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111Labirinto  作者: 白米
第一章 喪失者
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014 魔剣と王妃




 千壌土 久遠 19歳

 職業:魔王 Lv7


 魔剣ヴァナルガンドLv7 ☆(今現在)1

 スキル MP吸収 ドロップ二倍 獲得金二倍 Lv変動 ダークネスアーツ 固有装備




 俺のレベルがヴァナルガンドと同調していることは見ての通りだが、このレベルの上がり方から察するに俺は随分な格上の相手と対峙したことになっているらしい。

 まあ、一レベルだった俺が二十レベルちょいだったコボルトと戦ったのだから、レベル的には格上と戦ったと言えなくも無いだろう。

 しかし、形式的に言えば今の俺はレベルダウンしたに他ならない。


 さっきまでの俺は勇者で、レベルも二十に達していた筈だった。

 しかし今は、魔王でありレベルも一桁だ。


 今のままであるなら箱庭エデンへの帰還も可能ではないか、そういう次元の低さだ。

 ただ、そんな都合の良い事が起こるのならレベルダウンも悪くは無いだろう。

 しかし世界はそんなに甘く無い。……筈。



 試してみたいという気持ちもあるが、それよりもするべきことが俺にはあった。


 一先ず、周囲に魔物が潜んでいないかを確認した後、ヴァナルガンドを腕輪に戻す。

 この時に自分のステータスを見て、未だ職業が魔王であることを確認。


 次にアロンダイトを剣に変え、ステータスを確認する。



 千壌土 久遠 19歳

 職業:勇者 Lv23



 ……。


「も、戻った……」


 聖剣たるアロンダイトを手にしたことにより、俺は魔王から勇者への再度ジョブチェンジに成功した。

 どうやらどちらの剣を装備したかによって職業に変化が生じるらしい。

 そして、レベルも職業別に分かれているらしい。


 例え勇者のレベルが九十九になったとしても、魔王のレベルに変化は無く、その逆もまた然り。

 ……俺が堕ち人になったのって、魔王にもなり得たからじゃなかろうか。

 魔王だと分かった瞬間に追放されたから、魔王だけはレベルが一のままだったとかだと、案外辻褄が合うのだが。



 ……しかし、コレは他言すべきじゃないな。


 ただでさえこちらでは天界人、堕ち人の風当たりが強い。

 にも関わらず、天界人が魔王を此方の世界へ送り込んだとなればどうなるか。

 まず間違いなく俺は殺害され、堕ち人への風当たりも更に強くなることだろう。


 天界人? 知らん。

 この仮定が本当ならとんでもないクズの集まりだぞ。


 まあ、今その事は良い。



 異能実験は一先ず終了して、生活費を稼がねば。

 アロンダイトを腕輪に戻して更に奥へと進むわけだが、俺はどちらを使うべきだろう。

 アロンダイトを使えば、危険なんて全く無く魔物を狩り普通に収入を得られるだろうが、ヴァナルガンドを使えばそれ以上の収入を期待出来る。

 どちらを使おうともエンカウント率は同じ。進める距離と活動時間はアロンダイトが上で、収集量と獲得金はヴァナルガンドが上。


 どちらを選ぶべきかは完全に好みの問題か。

 この階層ではアロンダイトさえあればもしもの時に対応可能だろうが、レベルを上げておかないと以後の階層ではそれが出来なくなることは必須。

 だが今はレベルより、お金が欲しい。所持金二〇円だし。


 ……今日はヴァナルガンドを使い、緊急時にのみアロンダイトを使うことにしよう。

 ヴァナルガンドもレベルが上がればアロンダイト並みに強くなることだろうしな。


 今はレベルが低くて弱いが、よく言うだろう。

 馬鹿な子ほど可愛いと。


 ……違うな、絶っ対使い方違うなコレ。魔剣馬鹿な子扱いかよ。


 兎に角、今は探索だ。

 マッピング出来ていないところを進んで行けばいずれ階段にも辿り着ける。

 その時にはまたフロアボスが現れるだろうが、そいつをアロンダイトではなくヴァナルガンドで倒せるようになることを目標に、先へ進もう。


 ダンジョン内は、まるで迷わせる為に造られたが如く全ての場所が似たような造りだった。

 枝分かれする道が多く存在し、その先に着くのが行き止まりであることや元の道へ戻って居ることも少なくない。

 もし地図が無かったら、朽ち果てることは必須だっただろう。

 第一階層でマッピングツールを入手出来たことが幸運だったとしか言いようがない。


 幸運、カンストしてんじゃないのかな。



 コボルト Lv23



 漸く出た魔物だが、コボルト一匹だった。

 薄暗く、ずっと同じ道が続いて長時間いたら気が狂いそうなここでの状況変化があるとすれば魔物の出現位。

 その魔物も滅多に出ないと来たものだからやってられない。

 この一匹のコボルトに出会うのに要した時間はゆうに一時間を超える。

 地図も埋まってきているのは確かだが、ここまで苦労して出て来たのが一匹だと目も当てられない。


 俺はヴァナルガンドを構え、コボルトへ向かっていく。

 そして正面からその胴体へ初撃を与え、そのまま後ろへ回り込んでもう一撃背中へ食らわせる。

 コボルトは呻き声を上げるもゲージを三分の二にまで減らしながらも此方へ振り向き襲い掛かる。


 正直、ゴブリンと大差無くホブゴブリンより小さなコボルトの猛進は微塵も怖くない。

 俺はコボルトのその勢いを利用し、ヴァナルガンドの刀身をコボルトへと突き刺した。

 まるで焼き鳥のように突き刺さったコボルトのゲージはどんどん削られて行き、最終的にコボルトのゲージはゼロになり、コボルトの体は砕けて消えた。


 コボルトの角【希少】 ☆1

 コボルトの角【希少】 ☆1


 心は出なかったが、角が二つ出た。

 出て来る敵が少ないからアロンダイトだとまともに稼げないなコレ……。


 早く上の階層へ行かなきゃいけなそうだが……行ったら行ったでヴァナルガンドでの狩りが更に大変なモノになるしな……。



 まあ行くけど。


 取り敢えず、階段を探そう。

 さっきからずっと探してるけど階段探そう。

 ヴァナルガンドと魔王のレベル上げながら。



 ゴブリンLv19


 コボルトLv20



 とか考えてたら今度は直ぐに魔物と会った。

 すぐとはいっても二十分が経過している訳だけど。


 俺は早々に弱い方から、つまりはゴブリンから倒しに掛かる。

 ゴブリンはコボルトよりも弱い。それはレベルより前の種族から。


 ホブゴブリンなら分からないが、数を減らすことを優先するならまずコイツだ。

 まずゴブリンの棍棒を弾き飛ばす。そしてゴブリンが背を向けたところに今だと言わんばかりの連撃を喰らわせる。


 するとゴブリンは成す術も無く崩れ落ち、砕け散る。



 ゴブリンの棍棒【希少】 ☆1

 ゴブリンの棍棒【希少】 ☆1



 出た! ……確かゴブリンの棍棒の値段って五〇〇〇円だった筈。

 それがヴァナルガンドのスキルで二倍になったってことは……一つ一万円じゃないか。


 ウッハウハだ! これだけでもう食費の心配はないじゃないか。

 もし宿無しだったら宿の代金も掛かったのかもしれないが、俺にはしっかりとある。

 しかも今月は家賃を支払う必要も無いと来た。


 これは今の内に日用品を手に入れろということに他ならない。

 もっと稼げるようなら家を買うことだって出来るかもしれない。


 借家から借家へ移ろうとは思わないからしっかりと財政力を整えてからになるだろうけど。

 ……家を建てるとなったら税金とかも出てきそうだし、貯金もしっかりと出来るようになってからか。


 まあ今は、コボルトを狩る事に集中しなければ。


 さっきみたく串刺しにしても良いのだろうが、体を動かせるようになって置かないと拙い気もするし、しっかりと剣を振って戦う。


 ただ如何せん相手のサイズが小さい。

 人間でいうならまるで子供を斬っている気分だ。

 ……そう考えると胸糞悪い。


 それに俺の身長なら目下の相手より目上の相手の方が戦うことも多かろう。

 ゴブリンやコボルトを相手に剣の稽古は無理か。


 動くモノを相手にするってのは悪くないと思うんだが……振り下す、振り上げる以外の攻撃は空振りする可能性が高いんだよな。

 横斬りとか。


 突きだって振り下すに近い感じだし、どちらかというと地面に突き刺している気分になる。

 コボルトは、五回の攻撃で死に絶えた。


 進歩している。

 まだ見てないが、レベルが上がっている証拠だ。


 ……しかし、結構疲れて来たな。

 辺りの景色が皆一緒で薄暗いことがストレスになっていることもあるんだろうが、それとは関係無しに結構な時間歩き回り、剣を振っていたのだ。

 疲労が募っても仕方が無い。


 朝から潜っていて、今の時間はどの位だろう。

 太陽が見えないから時間が……って時計を買うべきだな。

 ドロップアイテムを回収して、一度戻るか。


 ギルドで売却した時この鞄から沢山のゴブリンの棍棒を出して驚かれたことからこの鞄見たく収納性が高い物は珍しいのだろう。

 なら他の奴らもそう長くダンジョンに籠ったりはせず外にも出るだろう。


 俺にはそれが無いが、疲労は変わらず付いて来る。

 なら慣れない内は、この暗い空間にストレスを感じる内はこまめに外へ出て、太陽を浴びた方がいいだろう。

 ここに居るとなんかもやしになった気分になるし。


 地下では無い筈だが暗いし。


 ……幸か不幸か第二階層入口が近い。

 散々歩き回ったのに元の場所へ戻って着てるとか最悪なんだが。


 だがポジティブに考えよう。

 戻る手間が省けたと、そう考えよう。


 ……そう考えないと、色々やってらんないし。次潜る時は絶対階段見つけて、第三階層から外に出れる様にしたいものだが。


 そうして第二階層の出入り口より外に出た俺を待っていたのは、今日の朝と変わらぬ癒し系門番だった。


「おかえり」


「あー……うん」


「どうしたの?」


「階段見つけられんかった」


「そっかー……それは残念だったね」


 同調し、一緒に残念がってくれる。

 良い奴だ……そういえば、朝からここに居るようだが太陽の位置から察するにもう昼時だ。


「門番って交替とか無いのか?」


「え? んーと、あるよ。あるけど……」


「けど?」


「き、君を……待ってよっかなって」


 モジモジとしながらに言うその様子は愛らしく、まるで恋する乙女だった。

 ……………………きゃっふー疲れが吹き飛ぶわーマジで。

 太陽の光とこの門番とのコミュニケーションで疲れの半分位は間違いなく吹き飛ぶね。

 まるでラブコメじゃないか。

 っと、この言葉に無視とかどんな外道。


「それは嬉しいな。交替があるなら一緒に昼ご飯食べに行く? 待っててくれたみたいだし交替の奴が来るまで待ってるけど」


 さっきまで疲労が勝ち過ぎていたせいで気付かなかったけどお腹空いた……。

 ご飯食べたい。この国の美味しいモノってなんだろう。

 ……最強さんに聞いたら昨日のカレー一択で帰ってきそうだけど。

 味覚えたし、カレールーの再現とか出来そうだよな。材料さえ揃えば。


「え、ホント? うん、いいよ。一緒にご飯食べよ。もうすぐ交替だから」


「よし。じゃあ交替が来るまで待ってるわ。……あ、そういや自己紹介してないな。俺、千壌土久遠だ」


 門番は今更だねと言って笑った後、コホンと咳払いを一つして、息を大きく吸い込むと言った。




「私、マリー・アントワネット・ジョゼファ・ジャンヌ・ド・ロレーヌ・ドートリシュ。ジョゼファだけどジョジョとは呼ばず、マリーって呼んで?」

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