011 伏線回収に売買
投降時間ミスったので再投稿しました><
すみません!全ては均等の為!
二階層に入ってすぐ、俺はダンジョンの外へ出た。
理由は嫌な予感がしたからという曖昧な理由がその何割かを占めているものの、それとは別にゴブリンシリーズのドロップアイテムが如何程の値段で取引可能なのか知っておきたかったのである。
二階層から出る為にどうすればいいのか、それは階段を上ってすぐに分かった。
階段のすぐ近くにダンジョンへ入った時と同じ、黒い水のような次元が蔓延る門を見付け、それが出口であったことは容易に想像することが出来た。
それは門番にクリア階層を自由に行き来出来ると言うことを聞いていたからで、門番には感謝するしかない。
俺は波紋を立ててその中へ入って行った。
そして出た時そこは、先程俺が踏み入ったダンジョンの入り口。その横には先程の門番が立っていて、俺の存在に気付いたようだった。
「無事だったんだね」
「うん」
「よかったよ……ホントに」
他人事の筈なのに、心底安堵した風にため息を漏らす門番。
イイ人だな……見も知らない相手の事をここまで案じられるだなんて。
「お前がくれた情報のお蔭で助かった。ありがとう」
「え、ううん。みんなに言ってることだし……」
「それでも、ありがとう」
「……えへへ、どういたしまして」
礼の言葉を口にする俺に門番は照れて頬を赤める。
随分と小動物チックで愛らしい門番だな、俺のイメージではもっと強固な筋肉を持つ鎧を身に纏った全長二メートルの大男なんだが。
こんなんで門を守れるんだろうか?
まあ免許自体も役所へ行けばすぐに発行出来る訳だし、形だけってことか。
「それじゃ、また今度」
「うん、またね」
軽い会釈を交わすと俺はダンジョン前を後にし、門番は俺に手を振ってくれていた。
さて、コレらは一体何処で売れるのだろう。
正直な話、武器にもならない棍棒やメイスが売れるとは思えない訳だが、万に一つの可能性がある以上はすこしでも金に結びつくよう頑張るしかない。
所持金:8930円
これで暮らしていける訳も無いだろうに。
というかこれじゃ家賃を払えるかどうかも怪しいところだ。
そういえば、あの場所の家賃って幾らなんだろう。
閑話休題。というよりは論点がずれてしまったが、今はドロップアイテムの売れる場所を探さなくては。
そう思い、街中を歩いていた俺なのだが、人が多くなったところをみるにこの辺は都心部なんだろうが、少し前から俺にチラホラと視線が向けられていた。
……堕ち人だって分かるのか?
いや、それにしては視線に敵意は無い。となれば別の理由で……?
ダンジョンを周って来たばかりだが、服に砂埃が付いている訳でも返り血を浴びている訳でも無し、俺におかしいところは無い。
何故視線を集めているのかまるで理解出来ない。
「あ、そこのお兄さん。ちょっと良いですか?」
「はい?」
俺が首を傾げながらも売却可能そうなそれらしい店を探していると、スーツ姿の男が俺に声を掛けて来た。
呼ばれたのが自分だと思ったのはその声が真後ろから聞こえて来たからで、振り向いてみるとやはり、スーツ姿の男は俺を呼びかけていた。
「お兄さんって何処かの事務所に所属してたりするのかな」
事務……! 俺、ヤクザと見間違われていたのか。
あー、まあ結構な戦闘を繰り広げてそのせいか若干顔が鋭くなっていたかも知れない。
だがヤクザて! 強面のイコールがヤクザって訳じゃないんだぞ。
失礼至極。
不届き旋盤。
「してないが、何か」
流石に笑えない。
あんな群れなきゃ何も出来ない癖して悪行に身を染める盗賊と大差ない連中と一緒にされただなんて。
「あ、わたくし、ウルズ社の辻倉と申します」
「ふぅん」
覚える気にはなれなかった。
社名とか言われてもウルズの元ネタ……つまりは北欧神話に登場する運命の女神がどうした、としか思えない。
人の流れの中で止まった俺と辻倉。
俺はすぐにでも話を切り上げてさっさと売却出来る場所を探したいのだが。
「貴方、俳優に興味はありませんか?」
「え」
その後、辻倉の話を聞いた俺は勘違いしていたことに気付いた。
まず最初に事務所というのはアイドル事務所のことであり、ヤクザが巣食う事務所の事では無い。
どちらにせよ所属なんてしてなかったからよかったが、そんなのは捨て置いてどうやら辻倉は俺を俳優にならないかと勧誘しているらしかった。
なんでもウルズ社とはその業界で結構有名な所らしいが……ちなみにらしいというのは情報があくまで辻倉の主観の会社説明だけで。見え這っている可能性を考慮した結論で、そのことが何と無く顔に出ていたらしいことは辻倉の一瞬みせた不満気な表情から想像出来た。
兎も角、俺は今スカウトされている訳だ。
正直、悪い気しかしない。
普通なら、悪い気もせず乗り気じゃないながらも『話を聞いて見てもいいかなー』なんて考えてしまうだろう。
だが甘い。
まずその理由は、俺だからだ。
この国の美的感覚は俺の与り知らぬところではあるものの、勧誘されているのが俺という時点でもう有り得ない。
確かに俺の顔は整っていた。
ただし、鏡を見た限りはの話だ。
考えて見て欲しい。…………服屋にあった鏡、実はあの鏡は歪んでいて、パーツの微妙な位置と大きさを変化させて、つまりは鏡の歪みが奇跡的に顔と整ったように見せていたということを!
だって小町も言っていたではないか。
『えっと……アウストラロピテクスの方で?』と。
アウストラロピテクス……つまりは猿、俺は猿顔の男ということだ。
だから突然ケンちゃんのことなんか……そういえばケンちゃんって語学に精通してはいたけど余り顔は良く無かったらしい。
無論、そんな感覚は俺に理解出来る世界には無い。
……そんなのはさて置き。
小町のアウストラロピテクス、ケンちゃん発言は、今この状況の伏線だったのだ!
な、なんだってー。
辻倉は恐らく俺を騙して、何らかの方法で利益を出すことが出来るのだろう。
金は八九三〇円しか無いけど。
だって芸人なら兎も角猿顔の俳優だなんて見たくも無いだろう?
未だ熱心に進めてくる辻倉が急に腹黒く見えて来た俺は一言、たった一言だけ言葉を残して歩き出した。
「断る」
俺位自分を客観的に見ることが出来ればこの位の判断は容易である。
取り敢えず俺は、猿顔でも人並みの幸せ位掴めるようダンジョンへ入り、己を磨いて金を稼がねば。
目標は病院のベットで孫の顔を拝みながら死んでいく事で決定だな。
途中過程? 知らん。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
辻倉は食い下がらなかった。
「……何だ」
「貴方は本物なんだ! まず一般人とはオーラから違う! 誰しもを魅了するそれは大舞台に立ってこそ栄えるものなんだ! どうやら貴方は勘違いしているようだが自分は貴方を顔だけで勧誘しているつもりは決してない! 顔だけの人間ならうちの会社は全く不自由していないんだ! 必要としているのは君の様な芸能界に新たな風を呼び込む……そう、スーパースターなんだ! 絶対悪いようにはしない、だから……!」
「長い、ウザい、意味不明」
嫌な三拍子が揃ったな。
オーラて……俺みたいな一般ピーポーを捕まえて何を言っているんだ。
もし他人とオーラが違うならそれは多分天界人かそうじゃないかの違いじゃないか?
というか見るからに金の無さそうな奴狙わず、もっと搾り取れそうな奴を狙えよな……。
「クソ! 何故他人に気持ちを気持ちのままに伝えることが出来ないんだ!」
「もしそんなことが出来たら会話というコミニケーション手段は消え失せるな」
思えば伝わる? 伝わるかい。
というか、辻倉の場合本音は伝わったら辻倉にとっては拙いだろ。
「あ゛ぁー! もどかしい!」
「……じゃあな」
「あぁ! 待って待って! じゃあせめて気が変わったらここに連絡してよ!」
そう言って押し付けられたのは電話番号が殴り書きされた辻倉の名刺だった。
取り敢えずこれさえ受け取ればこの喧しいのが離れていくのなら受け取るだけ受け取ろう。
俺は名刺を鞄の中へ突っ込むと、今度こそ歩き出した。
……辻倉のせいで悪目立ちしちまった。周囲の目が突き刺さる。
そんな視線から抜け出して、結局予備知識なしに探すことは叶わず、諦めてから一番最初に通りすがった女性にドロップアイテムを売却出来る場所を質問したところ、面倒臭がられると思いきや懇切丁寧な説明を貰い、土地勘の無い俺でも容易に見付けることが出来た。
女性にも直接言ったが、心の中で再度感謝の言葉を洩らしつつ、俺はそこへ足を踏み入れた。
「いらっしゃいませ」
そこはギルドだった。
本来であれば用途別に売却するのがベストだが、街に慣れていない内は安全策も兼ねた既に物の値段の決まっているギルドで売却するのが良いとのこと。
成程ね、売られた物を組合側からその専門店へ売却される訳か。
その仲介料が差し引かれてしまうからどうしても値段が下がってしまう訳か。
「ドロップアイテムを売りたい」
「はい、ではアイテムをこの上に提示下さい」
俺は言われるがまま、ゴブリンの棍棒八個と破損したのを一個、ホブゴブリンの鎧を二個、キングゴブリンのメイスを一個鞄より出してカウンターの上に置く。
相手は接客のプロらしいポーカーフェイスを貫いては居るが、あの鞄の何処にこの量がはいっていたのだろうとは考えている様子だった。
「全部で六四五〇〇円になります」
明細書
ゴブリンの棍棒 ☆1 5000円
ゴブリンの棍棒【破損】 ☆1 500円
ホブゴブリンの鎧 ☆1 7000円
キングゴブリンのメイス ☆1 10000円
以上。
現所持金:72930円
おぉ。
ダンジョン挑戦者の儲けに比べれば安いのだろうが、アロンダイトを使って怠慢にも楽をしてしまった身としては約二、三時間でコレはかなり良い。
第一層の敵でこれなのだ。第二層、第三層と進んで行けば確かにあのボロアパートで暮らしている必要は無くなるだろう。
まあ物価が高かった場合にはすぐ飛んでいく額であることも確かだが。
服も、今着ているこれ一着という訳にはいかない。
この七万は早くに無くなってしまう気がしてならない。
……よく考えたらモンスターハウスに入ってしまっていなければ儲けはこの半分だっただろうし、現実は甘く無いな。
その後の俺は、再び街中を練り歩いて今度は金を使う側に回り、必要な物を漁りに入ったのだった。
本日の購入明細。
米 ☆1
野菜セットC ☆1
調味料セットG ☆1
敷布団 ☆1
洋服一式 ☆1
調理器具セットA ☆1
食器セットF ☆1
洗剤セット ☆1
炊飯器 ☆1
卓袱台 ☆1
残り所持金:20円




