第一話
「んーー!! 今日もいい天気!! 絶好の掃除日和ね!!」
「小夜。あんまり力入れすぎるとまた問題起こすよ?」
「"また"って何よ"また"って!!」
ここは恋愛成就で有名な【白蛇神様】を祀るパワースポット、【神楽坂神社】。
今、大きな伸びをしたのは神楽坂神社の一人娘で女子高生巫女の神楽坂 小夜。
そんな小夜を窘めたのは小夜の幼馴染の深沢 透。
小夜は幼い頃からお転婆で、宮司である父から「少しでもお淑やかになってもらいたい」との願いで放課後や休日は家業の神社の手伝いをしている。
「ハイハイ。小夜ちゃんは大人しく本殿の白蛇神様の像でも磨いててねぇ」
「......透はいつまで経っても私のこと子ども扱いして......。わかりましたよーだ」
――こっちの気も知らないで。
透はそっと呟くが、その呟きは風によって消えて行った。
「ふんふんふ~ん。ピッカピカにしますからねぇ」
小夜は力いっぱい白蛇神様像を磨いていく。
――と、その時だった。
立ち上がった瞬間に、バケツの水をひっくり返し、その水で足を滑らせ......像を倒してしまった。
「や、ヤバい!! お父さんに叱られる!!」
小夜は急いで像の傷を確かめる。
――傷はないようだ。
急いで像を元に戻し、手を合わせる。
「......どうか何も起こりませんように......ついでにお父さんも怒りませんように......よし!!」
小夜は事件の痕跡を消すと、本殿から出て行った。
――白蛇神様の目がキラリと輝いたのに気がつきもしないで。
***
「今日もご馳走になっちゃってすみません」
「いいってことよ!! たんと食べてお行き!!」
「......小夜、自分で作ったからってた、食べ過ぎるなよ?」
「......だって、私のご飯美味しいでしょ?」
そう言われると否定のできない父と透であった。
ちなみに母は小夜が生まれてすぐ、病気で死んでしまった。
それ故、家の家事全般は小夜が担っている。
「透。お風呂入って行く? 汗かいたでしょう?」
「いや、今日はご飯いただいたら帰るよ。」
「そう? あ、お茶淹れてくるからコップ頂戴」
小夜は透からコップを受け取るとキッチンへと姿を消した。
「――帰る。帰るから腕をつねるのはやめてくれないかい"うーちゃん"」
「お前に"うーちゃん"などと呼ばれたくないわ!! "兎月さま"と呼べ!!」
「......なんで小夜には見えないんかねぇ」
「......僕だって小夜と喋りたいよ」
「なになに? 何の話?」
――小夜にはいずれ霊感が生まれるのか。
神楽坂神社を継いでほしいとの父としての願いだ。
女性宮司。うん、いいな。
全員の意見が一致した瞬間だった。
***
「ふー。今日も疲れた。明日も早いしもう寝よう。」
小夜が布団に入り横になった。
――その瞬間だった。
小夜の身体が金縛りにあったかのような重圧に押し潰されて、息が出来ない。
「......っ?!」
必死に目だけを動かす。
すると――。
月明りが差し込む部屋の中に、誰かいた。
そこには、腰まで伸びた長い白髪を持つ、美しい男が。
しかも男は、小夜を押し倒すような格好で彼女を見下ろしていて――。
「そなた......我を起こしたな?」




