」
「お主のような貧相な身体になんとも思わない」
「......さいですか」
小夜は肩を落とした。
(......たしかに!! スタイルがいいわけではないけれども!!)
「そうだ。我も掃除に連れて行ってくれ。どのように神社が保たれているのか知りたい」
「......神様も掃除するんですか?」
「ん? 我は見ているだけだ」
「見てるだけ?!」
小夜のそんなツッコミに、白妙は、"神の役割は人の働きを見守ること"と言っていたが、小夜は思った。「それは白妙様が楽しいだけではないのか?」と。
「おい」
「は、はい?!」
「口から思っていることが出ているぞ」
「し、しまった!!」
「嘘だ」
「!! もう!!」
白妙から「一体何を考えていたんだ?」とニヤニヤしながら問われ、思った。
(この神様......絶対、楽しんでいるだけだ!!)
そうして掃除を続けていると、小夜はふと考えが浮かんだ。
「白妙様。学校、行きません?」
「なに?」
「いや、学校に行けば出会いは多いから白妙様の"運命の相手"が見つかるのではないか、と」
「......なるほど。行ってみる価値はありそうだな」
「学校なら僕も行くぞ!! 小夜を守るのは守護霊の僕の役目だからな!!」
「ありがとう、うーちゃん」
小夜は嬉しそうに笑う。
「そう言えば、うーちゃんは今までも学校についてきてたんだよね?」
兎月は胸を張る。
「小夜が気づかなかっただけで、ずっとそばにいたぞ!!」
「......そっか」
小夜は、ふと手を止めた。
昨日までなら、絶対に気づかなかった存在。
昨日までなら、決して見ることのできなかった神様。
「昨日とは何も変わってないはずなのに......、私の周りだけ全部変わっちゃったみたい」
小夜は小さく笑う。
そんな小夜に白妙は静かに答えた。
「......そうだな。今日からが始まりだ」
こうして――。
神楽坂神社の女子高生巫女・小夜。
白蛇神・白妙。
そして守護霊・兎月。
三人を中心とした、少し騒がしく、不思議な日常が始まった。




