044 後日談とオチ
ここからは後日談として語らせて貰うが、手始めに言わなければならないのはもう既に一ヶ月ちょいが経過しているということではなく、エンゼル・シルバー&ゴールドがアホということである。
あの後、最強さんがツギハギだらけの兎人形を縄で拘束して持って来たのはあの巨人の腕が明智光秀を殺してからそう時間が経っていない時の事だった。
その時のエンゼルから聞いた言葉にはもうなんというか、呆れる以外に選択肢が無いのではないかという程に馬鹿らしい、今回の行動の理由が含まれていた。
言い訳に言い訳を重ね、物凄い遠回しに言ってはいたが要約するとつまりはこういうことだった。
『久遠の寝床を守ろうと思った、公開も反省もしている。だからヘルプミー』
なんでも明智が、俺が借金野郎より奪い取った部屋のあるアパート周辺を取り壊して何かを建造するつもりだったらしく、それを中止する条件として明智がドミニカを求めて来たのだとか。
アパートを丸々エンゼルに譲渡するならということで商談が成立、今回の事に至ったのだという。
無論、エンゼルがあのボロアパートを欲しているのかと問われれば断固として否らしいことは嫌と言う程伝わって来た。
俺の為だったということも。
せっかく寝床を提供した筈が一ヶ月どころか一週間チョイでおじゃんになる。
そりゃあかんと思って出た行動らしいのだが、俺と対峙して俺の脳内優先順位が家より奴隷の方が高いということを知って青褪めたらしいことも言っていた。
まあ普通に考えれば労働力より家だわな。
エンゼルはドミニカの人間像を知らなかったらしく、俺がどんな扱いをしているかも知らなかったのだとか。
善意のつもりが悪行に代わっていたとか笑えない現実がそこに有ったのである。
取り敢えず、縄に縛られたエンゼルの土下座は頭からワタが出る程激しかった。
何故攻撃して来たかという疑問に対しては『状況を説明しようと思ったらなんか鬼だった』なんてよくわからない答えが返ってきた。
あの時は明らか戦闘態勢を取っていたのはやらなきゃやられるという至極真っ当なモノだった。
なら仕方ない。
毒は当たり前のように致死性なんて無く、単なる麻痺毒だったとか。
いや、麻痺毒も十分すぎる程毒だが。
その後取り敢えず、納得は行かないが水に流すことにしたのはやはりワタが出る程の激しい土下座があまりに面白すぎたからだろうか。
ウサギの人形が土下座とか普通の状態でも面白過ぎる訳だが、エンゼルのは一味違った。
まあドジという点に置いては俺も負けていないところがある。
それはハイパワーΣ(レベルの代わりに経験値を上げる指輪)を外し忘れていたということである。
明智光秀との戦いにおいて俺は、格上相手に勝利を収めたことによって得ることが叶う筈だった莫大な経験値が全てふいになったのである。
そしてどうやら経験値も筋力増強に使うらしいハイパワーΣは俺に不必要なまでの筋力を増強するらしいことを身体能力測定器にて自身の筋力を調べてみて分かった。
STR 31.07
ムキムキなミジンコ。
比較対象として、Cモンキーの中で一番非力な奴の筋力も提示する。
STR 189.96
ゴリラ。
正直言って割に合わない。
そんな印象の残る上昇しか得られなかった気分になるのは比較対象が悪いからなのかもしれないが、Bモンキーまで行くとその数が四〇〇を軽く超えるらしいことを聞けばそんな気分にならない方がおかしい。
単純計算で成人男性二六六人分の力を備えているらしいBモンキーには化物という称号しか似合わないだろう。
あぁ、Bモンキーと言えばその数が増大した。
文脈を持って説明しなければ意味が分からないだろうが、その言葉の意味通り、Bモンキーが増えたのだ。
Cモンキー以上の巨体であるBモンキー二十九匹がビル内に入る事が出来ずにビル前でスタンバッていたのを見た時の俺の驚きはもう言葉じゃ説明できない程だったと先に告げておく。
スタンバッてたBモンキー達の話によると、Cモンキー達は種族的には『ランクモンキー』という名前でレベルが九十九に達するとランクが一つ繰り上がる。
つまりは数匹のCモンキーがレベル九十九になり、Bモンキーへとランクアップしたということだ。
本来、Bモンキー以上のランクモンキーは群れの長クラス。
Bモンキーになった元Cモンキーは数匹のCモンキーを連れてその群れから離れるものらしい。
もっとも、それは上に居るのがBモンキーである場合に限るのだとBモンキー達は言った。
……えっと、まあつまりだ。
お山の大将、ボス猿になっちまってるみたいなんだよ、俺。
今回、人間との戦争ということで、女子供とそれを守る数匹の戦士たるCモンキーと長たるBモンキーは俺の修行した山で待機しているのだが、これを見たらどんな反応を見せるだろう。
そして、今回の戦いに伴い、ランクモンキー達の住む場所の確保に成功したことをここに進言しておく。
それと同時に俺はこの町のルールを知った。
『強者こそが正義。この街を統べること叶うのは強者のみ』
この街の貨幣が何故見慣れた単位である『円』が使われているのか、疑問に思わなかった訳では無い。
この街の貨幣単位は、この町の頂点に立つ人物の国籍にて決まる、言わばその人種の名誉の証見たいなものであるらしい。
人間社会で生きることにおいて金銭のやり取りは必須。
常に手元へ置くモノに自国のモノを使えるのは名誉である。
まあもっとも、上が変われば貨幣単位も変わる為に貨幣が紙のみとなり偽札問題が出てきたことを考えればあまりいい制度では無いのだが。
それに今は落ち着いているが、少し前まではかなりコロコロ変わっていたらしいしな。
なんだっけ、ナポレオンVSヤマトタケル? 軍事力ではなく個々の力がモノを言う社会において、何時の時代に生まれ出でたのかは関係ないらしい。
ただ問題があるとすれば、その小休止状態だった最中に俺が席取りをしてしまったことである。
ランクモンキー達の住宅域とはつまり、明智光秀の統括していた西区のことなのである。
明智光秀に勝利した俺が次の『将軍』になり、西区を統括することになった。
俺がそれを知ったのはニュース報道でだった。
当事者たる俺が知らないことを周囲の人間が先に知ったという意味合いでもあるのだが、兎に角その事実を俺がランクモンキー達と一緒に知ってしまったことはもうアレに繋がる以外に選択肢は無かった。
ランクモンキー達との約束、住む場所の確保が出来てしまったのである。
ちなみに将軍交替の映像はダイジェスト版にて放送され、俺の配下にランクモンキーの大軍勢が存在すると分かった時点で西区から人間の内のほぼ十割が、西区を去り、スラム街である北区へと移住した。
住んでいた家を易々と捨て、放棄されたゴーストタウンへ移り住む奴らが、よくこの街に住んでいられたな、なんてのは傲慢な思考だろうか。
まあ政権なんてのに関わらなければ強さなんて関係ない。そこそこの科学水準の中、それなりの人生を送るというわけか。
兎にも角にも逆に西区がゴーストタウンと化してしまったと言われれば俺は『NO』と答える。
明智光秀殺害より二日後から、ランクモンキー達による都市開発が始まったのである。
取り敢えず最初は何の破壊活動だと思う程の解体作業が“素手で”行われた。
使えそうな材料を探す気なんて最初から無い。
砕いて千切って投げ飛ばす。
舗装されたコンクリートの床まで、『ボロボロ』とか『汚い』とか『こんなの舗装の内に入らない』とか人間に近い価値観の元汚いとされる建造物をCモンキー達は全て破壊していった。
そしてそれと同時進行で、百匹余りのCモンキー達が俺と共に役所でダンジョンへ潜る為の免許を発行しに行った。
都市開発の資金調達をダンジョン内の魔物狩りでやろうという狩猟的考えからである。
ちなみにダンジョン内にランクモンキーは存在しない。
というか、ランクモンキーは魔物じゃない。
その辺の説明は省かせて貰うが、俺が将軍になったことによって得た権力をフル活用し、免許を首から下げるのを条件に、Cモンキー達のダンジョン攻略が許可された。
一応Cモンキー達には『やられたらやり返しても良いが、一応人間に干渉するのはやめとけ』と言っておいた。
その言葉に渋い顔をしたCモンキー達に追剥で得た金で造った街に住みたいかと尋ねたところ、『流っ石団長俺らより頭回るわー』とか『そんな犯罪が蔓延りそうな街嫌だわー』等のコメントが返ってきた。
……人間とランクモンキー達は相容れない。
それを再確認させられる返答だったが、まあ意思疎通の難しい相手と交流したいとは誰も思わないだろうな。
それを考えると何故Cモンキー達は最初に俺と会った時即時攻撃してこなかったのだろう。
兎にも角にも、都市開発が始まって早一ヶ月。
材料の問題をさて置いても流石にログハウスを造るみたく高速で建物を建造して行くのは無理なようで、西区の完成率はおよそ二割といったところか。
十分すぎる程早いのだが、Cモンキー達は中々な出来上がらないことに自己の能力不足を感じているようだった。
……いやお前らこれ以上技術磨いてどうすんの。
閑話休題。
そんな訳で、
ドミニカを取り戻して、
エンゼル・シルバー&ゴールドは裏切って無くて、
レベル上げに失敗して、
猿の帝国が出来上がりつつあって、
でも一ヶ月以上が経過したけど記憶は全く戻らない。
こんなのが、事の顛末。
これが、行動の結果だよ。




