023 第三層の芋虫
その後意識は呼んだ、意識を戻した時、俺は門の前に倒れていた。
しかし、それが些細な問題であるだなんてのは、誰が予想できただろうか。
千壌土 久遠 19歳
職業:魔王 Lv24
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
キャタピラ ☆1
ステータスを確認してビックリ勇者、鞄を探ってビックリ合計二十四個ものキャタピラ。
どうしてこうなった。
片手にリットゥが握られていたところを見るに、何かやったのには間違いない。
ドロップ率の低い中で二十四個ものキャタピラを入手していることからレベルに関しても頷ける。
けど、しかしだ。
……俺、何やった?
意識を飛ばしてしまったというのに、何故レベルが上がっていて、ドロップアイテムを入手している?
まさか、自動で動いていたのか?
……薄ら残っている記憶で俺は、三メートルを超える武者鎧になった気が……する。
祭りがどうとか叫び散らす鬼。
そんな存在が微かな記憶の中で確かに存在するのだ。
そして異様なダルさに見舞われているのは恐らく、魔力切れによるものか。
これはあくまで予想だが、武者鎧になった俺は魔力が尽きるまでキャタピラーを殺し続けた結果この場所で魔装が解けて気を失った俺は放置されていたのだろう。
どうやってドロップアイテムを鞄へ収めていたのか、思い出せる魔装状態からは全く想像が出来ず、疑問符を浮かべるしかない。
話は変わるが現在の俺は魔力切れによる体のダルさとハデス・アイアンを振り回したことによる腕の疲労で心身共に疲労困憊状態で、とてもフロアボスと戦闘を行えるコンディションでは無い。
だがしかし、引き返す場合には重大な問題がある。
俺が武者鎧であった時の歩行経路がマッピングされておらず、帰り道が微塵も分からないのだ。
現在地を確認するに、随分と見当違いの方向へ進んでいたらしくここから出入り口までの道のりはほぼ不明。
分かっているのは方向位のもので、向かう間に敵と遭遇する可能性は十二分に存在する。
現状もっとも最前な行動はフロアボスへ挑むことというこの状況下、俺が一体どうすれば良いのか。
いや、まあ結論はもう決まっているといっても過言では無いのだが。
正直、出入り口へ向かって歩いても今のコンディションだと体力的にも辛いものがある。
であればフロアボスを倒して階段を上り、第四層の出入り口から脱出という方向で話を進めるしかないのだ。
俺は門の前で約半時程体を休め、ハデス・アイアンを取り出した。
……俺は死んでもアロンダイトやヴァナルガンドを使わんぞ。
そんな意思を持ちながらに俺は、門をくぐった。
そしてそこに居たのは、でかい蝶と蛹だった。
サナギXLv30
機械式アゲハLv37
サナギX。ポ○モンとかでは無い為に動かず、地面に白い糸で固定されているただの置物に近い状態である。……しかし、しかしだ。
……中に、『ナニか』いるな?
機械式アゲハとやらは比較的気持ち悪くは無かった。
その理由としては機械式アゲハの体の大半が機械仕掛けであり、虫の形はしているが虫とは遠い存在であるということか。
ただ、魔物というだけあって機械式アゲハは生き物であり、ブニブニとしていそうな腹がつきでている。
その羽も鱗粉を振りまきながらに飛んでいる時点で機械では無いだろう。
そんな二体のフロアボス。
その大きさは、キャタピラーの五倍はあった。
そして俺は予感する。
早急に対処しなければ、死ぬのは此方だと。
だが今の俺にスピーディな戦闘は不可能。
魔装を使ったのは愚策だったと結論付けざるを得ない状況だ。
それに相手は飛行している。
剣で向かうのは無謀。正直鱗粉にも触れたくは無いのだから。
ならどうするか。簡単だ。
……ハデス・アイアンが剣であることを、止めさせればいい。
機械式アゲハは通常の蝶からは想像も出来ない程俊敏だった。
大きな羽を羽ばたかせ、赤く光る大きな目で此方を睨み付けながらにその人一人刺殺可能な棒状の口から呻き声を洩らす。
機械式アゲハのせんとしていることは容易に想像する事が出来る。
俺を、喰らおうとしているのだ。
厳密に言えば吸血といったところだろうか。
蝶の癖に肉食とはなんとも気持ち悪い限りだが、こんな場所には花も無いだろうからその機械の体でもエネルギーを必要とするのなら人間から摂取するしかないだろう。
そんな機械式アゲハを前にしても俺は動かなかった。
厳密に言えば動くとすぐに体力がきれてしまう為に動けなかったが正しいのだが、今それは良い。
動く必要性はどこにも無いのだから。
次の瞬間、ハデス・アイアンの刀身が機械式アゲハの両羽をほぼ同時に切り裂いた。
俺は一歩たりとも動いてはいないし、手に持つ剣を振り回したりもしていない。
動いたのは、ハデス・アイアンの刃自身だ。
俺は機械式アゲハが此方へ襲い掛かって来た瞬間から物質変形を発動させ、手に持つハデス・アイアンの刀身を変形という名目で動かしたのだ。
六〇キロにも及ぶ鉄の圧縮した結果がハデス・アイアンである故に、耐久性に難が表れはしても宙を縦横無尽に駆け巡る刃が生まれ、それが機械式アゲハの羽を切り裂いたのだ。
無論それだけでは終わらない。
当然、すぐ目の前まで来ている機械式アゲハはそのストロー状の口を伸ばし、俺から体液という体液を奪い取ろうとしてくる。
俺はそれをノーモーションで斬り刻む。
「無作為に斬り刻む。無造作に斬り刻む。無意識に斬り刻む。無尽蔵に斬り刻む。……死ぬまで死ぬまで、お前が死ぬまで、斬り刻む」
ちょっとテンションがおかしい。
理由をあげるなら目の前に超巨大な虫の顔面が広がっているからなのだけれど、次の瞬間にはその嫌悪すべき顔は肉片へと変わる。
「キャハハハハ!! 魔物って不便ね。だって頭潰されても死ねないんだもん!」
俺の目の色がちょっとおかしい。
理由をあげるなら目の前にある頭部の無い胴体が恐ろしく気持ち悪いからなのだけれど、次の瞬間にはその醜き胴体は細切れになる。
その後も俺の猛攻は続く。
どうにもゲージの減少具合が芳しく無かったせいで時間が掛かり、機械式アゲハが死に絶えたのはそれから十分後のことだった。
永遠と巨大昆虫を切り刻む男の図はとてもシュールだった。
アゲハのカラクリ ☆1
ドロップアイテムは倒した機械式アゲハを小さくしたような玩具だった。
正直手に取りたくも無かったが、一瞬掴んで鞄の中へと突っ込んだ。
「……後は」
サナギX。中の生物が薄ら見えて気持ち悪い。
俺は絶対に近寄らないと瞬時に結論付け、物質圧縮によるハデス・アイアンの変形を一度中断、元に戻してから再度変形を開始する。
相手が虫であるせいか、斬撃系の攻撃によるダメージがあまり芳しく無い。
それに機械式アゲハと違い、サナギXのある場所は少し遠い。
刃を伸ばしても十分届く距離ではあるものの、機械式アゲハに行ったような連続攻撃を与えることは出来ないだろう。
なら遠距離武器に帰るのが得策だ。
次にハデス・アイアンの形状は、長弓に代わる。
この状況でデザイン性に特化させる必要は無かっただろうと思わせる様な仰々しいデザインの六〇キロあるその大きな弓は俺が相手に構えて垂直になるよう持っても下部分が石に突き刺さる程長い。
弦も鉄製。ちょっとやそっとの力じゃ引く事も出来ないそれで放つのは、鞄より取り出したもう一つの超高純度鉄。
創りだしたのは六本の矢。
一本一〇キロもあるそれは、とてもじゃないが放てるものではない。
だが俺は構えた。
矢を射る方法は簡単だ。
なんとか片手で一〇キロの矢を支え、物質変形で鉄の弦を動かす。
そしてそれを元に戻す反動は、弓を射た時と同じ威力を発揮する。
俺はサナギXへ狙いを定める。
明鏡止水の片鱗を感じながら、矢を射た。
鋭く、一直線にサナギXへと向かう矢を、視界に収めることは叶わない。
それ程までに速い矢の存在に反応した存在があった。
機械式ヤママユガLv40
サナギXは、機械式ヤママユガのものだったのか。
嫌な気配がすると思ったら蛾とか、有り得ないわ。
しかし、そんな機械式ヤママユガは一瞬にして役目を終える。
機械式ヤママユガは矢に反応してサナギXを破った。しかし、反応出来ただけだ。
恐らくだが、物体が近づいてきた場合にサナギXを突き破って襲い掛かるようになっていたのだろう。
結果、近づいてきたのが人間では無く矢であったが為に機械式ヤママユガは後ろの壁へと叩きつけられ、矢によって張り付けられる。
機械式ヤママユガは機械式アゲハより数段タフだったらしいことは、矢が当たった瞬間にはその体に突き刺さることなくその勢いに負けて吹き飛び、壁に叩きつけられたことによって始めた矢が貫いていることから分かる。
機械式ヤママユガのゲージは、矢を引き抜く事が出来ずにもがくことで徐々に減って行った。
どうやら表面が固く防御力が高い代わりに体力はそれ程多く無いようだ。
つまりは機械式ヤママユガを倒したも同然な訳だが、俺は一秒でも早くあの姿を見ないで良くなりたい。
俺は第二射目を機械式ヤママユガの頭部へと放った。
第三射目を、胴体へと放った。
第四射目に行く前で、機械式ヤママユガのゲージはゼロになり、その体は砕け散った。
サナギXの欠片 ☆1
ヤママユガのカラクリ ☆1
例によって触りたくも無いドロップアイテムが出て、俺は急ぎ鞄の中へと収め、機械式ヤママユガが砕けたことによって床へとめり込んだ一〇キロの矢を拾い、再度超高純度鉄へと戻す。
ハデス・アイアンも同様に元の剣の形状へ戻し、鞄にしまった。
ちなみに、虫を斬るのに使ったハデス・アイアンと矢に使った超高純度鉄は売り払うつもりだ。
超高純度鉄は武器へ変えてから売ろう。……形を全く同じにはしない方が良いだろうな。
まあ後で何か考えよう。
今それよりも優先すべきは階段を上り、外へ出る事だった。
心身共にもうクタクタで、早くダンジョンを出たいのだ。
俺は階段を上り、そこで何時ものように存在する出入り口を発見。
外に出てマリーによるアロマセラピー効果で少し気を休めることに成功し、その少しの元気でドロップアイテムの売却へと足を運ぶのだった。




