第十五話
小夜と兎月が風呂から上がると、白妙は権蔵と共に酒を楽しんでいた。
「珍しい......白妙様がお酒飲んでる......」
「権蔵が一人酒が寂しいというのでな。飲めンわけではないから付き合っていた所だ」
「......神様って酔っぱらうの?」
「小夜、そなた神を何だと思っているのだ?」
白妙に睨まれ、まさしく蛇に睨まれた蛙状態。
「兎月。そなたもどうだ? たまにはこういう付き合いもよいではないか。何より、今日は満月だ。共に月見酒といこう」
「......白妙様が優しい......」
「小夜」
「ハーイ! 私は大人しく勉強して寝まーす!!」
小夜は逃げるようにして自室へと駆け込んだ。
***
勉強も終わり、小夜はベッドへと入り睡魔に誘われるがまま眠りについた。
――どれほど時間が経っただろうか。
ベッドが軋む音で目が覚めた。
「ん......何......?」
「......小夜。起きた?」
「......どちら様で?」
ベッドに乗っかかっていたのは見知らぬ青年。
これまた美しい人がいたものだ。
――白妙にも引けを取らないのではないか?
「この姿で会うのは初めましてだね」
「......まさか、うーちゃ、ん?」
「! そうだよ! よかった。分かってくれて」
なんとこの美青年、あの"兎月"だというではないか。
普段の活発な少年と違い、どこか落ち着きを持っている。
「ど、どうしたの? その姿......」
「今日は満月だからね。こっちが本来の姿。霊力もいつもより強いよ?」
「そ、そう......。でも、どうしたの?」
「んー?白妙様も権蔵も酔いつぶれたからさ。邪魔者はいない方が都合がいいから」
「......邪魔者?」
邪魔者とはどういうことだろうか?
そう考えながら体を起こすと、兎月は小夜の髪を一房とって口づけを贈る。
小夜は一連の美しい動作に顔を赤くする。
胸がドキドキといってうるさい。
「う、うーちゃ......」
「小夜。僕は小夜だけのモノだから。僕が僕が守るのは小夜のことだけ。......愛してるよ、僕の小夜」
「あ、愛......?!」
「ふふっ。可愛いなぁ......」
兎月は小夜の頬に手を滑らせる
そして、そのまま唇に触れた。
「......っ」
小夜は今まで受けたことのない扱いに戸惑っていを受ける。
頭の中が真っ白になっていく。
そんな中――。
「う、うーちゃん......?」
兎月の身体がぐらりと傾いた。
「え?」
そのまま、兎月は小夜へとしなだれかかる。
「う、うーちゃん?!」
「スースー......」
「......寝た?」
すると――。
次の瞬間。
兎月の体はみるみるうちに、縮んでいった。
「えっ......?!」
そこにいたのは、先ほどまでの美しい青年ではない。
いつもの、少年姿の兎月であった。
「な、な、なんだったんだ......一体......?」
小夜の心はかき乱されたままで、再び寝つくことが出来ないまま朝を迎えたのであった。
――これから兎月とどう接していけばよいのか?
また満月の日はあの兎月に会う事になるのか?
朝の穏やかさとは裏腹に、小夜の胸中は穏やかとはかけ離れていた。




