第二話
「......!!」
ようやく身体が動くようになった。
「きゃあああああああああっ!!」
小夜は勢いよく掛布団を引っ掴み、頭から被る。
「な、な、な、なに?! 誰?! 不審者?! 泥棒?! それとも変態?!」
「......待て」
「いやあああああ!! お父さあああああん!!」
「待てと言っている!!」
「ひゃっ!!」
男の声が部屋中に響き渡る。
そして被っていた掛布団は男の手によってひっぺがされた。
小夜は恐る恐る男を見る。
するとそこには先程と変わらず、長い白髪の男がいた。
月明りを受けた髪は雪のように白く、紅玉の様な瞳は妖艶に輝いている。
その姿はまるで――。
「......神様?」
「......ほう」
男は僅かに目を細めた。
「随分と察しがいいな?」
「だって!! こんな真夜中に他人の部屋に入って来る美形なんて、神様か変態に決まってるでしょう?!」
「......我を変態と同列に扱うな」
「じゃあ、何者なのよ?!」
男はゆらりと立ち上がる。
その瞬間、白い着物の裾から白い何かがチラリと覗く。
――鱗だ。
「......え?」
小夜の顔が引きつった。
その白い鱗はまるで......というか、確実に蛇のものであった。
「我の名は――白妙」
「......」
「この神楽坂神社に、古より祀られている白蛇神である」
「......」
「......?どうした?」
「......嘘」
「何?」
「だって......白蛇神様って......」
小夜の視線が本殿の方向に送られる。
「......像じゃないの?」
「依り代だ」
「......よりしろ?」
「我の魂を封じ、この世にとどめておくための器だ。......まぁ、それもそなたのお陰で......」
「私?」
「倒しただろう? 私の依り代を」
白妙の言葉に小夜は血の気がサァッと引いていった。
「ごごごごめんなさいっ!! け、決してわざとではなく......!!」
「分かっている。だがな、困ったことが起きてな......」
「......困ったこと?」
「何故だか依り代に戻れんのだ」
小夜は顔を真っ青のしながら白妙を見つめる。
白妙はそんな小夜の様子が面白くて、少し意地悪をしたくなった。
「あーあー。困ったのぉ。この神社は我の力があってこそであるというに......」
「......ご、ごめんなさい」
「このままではいずれ神の力を失う」
小夜は急いでベッドから降り、土下座をした。
「この度は! 誠に申し訳ありませんでした!! 私に出来る事なら何でもします!!」
「......なんでも?」
「はいっ!!」
白妙は小夜の言葉ににやりと笑うと、小夜の前に跪き、彼女の顎をすくいあげた。
「ならば、探してもらおうか? 我の"運命"を」
「......"運命"?」
小夜は神様の口から"運命"という言葉が出ることにびっくりした。
――神様まで"運命"を信じるんだ。
「信じるも何も、我は恋愛成就の神であるぞ? 運命をも司っておる」
「!! 心も読めるのですか?!」
「......顔に書いておる」
小夜は恥ずかしくなり顔を覆う。
白妙が「クックックッ」と不気味に笑う。
「そ、それにしても神様が"運命"の相手を探すのですか?」
「我が依り代に戻るには、"運命の相手との口づけ"が必要なのだ」
「......ロマンチックな方法ですね」
「我は恋のキューピットだからな」




