039 聖剣と魔剣
千壌土久遠 19歳
職業:久遠 Lvrt2▲j5
ホブゴブリンLv62
ホブゴブリンLv65
ホブゴブリンLv65
ホブゴブリンLv68
ホブゴブリンLv69
キングゴブリンLv80
コボルトの貴族Lv66
コボルトの貴族Lv64
コボルトの貴族Lv68
コボルトの貴族Lv57
コボルトの貴族Lv69
コボルトの王Lv80
DモンキーLv2
EモンキーLv50
FモンキーLv75
FモンキーLv77
グールLv42
グールLv48
グールLv44
グールLv49
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
ゾンビLv1
魔物は、溢れかえるように存在した。
ゾンビに関しては数え切れないほど存在し、今も尚増えている。
そして、俺の職業とレベルに起こった変化は恐らく俺が恐れていた聖剣と魔剣の同時装備によるバグかなにかだろう。
「どうだい俺の育てた魔物達は! 見た事のある魔物ばかりだろう?」
「……随分と弱い者ばかりを集めたな。お前程度の実力じゃこの程度の魔物しか操れないということか」
「安い挑発に乗る気は無いな」
いや、今のはお前に言ったんじゃなくて単なる独り言なんだが……。
無論、訂正してやる義理も無いどころか一秒でも会話をしていたくないのだから早々に話しを切り上げてしまおう。
そもそも何故言葉を交わしたのかが分からん。
一瞬の気の迷いか?」
「というか、分かってないな君は」
「……?」
「弱い弱いと思っていた相手に殺される恥辱を与えながらに死んでいくだなんて見ている方は至福以外の何物でも無いだろう?」
クズだ。
ホブゴブリンやコボルトの貴族といった俺でも出会ったようなダンジョン序盤に出て来る魔物を鍛えているのはそれが理由か。
……下らない。
というか、明智の言う辱めは誰も受ける事無くこの世から消える。
俺の前に出した時点でそれは決定されているに等しい。
アロンダイトとヴァナルガンド。
修行前とは全く違う二振りの剣から感じる重みは、アレを披露するに相応しい。
神葬流剣術。
Cモンキーより教わったコレは一振りの剣で戦う為の剣術というよりかは複数本の武器を使用しての戦闘を可能としているものだ。
その理由は神に通るであろう刃は少なかろうが、神を相手にして一本の武器が持つ筈がない。
だから一振りに掛かる負担を減らす為に持つ武器の量を増やし、尚且つどれか一つが駄目になったとしても怯まず向かって行けるからだ。
神葬流剣術には幾つか構えがある。
状況に応じた対応を可能とする為だ。
俺は殲滅戦の、対天使軍勢用の構えを取った。
そんな、俺の殺気に当てられた魔物達が一斉に襲い来る。
始めは一番前に居たDモンキー、Eモンキー、Fモンキーによる波状攻撃だった。
それに伴い訓練された周囲の魔物共は俺を囲い始め、その様子を下卑た笑みを浮かべながらに見ている明智の姿を視界に入れてしまった故に、三種のモンキー達の死は無残なものとなる。
集団で一人を相手にした時にその一人を大勢で囲むのはある意味当たり前の策だ。
また、それを裂けようとするのを妨害するように最初から攻撃する者を配置するのも。
圧倒的戦力を前にすれば人間なんていう弱い生き物は直ぐに竦み上がる。
相手が自分より大きい生物であったらな尚更だ。
無論それは、平常時においての常識なのだが。
三種のモンキー共の大きさは比較的小さい。
Dモンキーの大きさはゴリラ程でないにせよ成人男性の平均身長位は存在するが、他二匹の身長は一般的猿と何等代わりない。
どうやらアルファベットがAに近付くほどその大きさも巨大になって行くようだ。
つまりこいつ等はCモンキーの下位種の生物ということだ。
まあ、今それは何の関係も無いのだけれど。
人間は、羽を振るのに筋肉を使うか。
否、それは腕を振るのに筋肉を使っているというのが正しいだろう。
重さを感じられない程に軽い物を振る。
それはただ腕を動かしているだけに等しい行為だ。
アロンダイトとヴァナルガンド、この二本は名剣だ。
大剣でありながら削ぐのではなく斬ることの出来る剣だ。
しかもリットゥには無い強度の絶対的安心感が握っただけで感じられる。
例えどんな剣圧を掛けようともこの剣は歪まない。
例えどんな物を斬ろうともこの剣は刃毀れしない。
剣の完成系を、そこに見る。
「……神葬流、天使解体」
三種の猿達のを俺は切り裂いた。
マグロ解体ショーを見たことがあるだろうか。
理科の実験で蛙の解剖をやったことはないだろうか。
腐って死体の肉が剥がれていく様を、目の当たりにしたことはないだろうか。
俺は一瞬の内にDモンキー、Eモンキー、Fモンキーの皮と筋肉と内蔵と骨を斬り分けた。
まるで解体されていくマグロのように。
まるで解剖されていくカエルのように。
まるで朽ちていくしかない死体のように。
本来であれば鮮度そのままの猿肉の盛り合わせが完成し、空中より落下して潰れたトマトのように赤を撒き散らし、水風船が落ちて割れる音もオマケとして付いて来た筈なのだが、相手は魔物。
Dモンキー、Eモンキー、Fモンキーの三匹はガラスが割れる様に砕け散る。
……本当なら、眼球や脳、鼓膜といった部分も細かく斬り分けれる技だ。
というか本来は細身の剣を使ってやるものらしいし、Cモンキー達は力余って潰しちまうらしい。
あいつ等使うの棍棒か斧か首切り包丁だし仕方が無いといえばそれまでなのだが。
それだけじゃない。
本来なら剣を振る動作すらも見えないらしい。
居合の姿勢から動いていないように見えるのに、相手は解体されているんだとか。
とてもじゃないが、真似できない。
俺は筋力で強引に速度を出しているが、エルフは技術でそれをやってのけるらしい。
正に神殺しの剣技。
しかし上位の天使となるとこの技は簡単に避けるらしい。
解体のしかたには順序があり、それを明確に一寸のズレも無くやらなければ解体出来ない。
いや、解体する必要があるのかは不明だが。
天使に通用して猿に通用しない通りは無いが、コボルトに通じるかと聞かれれば疑問。
人間に近い天使、そしてこれまた人間に近い猿であったからこそ解体することも出来た。
だがこいつらの体の造り、人間と違う気がする。
……手応えは有ったがあの猿共も違うのか?
死体が残らない為に答え合わせが出来ない。
「味気ない殺しだ」
気付くとそう呟いていた。
まるで狂人。
明智光秀と同類のような。
俺がそんな思考を払うと次に襲い掛かって来たのはホブゴブリンだった。
どうやらこいつ等、同種族内でのコンビネーションは取れているが、後は『囲んで攻撃』位のことしか出来ないらしい。
その証拠に、ホブゴブリン達が動き出したことでコボルトの貴族達がどうしていいか分からなくなっている。
「神葬流、天使粉塵」
ホブゴブリン達を襲うのは、その体を細切れにせんとする高速の刃。
一体につきどれだけの刃が襲うかは知らない。
本来であれば何度斬ったか、何処を斬ったか分かるらしいが、俺はてんで分からない。
俺自身今どこを何回斬ったか分からず、ただ振り回しているに過ぎないような攻撃。
手数が多く、その肉を細切れにせんとする威力は通常の連撃よりも高い。
ただ問題があるとすれば、その速度に体が付いて行かず、自分でその手を止めるのに十数秒のタイムラグが生まれると言う事。
まるでミキサー。
やってる本人ですらそう思う技だった。
ホブゴブリンは例外なく細切れになって行く。
いや、厳密にいえば細切れになるまえに砕け散る事の方が多い。
俺はホブゴブリンを仕留めるつもりで攻撃を続けた。
そしてその余波で、キングゴブリンも呆気無く倒れた。
レベルが離れているのに何故。
そんな疑問も生まれるが、今それを考えるべきでないのは明らかだ。
コボルトの貴族達はその手に持つ武器で此方の攻撃を警戒していた。
コボルトの王は自分に背を向けるコボルトの貴族という名の兵士達を悠然と眺める。
ふむ、『天使解体』も『天使粉塵』も全然使いこなせていない俺が警戒を掻い潜って相手にダメージを与えるのは無理か。
仮にも格上の相手。
慣れない実戦初導入の剣術でどうにか出来る程甘いとは、到底思えなかった。
だから俺は、二刀流を止めた。
無刀流。
「神葬流、天使風穴」
アロンダイトとヴァナルガンドを腕輪へと戻し、コボルトの貴族へと突進。
迫りくる剣を二本の大剣が無くなったことによる体積の収縮を利用した紙一重での回避。
そして止まらぬ突進の勢いのままに放つ拳は、コボルトの貴族を吹き飛ばすことなく、当てた腹部へ過大な損失を。
そう、風穴を空けた。
ただ、アロンダイトとヴァナルガンドによる攻撃力補正が無いためコボルトの貴族はそれだけじゃ倒れない。
だから攻撃を放った次の瞬間には腕輪を再度剣に変え、風穴を空けた一体だけじゃない他のコボルトの貴族をも巻き込んだ波状攻撃を放つ。
ちなみに俺が一々一昔前の少年誌のキャラよろしく、技名なんか唱えているのには理由がある。
神葬流剣術っていうのはどうにも、恐ろしく精密な技術が求められる物らしいことが使ってて分かるのだ。
そんな流派の技を放つのに集中する為必要な時間、相手が舞ってくれるかと問われれば否以外に答えは無い。
だから俺はスイッチを切り替えて使うことにした。
技名を口にして、使うべき技能への集中を即時に行う為の一種の暗示見たいなもので、一連の動作が完全にセットとなっていて技を使い終えるまで体が止まらないのが欠点だ。
技名を言わずに技を繰り出せるようになったら一人前になっている証拠となる訳だが、現状を鑑みるに、いつになることやら。
アロンダイトとヴァナルガンドの刃は思いもよらぬ攻撃の為か武器に防がれること無く通り、そのまま追い打ちを掛けることで倒すことに成功。
コボルトの王は、フロアボス出会った時と同様に無様な醜態を晒しながらに死んでいった。
ようやく半分位倒しただろうか。
魔物達は俺に休む間もなく襲い掛かる。
残るは、死体共だけだ。




