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111Labirinto  作者: 白米
第一章 喪失者
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029 猿長と神葬流

 修行六日目。


『この馬鹿者共がァァァァァァァァァア!』


 この日、目を覚ましたのはそんな怒鳴り声が耳を貫いたからである。

 新手のアラームか? 等と考えながらに体を起こして辺りを見回すとそこには友達のCモンキー総勢二〇七匹を知らないCモンキー総勢四七〇匹が取り囲んでいる様が瞳に写る。


 ナニコレ怖い。

 俺は儀式の供物にでもされるんじゃないかという祭壇の上で寝かされていて、前にはお供え物が。

 ……あれ、これマジで生贄にされんじゃね!?


『……ん? 目を覚ましたか。人間』


 そこに居たのは、他のCモンキーが小さく見える程の巨大な存在だった。

 全身を覆う白い毛も、他のCモンキーとは比べ物にならない程長く、体もゴツイ。

 その目は威厳と風格に満ち溢れているそいつは、俺を見下ろしていた。




 BモンキーLv98




 ……次元が、違う。

 Cモンキーですら無い。

 それだけでなく、ここまでレベルに差が生まれてしまっているそいつは言う。


『そこの物は好きに食べてて構わない。少し待っていてくれ』


「え」


 Bモンキーの指差したのは、お供え物のように置かれた食べ物や飲み物。

 食べ物は基本甘い物を中心としてあり、飲み物は果汁だった。

 状況を飲み込めない俺はBモンキーの言葉に甘えて果汁で喉を潤す。

 オレンジジュースだ。


『貴様らは当たり前のルールすら守れんのか!』


『いや忘れてたんだって。俺儀式やったのもう何十年も前だし』


『そ、そーそー。儀式のやり方は覚えてたんだけどな』


『馬鹿者! 何の為に儀式場があると思っている! 人間よりこの技法を隠す為であろう!』


『いや、今回その人間に使っちまったけど』


『あ、そうだった。なら良いや』


 えぇ!? 軽ぅ!?

 先程までの迫力ある風格は何処へやら。

 Bモンキーは怒気をゴミ箱へ捨ててしまったかのようにコロリと表情を変え、Cモンキー達と同じ温和なモノへ。

 多分この中でまともにこの問題について考えているのは俺だけだ。

 考え事のせいか腹が減る。

 その為に俺がお供えされていた食べ物を貪り喰らっていると、Bモンキーが此方に向き直る。


『いやー馬鹿共が申し訳ない事を。体に不調は有りますまいな?』


「あぁ、はい。大事無く。某はこの通りピンピンしております」


『それは上々。どれ、今日から儂も修行に付き合いましょうぞ』


「それは有り難い。是非、お頼み申す」


『何で古風な喋り方?』


『「いや、ノリで」』


 逆にそれ以外無いだろ。

 閑話休題。

 そんなやり取りがあった後、俺はCモンキー達の修練場へと訪れた。

 そこには俺の友程大きくは無いCモンキーも沢山居て、鍛練に勤しむ姿があった。


『お前らさっきこっち居ただろ』


『シー! 人間に良いとこ見せんだよ!』


『今迄横目も振らず訓練してましたアピールすんだよ!』


『大人は馬鹿でも子供はそうじゃないって見せんだよ!』



 ………………。

 手遅れ、だぞ? 小さなCモンキー達よ。

 何故俺に良い所をみせたいのかは不明だが、そんな光景には苦笑を洩らすしかない。


 兎にも角にも訓練を開始しようということになったのはそれから十分後という蛇足っぷりで、俺は今回の修行で最も何もしてない時間が多いなと思いつつ、開始された訓練へと身を投じた。

 今日は昨日に引き続き力の制御の筈だったが、Bモンキーの指導によりそれはものの数時間で完了してしまった。

 瞑想から始まった時はどうなるかとも思ったが、いとも簡単にコツを掴めてしまった時にはBモンキーの凄さを痛感する結果となった。


『あれ、お前らもしかして神葬流剣術教えた?』


『うん。俺らが知ってるCランクまで。長も教えてみ、久遠スポンジ見たくすぐ吸収するぞ』


 そんな絞ったら知識全部流れ落ちそうなもんで人例えんなよ……。

 どうやらCモンキー達より教わった技術には神葬流という流派の名前があるようで、詳しく聞くと元々はエルフが神を殺す為に作った剣術だったとか。

 それをCモンキー達は影から見て盗み、自分達に合ったモノへと改良を加えていったんだとか。


 エルフが神を殺せたのか。

 それは定かじゃないにせよ、神殺しを目的として造られた剣術を学ぶことになるとは夢にも思わなかった。


『ふむ、面白そうだ』


「俺はお前らの玩具か」


『ちげーよどっちかっつーと玩具で一緒に遊ぶ側だっつの』


 そんなこんなが有りつつも、Bモンキーより教わることとなったのは神葬流Bランクまでの剣術だった。

 どうやらBモンキーより上、Aモンキーっていうのも居るらしく、そいつじゃないとAランクの技術は知り得てないらしい。

 Sモンキーは居ないのかと尋ねたら、サディスト? と聞き返されたから多分居ないんだろうと思う。


 それはさて置きBランクの神葬流剣術は、Cモンキー達より教わったCランクの時よりも簡単に覚えることが叶った。

 基礎が出来上がってきている証拠だと思われるが、これなら何故Cモンキー達にもコレを教えないのだろうと疑問に思う。


 そんなこんなで色々ありつつも、遅れてやって来たドミニカは何処となく不機嫌そうで、暫くの間俺にしがみ付いて離れず、耳元で大音量歌唱というダイレクトアタックが待っていたりもしたが、夜までの修行をこなし、何時も通り力尽きて倒れるのだった。





 六日目、成果。


 STR 22.22

 ゾロ目。これ以上上げなくていいよ。どうせミジンコなんだから。


 Bモンキー日誌。

 久遠の覚えが良すぎて儂涙目。

 コレ覚えんのかなり苦労したんだけど。


 仲間になったCモンキー。

 200匹。

 累計407匹。





 修行七日目。

 予定としては最終日となる今日この日、Cモンキー達にその旨を伝えると大混乱が巻き起こった。

 無論、俺が帰ることをCモンキー達は分かっていて、その反応も結構普通のものだったと言えよう。

 最初Cモンキー達はそんな言葉に対し、こう口述していた。


『へー。じゃあ俺らも身支度済ませなきゃな』


「着いてくんの!?」


 正直ビックリだった。

 ビックリしすぎて目が飛び出る程に。

 残念ながら、それが比喩表現の域を出ることは無かったのだけれど逆に俺の反応へ驚きを見せたのがCモンキー達だった。


『え、まさか俺達置いてくつもりだったのか!?』


「生態系ぶち殺す可能性ほぼヒャクパーな大移動推進する馬鹿何処に居んだよ!」


 驚きを見せたCモンキー、その数六三〇匹。

 この山に住むCモンキーの半数が俺と共に人里へ降りるつもりだったらしい。


『あ、もしかして住む場所とか気にしてる? 大丈夫だって。人間共蹂躙すれば問題無し』


「お前、俺が人間だって忘れてんだろ」


 長くて一週間の付き合いである筈のCモンキー。

 なんで俺と人間で別枠扱い受ける程の関係性を築けてるんだよ。


 その後、俺とCモンキー達はもめにもめた。

 俺の言い分が“Cモンキー達全員を養うことが出来ないから無理だ”に対し、Cモンキー達の言い分は“自分の食い扶持位自分で稼げる。だから置いてくれ”というものだ。

 たしかにダンジョンへ潜れば金を稼ぐことも可能だろう。

 ドロップアイテムは俺が換金に行けば良いとして、Cモンキーにでも免許が発行されるのであればそれはかなりの稼ぎとなること間違い無しだ。


 しかし、しかしだ。

 逆にCモンキー達が理解無き愚民共に殺される可能性も大いにあるのだ。

 その辺のクズ共にCモンキー達が負ける可能性はほぼ無いだろう。

 だがCモンキー以上のレベルを持った人間が敵対してきたら?

 今の俺はまだCモンキー達より弱い。


 つまり、守ってやることは出来ないのだ。


 Cモンキー達と暮らす為の家を造るには、膨大な土地も必要となって来るだろう。

 Cモンキー達が小さいならまだ可能性もあったんだろうが……お前らでかすぎんだよ。


 いっそ地区を占拠すればもしくは……っていやいやいや! 何時の間にか触発されちまってる!

 ……でも、あのごみ溜めみたい場所、人が少なかったのは確かだ。

 それに北区。あの場所に関していえば完全なる無法地帯だ。

 金さえ出せば法を定めているであろう人間より権利を譲り受けることも可能か?


 少し可能性を見出してしまった俺は、Cモンキー達に命の危険がある事を伝える。

 この地での主権を握っているのは恐らくこのBモンキー率いるCモンキー達だ。

 森の中を行き来する様子から察するに危険も少ないだろう。


 なのにわざわざ危険を冒してまで俺に着いて来るのは馬鹿らしいと、そういう意味を込めて尋ねたのだが、返ってきたのは予想外の言葉だった。


『ハァ!? 少なくとも俺は残り少ない人生は久遠に捧げんぞ』


 結婚を申し込まれた気分だった。


『俺はって何だ。俺は命賭けんぞ』


『俺は毎日美味しい味噌汁作んだよ』


『久遠の分まで働くんだよ』


 重婚した気分だった。


 何こいつ等。

 ドミニカが所有権を主張する様に唄いながら俺にしがみ付く。

 いや、一応俺がご主人様だからな?

 ドミニカ、奴隷。俺、ご主人様。オーケー? オーケーじゃないだろうな……。


 閑話休題。


 取り敢えず、Cモンキー達の意思はどうしようもなく固くて、俺にはどうしようもなかった。

 だから俺はCモンキー達に言った。


「分かった。なら俺があっちで下準備する。それが完了したら迎えに来るからそれまで待っていてくれ」


 この言葉に対しても、Cモンキーはかなり妥協してのしぶしぶなオーケーであったことはその表情から見て取れた。

 しかも、俺がするのは受け入れ準備までだと話して漸くだという現実。


 そんなこんながありつつも、最終日たる今日も修行を開始した。

 とはいっても、今日は今迄のおさらいのようなもので、神葬流剣術Cランクを一通りやった後に、まだ完璧ではないBランクの剣術を訓練し、ご飯休憩を挟みながらも夜遅くまで訓練に訓練を重ね、最後ということもあって一週間の疲れはあったがより一層気合いを入れて取り組んだ。


 そして今日は何時もと違い、ぶっ倒れることは無く最後の晩餐会が開催された。

 無論Cモンキー達との一時的な送別会という形で、Cモンキー達は一時的という言葉を酷く協調していた。


 分かった……分かったからさ……。

 なるべく早くことを済ませないと、Cモンキー軍が街に戦争を仕掛けかねない。

 そう思わされるような熱気だった。




 修行七日目、成果。


 STR 22.87

 ゾロ目じゃなくなったお前はミジンコ以下。


 ヤマオリタアトノクオンノヨテイ。

 スムトコサガス。

 オレタチヨブ。


 仲間になったCモンキー。

 271匹(内一匹Bモンキー)。

 累計678匹。


 Monkey Complete!

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