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111Labirinto  作者: 白米
第一章 喪失者
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042 新選組の乱入

 青と白の半纏を身に纏ったそいつらは、俺一人に対し五人で止めに掛かって来た。

 四肢を抑えつけられ、刃を向けられた。


 状況への理解は全く追いつかないが、明智に増援が来たと考えればいいのだろうか。


「……誰だお前ら」


「御用改めである。神妙にお縄に着け」


「誰だと聞いている。その低俗な脳では会話すらまともに出来ないのか」


 剥き出しの敵意に、そいつらは反応する。

 ……何だコイツ等、敵意に敵意で返してきやがった。


 俺を拘束して明智をそのままにしている時点で、俺の敵であることは明白。

 しかし即斬り捨てるには相手の情報を知らなすぎる、



「我々は新選組だ」



 ……あぁ、こいつらがそうなのか。

 この国での警察の役割を担っているとか言う。

 さっきは見損ねたが……ふーん、青と白の半纏着て、名前だけ借りているという訳でも無いのか。

 だが突発して強い人間も見当たらない。

 数はそこそこ居るようだがこの程度で俺を止める気か。



「一度だけ告げる。拘束を解け」


「お前には武将襲撃の首謀者の疑いが掛けられている」


「お前らー、死にたくなきゃ放した方が良いぞ」


 新選組の言葉に対し反応したのは俺では無く明智だった。

 だがそんな言葉に対して新選組が取った行動は拘束の持続。



 俺は次の瞬間には腕に纏わりつく馬鹿の身体を吹っ飛ばしていた。

 足に纏わりついた奴は足を振り上げる要領で動かし、話そうとしなかったそいつは天井へめり込んだ。


 刃物を向けてきやがった奴には、斬撃をくれてやる。


 目には目を刃には刃を。

 俺は俺を拘束した奴らを薙ぎ払った。



「あひゃひゃひゃ! やーっちまったやーっちまった! 俺的メシウマァ!」



 明智の異常なテンションは、人死にが出たと思ったからだろうか。

 残念、一人たりとも殺してねェよ。


 斬った奴も気を失ってはいるだろうが致命傷は与えなかった。

 ……これがたたっ切るのを普通とした大剣だったら即死だっただろうな。


 流石聖剣。



「動くな」


 そんな俺の気遣いは誰に知られることも無い。

 それが思考の闇に消えていくのと、再度刀を突き付けられたのはほぼ同時だった。



「……またか」


「御用改めである。動くなっつってんだろ」



 そいつの態度は先程の奴ら以上に強気なものだった。

 横目でそいつを見てみると、その口調が随分と似合いそうな凶暴面がそこにあった。

 新選組の強面って誰か居たっけか。

 そういう組織があったことは覚えているが、直接関わった訳では無いからな……。



「一応問うが、何故今更になって俺の邪魔をする」


「逆に問うが、何故ここを襲撃した?」


「盗られたモン取り返す為だこの野郎」


 まあ当然、俺の動機なんて知らない訳だ。

 というか、何故こいつ等はこんな大所帯で入ってこれたんだ?

 下ではCモンキー達が暴れまわっていたというのに。



「盗られた? ほう、そんな理由でここに飛び込むたぁ随分と度胸のあることでで。何だ? 何を盗られた。物か、女か」


「友達だ」


「つまりは、女か」


「……生物学上は」


 多分。

 人魚の生態を俺は詳しく知らないが、人魚だけ特殊で男が乳房膨らむとか無いよな?

 ドミニカは外見通りの美しい女の人魚だよな?

 まあ例え男でも友情にヒビを入れる気は毛頭ないのだが。


 ちなみに、逆もまたしかり。


「ハッハー、成程成程?」


「何だお前」


「俺か? 俺は新撰組副長土方歳三(ひじかたとしぞう)


「何かどっかで聞いたことある名前だな」


「たりまえだ。俺を誰だと思っている?」



 今土方歳三って名乗ったじゃねぇか。

 あぁ、そういえば新撰組にそんな名前のが……副長っつってんだから居たに決まってるか。


「……で、その土方歳三が何しに来た」


「御用改めつってんだろ。刀向けられてんのに嫌に冷静だな」


「別に」


 ちょっと今の俺が妨害とかそういう行動に対して我慢できる気がしないだけで。


「まあ何にせよ、ご同行願おうか? お前には……」


「断る」


 俺はそう言う前既に、土方の刃からしゃがむことで逃れていた。

 目にも止まらぬ速さだっただろう。


 ……いや、その筈だったが反応されて少し髪が斬れたというべきか。

 俺はそのまま土方の脛を回し蹴りすると同時にその場を離れる。



「……明智、お前がこいつ等を呼んだのか」


「サァ? どうだろうな。一つ言えるのは俺が真剣勝負なんざする奴じゃねぇってこと位か」


「……」



 それは最早、答えを言っているようなものではないか。

 その言動で先程までの剣の応酬が全て無駄になったかのようだ。


 なんだ、やっぱり明智光秀はどうやっても殺すべきだったのか。

 元々殺す気だった癖にとツッコミが無いのは残念だが、取り敢えず今は……こいつ等を皆殺しにする。




「神葬流……」




 俺の言葉に反応して新選組が身構えた次の瞬間だった。

 地響きと共に奴らがやって来たのは。



『クオォォォォォォン! お? なんか鳴き声っぽくね?』


『犬ならな。というか久遠じゃなくて団長だろ』


『おっといけねぇ』


『つーか悪魔化(ディアブロ)解けた俺らの緊張感の無さといったら……』


『いいんじゃね? 誰の前で格好付けんだよ。人間しかいねーぞ』


『久遠いるじゃん』


『誤算だった』


 オイコラ待てコラ。

 俺も人間だっての。

 まあ、取り敢えず今はそんなツッコミも飲み込もう。

 ナイスタイミングだぞ、Cモンキー共。


 部屋へと押しかけて来たのは、その巨体でビル内が窮屈そうなCモンキー達だった。

 その数は場所を考慮してか二十匹程度だが、その巨体から来る圧倒的存在感に、新選組の奴らは圧倒される。



「お前ら、人間中に入って来てんだけど」


『え? あ。気付かんかった』


『全部喰ったと思ったが』


「言い訳は?」


『見苦しい』


『『はい。すみま……待てゴラァ! テメェは同罪だ馬鹿!』』


 そういえば、Cモンキー達の言葉は他の奴らには分からないんだったか。

 俺は普通に話せているから周りもそうだと思いがちだ。



『ま、そんな失敗を払拭するようなことを俺だけはやってのけた!』


「?」


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『チッ』


『ペッ』


『お前ら俺の事嫌いすぎだろ!』



 いや、そんなのどうでも良いから何したか教えてくれよ。

 汚名返上とか、俺らの関係はそんなモノを必要とするようなやつじゃないだろう。




『じゃーん! 攫われた姉御でぇす!』




「…………ドミニカ?」




 それは確かに、新選組の一組や二組、こっちに流してくれて全然構わないと言いそうになる程の手柄だった。

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