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聖が「私に入れて」と

研究室の白い光の下、

インキュベーターの中で静かに輝く受精卵を、

僕は見つめていた。


人工精子、

僕の細胞から作られたの種。


そして、

聖の卵子。


二つが結びついて生まれた、

“未来の卵”。


その横で、

聖は白衣の袖を握りしめていた。

いつもとはちがう、

どこか震えるような静けさをまとって。


「乃雅くん……」


声は、

かすかに震えていた。


聖は受精卵を見つめたまま、

ゆっくりと言った。


「これを……

 私の子宮に入れてほしい。」


僕は息を呑んだ。


聖は続けた。


「これは……

 私たち四人の未来だから。」


その言葉は、

祈りのように静かだった。


聖は自分の胸に手を当て、

深く息を吸った。


「私は、

 自分の身体が“境界の器”だとずっと思ってきた。

 男でも女でもなく、

 どちらにも完全には属さない身体。」


僕は黙って聖を見つめた。


聖は続けた。


「でも……

 乃雅くんから生まれたこの受精卵を、

 私の身体が受け入れられるなら……

 それは、私が“未来の器”になれるということ。」


胸の奥が熱くなった。


聖は僕の手を取った。

その手は冷たく、

でも確かな意志を宿していた。


「乃雅くん。

 あなたが未来を描いた。

 私は、その未来を育てたい。」


僕は言葉を失った。


聖は、

僕の目をまっすぐ見つめて言った。


「お願い。

 この受精卵を……入れて。」

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