第十二話
小夜と白妙、兎月は透と小判、貧丸と別れて神社に入っていく。
遠くから透が、「貧丸もこっちくんの?!」と叫んでいる声が聞こえる。
――なんだか、不憫に思えて仕方がない。
透よ、達者でな。
そう思った小夜達なのであった。
「お父さーん。ただいまー」
「おう。おかえりさん」
「急いでご飯の支度するね!」
「権蔵。いつも務めご苦労だ」
「い、いえいえ!! 白妙様! これが私めの役目ですので!!」
ごんぞうは白妙に対して、頭を下げる。
小夜は「大袈裟だなぁ」と思いながら、エプロンをつけ台所へと姿を消していった。
白妙はそれを見送ってから権蔵へと話かける。
「権蔵。小夜はどうやら強い霊力を開花させたらしい」
「......と、いいますと?」
「食事などいらぬはずの我や兎月が食事を欲している。......他の飯ではダメだ。"小夜の作った飯"でなければ、な」
権蔵は、まさか小夜にそんな力が宿るとは思ってもみなかった。
「......一つ忠告しておく。小夜の霊力は全てにいい影響を及ぼすものではない。悪鬼にも狙われる可能性がある」
「なんですって?!」
「安心しろ。我が傍にいる限り、大体のモノは近づくことすらできない。......だが、我と同等、もしくはそれ以上の力のあるモノには......」
白妙の含みのある言葉に、権蔵は生唾を飲み込む。
「小夜のあの霊力......悪鬼だけでなく、神も小夜を狙う可能性がある。正直そうなった時、我でも守り切れるかどうか......」
「そ、そんな......」
権蔵はサァッと血の気が引いた。
今まで普通の少女として育ててきたのに、今ではその身を狙われる存在になってしまった。
――まぁ、変わるきっかけを作ったのは小夜自身であるのだが。
「権蔵。そなたには昔から良く仕えてもらっている。だから、小夜のことは我に任せてはくれないか? ――何があっても守り切ろうと誓おう」
「......よろしくお願いします。私達は白妙様しか頼ることが出来ません」
「おい! 権蔵!! 守護霊である僕を忘れるんじゃない!!」
「なんだ、兎月。そなた居ったのか。てっきり夕飯のつまみ食いにでも行ったのかと思っていたぞ」
兎月は忘れ去られていたことに加え、つまみ食い犯の汚名を着せられたのであれば兎月とて怒るのであった。
「小夜に近づく悪いヤツは、僕が懲らしめてやるんだからな!!」
「......ありがとう。兎月。お前には散々世話になったな」
「そなたでも役に立つ事があるのか。それは失礼した」
「ムキーー!!」
そんな話をしていると、小夜からお呼びがかかった。
「みんなー! ご飯できたよー!! 今日はなんと!!唐揚げです!!」
「......唐揚げとはなんだ?」
「そっか、白妙様は知らないか。鶏肉を揚げたやつですよ!!」
「......ほう」
「僕、小夜の唐揚げ食べてみたかったんだ!!」
「兎月。そなた、神よりも食い意地が張っているな」
「白妙様だって!! さっきお腹鳴らしてたじゃん!!」
「な......!!」
「ふふふ」
小夜の笑い声が、神社の中に響く。
――つい先ほどまでの張りつめていた空気が、嘘であったかのように。
いつもの穏やかな時間が流れていく。
しかし――。
小夜自身も、まだ知らない。
自分の中で目覚めた"霊力"が、これから様々な縁を引き寄せることなるなど。
そしてその中には――。
決して、良い縁ばかりではないことも。




