βビデオテープが暴いた乃雅の歴史
〇リビング
古い段ボール箱を空が開ける。
中から、1980年代のβビデオテープが一本出てくる。
空
「パパ、これ何?
『魅惑のツンデレ美少女風ヒロイン・乃雅』って書いてあるけど……
これ、パパの若い頃のやつだよね?
しかもパパが21歳の時のやつでしょ? 今の私と同い年じゃん。」
聖
「タイトルがもう昭和だよね……ツンデレって言葉、当時あったの?」
俊
「パッケージの写真、完全にアイドルじゃん。
乃雅ちゃん、こんな顔してたっけ……!」
四つ子{ざわざわ}
「えっ、じゃあパパの21歳と私たちの21歳が並ぶってこと?」
「なんか不思議……」
「同い年のパパを見るって変な感じ……」
「時空が重なってる……!」
乃雅はすでに顔を赤くしている。
〇パッケージの説明文
(新田恵美を思わせる華やかな美貌と、少し意地っぱりで愛くるしいツンデレな性格が魅力のヒロイン・乃雅……)
泰代
「これ書いた人、絶対乃雅のこと好きだったよね。
“ミステリアスな佇まい”って……褒めすぎ。」
乃雅
「やめてよ泰代……!」
空
「でもパパ、ほんとに女の子みたいだよ。
これ見たら、誰でもそう思うよ。」
四つ子
「うんうん」
「完全に女の子」
「声も高いし」
「乃雅パパって昔から可愛いんだね」
乃雅はさらに赤くなる。
〇泰代の回想
「空達が生まれるずっと前、私と乃雅が21歳の頃に撮った映像よ。
私は出演を断ったけど、乃雅は撮影したの。」
聖
「えっ、泰代さんも誘われてたの?
見たかったなぁ泰代さんの若い頃……」
俊
「泰代さん、絶対人気出たよね……」
泰代
「やめてよ、私は普通の大学生だったの!」
『阿野家の秘蔵ビデオ上映会』
陽
「ビデオデッキ入手してきたよ!
βのデッキ探すの、意外と簡単だった。」
四つ子
「えっ、そんな簡単に見つかるの?」
「どこで売ってたの?」
「まだ動くの?」
「昭和の機械ってすごいね!」
乃雅
「なんでそんなものがすぐ見つかるのよ……!」
〇上映会開始
画面に若い乃雅が映る。
空
「あっ、パパだ!
同い年のパパってなんか変な感じ……
すごい、本当に女の子みたい……」
四つ子
「声高っ!」
「肌きれい!」
「髪サラサラ!」
「乃雅パパ、昔の方が落ち着いてる……」
乃雅
「昔の方がって何……!」
〇ビデオのインタビュー
『阿野乃雅さんって、どういう人なんですか?』
『……身体に特徴のある“男の娘”です。』
空
「そうだよね、パパの身体は特徴あるもんね。」
四つ子
「うん、知ってるよ」
「乃雅パパの身体、特別だよね」
「空と同じだしね」
「家族の特徴だよね」
乃雅は少し照れながらも嬉しそう。
〇事故の話
『……9歳の時。事故に遭ったの。』
空
「パパ、そんな事あったんだ……
空は生まれた時から同じ身体だったから、パパもそうだと思ってた。」
聖
「乃雅ちゃん、当時大変だったよね……」
俊
「身体のこと、ずっと抱えてきたんだね。」
四つ子
「乃雅パパ、がんばったんだ……」
「すごいね……」
「偉い……」
「尊敬する……」
乃雅は涙ぐむ。
〇身体の説明
『ここに事故の痕がすーっと残ってて……これが排尿のための開口部なんだね。』
四つ子
「21歳の乃雅パパの身体史がこうやって映ってるのって、なんかすごい……
そうだよね、いつもお風呂で見てるのと同じだね。」
空
「ねえ、身体のケアの仕方教えてもらったのって、ママ(泰代)の事?」
泰代
「そうね、私がずっとケアしてるよ。
毎日、身体の状態をチェックしてるの。」
四つ子
「ママすごい!」
「プロじゃん!」
「看護師みたい!」
「家族の健康管理係だ!」
泰代
(得意げに)
「看護師だし!」
乃雅は頭を抱える。
〇出演者の話
陽
「この“出演者の一人”って俊パパの事?
俊パパも今は身体が変わったけど……
この時はまだ今とは違ったんだね!」
俊
「うん、当時はまだ性別適合手術前だったからね。」
四つ子
「俊パパも変化してるんだね」
「家族みんな身体が個性的だね」
「うちってすごい家族だよね」
「誇りだね!」
俊は照れながら微笑む。
〇聖の話
月
「あっ! これ聖ママでしょ!
『授業中にお腹がすごく痛くなっちゃって、救急車で病院に運ばれた』って言ってる!」
聖
「うわー、懐かしい……
あれ、初潮の時だったんだよね。」
四つ子
「えっ、私たちの時?」
「ママ大変だったんだ……」
「ありがとう……」
「ママすごい……!」
聖は照れながら笑う。
〇演出の話
黎
「このシーン、当時としては少し大胆な演出があったみたいだけど……
画像処理で見えないね。」
四つ子
「昭和ってすごいね」
「演出が独特だね」
「乃雅パパよくやったね」
「勇気ある……!」
乃雅は頭を抱える。
〇クラウド保存の話
陽
「大丈夫だよ、もうキャプチャーしてあるから家族用クラウドに保存しとこうか?
そしたら、みんないつでも見られるよ!」
乃雅
「お願い、それだけは……!
やめて!!!
勘弁してーっ!!!」
四つ子
「えー見たいー!」
「保存しよーよ!」
「乃雅パパの若い頃もっと見たい!」
「永久保存版だよ!」
乃雅はソファに倒れ込む。
〇泰代のまとめ
泰代
「へー! なんでよ、もういいじゃん。
減るもんじゃないし!
どうせ“昔の身体の特徴”が映ってるだけでしょ?
何年前の事だと思ってるのよ!」
四つ子
「そうそう!」
「乃雅パパの歴史だよ!」
「家族の宝物だよ!」
「阿野家の伝説だよ!」
乃雅
「やめてぇぇぇぇ……!」




